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Trash Land
epilogue III - unchanging everyday-
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少しばかり御無沙汰している、フィンヴァラだ。
こうして君にメールをするのは、もしかして初めてかも知れないな。
その後、どうしている? 傷の方はもう良いのかな?
暫く君の噂を聞かないからシーリーが心配しているぞ。
あの娘は今、ファウルの処で研修医として多忙な毎日を送っているらしい。
時々僕の店に来て愚痴を零したり君の話をしたりしている。偶にはあの娘に逢ってやったらどうだ? きっと喜ぶぞ。
君にとっては不愉快かも知れないが、君とシーリーは我々以上に深い絆で結ばれていたからな。
実はこうしてメールをしたのは理由がある。
あの日――中央公園でのイベントがあった日だが、面白い物を見付けたとDBが珍しく僕の処に来た。
どうやら『ウルドヴェルタンディ・スクルド』のマザーコンピューターをハッキングして手に入れたデータらしい。
何故其処にそのデータがあったのかは不明だが、僕にとってもDBにとっても、そしてファウルやシーリー、勿論君にとっても重要な物であることは変わらない。
其処にあった物は、ラッセル・Vの日記だ。
全てを羅列するのは些か面倒。よって重要だと思われる箇所を抜粋して以下に記すことにする。
それを見てどう思うか、それは君次第だ。
僕は元々彼の『作品』ではないからなんとも思わなかったが、DBは腹に据えかねたらしい。
まぁ、彼は一番の激情家だから仕方ないのだろうが。
取り敢えず、以下に目を通してくれ。
…………………………………………………………
02/10/3004
今日は私にとって――否、全ての人類にとって記念すべき日になるだろう。
私が長い年月を費やして研究していたもの、マテリアルが遂に完成したのだ。
今まで幾度となく失敗を繰り返してきたが、今度こそは大丈夫だろう。
これで失敗したのなら、この研究を諦めるよりほかはない。
人工的な生命で作り出すマテリアル。錬金術で作ったとしても、最も複雑とされる脳幹部の作成が巧くいかないために知能が著しく低下しているか、そうでなければすぐに発狂してしまう。
それを防ぐために、私はあるものを使った。
マテリアルの作成は、なにも錬金術だけを行使しなくてはならないということはなかったのだ。
少し考えれば解ること。発想を僅かに変えれば良い。
脳幹部に、科学の粋であるナノマシンを埋め込んだ。
それによってその塩基配列が崩壊することも、知能が低下することも完全に防げる筈。
唯一の問題は肉体とナノマシンが拒絶反応を起こさなければよいのだが……現在は問題ない様だ。
今後じっくりと研究を積み重ね、最大の目標である〝完全なる人〟を完成させなければならない。
マテリアルの名を〝シーリー・コート〟と名付けよう――
…………………………………………………………
06/23/3005
今日は何と幸運な日なのだろう。
私は興奮を隠し得ない。
マテリアル――否、シーリー・コートが勝手に外出してしまったが、何事もなく無事に帰って来た。
人工的に作られたものでも、どうやら帰巣本能はあるようだ。
だがそればかりではない。
なんと感情を持った〝サイバー〟まで連れて来たのだ。
正確にはその〝サイバー〟があれを連れて来てくれたのだが、そんなことはどうでも良い。
早速その〝サイバー〟を調べてみたのだが、何処の莫迦者がやったのかは知らないが脳と神経系の機械化が不充分だ。
本来ならば想像を絶する苦痛が全身を駆け巡る筈だが、これは全く平気らしい。
この〝サイバー〟を研究すれば、次の段階に進む事が出来る。
そして仮にシーリー・コートが拒絶反応を示しても、それを研究することで乗り越えられるかも知れない。
この〝サイバー〟を〝フィンヴァラ〟と名付け、精神感応物質――〝サイコ・マター〟を与えてみよう。
感情のある〝サイバー〟が、常人でも滅多に使えないそれを使いこなすことが出来るのか。
仮にそれが可能だとしたのなら、それはそれで面白いことになる――
…………………………………………………………
04/06/5006
何度やっても駄目だ……。
どうしても脳と神経系が巧く人工神経と融合しない。
どうしてフィンヴァラはそれで機能しているのか未だに不明だ。
そして与えた〝サイコ・マター〟。
意外にも完全に使いこなしているようだ。
だがそれの研究は後回し。今はそれどころではない。
試作品としてノーマルな脳と人工脳を持つ〝サイ・デッカー〟を作ってみたが、どうしても人格が二つになってしまう。
だがそれで一つだけ解ったことがある。
脳を直接機械化させなければ、〝PSI〟の〝能力〟は消えない。
この試作品は〝エレクトロキネシス〟だった。これは違う意味で面白い。
ノーマルな脳を〝エイケン=ドラム〟、人工脳を〝アハ=イシカ〟と名付け、本体を『ダブル・ブレイン』、〝DB〟と名付けよう。
これでやることも増えたが、逆に楽しみも増えた。果たしてこのDB、一体どれだけのキャパシティを持っているのか――
こうして君にメールをするのは、もしかして初めてかも知れないな。
その後、どうしている? 傷の方はもう良いのかな?
