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安藤大翔
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「モノマネ新人王チャンピオンは……片岡刑事のモノマネをした、永田光彦さんです!」
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「ありがとうございます!」
「審査員の関本さん、どうでしたか?」
司会者が関本に評価を聞いた。
「いやあ、雰囲気がソックリやったんちゃうかな? ガハハ」
「いやあ、ありがとう。ガハハ」
永田は関本のモノマネをして言った。
「やるやないか、ガハハ」
「審査委員長の森田さんはどうですか?」
「素晴らしかったです。そっくりでしたね」
「ありがとうございます。このモノマネマスクは前回チャンピオン、木村さんのパクりなんですけどね」
「いやあ、でも、素晴らしかったですよ。後継者争い1番乗りですね」
「そうですね。いつか、木村さんと勝負したいです」
「では、最後に一言」
永田はモノマネマスクをつけて言う。
「事件は全て解決しました」
ワハハ! ワー! ワー!
「おめでとうございました!」
永田光彦は今流行りの刑事物ドラマの中年主人公、片岡刑事の決め台詞「事件は全て解決しました」とモノマネマスクを駆使して笑いをとり、チャンピオンに輝いた。永田は誰の声真似でも、少し練習すればソコソコのレベルで披露する事が出来た。だが、今回は片岡刑事のモノマネ1本で勝負し、結果を出した。2番煎じとは言え、モノマネマスクブームに乗ったのが成功したのだろう。魚のように離れた目と、脂性の肌に濃い髭の為、今まで燻っていたが、モノマネマスク使用で化けた。
前回のモノマネ新人王チャンピオン木村一郎は、婦女暴行未遂と殺人容疑で逮捕されたが、現在は病院から脱走中……。まだ捕まっていない。
翌日、警察署
日吉は小牧に話し掛ける。
「小牧さん。昨日のモノマネ見ました? 木村の真似してモノマネマスクを使った奴が新人王取りましたよ」
「ああ、見たよ。永田だったっけ? 実は、木村が整形しているんじゃないのか?」
「まあ、どちらもブ男の部類ですけどね」
「背格好も似ているじゃないか。聞いて直ぐ声真似出来る技を持ってる奴が、そんなポンポン出てくるのか?」
「でも、モノマネのレベルが違いますよ。木村は超1流。永田は雰囲気こそ似ていますけど2流ですよ」
「日吉は木村ファンだからな」
「いやいや、客観論ですよ!」
「だが、モノマネのレベルを上げる事は出来ないが、下げる事は出来るだろう? 木村がバレないように、わざと下手にモノマネをしてる事も考えられないか?」
「色々無理でしょう? 逃走中の指名手配犯が、堂々とテレビに出るとか、絶対バレますよね?」
「まあな。ただ、木村には何度も欺かれているからな……。整形して戸籍を乗っ取っていたら……いや、さすがに無理か……」
「しかし、木村の奴、3ヶ月も見つからないって凄いですね」
「前代未聞だな……。無一文で脱走したら、だいたい防犯カメラに万引きするところを撮られて、逃走経路がバレたりするもんなんだが……」
「公園の水と、どこかの畑の野菜でも食べて生き抜いているんですかね?」
「最有力とされていた、田中舞が居る『桜の花』に近づけば簡単だったんだがな」
警察は当然、家族や親族、知り合いの家も警戒していたが、木村は現れなかった。
「小牧さん、1度、舞さんにも確認しておきませんか? 木村を見る事は無くても、何か気付いている事があるかもしれませんし……」
「お前……舞さんと話したいだけじゃないだろうな?」
「ち、違いますよ! 舞さんは結構賢いから、何かヒントになると思ってですね……」
「分かった分かった。取り敢えず行ってみるか」
「はい。では『桜の花』3時で」
午後2時55分、「桜の花」前
小牧と日吉は営業の邪魔をしないよう、「桜の花」から50メートル程離れて、入り口を見ながら待機した。すると、エプロン姿の女性が出てきた。恐らく舞だろう。
「小牧さん、行きましょうか」
「ああ」
日吉が先導し、「桜の花」へ向かう。舞が2人に気付いたようだ。
「あっ、日吉さん、小牧さん」
「舞さん、お久しぶりです」
日吉が返し、小牧は会釈だけした。
「どうかされました? 木村さんの事ですか?」
「そうなんです。中で話しても構いませんか?」
「どうぞどうぞ」
舞は先導して店の中に入った。店内では舞の母親が食器を片付けていた。
「お仕事中申し訳無いです」
「あら、確か刑事さんですよね。お世話になってます」
木村が病院から逃げ出した後、警察は「桜の花」の周りに厳戒態勢を敷いた。もちろん、舞を護る為だ。当然、舞の母親もその辺りを理解している。
