54 / 72
接待
しおりを挟む
熊谷社長就任仮決定の2日前
4月3日午前11時
七瀬はコスモグループ本社1階の受付を先輩に任せて、トイレ休憩に向かっていたところ、熊谷常務に声を掛けられた。
「七瀬さん」
「はい。あ、熊谷常務。お疲れ様です」
「御苦労様、ちょっと急で申し訳無いんだが、今日の夜空いてるかな? 信雄新社長を接待したいんだが……」
「今日は空いています、大丈夫です」
「そうか、ありがとう。もう1人か2人、美女を誘っておいてくれるかな?」
「分かりました。任せてください!」
七瀬は経験的に美味しい料理を奢ってくれるパターンだと感じたようだ。熊谷は、その近寄りがたい見た目の雰囲気とは逆に、食事会を催す事が多い。会社内の雰囲気を良くしようと考えているのだろう。会社というのは、部署内の親交はあっても違う部署の人とは話す機会が無かったりする。その為、自分の部署さえ良ければどうでも良い、という思考になりがちだ。熊谷は、そういう考えを払拭し、部署間の壁を無くそうと考えていた。
七瀬は、昼食休憩で先輩、同僚、後輩に声を掛ければ、2,3人掴まるだろうと考えていたようだが、予想に反し、生憎みんな予定有りで1人も行けなかった。七瀬は美女なら誰でもいいなと勝手に判断して、三橋に電話する。
「もしもし?」
「もしもし、三橋さん? 急で申し訳ないんだけど、今日の夜空いてない?」
「急ね? どうかした?」
「うちの会社の社長さんを接待しないとダメなのよ。どう? 高級料理タダで食べれるよ」
「ごめんなさい、ちょっと今日は、予定が入っていて……」
「そうなんだ、ちょっと急だったもんね。ごめんね」
「こっちこそごめん。また誘って」
「分かった、じゃあまたね」
「は~い」
三橋は急いで九十九に電話する。
「もしもし、三橋さん?」
「もしもし? 九十九さん、七瀬さんから電話あった?」
「いや、無いよ?」
「良かった。今、私に電話があって、コスモグループの新社長六角信雄の接待に来ないかって誘いがあったの」
「で、どうしたの?」
「一ノ瀬君の推理だと、六角信雄が五木くんを意図的に轢き殺した可能性があるって」
「えっ! どう言う事? あの、日吉って警察官がミスで言っていたけど、六角君が誤って轢いたんじゃないの?」
「どうも違うって言うのよ。私も詳しくは分からないんだけど、アリバイ偽装だって言っていた。本当は信雄が轢いたんだって。危険だから近寄らない方が良いよ」
「分かった、忠告ありがとう」
「いえいえ、じゃあまた連絡するね」
「うん、バイバイ」
「じゃあね~」
七瀬は九十九に電話を掛けたが、九十九は三橋と電話中の為、全く繋がらない。七瀬が1人も掴まえる事が出来ないというピンチに陥っていると、逆に九十九から電話が掛かってきた。
「もしもし?」
「もしもし、七瀬さん? 元気してる?」
「九十九さん、良いタイミングね」
「ん?」
「今日の夜空いてない? うちの社長の接待すれば高級料理がタダで食べれるよ」
「そうなんだ、人見知りであまり喋れないと思うけど、是非御一緒させて」
「ありがとう。トークは私に任せて、美味しいご飯食べていて」
「分かった~」
「じゃあ、6時半にお家に迎えに行くね」
「は~い」
4月3日午前11時
七瀬はコスモグループ本社1階の受付を先輩に任せて、トイレ休憩に向かっていたところ、熊谷常務に声を掛けられた。
「七瀬さん」
「はい。あ、熊谷常務。お疲れ様です」
「御苦労様、ちょっと急で申し訳無いんだが、今日の夜空いてるかな? 信雄新社長を接待したいんだが……」
「今日は空いています、大丈夫です」
「そうか、ありがとう。もう1人か2人、美女を誘っておいてくれるかな?」
「分かりました。任せてください!」
七瀬は経験的に美味しい料理を奢ってくれるパターンだと感じたようだ。熊谷は、その近寄りがたい見た目の雰囲気とは逆に、食事会を催す事が多い。会社内の雰囲気を良くしようと考えているのだろう。会社というのは、部署内の親交はあっても違う部署の人とは話す機会が無かったりする。その為、自分の部署さえ良ければどうでも良い、という思考になりがちだ。熊谷は、そういう考えを払拭し、部署間の壁を無くそうと考えていた。
七瀬は、昼食休憩で先輩、同僚、後輩に声を掛ければ、2,3人掴まるだろうと考えていたようだが、予想に反し、生憎みんな予定有りで1人も行けなかった。七瀬は美女なら誰でもいいなと勝手に判断して、三橋に電話する。
「もしもし?」
「もしもし、三橋さん? 急で申し訳ないんだけど、今日の夜空いてない?」
「急ね? どうかした?」
「うちの会社の社長さんを接待しないとダメなのよ。どう? 高級料理タダで食べれるよ」
「ごめんなさい、ちょっと今日は、予定が入っていて……」
「そうなんだ、ちょっと急だったもんね。ごめんね」
「こっちこそごめん。また誘って」
「分かった、じゃあまたね」
「は~い」
三橋は急いで九十九に電話する。
「もしもし、三橋さん?」
「もしもし? 九十九さん、七瀬さんから電話あった?」
「いや、無いよ?」
「良かった。今、私に電話があって、コスモグループの新社長六角信雄の接待に来ないかって誘いがあったの」
「で、どうしたの?」
「一ノ瀬君の推理だと、六角信雄が五木くんを意図的に轢き殺した可能性があるって」
「えっ! どう言う事? あの、日吉って警察官がミスで言っていたけど、六角君が誤って轢いたんじゃないの?」
「どうも違うって言うのよ。私も詳しくは分からないんだけど、アリバイ偽装だって言っていた。本当は信雄が轢いたんだって。危険だから近寄らない方が良いよ」
「分かった、忠告ありがとう」
「いえいえ、じゃあまた連絡するね」
「うん、バイバイ」
「じゃあね~」
七瀬は九十九に電話を掛けたが、九十九は三橋と電話中の為、全く繋がらない。七瀬が1人も掴まえる事が出来ないというピンチに陥っていると、逆に九十九から電話が掛かってきた。
「もしもし?」
「もしもし、七瀬さん? 元気してる?」
「九十九さん、良いタイミングね」
「ん?」
「今日の夜空いてない? うちの社長の接待すれば高級料理がタダで食べれるよ」
「そうなんだ、人見知りであまり喋れないと思うけど、是非御一緒させて」
「ありがとう。トークは私に任せて、美味しいご飯食べていて」
「分かった~」
「じゃあ、6時半にお家に迎えに行くね」
「は~い」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる