桜の花が散る頃に

ジャメヴ

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マジョリティーゲーム

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「難しいね……」
中川さんが言ったので薬丸が返す。
「まあ1回練習でやってみようか」
「そうですね。1度やってみると簡単かも知れません」
この短時間で理解するのは難しそうな内容に思えるけど、人見はゲームに興味津々だ。だけど、楽しめるのは僕達だけ。手塚は勝たなければならない。薬丸が入団テスト用として持ってきたゲーム……必ず必勝法のようなものがある。

「じゃあ、カードを配るよ」
薬丸が裏向きにした5枚のカードを机の上で交ぜた後、皆に配った。普通は手に持ってシャッフルするので変な配り方だなと思いながら、僕はカードに手を掛けた。
「じゃあ、見てください。本番じゃないけど、一応、皆には見られないように」
カードをめくるとジョーカーだった。いきなりか!  と思いながらも、一応、誰がジョーカーを引いたんだ?  という表情をして様子を見る。皆も他の人の表情を窺《うかが》う。練習だからか、何となく皆の表情に余裕が感じられる。全員がカードを確認したのを見て、薬丸が話す。
「では、今から投票ステージを行います。投票ステージでは、この人に残ってもらいたいという人を紙に記入してください。つまり、イジメっ子では無さそうな人を記入するって事。では、順番に……」
「じゃあ、僕から……」
僕は1番に席に着く。
「では、皆は後ろを向いてくれるかな」
薬丸の指示で、皆は後ろを向いた。練習とは言え、僕としては自然な流れで手塚に勝ってもらいたい。僕は『手塚』と記入した。薬丸は、その紙を手に取り、4つ折にした後、周りを見渡す。
「次は……」
「じゃあ、私が……」
人見が机へ向かう。人見が記入を終えると、中川さん、小園、手塚の順で記入した。
「では、結果を発表します。手塚2票、空2票、親盛1票、人見1票です。ただ、排除者は無しです」
「えっと……どういう事だっけ?」
中川さんが聞いた。恐らく、自分が投票されていないのに何故、排除されないのか、という事だろう。僕は説明する。
「中川さんは、手塚か小園に投票したって事だよ。最も投票数の多い人に投票した人は排除されないからね」
「あっ、なるほど」
「その通り。因みに、今は練習なので喋っても良いけど、本番はヒントになるような事は喋れませんので。では、排除者無しで朝礼ステージを行います。全員、輪を描くように外向きに立ってください」
皆が輪を描くように外向きに立つと薬丸が注意する。
「もっと大きく、教室一杯使って」
皆は、それを聞いて更に広がった。
「イジメっ子を指名するかどうかを考えてください。では、1分程待ちます」

  僕は目をつぶって考える。ええっと……ここでは最初にカードを引いた表情で決めるか、さっきの投票結果で決めるしかない。確か……手塚の2票は僕だけとして、他に、小園に2票、僕に1票、人見に1票だったかな?  う~ん……中川さんが小園に投票したって事しか分からない。

「では、そろそろ時間なので、指名するという方は挙手してください」

  どうだろう?  最初だし、皆様子見かな?  ちょっと気になるのは小園……。変に行動力があるからな。

「では、挙手がなかったので放課後ステージへ移ります。イジメっ子の方が生徒1人を排除します。じゃあ皆、さっきと同じ様に1人ずつ記入しに来てくれるかな。イジメっ子意外は記入するフリか、イジメっ子の子分になりたいと思えば『子分』と記入してください」
先程同様、僕が1番に席へ着く。

  さて、誰にするか……。1番イジメっ子じゃなさそうと思われている人物を排除するのが良いのだと思う。となると……。

  僕は『小園』と記入し、薬丸へ渡した。その後、先程の位置へ戻り、教室の後ろの黒板を見ながら待機する。全員が順番に記入を終えたようだ。記入を終えたと言っても、子分と書いた人以外は記入するフリをしただけだ。

「では、結果を発表します。放課後ステージでは、空が排除されました」
「え~!  僕?!」
「まあまあ、まだ練習だから」
薬丸は小園をなだめた後、続けて話す。
「それと、子分を希望した人はいませんでした。では、4人で投票ステージを行ないます」
「じゃあ……」
僕が机に着くと、小園が覗いてくるのも気にせず、『手塚』と書いて薬丸に渡し、後ろの黒板の前に戻ると皆が記入するのを待った。
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