「どうぞ、座ってください」
舞は入り口近くのテーブルに座るよう促した。
「ありがとうございます」
3人は椅子に座った。小牧が話し出す。
「舞さん、特にお変わり無いですか?」
「ええ、おかげ様で。ボディーガードがたくさんいますので、ふふふ」
「もちろん、木村から連絡が入ったりは無いでしょうけど、何処に潜んでいるか分かりませんので注意してください」
「こんな事言ったらダメですけど、木村さんも凄いですね。3ヶ月も見つからないって」
「申し訳無いです」
「いえ、そういう意味じゃなくて……。昔、お2人から逃げた時の事を思い出しちゃって。あの時は、私が居なかったら、どうすれば良いか分からないって感じでオドオドしてたのにね」
その時、舞の母親がお茶を持ってきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「刑事さん達も大変ですよね」
「いえいえ、木村を逃がしたのは私達のミスですから」
「舞を宜しくお願いします」
母親は礼をして仕事の後片付けに戻った。小牧は話を続ける。
「肋骨が折れてますし、あれだけ目立つ顔なんで、直ぐに見つかると思っていたんですが……」
「そうですよね、私もそう思っていました」
日吉が2人に割って入る。
「でも、絶対、最終目標は舞さんですよ」
「日吉っ!」
小牧は舞に心配を掛けるような事を言うなとばかりに日吉を叱責した。
「いや、危害を加えるとかじゃなくてですね、病院を逃げ出す理由って舞さんと話をしたいからだと思うんですよ」
日吉は焦りながら弁解する。
「私、違うと思うんです」
「えっ?!」
「木村さんって、思い込みが凄く激しくて……。チャンスがあったら、即行動しなきゃと思っちゃうタイプだと思うんです。お2人に詐欺師扱いされて、任意同行を求められた時もそうだったじゃないですか。自分に非は無くて、逃げたら損をするだけなのに、逃げるチャンスがあったから衝動的に逃げ出したでしょう? 多分、病院でも同じで、逃げるチャンスがあったから衝動的に逃げ出しただけだと思うんです。だから、逃げた事に深い意味は無いんじゃないかなぁって思います」
「なるほど」
「でも、逃げ出したからには私と話をしに来るかもしれないんで、ボディーガードお願いしますね、ふふふ」
「承知しました!」
日吉は舞に敬礼して答えた。小牧が話す。
「では舞さん、今日はお時間とらせてすみませんでした」
「いえいえ、こちらこそ」
小牧はお茶を半分程飲んだ。日吉はそれを見て、お茶を一気に飲み干した。
「それでは失礼します」
小牧と日吉は「桜の花」を後にした。
テレビ局
「関本さん、お疲れ様でした」
ディレクターが関本に挨拶した。
「お疲れさん。まあ、また呼んでや。ガハハ」
「お疲れ様でした」
「おう、お疲れ。安藤、今日はこれで終わりやったよな?」
「はい。ホテルに御案内します」
「その前に今日の新人王チャンピオン、永田の連絡先を聞いといてくれ。アイツを後々、うちのイベントに呼ぶかも知れん」
「承知致しました」
「そうそう、言うの忘れとったわ。株式会社ラスピーに2,000万円振り込んどいてくれるか?」
「承知致しました」
関本多朗は株式会社エスソースの代表取締役。恰幅の良い体格に、口髭と顎髭を少し蓄え、白髪混じりの長めの髪をオールバックにして、関西人丸出しの派手なファッションを好む。
関本は根っからのギャンブラーで、あらゆるギャンブルに負け続けてきた。どうせ破産するならと、色んな手段で金を借り、あるアパレル企業に絞り、株を買いまくった。その株を担保にして、信用取引でさらに株を買う。普通、こんなヤケクソが成功する訳が無いのだが、それが何と大当たり。だが、完全なるまぐれ当たりという訳では無い。関本は、そのアパレル企業が成功すると読んでいた。関本が目をつけた服の素材は「フリース」。今でこそ知っている人は多いが、フリースとはペットボトルと同じ素材から作られた、保温性が高く、軽量で、肌触りが良く、洗濯も可能な生地だ。当時、フリースは値段がやや高く、庶民には手が出せなかった為、一部の人しか着ていなかったのだが、あるアパレル企業が安く製造することに成功。そして、安価で販売を開始した。「これは売れる」と確信した関本は、その企業の株を全力で買ったという訳だ。
とにかく関本は富豪になった。現在、総資産は100億円強。とは言うものの、株による資産なので、借金も10億円は下らない。高利子の借金は返済し終えているが、銀行等の低利子の借金は大量にある。
関本の部下、安藤大翔は、関本と真逆の性格で、ギャンブル等は一切しない。色白で、頬が痩ける程細く、ギョロっとした目をしているが、鼻はスッと高く、上品な口元で、女性にはモテる方だ。1流大学を卒業後、1流企業に就職する。株に興味を持ち、しっかりと株の勉強をした後、株を購入する決意をした。関本とは違い、自分の貯金全額の200万円でローリスクローリターンの企業の株を買った。1流企業の株は乱高下が少ない。だが、そんな矢先、安藤が買った企業の若社長が、会社の金を使い込んでいたのがバレた。海外のカジノで大敗したのだと言う。その額なんと数10億。株価は大暴落した。
安藤は自分のツキの無さを痛感した。借金こそ背負わなかったものの、今までの貯金の半分以上を失った。
そんな時、あるイベントで関本と出会う。
関本は株での成功の話を、安藤は株での失敗の話を言い合い意気投合する。関本は安藤の株の知識と真面目な性格に興味を持ち、安藤は関本のツキと大胆な性格に興味を持った。
関本は自分の秘書にと安藤を誘った。現在の給料の倍額でのヘッドハンティングだ。安藤にとっては、倍額の給料と言えど、安定した1流企業からの転職には勇気が要ったが、金銭面より、関本の傍で働ける事の方に興味を持ち、当時働いていた1流企業を退職した。
関本は、安藤をファンドマネジャー(株の運用を行なう専門家)として運用を任せようと期待したのだが、安藤は自分が失敗している事を理由に断った。関本は他のファンドマネジャーにも数人依頼しているので、その人達の評価を安藤に任せる事にした。
関本は関西人気質の大胆な性格と人柄が評価され、テレビ等のメディアに取り上げられ、現在はタレント業がメインになっていたので、株の運用のほぼ全てをファンドマネジャーに運用させるように考えていた。安藤は、関本のタレント業のマネージャーと、ファンドマネジャー管理が仕事になっている。
永田の楽屋前
コンコンコン
「はい」
安藤はドア越しに挨拶する。
「すみません。私、関本多朗の秘書兼マネージャーをしております安藤と申します」
「どうぞ」
「失礼します」
ガチャ……バタン
安藤は一礼をして楽屋内に入った。
「突然の訪問申し訳ありません。今日の永田さんの御活躍を拝見させて頂き、今後、弊社のイベントに来て頂くかもしれないと思い、連絡先を伺いに参りました」
「御丁寧にありがとうございます。私も関本さんとは一度、お話をしたいと思っていたんですよ。これから、タレント事務所との交渉がありますので、後日、連絡させていただきます」
「では……」
安藤は名刺を渡す。
「ありがとうございます。一応、今掛けます」
永田はスマホを取り出し、安藤の電話番号を打ち込んだ。
♪♪♪~
「登録しておきます」
「宜しくお願いします」
翌日午後7時、某高級レストランの個室
「……と言う事なんです」
「ガハハ、永田さんはなかなかおもろいな」
「ありがとうございます」
「誰のモノマネでも出来るってのは、ホンマ便利やな」
「そうなんですが……ちょっとモノマネマスク使用に問題があるようで……」
「ん?」
「木村が脱走しているじゃないですか。その影響もあって、モノマネマスクの使用を控えた方が良いって空気なんですよ」
「永田さんやったら、そんなもん使わんでも大丈夫ちゃうか?」
「うーん……。私、顔があんまりなんで、モノマネマスクが無いと雰囲気が半減するんですよね……」
安藤は思った。
(確かに、永田さんは雰囲気こそよく似ているが、声はそこまで似ていない……。モノマネマスクが無いと雰囲気が出ず、声が似ていない、という事がバレてしまうだろう……)
「永田さんは株とかやっとるか?」
「いえ、今のところ……。興味はあるので、お金が入ればやりたいなと思ってはいるんですけど……」
「ガハハ、そうかそうか。どうや? ワイの金でちょっと運営してみんか?」
「と言いますと?」
「100万円渡すから好きな株を買うんや。儲けた利益は折半で、最悪負けてしもた場合でも金はいらん」
「良いんですか?」
「モチロンや。優勝祝いやと思ってくれたらエエわ」
「ありがとうございます」
「もちろん無利子やし、永久に続けるも良し、100万円返してやめるも良しや」
関本は気に入った人物にポケットマネーから100万円を渡している。1人100万円程度なら贈与税等のややこしい問題にはならない。ただ、同じ年にまた100万円を渡したり、受け取った人が他の人から10万円以上貰ったりすると厳密には贈与税が掛かる。まあ、そんな細かい事で税務署が動くような事は無いが……。
ポケットマネーなので会社の資金では無い。だから、安藤が覚えておく必要は無いのだが、一応、自分の知る範囲で誰に渡したかを記録している。だが、利益の半分を関本に渡したかどうかは、安藤には分からない。関本の話では、全員が利益の半分を出会った時に渡してくると言う。もちろん、真面目な人物もいるとは思うが、そうでない人物でも、数万円の事なので、関本との関係を繋げておく方がメリットは多いからだろう。今のところ、100万円全額を返してきた者は居ないらしい。
「今日はありがとうございました」
「まあ、困った事があったら言うてきいや。何とかしたるわ、ガハハ」
「永田さん、これから忙しくなると思いますが、お身体に気を付けてください」
「ありがとうございます。これからも宜しくお願いします」
その後、3人で何度も会食を行うようになった。永田は関本と親しくなり、安藤抜きでも関本と会うようになった。
当然の事ながら、安藤、関本、永田だけでなく、一般人誰でも、モノマネ新人王のチャンピオンとなった、永田の仕事が忙しくなる事を容易に予想出来た。だが、そうはならない。永田も言っていたが、木村が脱走した影響で、モノマネマスクの使用を自粛させられたのだ。モノマネマスク無しでメディアに出ることも考えられたのだが、事務所の方針により、木村が捕まるか、国民の反響が薄まってからとなったようだ。それまでは営業のみ。地方の営業ならば、モノマネマスクが使用出来る。
だがそんな中、衝撃のニュースが流れた。
『モノマネタレントの永田光彦さん、反社会勢力から金銭授受』
永田は営業を行なった相手が反社会勢力だと知らなかったのだが、この時代、コンプライアンスを重視する流れの為、半年以上は活動を自粛せざるを得ないだろう。
(永田さん……運が無かったな……)
安藤は、今回の事件での永田の運の無さを、過去の自分の運の無さに重ね同情した。
そんな事を思っていると安藤のスマホが鳴った。ディスプレイに関本の名前が表示されている。
(関本さんか……。永田さんの事かな?)
「お疲れ様です」
「ああ、お疲れ」
「どうかされました?」
「ちょっと振り込みをお願いできるか?」
「かしこまりました」
「株式会社ルートエルへ1億円で」
「えっ!? 1億円ですか?」
「そうや、宜しくな」
そう告げるや否や、直ぐに電話を切られた。
安藤は疑問を抱いた。関本はいつも、新規のファンドマネジャーには1,000万から契約し、1年毎、信用出来れば倍々になっていく方針をとっていた。現在、10社と契約していて、最も預ける金額が高い会社でも、3億2千万円での契約だ。1億契約になるには4、5年かかる。
(このルートエルって会社は信用できるのか? 取り敢えず調べる必要があるな。経営やタレント活動が順調だから1億スタートに変えたのか?)
安藤は自分の株で失敗してから、決断は全く行わない。違うんじゃないか? と疑問を持っても、全て関本の言われた通りに行う。今までもそうしてきた。それで、今のところ全て順調に進んでいる。ひとえに関本の人柄によるものが大きいのだろう。エスソースは関本が社長だし、そもそも、決断する者が複数いるとうまくいかない。
役人多くして事絶えず、ということわざがある。リーダーは1人の方が良い。
まあ、1億の詐欺にあったところで、エスソースが傾く程のダメージは無いし、責任は全て関本だ。そんな事は言っていないと水掛け論にならないように、予め、安藤はスマホの録音アプリをインストールしている。だからと言って、秘書なのでノータッチとは当然ならない。
安藤はインターネットで株式会社ルートエルを調べたところホームページがあり、電話番号も載っていたので直ぐに電話を掛けた。
「お電話ありがとうございます。ルートエルです」
事務員が男性の声だったので、珍しいなと思いながら話す。
「もしもし、エスソースの安藤と申します」
「いつもお世話になっております」
「お世話になります。弊社の関本から、御社に振り込みの依頼がありまして……」
「伺っております。1億円ですね。お振り込みが確認出来次第、受領書を送付致します」
「承知しました。それでは、宜しくお願いします」
「ありがとうございます。小松が承りました」
「失礼します」
安藤は電話を切った。問題無さそうだと納得し、その後、いつものように銀行で振り込みを済ませた。
パチパチパチパチパチパチ
「ありがとうございます!」
「審査員の関本さん、どうでしたか?」
司会者が関本に評価を聞いた。
「いやあ、雰囲気がソックリやったんちゃうかな? ガハハ」
「いやあ、ありがとう。ガハハ」
永田は関本のモノマネをして言った。
「やるやないか、ガハハ」
「審査委員長の森田さんはどうですか?」
「素晴らしかったです。そっくりでしたね」
「ありがとうございます。このモノマネマスクは前回チャンピオン、木村さんのパクりなんですけどね」
「いやあ、でも、素晴らしかったですよ。後継者争い1番乗りですね」
「そうですね。いつか、木村さんと勝負したいです」
「では、最後に一言」
永田はモノマネマスクをつけて言う。
「事件は全て解決しました」
ワハハ! ワー! ワー!