暫く君の噂を聞かないからシーリーが心配しているぞ。
あの娘は今、ファウルの処で研修医として多忙な毎日を送っているらしい。
時々僕の店に来て愚痴を零したり君の話をしたりしている。偶にはあの娘に逢ってやったらどうだ? きっと喜ぶぞ。
君にとっては不愉快かも知れないが、君とシーリーは我々以上に深い絆で結ばれていたからな。
実はこうしてメールをしたのは理由がある。
あの日――中央公園でのイベントがあった日だが、面白い物を見付けたとDBが珍しく僕の処に来た。
どうやら『ウルドヴェルタンディ・スクルド』のマザーコンピューターをハッキングして手に入れたデータらしい。
何故其処にそのデータがあったのかは不明だが、僕にとってもDBにとっても、そしてファウルやシーリー、勿論君にとっても重要な物であることは変わらない。
其処にあった物は、ラッセル・Vの日記だ。
全てを羅列するのは些か面倒。よって重要だと思われる箇所を抜粋して以下に記すことにする。
それを見てどう思うか、それは君次第だ。
僕は元々彼の『作品』ではないからなんとも思わなかったが、DBは腹に据えかねたらしい。
まぁ、彼は一番の激情家だから仕方ないのだろうが。
取り敢えず、以下に目を通してくれ。
…………………………………………………………
02/10/3004
今日は私にとって――否、全ての人類にとって記念すべき日になるだろう。
私が長い年月を費やして研究していたもの、マテリアルが遂に完成したのだ。
今まで幾度となく失敗を繰り返してきたが、今度こそは大丈夫だろう。
これで失敗したのなら、この研究を諦めるよりほかはない。
人工的な生命で作り出すマテリアル。錬金術で作ったとしても、最も複雑とされる脳幹部の作成が巧くいかないために知能が著しく低下しているか、そうでなければすぐに発狂してしまう。
それを防ぐために、私はあるものを使った。
マテリアルの作成は、なにも錬金術だけを行使しなくてはならないということはなかったのだ。
少し考えれば解ること。発想を僅かに変えれば良い。
脳幹部に、科学の粋であるナノマシンを埋め込んだ。
それによってその塩基配列が崩壊することも、知能が低下することも完全に防げる筈。
唯一の問題は肉体とナノマシンが拒絶反応を起こさなければよいのだが……現在は問題ない様だ。
今後じっくりと研究を積み重ね、最大の目標である〝完全なる人〟を完成させなければならない。
マテリアルの名を〝シーリー・コート〟と名付けよう――
…………………………………………………………
06/23/3005
今日は何と幸運な日なのだろう。
私は興奮を隠し得ない。
マテリアル――否、シーリー・コートが勝手に外出してしまったが、何事もなく無事に帰って来た。
人工的に作られたものでも、どうやら帰巣本能はあるようだ。
だがそればかりではない。
なんと感情を持った〝サイバー〟まで連れて来たのだ。
正確にはその〝サイバー〟があれを連れて来てくれたのだが、そんなことはどうでも良い。
早速その〝サイバー〟を調べてみたのだが、何処の莫迦者がやったのかは知らないが脳と神経系の機械化が不充分だ。
本来ならば想像を絶する苦痛が全身を駆け巡る筈だが、これは全く平気らしい。
この〝サイバー〟を研究すれば、次の段階に進む事が出来る。
そして仮にシーリー・コートが拒絶反応を示しても、それを研究することで乗り越えられるかも知れない。
この〝サイバー〟を〝フィンヴァラ〟と名付け、精神感応物質――〝サイコ・マター〟を与えてみよう。
感情のある〝サイバー〟が、常人でも滅多に使えないそれを使いこなすことが出来るのか。
仮にそれが可能だとしたのなら、それはそれで面白いことになる――
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04/06/5006
何度やっても駄目だ……。
どうしても脳と神経系が巧く人工神経と融合しない。
どうしてフィンヴァラはそれで機能しているのか未だに不明だ。
そして与えた〝サイコ・マター〟。
意外にも完全に使いこなしているようだ。
だがそれの研究は後回し。今はそれどころではない。
試作品としてノーマルな脳と人工脳を持つ〝サイ・デッカー〟を作ってみたが、どうしても人格が二つになってしまう。
だがそれで一つだけ解ったことがある。
脳を直接機械化させなければ、〝PSI〟の〝能力〟は消えない。
この試作品は〝エレクトロキネシス〟だった。これは違う意味で面白い。
ノーマルな脳を〝エイケン=ドラム〟、人工脳を〝アハ=イシカ〟と名付け、本体を『ダブル・ブレイン』、〝DB〟と名付けよう。
これでやることも増えたが、逆に楽しみも増えた。果たしてこのDB、一体どれだけのキャパシティを持っているのか――
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