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前川太郎
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「母さん、来月にでも温泉旅行へ行こうと思うんだ。父さんと一緒にどう? お金は出すから」
「え~、良いの? 結構かかるでしょう?」
「今回ボーナス良かったから気にしなくても大丈夫」
「ありがとう」
「あっ、ちょっと待って。秀太が話したいって」
「おばあちゃん! 一緒に行くの?」
「うん、うん。おじいちゃんも一緒に行くわ。秀ちゃん、会えるの楽しみにしてるからね」
「やった~! 車でトランプしよう」
「うん、うん。おやつ食べながら行こうか」
「わ~い、ポテチ買ってもらお。あっ、パパが代わってって。じゃあねー」
「は~い、秀ちゃんおやすみ~」
「おやすみ~」
「じゃあ、母さん、また連絡するよ」
「はい、おやすみ」
「おやすみ」
玉枝は電話を切った。
「何だって?」
玉枝の夫、太一が聞いた。
「太郎が温泉旅行に連れていってくれるって」
「そうか、いつもいつもありがたいな」
「ええ、小さい頃から親思いの良い子だわ」
温泉旅行当日
「ごめんなさいね、急に調子悪くなっちゃって」
「しょうがないよ、ただの風邪だろ? まあ、ゆっくり休んでよ」
「行きたかったけど、うつしちゃ悪いから」
「おばあちゃん、また元気になったら遊んでね」
「うん、うん。秀ちゃんゴメンね」
「じゃあ、母さん、行ってきます」
「お義母さんお大事に」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
玉枝(68歳)は27歳の時、同級生であった現在の夫、前川太一と結婚した。程無くして子供を授かり、順風満帆な夫婦生活を送る。夫婦喧嘩などは、ほとんど無かった。1人息子の太郎は真面目で親思い。絵に描いたような幸せな家族。その後、太郎は結婚し、産まれた男の子に秀太と名付けた。今日は楽しみにしていた、温泉旅行に行く予定だったが、当日になって風邪をひいてしまった為、玉枝だけ家に残る事になった。太郎の運転で、嫁の優子、夫の太一、孫の秀太が1泊2日の温泉旅行へ出掛けた。
(はあ、こんな日に風邪をひくなんて……。まだ、朝起きてそんなに時間が経っていないから、多分寝られないわ)
玉枝は風邪を治す為にと横になる。目を瞑るが寝れそうに無い。もし、自分も旅行に行けていたらと頭の中でシミュレーションする。
(行きの車では、孫の秀太とトランプ。でも、秀ちゃんはババ抜きしか出来ないからね。トランプに飽きたら、しりとりになるのかな。温泉施設には秀太が遊べるような遊具はあるのかしら。……ああ、ついてないわ)
玉枝は自分のツキの無さに嫌気がさし、考えるのをやめた。
玉枝はスマホの音で目を覚ました。寝られないと思っていたのに、風邪で体力を奪われているせいか、2時間も眠っていたようだ。電話は太一達からかと思い、スマホを見る。
(知らない番号……。どうしようかしら……)
迷惑電話の可能性もある為、玉枝は電話に出るのをためらったが、10コール以上鳴っているので渋々出た。
「もしもし」
「もしもし、警察です。前川玉枝さんですか?」
「えっ?! 警察?!」
「そうです。前川玉枝さんのお電話で間違い無いですか?」
「はい、そうですけど……」
「ご主人の前川太一さんが交通事故に遭われて重体です」
玉枝は血の気が引くのを感じた。
「今すぐ緑山病院に向かってもらえますか?」
「太郎……前川太郎は無事ですか?」
「後程、病院から連絡が入ると思います。取り敢えず、緑山病院へ向かってもらえますか? 場所は分かりますか?」
「調べて行きます」
「では、失礼します」
警察官と名乗る男性は電話を切った。
(お父さんが重体……。太郎は? 秀ちゃんは?)
玉枝はタクシーを呼び、緑山病院へ向かう。少し眠ったのと、衝撃のニュースで風邪も吹き飛んだようだ。タクシー内で、玉枝は全員の無事を祈る。だが、病院で最悪の事態を知る事になる。
家族全員死亡……。
トラックとの正面衝突だった。ブレーキ痕が無かった為、居眠り運転ではないかと告げられた。トラックドライバーを含め、事故に関係した全員が死亡。可愛かった孫……優しかった1人息子……長年連れ添った夫……気遣いの出来る嫁……。
言われるがままに葬儀をあげたが実感は無い。細かな手続きは全て司法書士にお願いした。憔悴しきり、事故から1週間は魂を抜かれたような生活だった。それでも色々とやる事はある。
息子太郎の家で遺品を整理していると、玉枝は太郎が読んでいた漫画を見つける。最近流行りの転生モノだ。
転生モノとは、主人公が死んで生まれ変わり、違う世界で生活する物語の事。
玉枝も、皆と一緒に死んで生まれ変われないのかと思った。生まれ変わって、もう1度同じ家族でやり直す事が出来たらどれだけ幸せだろう。だが、現実には、それは叶わぬ夢なのだ。
事故から1ヶ月が過ぎた。玉枝は、ようやく少しずつ元気を取り戻せてきた。息子の太郎は、家族旅行が大好きで、玉枝も旅行によく誘われ、事あるごとにその様子をビデオに納め DVD に残していた。
玉枝は、その日の夜も太郎から貰った DVD を見ながら皆の事を思い出し、時には涙を流していた。玉枝は右耳が難聴の為、音量は大きめで聞いている。
皆の映像を見ていると、死んだという事が夢のように思えてくる。何も無かったかのように、「ただいま」と帰って来るのじゃないかとさえ、玉枝は思うようになっていた。
そんな中、窓の外に人影が見えた。暗くて少し見にくいが、小雨の降る中、車庫の屋根を使って男性が雨宿りをしているようだった。玉枝は恐る恐る窓を開けて「こんばんは」と男性に話す。男性は何も言わず、申し訳無さそうに頭を下げた。玉枝は「傘持ってきますね」と告げると、玄関へビニール傘を取りに行き、戻ってきて男性に傘を渡す。
「どうぞ。百均の傘なので返さなくても良いですよ」
「ありがとうございます」
「?!」
玉枝は衝撃を受けた。その男の声は、息子の太郎と全く同じ声なのだ! さらに男性をよく見るとパジャマ姿だった。
「家出……でもされたんですか?」
「……まあ、そんなところです」
太郎そっくりの声を不思議に思っていると、男性は申し訳無さそうに話し出した。
「お母さん、雨宿りをさせてもらっている上で大変恐縮なんですが、タオルをお借りしても良いですか?」
「あ、ごめんなさい。持ってきますね」
玉枝は、男性が話した、お母さんって呼び方があまりに息子太郎とソックリだったので、不思議に思いながら脱衣所へ向かい、タオルを取って戻り、男性へ渡した。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
男性はパジャマの上からタオルで拭く。玉枝は暗闇に慣れてきたのか、男の顔が見えてきた。三十歳前後に見えるその男性の見た目は全く息子とは違う。無精髭をはやし、随分と個性的な顔をしている。だが、声が息子と全く同じだ。玉枝はもう少し話がしたいと思い、質問をしてみた。
「お名前伺っても良いですか?」
「……前川太郎って言います」
「!!」
衝撃! 息子太郎に瓜二つの声、さらに、男性の名前は前川太郎だという。同姓同名なんて偶然は考えられない。
転生モノ……。
玉枝は太郎の魂が目の前の男性を乗っ取って、ここまで来たのかも知れないという誤った解釈をした。もちろん、そんな事はあり得ない。だが、玉枝は太郎達がふとした拍子に帰ってきてくれると願っていたのだ。1パーセント以下の確率でも信じたいという心境だった。他人の家の駐車場で雨宿りをしているパジャマ姿の男性なんて明らかに不審者っぽいが、息子かも知れないと思っている玉枝には怖いという感情は無かった。玉枝は男性に話す。
「温かいスープでも飲んでいきますか?」
「良いんですか?」
「どうぞどうぞ、玄関に回ってください」
「すみません。ありがとうございます」
普通に考えれば有り得ない状況だ。独り暮らしのお婆さんの家に知らない人物を入れるなんて危険過ぎる。
だが、問題無い。もちろん、この人物は、息子の太郎が乗り移っている訳では無いのだが、窃盗や強盗目的でも無い。かといって、ただ単に雨宿りをしていたという訳でも無い。
では、一体何が目的なのか?
この男の目的は隠れる事だった。
誰から?