「おめでとうございました!」
永田光彦は今流行りの刑事物ドラマの中年主人公、片岡刑事の決め台詞「事件は全て解決しました」とモノマネマスクを駆使して笑いをとり、チャンピオンに輝いた。永田は誰の声真似でも、少し練習すればソコソコのレベルで披露する事が出来た。だが、今回は片岡刑事のモノマネ1本で勝負し、結果を出した。2番煎じとは言え、モノマネマスクブームに乗ったのが成功したのだろう。魚のように離れた目と、脂性の肌に濃い髭の為、今まで燻っていたが、モノマネマスク使用で化けた。
前回のモノマネ新人王チャンピオン木村一郎は、婦女暴行未遂と殺人容疑で逮捕されたが、現在は病院から脱走中……。まだ捕まっていない。
翌日、警察署
日吉は小牧に話し掛ける。
「小牧さん。昨日のモノマネ見ました? 木村の真似してモノマネマスクを使った奴が新人王取りましたよ」
「ああ、見たよ。永田だったっけ? 実は、木村が整形しているんじゃないのか?」
「まあ、どちらもブ男の部類ですけどね」
「背格好も似ているじゃないか。聞いて直ぐ声真似出来る技を持ってる奴が、そんなポンポン出てくるのか?」
「でも、モノマネのレベルが違いますよ。木村は超1流。永田は雰囲気こそ似ていますけど2流ですよ」
「日吉は木村ファンだからな」
「いやいや、客観論ですよ!」
「だが、モノマネのレベルを上げる事は出来ないが、下げる事は出来るだろう? 木村がバレないように、わざと下手にモノマネをしてる事も考えられないか?」
「色々無理でしょう? 逃走中の指名手配犯が、堂々とテレビに出るとか、絶対バレますよね?」
「まあな。ただ、木村には何度も欺かれているからな……。整形して戸籍を乗っ取っていたら……いや、さすがに無理か……」
「しかし、木村の奴、3ヶ月も見つからないって凄いですね」
「前代未聞だな……。無一文で脱走したら、だいたい防犯カメラに万引きするところを撮られて、逃走経路がバレたりするもんなんだが……」
「公園の水と、どこかの畑の野菜でも食べて生き抜いているんですかね?」
「最有力とされていた、田中舞が居る『桜の花』に近づけば簡単だったんだがな」
警察は当然、家族や親族、知り合いの家も警戒していたが、木村は現れなかった。
「小牧さん、1度、舞さんにも確認しておきませんか? 木村を見る事は無くても、何か気付いている事があるかもしれませんし……」
「お前……舞さんと話したいだけじゃないだろうな?」
「ち、違いますよ! 舞さんは結構賢いから、何かヒントになると思ってですね……」
「分かった分かった。取り敢えず行ってみるか」
「はい。では『桜の花』3時で」
午後2時55分、「桜の花」前
小牧と日吉は営業の邪魔をしないよう、「桜の花」から50メートル程離れて、入り口を見ながら待機した。すると、エプロン姿の女性が出てきた。恐らく舞だろう。
「小牧さん、行きましょうか」
「ああ」
日吉が先導し、「桜の花」へ向かう。舞が2人に気付いたようだ。
「あっ、日吉さん、小牧さん」
「舞さん、お久しぶりです」
日吉が返し、小牧は会釈だけした。
「どうかされました? 木村さんの事ですか?」
「そうなんです。中で話しても構いませんか?」
「どうぞどうぞ」
舞は先導して店の中に入った。店内では舞の母親が食器を片付けていた。
「お仕事中申し訳無いです」
「あら、確か刑事さんですよね。お世話になってます」
木村が病院から逃げ出した後、警察は「桜の花」の周りに厳戒態勢を敷いた。もちろん、舞を護る為だ。当然、舞の母親もその辺りを理解している。
「どうぞ、座ってください」
舞は入り口近くのテーブルに座るよう促した。
「ありがとうございます」
3人は椅子に座った。小牧が話し出す。
「舞さん、特にお変わり無いですか?」
「ええ、おかげ様で。ボディーガードがたくさんいますので、ふふふ」
「もちろん、木村から連絡が入ったりは無いでしょうけど、何処に潜んでいるか分かりませんので注意してください」
「こんな事言ったらダメですけど、木村さんも凄いですね。3ヶ月も見つからないって」
「申し訳無いです」
「いえ、そういう意味じゃなくて……。昔、お2人から逃げた時の事を思い出しちゃって。あの時は、私が居なかったら、どうすれば良いか分からないって感じでオドオドしてたのにね」
