嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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名探偵永遠

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  刹那が協力してくれないとなると警察が来るのを待つのか?  後1時間以内に来ると思うけど……。いや、警察が来てしまうと真っ先に疑われるのは俺だ!  後々、容疑は晴れるし、もし冤罪になったとしたら、その時は、さすがに刹那が助けてくれるだろう。ただ、かなり面倒な事になってしまう。犯人は俺が見つけないと……。

ガチャ……バタン
  俺は刹那の部屋を出た。そして、2階から下の西大生を見て思った。

  アイツらが犯人だとすると、証拠を隠そうとするかも知れない。いや、もう既に隠したかも……。それより、また俺を拘束する事も考えられる。アイツらとは距離をとって調べないと……。

  俺は2階をウロウロしながら考える。

  さて……まず、殺人と言えば動機だな。執事さんは明らかに動機がある。動機だけで考えれば本命だ。兄なのに執事という扱い、遺産相続。それに、刹那が言っていた犯人に義理があるという言葉……。西大生はボコボコにしているし、義理があると言うなら執事さんが本命だ。大学生達はどうなる?  一見関係無さそうだけど、殺された王秀英が金持ちなら、誰にとってもメリットがある。金は誰しもが欲する物だからな。
  となると結局、動機で犯人を絞る事は出来ないのか?  そう言えば、さっきは刹那に4人全員の共犯かもと聞いたけど、よくよく考えるとそんな訳は無いな。黒髪パーマの男は俺がずっと見ていた訳だし……いや違う!  俺が部屋で休んでいる時に4人全員で犯行を行なえる!  ……いや、でも待てよ。4人全員が共犯だとしたら、俺を4人で襲ったりするかな?
  それより共犯が1番考えられるのは執事さんだ。俺達がずっと監視していたし、体力的に1人では2階へ移動出来ないから、単独犯ってのは無理だけど、共犯者がいるなら1番怪しいのは執事さんか?  そうなると、執事さんと背の低い男と色黒の男の共犯説が最有力となる。この場合は背の低い男が襲ってきた事も他の人に見せつける演技だとすれば筋が通っている。ただ、そんな推測だけでは全く意味が無い。やっぱり証拠を見つけないと……。

  俺は階段を降り、西大生に気を付けながら、自分の部屋の前まで行き思い出した。

  そうだ、2階の真ん中の部屋は、廊下が繋がっていないとは言え俺の部屋の隣なんだ。隣の茶髪の部屋が開いた時には気圧差で音が聞こえた。と言う事は、真ん中の部屋が開けば音が聞こえる筈だ。午後3時~午後9時までで気付かない時間と言えば、仮眠していた20分ぐらいか?  やっぱり、0時10分から5時半が怪しいとなるけど……。そうなると背の低い男と色黒の男ペアが最有力か?  茶髪の男は刹那が監視しているんだから大丈夫か。……いや、待て待て、刹那は犯人に借りがあるって言ってた。まさか共犯?  ……まではいかなくても隠蔽の手伝いぐらいはするかも知れない……。いやあ、犯行時刻を特定するのがこんなに難しいとは……。

ガチャ……バタン
  刹那は俺が自分の部屋を離れたので、自分の部屋へ戻ったようだ。俺は再び階段を下り、西大生に気を付けながら反対側の階段を上り、2階の真ん中の部屋の前に立って考える。

  やっぱり犯行現場から……いや、どこかで犯行後、この部屋に移動された可能性もあるから、この部屋が犯行現場と決まった訳じゃないけど、2階の真ん中の部屋をもっと調べるべきか?  でも、この部屋に入ると、俺を犯人だと思っている西大生は証拠隠滅を阻止する為に近付かれて調べ難くなる。特に黒髪パーマの男は俺が犯人だと思ってる確率が高い筈だ。どうしたものか……。あ、そうだ!  刹那が全て分かっていると言ったんだから、刹那の調べたルートに絶対ヒントがある筈だ!

◆麻雀用語で『反射読み』という言葉がある。普通は対象の相手の捨てハイを見て、安全かどうかを確認する。これを直読みと言うのだが、対象の相手以外の捨てハイを見て判断する技術の事を反射読みと言う。今回の事件で、被害者や現場の状況、皆のアリバイ等の判断材料で、犯人を絞るのを直読みとすると、刹那や他の人物の動きで、判断する推理は反射読みとなる。今回、永遠は無意識に麻雀で言う反射読みの技術を使った。◆

  刹那は真ん中の部屋から下を覗き込んでいたので、俺は真似してみようと2階から真下の王の部屋を覗き込んだ。

  王の部屋が見える。だから何なんだ?  特に変わった様子は無い。ここから登ってきたとでも言うのか?  スパイダーマンは何かのヒントか?  いや、もし、それがヒントになっているなら事件の前からかぶっていた刹那の共犯と言う事になってしまう。……待てよ、スパイダーマンの覆面を執事さんが刹那に渡したとしたら……。いやいや、ヒントなんて出す意味が無い。これは違う!  スパイダーマンは関係無い。

  俺は1分程覗き込んだけど、何も分からなかった。
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