図書館は職場なので迫らないでください

ミネ

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俺の“逆に唯継が欲求不満なんじゃないか説”が当たっていたのかいないのかわからないが、俺のほうから積極的にえっちに取り組むことにより近頃の俺たちはいちゃいちゃが止まらない。

動画を一緒に見るのにソファに腰掛けた唯継の膝の間に座るのはいつものことだけど、さらに恋人繋ぎで手を重ねてるし、動画の最中もやたらキスをし合う(たまにそのままベッドイン)。俺がパッドでソファの上で寝そべりながら本読んでると、唯継が上に乗ってきてキスしてきたり首すじを柔く噛んだりしてきて邪魔してくる(じゃれあってるといつのまにかベッドイン)。唯継ん家のバーベキューができるくらい広いベランダのガーデンチェアで日向ぼっこをしていると唯継があったかいココアを持ってきてくれて、一緒に飲んでいるとちゅっちゅっしてくるから、こっちもちゅうする(と、いつのまにかベッドイン)。まあそんな感じだ。

ただセックスの数は相変わらずで、唯継の回数をこなしてやろうとがんばっているのだが、向こうも奉仕してくるせいで俺は我慢できずにいってしまい、結局、前とさほど変わらず唯継が1回か2回で達したところでおセックスは終了してしまうのだ(けど休みの日の朝はやって二度寝するのが通常運転になった)。

欲求不満が解消されたかは謎だが、唯継はこのところ毎日とっても機嫌がいいし、童貞事件界隈の話にも触れられないし、俺はこれでいいと思っている。童貞の件は俺の胸の奥底にしまい、このまま仲良くやっていこう。一件落着である。

と、この時はそう思っていた。




さて、秋も終わりに差し掛かり、クローゼットの奥から引っ張り出したマフラーを巻いて、唯継の車で送迎され職場の図書館に行くと、主任に新人を紹介された。俺と一緒のアルバイトで21歳の大学生。笹山ささやまくん。背は俺より少し高めでそこまで大きくないのだが、熊みたいな体型で下がった太めの眉がなんか可愛い愛嬌のあるやつだ。

「よろしくお願いします」

ぺこりと丁寧に頭を下げる。なんかいいやつそう。仕事を教える流れで雑談していると思った通りのいい奴ですぐに打ち解けた。

笹山くんは誰でも知ってるような有名大学の大学生でめっちゃ頭が良かった。そんで高校生の時まで柔道をやっていたそうだ。大学受験と同時にやめてしまったそうだけど、確かにその雰囲気が体型に残っている。休憩中も俺と笹山くんは、巨乳美少女、嵐山ちあきが柔道でトップを目指す名作マンガ『YAWARAKAIIIiii!!!!!』で大いに盛り上がったりした。

仕事も無事終わりに近づき、いつものように唯継が迎えに来てくれる。俺と笹山くんは同じ上がり時間で話しながらロッカーでエプロンを着替え、一緒に出入り口に向かった。

出入り口には唯継がいて、俺を見つけると嬉しそうに微笑んで片手を上げる。

「え、あの人藤野さんの知り合いですか?」

「うん」

ちょっとこの関係を何といっていいか分からず若干口籠る。まあうちの図書館のメンバーの中では言わずもがなだけどな。笹山くんもそのうち知るであろう。

笹山くんは唯継にちょっと驚いている。まあこんな態度は慣れっこだ。唯継とどこかに出掛ければ男女問わず浴びる視線である。そりゃ滅多に見ないスタイルまで完璧な美形が目の前に現れれば誰だって見てしまうものだ。

俺は「じゃあな」と笹山くんに声を掛けると唯継のエスコートで迎えの車に乗り込む。途中唯継が「寒くない?」と肩を寄せてきた。



それから笹山くんとは何度もシフトが一緒になり、連絡先も交換した。

風呂上がりにソファで寝そべりながらスマホをいじっていると『今度一緒にメシ行きましょうよ』と笹山くんからメッセージがきたから二つ返事で了解していると、遅れて風呂から上がってきた唯継が俺の腰らへんの空いてるスペースに腰掛ける。

「今度笹山くんと飯行ってくる」

「笹山くんって新しく来た職場の人?」

「そう、熊みたいなやつ」

唯継は洗い立ての俺の髪に頬を寄せすりすりしてくる。

「この前図書館の前で一緒だった人かな?プーさんみたいでいい人そうな」

「わはは、そうそう」

唯継は俺に顔をすっと寄せると下唇だけをそっと喰んだ。

「ももが居ないとさみしいから、寄り道しないで早く帰ってきてね」

「うん」

俺も唯継の上唇だけを唇で挟み込むとちゅっ、と吸った。

「いつ、寝よ」

唯継の首に両腕を回し、だっこしてってしがみついた。本来なら俺がお姫様抱っこの一つや二つして唯継を寝室に連れて行きたいところだが、物理的に不可能である。それに俺がこうして甘えたほうが唯継も嬉しそうなのでこの形をとっている。まあ、愛しい恋人が喜ぶのであれば、こういう時くらい可愛く甘えてやるのも恋人の勤め。

唯継は力強い腕で俺の腰と尻を支えるとそのまま寝室に連れてってくれた。


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