その時、舞の母親がお茶を持ってきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「刑事さん達も大変ですよね」
「いえいえ、木村を逃がしたのは私達のミスですから」
「舞を宜しくお願いします」
母親は礼をして仕事の後片付けに戻った。小牧は話を続ける。
「肋骨が折れてますし、あれだけ目立つ顔なんで、直ぐに見つかると思っていたんですが……」
「そうですよね、私もそう思っていました」
日吉が2人に割って入る。
「でも、絶対、最終目標は舞さんですよ」
「日吉っ!」
小牧は舞に心配を掛けるような事を言うなとばかりに日吉を叱責した。
「いや、危害を加えるとかじゃなくてですね、病院を逃げ出す理由って舞さんと話をしたいからだと思うんですよ」
日吉は焦りながら弁解する。
「私、違うと思うんです」
「えっ?!」
「木村さんって、思い込みが凄く激しくて……。チャンスがあったら、即行動しなきゃと思っちゃうタイプだと思うんです。お2人に詐欺師扱いされて、任意同行を求められた時もそうだったじゃないですか。自分に非は無くて、逃げたら損をするだけなのに、逃げるチャンスがあったから衝動的に逃げ出したでしょう? 多分、病院でも同じで、逃げるチャンスがあったから衝動的に逃げ出しただけだと思うんです。だから、逃げた事に深い意味は無いんじゃないかなぁって思います」
「なるほど」
「でも、逃げ出したからには私と話をしに来るかもしれないんで、ボディーガードお願いしますね、ふふふ」
「承知しました!」
日吉は舞に敬礼して答えた。小牧が話す。
「では舞さん、今日はお時間とらせてすみませんでした」
「いえいえ、こちらこそ」
小牧はお茶を半分程飲んだ。日吉はそれを見て、お茶を一気に飲み干した。
「それでは失礼します」
小牧と日吉は「桜の花」を後にした。
テレビ局
「関本さん、お疲れ様でした」
ディレクターが関本に挨拶した。
「お疲れさん。まあ、また呼んでや。ガハハ」
「お疲れ様でした」
「おう、お疲れ。安藤、今日はこれで終わりやったよな?」
「はい。ホテルに御案内します」
「その前に今日の新人王チャンピオン、永田の連絡先を聞いといてくれ。アイツを後々、うちのイベントに呼ぶかも知れん」
「承知致しました」
「そうそう、言うの忘れとったわ。株式会社ラスピーに2,000万円振り込んどいてくれるか?」
「承知致しました」
関本多朗は株式会社エスソースの代表取締役。恰幅の良い体格に、口髭と顎髭を少し蓄え、白髪混じりの長めの髪をオールバックにして、関西人丸出しの派手なファッションを好む。
関本は根っからのギャンブラーで、あらゆるギャンブルに負け続けてきた。どうせ破産するならと、色んな手段で金を借り、あるアパレル企業に絞り、株を買いまくった。その株を担保にして、信用取引でさらに株を買う。普通、こんなヤケクソが成功する訳が無いのだが、それが何と大当たり。だが、完全なるまぐれ当たりという訳では無い。関本は、そのアパレル企業が成功すると読んでいた。関本が目をつけた服の素材は「フリース」。今でこそ知っている人は多いが、フリースとはペットボトルと同じ素材から作られた、保温性が高く、軽量で、肌触りが良く、洗濯も可能な生地だ。当時、フリースは値段がやや高く、庶民には手が出せなかった為、一部の人しか着ていなかったのだが、あるアパレル企業が安く製造することに成功。そして、安価で販売を開始した。「これは売れる」と確信した関本は、その企業の株を全力で買ったという訳だ。
とにかく関本は富豪になった。現在、総資産は100億円強。とは言うものの、株による資産なので、借金も10億円は下らない。高利子の借金は返済し終えているが、銀行等の低利子の借金は大量にある。
関本の部下、安藤大翔は、関本と真逆の性格で、ギャンブル等は一切しない。色白で、頬が痩ける程細く、ギョロっとした目をしているが、鼻はスッと高く、上品な口元で、女性にはモテる方だ。1流大学を卒業後、1流企業に就職する。株に興味を持ち、しっかりと株の勉強をした後、株を購入する決意をした。関本とは違い、自分の貯金全額の200万円でローリスクローリターンの企業の株を買った。1流企業の株は乱高下が少ない。だが、そんな矢先、安藤が買った企業の若社長が、会社の金を使い込んでいたのがバレた。海外のカジノで大敗したのだと言う。その額なんと数10億。株価は大暴落した。