警察から。
そう、この男は病院から脱走中の殺人犯、木村一郎だ。
殺人犯を家に入れるなんて危なすぎる! と思うかも知れないが、木村は殺人鬼という訳では無い。逆恨みで殺されるかも知れないという恐怖感と、気になったら眠れないという神経質な性格から殺人を犯しただけなので、犯行を繰り返す事は無い。田中舞には恋愛経験の無さから感情的になり、やり過ぎてしまった部分もあったが、元々大人しい性格なのだ。
木村は病院から逃げ出した後、警察をやり過ごす為、他人の家の車庫で身を潜めていたところ、玉枝に声を掛けられたのだ。玉枝が傘を取りに行っている時、大音量のテレビから「お母さん」という声と「太郎」という声が聞こえた為、太郎の声真似をすれば、親近感が湧くかも知れないと考えたのだ。そして、表札の「前川」を見ていたので、前川太郎と名乗ったのだ。まさか、太郎が亡くなっているとは思いもしなかったのだが。
玉枝は玄関にバスタオルを敷き、スリッパを置いて木村に話す。
「どうぞ。靴下も濡れちゃってるでしょう? 脱いじゃってください」
「ありがとうございます」
木村は靴下を脱ぎ、バスタオルで足を拭いた後、バスタオルの上に脱いだ靴下を置き、スリッパを履いた。
「どうぞこちらへ」
玉枝は木村をリビングの椅子へ誘導した。
「ありがとうございます」
「ちょっと待っててくださいね」
玉枝は台所へ向かい、1分程で戻ってきて、マグカップを机の上に置く。
「コーンスープ入れました。インスタントですけど温まりますよ」
「ありがとうございます」
木村はスープを飲む前に、マグカップに両手を当て、雨で冷えた手を温める。
「外は寒かったでしょう? どうされたんですか?」
「……ええっと……」
木村は玉枝と目を合わせた後、目をそらして口ごもった。先程も玉枝から同じ質問をされたので、いきなり聞かれたから答えれないという訳では無い。実は、駐車場で聞かれてからテーブルにつくまでに回答を考えていた。玉枝の言った、家出というワードに乗っかるつもりで、父親と喧嘩して何も考えずに着の身着のままで家を飛び出した、と答えようと考えていた。だが、玉枝があまりに親切なので、この人に嘘はつきたくないと思ったのだ。とは言うものの、本当の事を言うのは、さすがに早すぎる。やっぱり、当分は嘘をつかないと、と考えているうちに、玉枝から助け船が出された。
「あ、大丈夫ですよ。言いたくなければ言わなくて」
「……すみません」
「前川太郎さんって言いましたよね? 私の息子も前川太郎っていうんですよ。奇遇でしょ? しかも、お兄さんと全く同じ声なんです」
「……そうなんですね……」
「だから、親近感が湧いちゃって……。でも、先月亡くなっちゃったんです……」
「えっ?!」
木村は衝撃の事実に驚き玉枝を見る。玉枝は悲しそうな感じは出さず、淡々と話す。
「交通事故でね……。夫と息子とその嫁と孫……。皆死んじゃった……」
「……」
「親思いの自慢の息子だったんですよ……。孫の秀太も1番可愛い時期だったのにねぇ」
「うっ……うっ……」
「?!」
玉枝は木村を見て驚いた。泣いている! 他人の家の不幸話を軽く聞いただけで。
もちろん木村は、この話を聞いて可哀想だと思ったというのもあるのだが、見ず知らずの自分を親切に扱ってくれた事、その人を騙さなければいけない事、殺人を犯した事、愛する人を裏切った事、折れた肋骨の痛み、雨の中を病院から脱走してきた事など、現在の自分の状況も含めて、全てが悲しくなり、涙を流したのだった。
「あらあら、ごめんなさい。悲しい話しちゃって」
「うっ……うっ……」
「家へ帰れない事情があるなら、今日は泊まってくれても良いですよ」
「うっ……うっ……。本当ですか?」
「ええ、お風呂も入ってください。亡くなった主人のパジャマで良ければ使ってください。下着は確か新しいのがあったと思います」
「何から何までありがとうございます」
玉枝は木村の流した涙を見て、息子太郎の魂が乗り移っているという思いが更に強まった。そうで無いにしろ、他人の家の不幸に涙する人物が悪人とは考えないだろう。
木村はこの日から、約3ヶ月間、前川太郎として過ごした。もちろん、太郎の声で。2人は親子のように振る舞った。外出を断る木村にも、玉枝は不信感を抱く素振りも無く、木村に留守番を頼んで買い物へ出掛ける。玉枝は時折、木村を置いて友人と出掛けたりもしたが、木村の話は一切しなかった。警察に電話されるかも知れないし、何より自分の事を変だと思われてしまうからだ。
玉枝は年金と家族の保険金でお金には困っていないので、働かない木村に何も言わず、毎日、食事を与えてくれた。
