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Trash Land
indestructible VII
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モニターに映し出されているピエロが不定形のものに囲まれる様を見て、『まぁぶる』が「きゅう」と声を上げた。
だがその傍にいるリケットは、表情一つ変えずに見守っているだけだった。もっとも変える表情を持ち合わせていないだけだろうが。
「Checkmate」
激しく痙攣するDBを見て、そう呟く。その足に『まぁぶる』が体当たりをするが、逆に弾き飛ばされただけだった。
「あ痛たたたたた、まぁさかカペルスウェイトがいるとは思わなかった……参ったねぇ、E・ヘッドが閉じ込められちまったよ」
頭を掻きつつDBが起き上がる。それを見た『まぁぶる』が、喜びに顔を輝かせて跳びついた。
その頭を撫でているDBに、リケットは一言だけ、
「終わりか?」
「そう思うか?」
撫でている手を止めずに、不敵に笑いながら言う。それをどう思ったのか――きっとどうも思っていないだろうが――リケットは何も言わずに背を向けた。
「俺はこれからE・ヘッドを引き戻しに行く。それがA・ヘッドたる俺の役目だからな。それに……遅くなったら〝結界都市〟の機能が滅茶苦茶になっちまうし」
「……好きにしろ」
言い残し、リケットは部屋を後にした。
「やれやれ、せっかちだねぇ」
頭を掻き、『まぁぶる』を撫でる手を止めてモニターを見た。
其処には、ある文字が浮かび上がっている。
リケットはそれを見てその場を立ち去ったのだ。
「〝結界都市〟も、やっぱり広いねぇ。俺様に気付かれずに脅迫状を送るとは」
端末のキーボードを叩いてその文字を消し、更に操作する。
周囲を取り囲んでいるコンピューターが格納され、代わりに寝台がせり上がって来た。
それにゆっくりと横たわり、丁度両掌を置く場所にある漆黒の球体に手を掛ける。
「危ないから離れてな」
『まぁぶる』にそう言い、DBは目を閉じた。その瞬間、大音量の音楽がスピーカーから飛び出した。その激しいビートに合わせて、『まぁぶる』もくるくる回って踊り始める。
「SOMEONE LEAVING TOWN.MY INNER PAIN I DO NOT NEED I LOOK AT ME AND TAKE SO SHE KILLS ME NOW」
そしてDBは歌い始め、その瞬間、彼の両手から高圧電流が迸る。
彼の、DB自身がA・ヘッドと呼ぶ人物の〝能力〟。
それは電子機器を操り高圧電流を放つ〝エレクトロキネシス〟。
過去では戦闘用に行使されることが多かった〝能力〟であったが、本来の用途は電子機器の操作である。
だがそれには相当の熟練が必要となり、その繊細な操作が出来る者は〝結界都市〟には三人もいないだろう。
そしてDB――A・ヘッドはその数少ない者の一人。
「IF I THINK ABOUT THE LACK OF SHAME OR "SHOULD HAVE DONE"」
歌い続けるDB――A・ヘッドの頭上にあるモニターには、『変異』してシステムを破壊しているE・ヘッド――『オート・マータ』の姿が映し出されている。その姿は、『ホワイト・フェイス』だった頃の面影など一切ない。
侵入者を完膚なまでに叩きのめす筈の『マーダー』をいとも簡単に破壊している。
更に、彼の開発した最悪のウイルス『カンサー・セル』まで植え付けていた。
「I LUST LIKE AN ANIMAL BUT I NEVER SAW NOBODY HAVE TAKEN TO THE CITY」
派手にやっていやがる。歌いながら心中で独白し、DB――A・ヘッドは電流の触手をE・ヘッドが暴れている処まで伸ばして行った。
「COULD HAVE BEEN ANY GIRL AROUND SO SHE LIKE A CHEW AND LICK AND SHE LIKE WHAT SHE KNOW SOMEBODY'S CRRUPTION CRASH CRASH YOU TRASH」
発せられた電流は、遮断された筈の回線すらも再接続させ、そしてその回線に乗ってDB――A・ヘッドは『バイオ・タワー』のコンピューターを支配し始めた。
彼の〝能力〟、〝エレクトロキネシス〟と〝サイ・デッカー〟の相違点。それはコンピューターを操作するか、支配するかである。
つまり、前者は完全に支配し、後者は操作するだけなのだ。
「SO.I'M COMING DOWN.MY INNER NEED DON'T HOLD ME DOWN YOUR KARMA ZOO SICKENS ME NOW AND ME KNOW MANY HYENAS WHO LOOK LIKE DOGGIES LICK YOU.LICK YOU.LICK YOU.LICK YOU. DIE IN A HOLE HATE YOURMOUTH. SO NICE.SO CHEAP.SO I DON'T CARE YOUR MOUTH."SHUT IT"YOU SAY.SAY YOU'LL NEVER TRUST.」
さてさて、どんな抵抗をしてくれるかな? 歌いながら邪悪に微笑み、唇をゆっくり舐めながらDB――A・ヘッドは独白した。
モニターには、全ての『マーダー』を破壊したE・ヘッドが、システムの変異に戸惑っている様が映し出されている。
誰が御主人様か、解っているんだろうな? なぁ、A・ヘッド。
「FUCK OFF!!」
