10番目の同級生

ジャメヴ

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万引き

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◆5年前、中学2年春休み
  二岡は自宅の部屋に六角と十文字を呼んでいた。
「六角。次の計画は決まったのか?」
「ああ、決まった」
「そうか、さすがだな。話してくれ。十文字! よく聞いておけよ! 失敗するなよ!」
「う、うん」
「次のミッションは、漫画の万引きだ」

  二岡は小遣い稼ぎやスリルを味わう為、六角と十文字を使ってちょくちょく犯罪をしていた。作戦は全て六角が練る。二岡は六角の作戦を信頼しきっていた。ただ、六角や十文字は、こんな事を早くやめたいと思っていた。しかし、ずるずると二岡に引っ張られてやめるタイミングを言い出せずにいた。

  六角が的確に指示を出す。
「いいか?  『ゴート』にはレジを向いて防犯カメラが1つだけある。だから、1番向こうの棚はカメラから死角になっていて全て盗める」

『ゴート』とは、この辺りに1軒だけある本屋だ。田舎町なので、本屋と言えば『ゴート』と誰もが理解できる。さほど大きい店ではないが、コミックは品揃えが豊富だ。

「俺と十文字の動きを指示してくれ」
「バッグを2つ用意したから、これに二岡が有名どころの本を全巻入れて、十文字に渡す。十文字はゆっくり逃げろ。走るなよ!  二岡は引き続きもう1つのバッグに他の本を入れてからゆっくり逃げてくれ。店員は今日1人だけだから、俺が引き付けてるうちに行動してくれ」
「分かった」
「二岡は先に入って、店員近くの場所で本を見ていてくれ。その後、俺が入って店員に話しかけるから、十文字が店内に入ったのを確認して移動し、実行しよう」
「オーケー」
「皆、何があっても目を合わすなよ。仲間だと思われたら駄目だ」
「うん」
「じゃあ行くか」

  二岡の家から『ゴート』までは、歩いて5分程度。まず二岡が出発した。
  そして5分後、六角が出発する。その30秒後、十文字が出発した。
  歩く速度は、もちろん3人とも一緒ではないが、そんなに遠い場所でもないし、『ゴート』に着いた時でもそこまで差は無い。
『ゴート』が見えてきた。向かって左側に建物、右側に駐車スペースがあり、並列に車を30台停められる。
  二岡は店内に入り、店員と目を合わせずに近づいていき、防犯カメラに背を向けたまま、本を選ぶような素振りをしている。六角も店内に入る。カウンター越しに、目を隠すぐらい長い前髪で、黒縁メガネのヒョロッとした店員が本を整理している。六角は店員に声を掛けた。
「すみません、単行本の予約をしたいんですけど……」
「本の名前は分かりますか?」
「ちょっと、名前をど忘れしてしまって……。調べられます?」
「大丈夫ですよ」
店員はパソコンを見つめ、六角の話を聞く。 その時、十文字も店内に入ってきた。二岡は移動を開始する。
「週刊の少年誌の格闘モノなんですけど……」
「これですか?」
「うーん……違いますね」
店員は3作品程を六角に見せたが、どれも違うと言うので困っている。その時!
ドシャー!  バラバラバラ……
  十文字が本の重さにバランスを崩し倒れた!  二岡はそれを見て万引きした本を棚に戻す。六角は音で十文字が転倒したと気付いたので、仲間と思われない為に見ないでおこうかと思ったが、これだけの音を無視する方がおかしいと思い、振り向いた。
  店員が十文字に駆け寄る。
「お前!  何してるんだ!」
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