一緒にテレビを見て笑う毎日。
一緒に DVD を見て悲しむ毎日。
一緒に食事をして喜ぶ毎日。
木村は疎遠になっていた実の母親よりも、玉枝の事を母親のように感じていた。そんな生活を3ヶ月も続けると、木村の心境は徐々に変化していく。そして、とある月曜日の朝、遂に木村は一大決心をしたのだった。
「お母さん、話があるんだ」
「どうしたの、太郎ちゃん。かしこまって……」
「お母さん、ビックリしないで聞いて欲しい。すぐには理解出来ないと思うけど、俺は殺人で指名手配されている木村一郎なんだ。今まで嘘をついていてごめん」
木村は深々と頭を下げた。だが、玉枝から何の反応も返ってこないので、顔を上げ、玉枝を見るが驚いた様子は無い。
「お母さん、ビックリしないのか?」
「ええ、だって……知っていたから……」
「!!」
木村は衝撃を受けた。自分の事を殺人犯だと知っていて一緒に生活してくれていたと言うのだから。
もちろん、玉枝は最初から分かっていたという訳では無い。木村が家に来た翌日に警察官が来て、指名手配犯の木村が脱走していると聞かされたのだ。もちろん、知らないと答えた。玉枝は、それでも息子の太郎が、殺人犯木村の身体を乗っ取って自分に接している可能性に期待したのだ。だが、1週間も生活すれば、徐々に違うということが分かってくる。さらに、木村一郎の事を調べ、声真似の天才である事を知り、太郎の声真似をしているのだと理解した。だからと言って、もう既に木村は玉枝の新しい家族のようなものだ。今は2人目の息子として接している。
「今までありがとう……。今までごめんなさい……。俺、出頭するよ」
「うん、身体に気を付けてね。面会にも行くから」
玉枝は木村が改心してくれた喜びと、息子が捕まる悲しさという、反対の感情が合わさって涙を流した。
木村は玉枝の家から電話を掛ける。玉枝に迷惑が掛かるので、公衆電話を探して、そこから掛けようかとも考えたが、病院から抜け出した後の事を、全て正直に話すつもりなので、いずれ玉枝の事もはなさなければならなくなると思い、玉枝の家から電話を掛けたのだった。
木村は数日前から玉枝への嘘を付いたという告白と出頭を考えていた。普通に警察署へ出向いても良いのだが、何故か、日吉に電話するのが事件の終結に最も適していると思えたのだ。
「もしもし。……お久しぶりです、日吉さん」
「どなたでしょうか?」
「……木村です」
「えっ?!」
「あなたに肋骨を折られた殺人犯の木村です。色々と御迷惑をお掛けしました。色々考えた結果、出頭しようと思いまして」
「どういう風の吹き回しだ? 今どこにいるんだ?」
「前川玉枝さんって方の家から電話を掛けています。住所は×××-×××です」
日吉は当然警戒する。前川玉枝を人質にとったのだろうかと考えていた。木村には何度も騙されているのだから。だが、今回は違う。木村は騙すつもりなど毛頭無い。玉枝と過ごした日々で改心したのだ。純粋に、せめて日吉の手柄にしたいと考えていた。
30分後、日吉と小牧と野々村が勢揃いで木村のもとへやって来た。日吉の警戒に反し、木村はゆっくり両手をくっつけ、差し出した。その様子を見て、野々村が意外な事を言う。
「木村さん、出頭する前に、別の殺人犯逮捕に一役買ってくれませんか?」
「どういう事でしょうか?」
「一昨日、近くで殺人事件があったのは御存知ですよね?」
「はい、ニュースで見ました」
「その被害者の声真似で、犯人最有力の人物と電話をして欲しいんです」
そう、永田が安藤の幽霊だと勘違いし、自白に導いた立役者は木村だったのだ。
「木村、名演技だったな」
「皮肉なものですね、米山さんに騙されて収録した、偽ラジオドラマの演技力がこんな形で生かされるなんて……」
「そう言えば、モノマネ新人王の時に永田は、木村と勝負がしたいとか言っていたらしいな。夢が叶って良かったじゃないか。逮捕されるのも本望だろう」
全員、パトカーに乗り込み、永田の自宅へ向かう。
日吉は運転しながら野々村に尋ねる。
「野々村さん、そう言えば永田がモノマネする、関本の声ってそんなに似ていないのに、安藤を騙した時の声はそっくりだったじゃないですか? どういう事ですか?」
「スマホから聞こえる声というのは、その人の声じゃ無いのさ」
「は? じゃあ誰の声なんですか?」
「機械の音声なのさ」
「機械?」
「ああ、その人が話した声に最も近い機械の音に変えて伝える方法をとっているのさ」
「瞬時にそんな事が出来るんですか?」