その絶叫と共に、『まぁぶる』が一層激しく踊り始める。
時刻は、16.57タイム……既に〝デッカー〟の「ダイブ」許容限界を越えていた――。
だがその傍にいるリケットは、表情一つ変えずに見守っているだけだった。もっとも変える表情を持ち合わせていないだけだろうが。
「Checkmate」
激しく痙攣するDBを見て、そう呟く。その足に『まぁぶる』が体当たりをするが、逆に弾き飛ばされただけだった。
「あ痛たたたたた、まぁさかカペルスウェイトがいるとは思わなかった……参ったねぇ、E・ヘッドが閉じ込められちまったよ」
頭を掻きつつDBが起き上がる。それを見た『まぁぶる』が、喜びに顔を輝かせて跳びついた。
その頭を撫でているDBに、リケットは一言だけ、
「終わりか?」
「そう思うか?」
撫でている手を止めずに、不敵に笑いながら言う。それをどう思ったのか――きっとどうも思っていないだろうが――リケットは何も言わずに背を向けた。
「俺はこれからE・ヘッドを引き戻しに行く。それがA・ヘッドたる俺の役目だからな。それに……遅くなったら〝結界都市〟の機能が滅茶苦茶になっちまうし」
「……好きにしろ」
言い残し、リケットは部屋を後にした。
「やれやれ、せっかちだねぇ」
頭を掻き、『まぁぶる』を撫でる手を止めてモニターを見た。
其処には、ある文字が浮かび上がっている。
リケットはそれを見てその場を立ち去ったのだ。
「〝結界都市〟も、やっぱり広いねぇ。俺様に気付かれずに脅迫状を送るとは」
端末のキーボードを叩いてその文字を消し、更に操作する。
周囲を取り囲んでいるコンピューターが格納され、代わりに寝台がせり上がって来た。
それにゆっくりと横たわり、丁度両掌を置く場所にある漆黒の球体に手を掛ける。
「危ないから離れてな」
『まぁぶる』にそう言い、DBは目を閉じた。その瞬間、大音量の音楽がスピーカーから飛び出した。その激しいビートに合わせて、『まぁぶる』もくるくる回って踊り始める。
「SOMEONE LEAVING TOWN.MY INNER PAIN I DO NOT NEED I LOOK AT ME AND TAKE SO SHE KILLS ME NOW」
そしてDBは歌い始め、その瞬間、彼の両手から高圧電流が迸る。
彼の、DB自身がA・ヘッドと呼ぶ人物の〝能力〟。
それは電子機器を操り高圧電流を放つ〝エレクトロキネシス〟。
過去では戦闘用に行使されることが多かった〝能力〟であったが、本来の用途は電子機器の操作である。
だがそれには相当の熟練が必要となり、その繊細な操作が出来る者は〝結界都市〟には三人もいないだろう。
そしてDB――A・ヘッドはその数少ない者の一人。
「IF I THINK ABOUT THE LACK OF SHAME OR "SHOULD HAVE DONE"」
歌い続けるDB――A・ヘッドの頭上にあるモニターには、『変異』してシステムを破壊しているE・ヘッド――『オート・マータ』の姿が映し出されている。その姿は、『ホワイト・フェイス』だった頃の面影など一切ない。
侵入者を完膚なまでに叩きのめす筈の『マーダー』をいとも簡単に破壊している。
更に、彼の開発した最悪のウイルス『カンサー・セル』まで植え付けていた。
「I LUST LIKE AN ANIMAL BUT I NEVER SAW NOBODY HAVE TAKEN TO THE CITY」
派手にやっていやがる。歌いながら心中で独白し、DB――A・ヘッドは電流の触手をE・ヘッドが暴れている処まで伸ばして行った。
「COULD HAVE BEEN ANY GIRL AROUND SO SHE LIKE A CHEW AND LICK AND SHE LIKE WHAT SHE KNOW SOMEBODY'S CRRUPTION CRASH CRASH YOU TRASH」
発せられた電流は、遮断された筈の回線すらも再接続させ、そしてその回線に乗ってDB――A・ヘッドは『バイオ・タワー』のコンピューターを支配し始めた。
彼の〝能力〟、〝エレクトロキネシス〟と〝サイ・デッカー〟の相違点。それはコンピューターを操作するか、支配するかである。
つまり、前者は完全に支配し、後者は操作するだけなのだ。
「SO.I'M COMING DOWN.MY INNER NEED DON'T HOLD ME DOWN YOUR KARMA ZOO SICKENS ME NOW AND ME KNOW MANY HYENAS WHO LOOK LIKE DOGGIES LICK YOU.LICK YOU.LICK YOU.LICK YOU. DIE IN A HOLE HATE YOURMOUTH. SO NICE.SO CHEAP.SO I DON'T CARE YOUR MOUTH."SHUT IT"YOU SAY.SAY YOU'LL NEVER TRUST.」
さてさて、どんな抵抗をしてくれるかな? 歌いながら邪悪に微笑み、唇をゆっくり舐めながらDB――A・ヘッドは独白した。
モニターには、全ての『マーダー』を破壊したE・ヘッドが、システムの変異に戸惑っている様が映し出されている。
誰が御主人様か、解っているんだろうな? なぁ、A・ヘッド。
「FUCK OFF!!」
その絶叫と共に、『まぁぶる』が一層激しく踊り始める。
時刻は、16.57タイム……既に〝デッカー〟の「ダイブ」許容限界を越えていた――。
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