安藤は自分のツキの無さを痛感した。借金こそ背負わなかったものの、今までの貯金の半分以上を失った。
そんな時、あるイベントで関本と出会う。
関本は株での成功の話を、安藤は株での失敗の話を言い合い意気投合する。関本は安藤の株の知識と真面目な性格に興味を持ち、安藤は関本のツキと大胆な性格に興味を持った。
関本は自分の秘書にと安藤を誘った。現在の給料の倍額でのヘッドハンティングだ。安藤にとっては、倍額の給料と言えど、安定した1流企業からの転職には勇気が要ったが、金銭面より、関本の傍で働ける事の方に興味を持ち、当時働いていた1流企業を退職した。
関本は、安藤をファンドマネジャー(株の運用を行なう専門家)として運用を任せようと期待したのだが、安藤は自分が失敗している事を理由に断った。関本は他のファンドマネジャーにも数人依頼しているので、その人達の評価を安藤に任せる事にした。
関本は関西人気質の大胆な性格と人柄が評価され、テレビ等のメディアに取り上げられ、現在はタレント業がメインになっていたので、株の運用のほぼ全てをファンドマネジャーに運用させるように考えていた。安藤は、関本のタレント業のマネージャーと、ファンドマネジャー管理が仕事になっている。
永田の楽屋前
コンコンコン
「はい」
安藤はドア越しに挨拶する。
「すみません。私、関本多朗の秘書兼マネージャーをしております安藤と申します」
「どうぞ」
「失礼します」
ガチャ……バタン
安藤は一礼をして楽屋内に入った。
「突然の訪問申し訳ありません。今日の永田さんの御活躍を拝見させて頂き、今後、弊社のイベントに来て頂くかもしれないと思い、連絡先を伺いに参りました」
「御丁寧にありがとうございます。私も関本さんとは一度、お話をしたいと思っていたんですよ。これから、タレント事務所との交渉がありますので、後日、連絡させていただきます」
「では……」
安藤は名刺を渡す。
「ありがとうございます。一応、今掛けます」
永田はスマホを取り出し、安藤の電話番号を打ち込んだ。
♪♪♪~
「登録しておきます」
「宜しくお願いします」
翌日午後7時、某高級レストランの個室
「……と言う事なんです」
「ガハハ、永田さんはなかなかおもろいな」
「ありがとうございます」
「誰のモノマネでも出来るってのは、ホンマ便利やな」
「そうなんですが……ちょっとモノマネマスク使用に問題があるようで……」
「ん?」
「木村が脱走しているじゃないですか。その影響もあって、モノマネマスクの使用を控えた方が良いって空気なんですよ」
「永田さんやったら、そんなもん使わんでも大丈夫ちゃうか?」
「うーん……。私、顔があんまりなんで、モノマネマスクが無いと雰囲気が半減するんですよね……」
安藤は思った。
(確かに、永田さんは雰囲気こそよく似ているが、声はそこまで似ていない……。モノマネマスクが無いと雰囲気が出ず、声が似ていない、という事がバレてしまうだろう……)
「永田さんは株とかやっとるか?」
「いえ、今のところ……。興味はあるので、お金が入ればやりたいなと思ってはいるんですけど……」
「ガハハ、そうかそうか。どうや? ワイの金でちょっと運営してみんか?」
「と言いますと?」
「100万円渡すから好きな株を買うんや。儲けた利益は折半で、最悪負けてしもた場合でも金はいらん」
「良いんですか?」
「モチロンや。優勝祝いやと思ってくれたらエエわ」
「ありがとうございます」
「もちろん無利子やし、永久に続けるも良し、100万円返してやめるも良しや」
関本は気に入った人物にポケットマネーから100万円を渡している。1人100万円程度なら贈与税等のややこしい問題にはならない。ただ、同じ年にまた100万円を渡したり、受け取った人が他の人から10万円以上貰ったりすると厳密には贈与税が掛かる。まあ、そんな細かい事で税務署が動くような事は無いが……。