「ああ、技術の進歩ってのは凄い。俺も専門家じゃ無いんで詳しくは知らないんだがな。だから、普段の声がそこまで似ていなくても、スマホが似ていると判断すれば近い音に変えられるって訳だ。とは言うものの、上手なモノマネタレントだからと言って、本人と同じ声に変換されるって訳でも無いらしい。逆に、あんまり似ていなくても、親子とかは同じ様な声に変換されやすいそうだ。永田は恐らくその辺りの事を知っていて、スマホを通した関本の声真似が関本本人の声にそっくりだという事に気が付いて、今回の詐欺を思い付いたんだろうな」
「なるほど……」
永田の自宅に着き、インターホンを押すと、今にも倒れそうな、顔面蒼白の永田が震えながら扉を開けた。小牧が永田に手錠を掛ける。野々村はザッと部屋を見回し、モノマネ新人王に輝いた時の片岡のモノマネマスクを見つけて言った。
「木村、片岡のモノマネマスクがあるぞ」
木村はモノマネマスクを手に取り言った。
「事件は全て解決しました」
木村は超一流のモノマネを披露した後、ゆっくり両手をくっつけ、日吉に差し出した。
了
「え~、良いの? 結構かかるでしょう?」
「今回ボーナス良かったから気にしなくても大丈夫」
「ありがとう」
「あっ、ちょっと待って。秀太が話したいって」
「おばあちゃん! 一緒に行くの?」
「うん、うん。おじいちゃんも一緒に行くわ。秀ちゃん、会えるの楽しみにしてるからね」
「やった~! 車でトランプしよう」
「うん、うん。おやつ食べながら行こうか」
「わ~い、ポテチ買ってもらお。あっ、パパが代わってって。じゃあねー」
「は~い、秀ちゃんおやすみ~」
「おやすみ~」
「じゃあ、母さん、また連絡するよ」
「はい、おやすみ」
「おやすみ」
玉枝は電話を切った。
「何だって?」
玉枝の夫、太一が聞いた。
「太郎が温泉旅行に連れていってくれるって」
「そうか、いつもいつもありがたいな」
「ええ、小さい頃から親思いの良い子だわ」
温泉旅行当日
「ごめんなさいね、急に調子悪くなっちゃって」
「しょうがないよ、ただの風邪だろ? まあ、ゆっくり休んでよ」
「行きたかったけど、うつしちゃ悪いから」
「おばあちゃん、また元気になったら遊んでね」
「うん、うん。秀ちゃんゴメンね」
「じゃあ、母さん、行ってきます」
「お義母さんお大事に」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
玉枝(68歳)は27歳の時、同級生であった現在の夫、前川太一と結婚した。程無くして子供を授かり、順風満帆な夫婦生活を送る。夫婦喧嘩などは、ほとんど無かった。1人息子の太郎は真面目で親思い。絵に描いたような幸せな家族。その後、太郎は結婚し、産まれた男の子に秀太と名付けた。今日は楽しみにしていた、温泉旅行に行く予定だったが、当日になって風邪をひいてしまった為、玉枝だけ家に残る事になった。太郎の運転で、嫁の優子、夫の太一、孫の秀太が1泊2日の温泉旅行へ出掛けた。
(はあ、こんな日に風邪をひくなんて……。まだ、朝起きてそんなに時間が経っていないから、多分寝られないわ)
玉枝は風邪を治す為にと横になる。目を瞑るが寝れそうに無い。もし、自分も旅行に行けていたらと頭の中でシミュレーションする。
(行きの車では、孫の秀太とトランプ。でも、秀ちゃんはババ抜きしか出来ないからね。トランプに飽きたら、しりとりになるのかな。温泉施設には秀太が遊べるような遊具はあるのかしら。……ああ、ついてないわ)
玉枝は自分のツキの無さに嫌気がさし、考えるのをやめた。
玉枝はスマホの音で目を覚ました。寝られないと思っていたのに、風邪で体力を奪われているせいか、2時間も眠っていたようだ。電話は太一達からかと思い、スマホを見る。
(知らない番号……。どうしようかしら……)
迷惑電話の可能性もある為、玉枝は電話に出るのをためらったが、10コール以上鳴っているので渋々出た。
「もしもし」
「もしもし、警察です。前川玉枝さんですか?」
「えっ?! 警察?!」
「そうです。前川玉枝さんのお電話で間違い無いですか?」
「はい、そうですけど……」
「ご主人の前川太一さんが交通事故に遭われて重体です」
玉枝は血の気が引くのを感じた。
「今すぐ緑山病院に向かってもらえますか?」
「太郎……前川太郎は無事ですか?」
「後程、病院から連絡が入ると思います。取り敢えず、緑山病院へ向かってもらえますか? 場所は分かりますか?」
「調べて行きます」
「では、失礼します」
警察官と名乗る男性は電話を切った。
(お父さんが重体……。太郎は? 秀ちゃんは?)
