偉人と踊れ

VSルパンII

俺(と史帆)はとりあえず図書館へ戻った。
「史帆はどこ行ったの？」
真由が聞いてくる。まぁ、これは予測済みだが。
「代わるよ、雷火」
史帆が説明する。
「なら、向こうはもうルパンが用意を整えているのか？」
「最後の四天王は？」
「ルパンが倒したそうだ。デカルトが言ってた」
「ちなみに誰だったの、4人目って？」
「仏陀だと」
「仏教を開いたやつか。やばかったかもな」
「ともかく！ルパンがどんだけの力持ってるか分かんないまま戦わなきゃってことね」
「失礼するよ」
「久しぶりだな、テスラ」
「君に渡していた剣を改造しよう。ルパンのようにいくつもの力を使えるようにね」
「できるのか？」
「私の力を使えばできるよ、雷火」
「適当にメダルを見繕っておいた、ちゃんと使えよ」
「ありがとな、泉」
こうして俺たちはルパンとの戦いに備えて用意を進めた。
そんなある日、とうとうその時が来た。
「失礼するよ」
奴が図書館に入ってきた。
「どうやっ…」
「そりゃ、この図書館は私の物でもあるからよ」
ルパンの中から別の声が響く。確かに、フーディーニの時に感じた殺意を感じる。向こうも終わらせる気のようだ。
「踊り狂って、失せちまいな！」
「その命、盗ませてもらうよ
「まずはこれかな」
カードを装填すると、奴は太陽系を操作し始めた。
「プトレマイオスか！」
「ご名答」
こちらも対抗を始める。
「頼む、コペルニクス！」
天動説VS地動説の戦いが長い時を経て再開された。その隙に俺は奴との距離を縮める。当然次の手を打ってきた。
「グリム兄弟、来い！」
「頼む、アンデルセン！」
童話の集め手がぶつかるかと思えば、
「鳥山石燕、来い！」
「頼む、安倍晴明！」
妖怪の作り手と祓い屋が打ち消し合う。
「佐々木小次郎、来い！」
「頼む、宮本武蔵！」
因縁を持った剣豪が切り結ぶ。
「終わんねぇなぁ」
ついもらしてしまう。偉人の力をぶつけ合うだけで膠着状態になっていた。
「終わらせるぞ、ジャクソン！」
ルパンがとうとう自分で突っ込んでくる。俺は奴に渾身の偉人を解き放った。
「頼む、石川五右衛門！」
盗人同士の盗み合い。潰すなら、ここしかない。
「頼む、マイケル・ジャクソン！」
最後に奴は、この重力の中で文字通りに潰された。
「お姉ちゃん…」
史帆が剥がれる。向こうも体から誰かが出ていた。
「さようなら、お姉ちゃん」
「次は…あたしが勝つからな、史帆」
長いようで短かったのかもしれない戦いは、終わりを迎えた。