桜の花が散る頃に

ジャメヴ

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入団テスト

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3月3日火曜日8時15分
2年1組の教室

「手塚さんから親盛さんに話があるそうなんです」
人見が僕に話してきた。
「何だろう?  秀さん?」
「聡さんの方です」
「分かった」
僕は、またクイズ対決かなと思いながら廊下に出ると、手塚が待っていた。手塚は僕に会釈した後、言う。
「親盛君、『少年探偵団』に入団させて欲しいんだ」
「えっ?!」
それを聞いた人見が声を漏らした。僕よりも、人見の方が驚いているようだ。僕は答える。
「手塚……ぜひ!  と言いたいところなんだけど、一応全員の意見を聞いてからで良いかな?」
「もちろん。ただ、入団テストを受けさせて欲しいんだ」
「入団テスト?」
「ああ、皆に納得されて入りたいからね」
「分かったよ。じゃあ、相談してくるよ」
「ありがとう、お願い 」

  手塚が去ると、僕と人見は『少年探偵団』のメンバーを集めて話す。
「……という事で手塚が入団テストを受けさせて欲しいって言ってきてる」
僕が皆に言うと、中川さんが鼻でため息をついた後、話す。
「普通に入れば良いのに。プロ集団じゃ無いんだから……」
「でも、手塚君ならどんなテストでも一発合格だね」
と小園が言ったのを聞いて、薬丸が間髪入れずに話す。
「いや、ここはちゃんとした問題を作って対応しないと失礼にあたると思う」 
「そうですね。手塚さんは賢いから、手抜き問題だったら納得してくれないかも知れません」
人見が言った後、僕が話す。
「じゃあ、問題を考えてくるよ。それを皆に確認してもらって、良ければ試験問題にしよう」
「ちょっと良いかな?」
僕の考えを薬丸が遮った。
「今回のテストって答えられても良いんだよね?」
「もちろん。そもそも、手塚はテストなんて無しで入団してもらって良いんだから」
「じゃあ、俺が考えても良いかな?  ちょっと入団テストにしたい事があるんだ」
「そうなんだ。良いと思うよ」
「俺の父さんが作ったゲームがあるんだけど、その結果で、合格か不合格かの判断をしようと思うんだ」
「じゃあ、お任せするよ。皆も良いよね?」
僕が周りを見渡すと、全員が頷いている。僕は『少年探偵団』のメンバーの凄さを改めて感じた。8歳でこれだけの実行力は凄い。自分は皆より頭1つ抜けていると思っていたつもりだったけど、油断していたら追い抜かれちゃうなと思った。


放課後
2年1組の教室

『少年探偵団』以外の生徒が下校した後、手塚が教室に入ってきた。「宜しく」と手塚は挨拶しながら教室へ入る。皆は席に座ったまま会釈した。薬丸は教壇側へ向かい、人見が手塚を席へ誘導して座らせる。それを見て、薬丸が話す。
「じゃあ、全員揃ったので、今から手塚の入団テストを始めます。今からするのはマジョリティーゲームです」
「魔女?」
小園が不思議そうに言った。
「魔女じゃなくて、マジョリティーって言うのは、多数派って意味だよ。多分、多数決で勝負が決まるゲームって事だよね?」
僕は小園に説明した後、薬丸に質問した。
「そういう事。じゃあ、今からマジョリティーゲームの説明をするよ」
僕は手塚をチラッと見た。少し、不思議そうな顔をしている。マジョリティーゲームについて不思議と言うよりは、何故、僕や人見を差し置いて、薬丸が主導権を握っているのかという感じに見えた。薬丸はメモ用紙と鉛筆を教壇に置き、ルールの書かれた紙を黒板に広げる。

マジョリティーゲーム

○多数決により、イジメっ子を排除するゲーム。
○イジメっ子を排除出来れば普通の生徒側の勝ち。普通の生徒が1人になればイジメっ子側の勝ち。
○ゲーム中は相談禁止。勝負に関係あるような事を言った人はマイナス1ポイント。
○人数分のトランプに、ジョーカーが1枚だけ入っているので、それを引いた人がイジメっ子となる。
○ゲームは投票ステージ→朝礼ステージ→放課後ステージを繰り返す。
○投票ステージでは、イジメっ子では無いと思う、自分以外の1人を全員が紙に記入する。イジメっ子は1人で2票分の影響力を持つ。この時、誰からも投票されていない者は全員排除される。但し、最も得票数の多い人物を指名した人物は排除されない。
○朝礼ステージでは、イジメっ子だと思った人を指名する権利を全員が得る。全員で輪を描くように外向きに立ち、指名したい人は手を上げる。この時、誰が手を上げているかは分からないようにする。指名に成功すると、指名者に2ポイントと生徒側で残っている人物全員に1ポイントが加算される。但し、指名を失敗すると、指名した人は排除され、1ポイント減点となる。
○放課後ステージでは、イジメっ子が誰か1人を排除する。また、普通の生徒がイジメっ子の子分になる事も出来る。排除した人物が子分を希望していた場合、排除されずに子分になる。但し、子分になれるのは最初の放課後ステージのみ。
○イジメっ子が1人勝ちなら5ポイント、子分1人につき1ポイントずつ渡す。普通の生徒が勝った時、排除されていない人は1ポイント。ゲームを3回やってポイントの多い人が優勝。
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