ポケットマネーなので会社の資金では無い。だから、安藤が覚えておく必要は無いのだが、一応、自分の知る範囲で誰に渡したかを記録している。だが、利益の半分を関本に渡したかどうかは、安藤には分からない。関本の話では、全員が利益の半分を出会った時に渡してくると言う。もちろん、真面目な人物もいるとは思うが、そうでない人物でも、数万円の事なので、関本との関係を繋げておく方がメリットは多いからだろう。今のところ、100万円全額を返してきた者は居ないらしい。
「今日はありがとうございました」
「まあ、困った事があったら言うてきいや。何とかしたるわ、ガハハ」
「永田さん、これから忙しくなると思いますが、お身体に気を付けてください」
「ありがとうございます。これからも宜しくお願いします」
その後、3人で何度も会食を行うようになった。永田は関本と親しくなり、安藤抜きでも関本と会うようになった。
当然の事ながら、安藤、関本、永田だけでなく、一般人誰でも、モノマネ新人王のチャンピオンとなった、永田の仕事が忙しくなる事を容易に予想出来た。だが、そうはならない。永田も言っていたが、木村が脱走した影響で、モノマネマスクの使用を自粛させられたのだ。モノマネマスク無しでメディアに出ることも考えられたのだが、事務所の方針により、木村が捕まるか、国民の反響が薄まってからとなったようだ。それまでは営業のみ。地方の営業ならば、モノマネマスクが使用出来る。
だがそんな中、衝撃のニュースが流れた。
『モノマネタレントの永田光彦さん、反社会勢力から金銭授受』
永田は営業を行なった相手が反社会勢力だと知らなかったのだが、この時代、コンプライアンスを重視する流れの為、半年以上は活動を自粛せざるを得ないだろう。
(永田さん……運が無かったな……)
安藤は、今回の事件での永田の運の無さを、過去の自分の運の無さに重ね同情した。
そんな事を思っていると安藤のスマホが鳴った。ディスプレイに関本の名前が表示されている。
(関本さんか……。永田さんの事かな?)
「お疲れ様です」
「ああ、お疲れ」
「どうかされました?」
「ちょっと振り込みをお願いできるか?」
「かしこまりました」
「株式会社ルートエルへ1億円で」
「えっ!? 1億円ですか?」
「そうや、宜しくな」
そう告げるや否や、直ぐに電話を切られた。
安藤は疑問を抱いた。関本はいつも、新規のファンドマネジャーには1,000万から契約し、1年毎、信用出来れば倍々になっていく方針をとっていた。現在、10社と契約していて、最も預ける金額が高い会社でも、3億2千万円での契約だ。1億契約になるには4、5年かかる。
(このルートエルって会社は信用できるのか? 取り敢えず調べる必要があるな。経営やタレント活動が順調だから1億スタートに変えたのか?)
安藤は自分の株で失敗してから、決断は全く行わない。違うんじゃないか? と疑問を持っても、全て関本の言われた通りに行う。今までもそうしてきた。それで、今のところ全て順調に進んでいる。ひとえに関本の人柄によるものが大きいのだろう。エスソースは関本が社長だし、そもそも、決断する者が複数いるとうまくいかない。
役人多くして事絶えず、ということわざがある。リーダーは1人の方が良い。
まあ、1億の詐欺にあったところで、エスソースが傾く程のダメージは無いし、責任は全て関本だ。そんな事は言っていないと水掛け論にならないように、予め、安藤はスマホの録音アプリをインストールしている。だからと言って、秘書なのでノータッチとは当然ならない。
安藤はインターネットで株式会社ルートエルを調べたところホームページがあり、電話番号も載っていたので直ぐに電話を掛けた。
「お電話ありがとうございます。ルートエルです」
事務員が男性の声だったので、珍しいなと思いながら話す。
「もしもし、エスソースの安藤と申します」
「いつもお世話になっております」
「お世話になります。弊社の関本から、御社に振り込みの依頼がありまして……」
「伺っております。1億円ですね。お振り込みが確認出来次第、受領書を送付致します」
「承知しました。それでは、宜しくお願いします」
「ありがとうございます。小松が承りました」
「失礼します」
安藤は電話を切った。問題無さそうだと納得し、その後、いつものように銀行で振り込みを済ませた。
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