玉枝はタクシーを呼び、緑山病院へ向かう。少し眠ったのと、衝撃のニュースで風邪も吹き飛んだようだ。タクシー内で、玉枝は全員の無事を祈る。だが、病院で最悪の事態を知る事になる。
家族全員死亡……。
トラックとの正面衝突だった。ブレーキ痕が無かった為、居眠り運転ではないかと告げられた。トラックドライバーを含め、事故に関係した全員が死亡。可愛かった孫……優しかった1人息子……長年連れ添った夫……気遣いの出来る嫁……。
言われるがままに葬儀をあげたが実感は無い。細かな手続きは全て司法書士にお願いした。憔悴しきり、事故から1週間は魂を抜かれたような生活だった。それでも色々とやる事はある。
息子太郎の家で遺品を整理していると、玉枝は太郎が読んでいた漫画を見つける。最近流行りの転生モノだ。
転生モノとは、主人公が死んで生まれ変わり、違う世界で生活する物語の事。
玉枝も、皆と一緒に死んで生まれ変われないのかと思った。生まれ変わって、もう1度同じ家族でやり直す事が出来たらどれだけ幸せだろう。だが、現実には、それは叶わぬ夢なのだ。
事故から1ヶ月が過ぎた。玉枝は、ようやく少しずつ元気を取り戻せてきた。息子の太郎は、家族旅行が大好きで、玉枝も旅行によく誘われ、事あるごとにその様子をビデオに納め DVD に残していた。
玉枝は、その日の夜も太郎から貰った DVD を見ながら皆の事を思い出し、時には涙を流していた。玉枝は右耳が難聴の為、音量は大きめで聞いている。
皆の映像を見ていると、死んだという事が夢のように思えてくる。何も無かったかのように、「ただいま」と帰って来るのじゃないかとさえ、玉枝は思うようになっていた。
そんな中、窓の外に人影が見えた。暗くて少し見にくいが、小雨の降る中、車庫の屋根を使って男性が雨宿りをしているようだった。玉枝は恐る恐る窓を開けて「こんばんは」と男性に話す。男性は何も言わず、申し訳無さそうに頭を下げた。玉枝は「傘持ってきますね」と告げると、玄関へビニール傘を取りに行き、戻ってきて男性に傘を渡す。
「どうぞ。百均の傘なので返さなくても良いですよ」
「ありがとうございます」
「?!」
玉枝は衝撃を受けた。その男の声は、息子の太郎と全く同じ声なのだ! さらに男性をよく見るとパジャマ姿だった。
「家出……でもされたんですか?」
「……まあ、そんなところです」
太郎そっくりの声を不思議に思っていると、男性は申し訳無さそうに話し出した。
「お母さん、雨宿りをさせてもらっている上で大変恐縮なんですが、タオルをお借りしても良いですか?」
「あ、ごめんなさい。持ってきますね」
玉枝は、男性が話した、お母さんって呼び方があまりに息子太郎とソックリだったので、不思議に思いながら脱衣所へ向かい、タオルを取って戻り、男性へ渡した。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
男性はパジャマの上からタオルで拭く。玉枝は暗闇に慣れてきたのか、男の顔が見えてきた。三十歳前後に見えるその男性の見た目は全く息子とは違う。無精髭をはやし、随分と個性的な顔をしている。だが、声が息子と全く同じだ。玉枝はもう少し話がしたいと思い、質問をしてみた。
「お名前伺っても良いですか?」
「……前川太郎って言います」
「!!」
衝撃! 息子太郎に瓜二つの声、さらに、男性の名前は前川太郎だという。同姓同名なんて偶然は考えられない。
転生モノ……。
玉枝は太郎の魂が目の前の男性を乗っ取って、ここまで来たのかも知れないという誤った解釈をした。もちろん、そんな事はあり得ない。だが、玉枝は太郎達がふとした拍子に帰ってきてくれると願っていたのだ。1パーセント以下の確率でも信じたいという心境だった。他人の家の駐車場で雨宿りをしているパジャマ姿の男性なんて明らかに不審者っぽいが、息子かも知れないと思っている玉枝には怖いという感情は無かった。玉枝は男性に話す。
「温かいスープでも飲んでいきますか?」
「良いんですか?」
「どうぞどうぞ、玄関に回ってください」
「すみません。ありがとうございます」
普通に考えれば有り得ない状況だ。独り暮らしのお婆さんの家に知らない人物を入れるなんて危険過ぎる。
だが、問題無い。もちろん、この人物は、息子の太郎が乗り移っている訳では無いのだが、窃盗や強盗目的でも無い。かといって、ただ単に雨宿りをしていたという訳でも無い。
では、一体何が目的なのか?
この男の目的は隠れる事だった。
誰から?
