未来からの降霊

ジャメヴ

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  私は、1通目の封筒をトントンと机の上でバウンドさせ、封筒の中身を下に落とした後、その中の1通を手に取り、他の封筒は机に置く。ハサミで上部を切り取って中身を取り出す。4つ折にされた書類を開いて書かれている内容を見る。基本的に上から見ていくので、当然、顔写真を1番に見ることになる。1通目、2通目と目を通した後、3通目の履歴書を開き、顔写真を見た時、私は脳みそをギュウッと掴まれたような感覚になった。その後、鼓動が速くなる。なんと、その履歴書の人物は不法侵入した家のベランダに居た女性だったのだ!   写真とは言え、間違い無いと思えた。ベランダで見た女性は一瞬だったが、私はその表情を鮮明に憶えている。不法侵入で通報されないかと心配して、この女性の顔を毎日思い出すのだから……。
  この女性とは関わりたくないし、当然、面接もせず落選にしようと考えた。だが、次の封筒をハサミで切ろうとした時、考えが180度変わった。この女性が私の事を憶えているのかを確認したいと思ったのだ。

■心理学用語に『防衛的露出行動』というものがある。例えば、かつらを被った男性が女性に対して、「今日の髪型可愛いね」などのように話し掛け、そのリアクションで自分のかつらがバレていないかを確認するのである。他には、浮気をした男性が彼女に対して、「昨日は仕事が遅くなって大変だったよ」などと聞いてもいない情報を話し出し、そのリアクションを確認しようとするのだが、普段しない話をする事によって違和感を持たれ、バレてしまうケースも多々ある。放火魔や殺人鬼等の犯罪者が犯行現場に戻る事があるのも、この心理が働いていると言われている。
  山崎も同様で、自分の犯行を知る唯一の人物に近づいて、不法侵入をしたのが自分だとバレているのか否かを確認しようと考えたようだ。■
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