警察から。
そう、この男は病院から脱走中の殺人犯、木村一郎だ。
殺人犯を家に入れるなんて危なすぎる! と思うかも知れないが、木村は殺人鬼という訳では無い。逆恨みで殺されるかも知れないという恐怖感と、気になったら眠れないという神経質な性格から殺人を犯しただけなので、犯行を繰り返す事は無い。田中舞には恋愛経験の無さから感情的になり、やり過ぎてしまった部分もあったが、元々大人しい性格なのだ。
木村は病院から逃げ出した後、警察をやり過ごす為、他人の家の車庫で身を潜めていたところ、玉枝に声を掛けられたのだ。玉枝が傘を取りに行っている時、大音量のテレビから「お母さん」という声と「太郎」という声が聞こえた為、太郎の声真似をすれば、親近感が湧くかも知れないと考えたのだ。そして、表札の「前川」を見ていたので、前川太郎と名乗ったのだ。まさか、太郎が亡くなっているとは思いもしなかったのだが。
玉枝は玄関にバスタオルを敷き、スリッパを置いて木村に話す。
「どうぞ。靴下も濡れちゃってるでしょう? 脱いじゃってください」
「ありがとうございます」
木村は靴下を脱ぎ、バスタオルで足を拭いた後、バスタオルの上に脱いだ靴下を置き、スリッパを履いた。
「どうぞこちらへ」
玉枝は木村をリビングの椅子へ誘導した。
「ありがとうございます」
「ちょっと待っててくださいね」
玉枝は台所へ向かい、1分程で戻ってきて、マグカップを机の上に置く。
「コーンスープ入れました。インスタントですけど温まりますよ」
「ありがとうございます」
木村はスープを飲む前に、マグカップに両手を当て、雨で冷えた手を温める。
「外は寒かったでしょう? どうされたんですか?」
「……ええっと……」
木村は玉枝と目を合わせた後、目をそらして口ごもった。先程も玉枝から同じ質問をされたので、いきなり聞かれたから答えれないという訳では無い。実は、駐車場で聞かれてからテーブルにつくまでに回答を考えていた。玉枝の言った、家出というワードに乗っかるつもりで、父親と喧嘩して何も考えずに着の身着のままで家を飛び出した、と答えようと考えていた。だが、玉枝があまりに親切なので、この人に嘘はつきたくないと思ったのだ。とは言うものの、本当の事を言うのは、さすがに早すぎる。やっぱり、当分は嘘をつかないと、と考えているうちに、玉枝から助け船が出された。
「あ、大丈夫ですよ。言いたくなければ言わなくて」
「……すみません」
「前川太郎さんって言いましたよね? 私の息子も前川太郎っていうんですよ。奇遇でしょ? しかも、お兄さんと全く同じ声なんです」
「……そうなんですね……」
「だから、親近感が湧いちゃって……。でも、先月亡くなっちゃったんです……」
「えっ?!」
木村は衝撃の事実に驚き玉枝を見る。玉枝は悲しそうな感じは出さず、淡々と話す。
「交通事故でね……。夫と息子とその嫁と孫……。皆死んじゃった……」
「……」
「親思いの自慢の息子だったんですよ……。孫の秀太も1番可愛い時期だったのにねぇ」
「うっ……うっ……」
「?!」
玉枝は木村を見て驚いた。泣いている! 他人の家の不幸話を軽く聞いただけで。
もちろん木村は、この話を聞いて可哀想だと思ったというのもあるのだが、見ず知らずの自分を親切に扱ってくれた事、その人を騙さなければいけない事、殺人を犯した事、愛する人を裏切った事、折れた肋骨の痛み、雨の中を病院から脱走してきた事など、現在の自分の状況も含めて、全てが悲しくなり、涙を流したのだった。
「あらあら、ごめんなさい。悲しい話しちゃって」
「うっ……うっ……」
「家へ帰れない事情があるなら、今日は泊まってくれても良いですよ」
「うっ……うっ……。本当ですか?」
「ええ、お風呂も入ってください。亡くなった主人のパジャマで良ければ使ってください。下着は確か新しいのがあったと思います」
「何から何までありがとうございます」
玉枝は木村の流した涙を見て、息子太郎の魂が乗り移っているという思いが更に強まった。そうで無いにしろ、他人の家の不幸に涙する人物が悪人とは考えないだろう。
木村はこの日から、約3ヶ月間、前川太郎として過ごした。もちろん、太郎の声で。2人は親子のように振る舞った。外出を断る木村にも、玉枝は不信感を抱く素振りも無く、木村に留守番を頼んで買い物へ出掛ける。玉枝は時折、木村を置いて友人と出掛けたりもしたが、木村の話は一切しなかった。警察に電話されるかも知れないし、何より自分の事を変だと思われてしまうからだ。
玉枝は年金と家族の保険金でお金には困っていないので、働かない木村に何も言わず、毎日、食事を与えてくれた。
一緒にテレビを見て笑う毎日。
一緒に DVD を見て悲しむ毎日。
一緒に食事をして喜ぶ毎日。
木村は疎遠になっていた実の母親よりも、玉枝の事を母親のように感じていた。そんな生活を3ヶ月も続けると、木村の心境は徐々に変化していく。そして、とある月曜日の朝、遂に木村は一大決心をしたのだった。
「お母さん、話があるんだ」
「どうしたの、太郎ちゃん。かしこまって……」
「お母さん、ビックリしないで聞いて欲しい。すぐには理解出来ないと思うけど、俺は殺人で指名手配されている木村一郎なんだ。今まで嘘をついていてごめん」
木村は深々と頭を下げた。だが、玉枝から何の反応も返ってこないので、顔を上げ、玉枝を見るが驚いた様子は無い。
「お母さん、ビックリしないのか?」
「ええ、だって……知っていたから……」
「!!」
木村は衝撃を受けた。自分の事を殺人犯だと知っていて一緒に生活してくれていたと言うのだから。
もちろん、玉枝は最初から分かっていたという訳では無い。木村が家に来た翌日に警察官が来て、指名手配犯の木村が脱走していると聞かされたのだ。もちろん、知らないと答えた。玉枝は、それでも息子の太郎が、殺人犯木村の身体を乗っ取って自分に接している可能性に期待したのだ。だが、1週間も生活すれば、徐々に違うということが分かってくる。さらに、木村一郎の事を調べ、声真似の天才である事を知り、太郎の声真似をしているのだと理解した。だからと言って、もう既に木村は玉枝の新しい家族のようなものだ。今は2人目の息子として接している。
「今までありがとう……。今までごめんなさい……。俺、出頭するよ」
「うん、身体に気を付けてね。面会にも行くから」
玉枝は木村が改心してくれた喜びと、息子が捕まる悲しさという、反対の感情が合わさって涙を流した。
木村は玉枝の家から電話を掛ける。玉枝に迷惑が掛かるので、公衆電話を探して、そこから掛けようかとも考えたが、病院から抜け出した後の事を、全て正直に話すつもりなので、いずれ玉枝の事もはなさなければならなくなると思い、玉枝の家から電話を掛けたのだった。
木村は数日前から玉枝への嘘を付いたという告白と出頭を考えていた。普通に警察署へ出向いても良いのだが、何故か、日吉に電話するのが事件の終結に最も適していると思えたのだ。
「もしもし。……お久しぶりです、日吉さん」
「どなたでしょうか?」
「……木村です」
「えっ?!」
「あなたに肋骨を折られた殺人犯の木村です。色々と御迷惑をお掛けしました。色々考えた結果、出頭しようと思いまして」
「どういう風の吹き回しだ? 今どこにいるんだ?」
「前川玉枝さんって方の家から電話を掛けています。住所は×××-×××です」
日吉は当然警戒する。前川玉枝を人質にとったのだろうかと考えていた。木村には何度も騙されているのだから。だが、今回は違う。木村は騙すつもりなど毛頭無い。玉枝と過ごした日々で改心したのだ。純粋に、せめて日吉の手柄にしたいと考えていた。
30分後、日吉と小牧と野々村が勢揃いで木村のもとへやって来た。日吉の警戒に反し、木村はゆっくり両手をくっつけ、差し出した。その様子を見て、野々村が意外な事を言う。
「木村さん、出頭する前に、別の殺人犯逮捕に一役買ってくれませんか?」
「どういう事でしょうか?」
「一昨日、近くで殺人事件があったのは御存知ですよね?」
「はい、ニュースで見ました」
「その被害者の声真似で、犯人最有力の人物と電話をして欲しいんです」
そう、永田が安藤の幽霊だと勘違いし、自白に導いた立役者は木村だったのだ。
「木村、名演技だったな」
「皮肉なものですね、米山さんに騙されて収録した、偽ラジオドラマの演技力がこんな形で生かされるなんて……」
「そう言えば、モノマネ新人王の時に永田は、木村と勝負がしたいとか言っていたらしいな。夢が叶って良かったじゃないか。逮捕されるのも本望だろう」
全員、パトカーに乗り込み、永田の自宅へ向かう。
日吉は運転しながら野々村に尋ねる。
「野々村さん、そう言えば永田がモノマネする、関本の声ってそんなに似ていないのに、安藤を騙した時の声はそっくりだったじゃないですか? どういう事ですか?」
「スマホから聞こえる声というのは、その人の声じゃ無いのさ」
「は? じゃあ誰の声なんですか?」
「機械の音声なのさ」
「機械?」
「ああ、その人が話した声に最も近い機械の音に変えて伝える方法をとっているのさ」
「瞬時にそんな事が出来るんですか?」
「ああ、技術の進歩ってのは凄い。俺も専門家じゃ無いんで詳しくは知らないんだがな。だから、普段の声がそこまで似ていなくても、スマホが似ていると判断すれば近い音に変えられるって訳だ。とは言うものの、上手なモノマネタレントだからと言って、本人と同じ声に変換されるって訳でも無いらしい。逆に、あんまり似ていなくても、親子とかは同じ様な声に変換されやすいそうだ。永田は恐らくその辺りの事を知っていて、スマホを通した関本の声真似が関本本人の声にそっくりだという事に気が付いて、今回の詐欺を思い付いたんだろうな」
「なるほど……」
永田の自宅に着き、インターホンを押すと、今にも倒れそうな、顔面蒼白の永田が震えながら扉を開けた。小牧が永田に手錠を掛ける。野々村はザッと部屋を見回し、モノマネ新人王に輝いた時の片岡のモノマネマスクを見つけて言った。
「木村、片岡のモノマネマスクがあるぞ」
木村はモノマネマスクを手に取り言った。
「事件は全て解決しました」
木村は超一流のモノマネを披露した後、ゆっくり両手をくっつけ、日吉に差し出した。
了
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