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学舎と姉妹と
14 姉妹、迷宮潜行を画策する
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迷宮氾濫にナディたちが介入し、そして城壁を囲むそれを大量に処理したことにより相対数を大きく減らされた魔物の軍勢だが、その絶対数はこの地を蹂躙するに充分過ぎる物量であった。
それでも、事実として多数の同朋が消されたのは紛れもない事実である。よって魔物の――オークの軍勢はそれを為した正体不明の馬と翼のヒトを警戒し、また日が暮れ始めたために一時撤退し始めた。
夜行性であり暗闇は味方であるオークにとってその撤退指示は屈辱以外の何物でもなく、だが続いて空から落ちて来た質量攻撃にまたしても蹂躙される同朋を目の当たりにして初めて、その判断は正しかったと痛感した。
そうしてゆるゆると撤退を開始するオークたちの鋭敏な聴覚に、
「抜けがけはズルいお姉ちゃん。レオも追撃する。【ミラー】『【マキシマイズ・ソーサリー・ブースト】【マキシマイズ・マギエクステント】【ソーサリー・リバーブ】【マルチプル】【アトミック・ガイザー】」
複数の幼子の声が届く。しかしそれを気にする者はいない。ただ、屈辱的な黄昏時の撤退指示に不満はあるがそれは絶対であるため、名残惜しく振り返りながら後退し始め――地面から噴き出し天に突き刺さる無数の光の柱に声も無く消し飛ばされた。
その現象に数瞬呆然とし、だが間髪置かずに次々と噴き出す光の柱に同朋を消し飛ばされて恐慌状態に陥ったオークたちは、我先にと逃げ出した。
「……終わっ、た……?」
波が引くように去るオークたちを見て、城壁にいる誰かがそう呟き、それにより勝利の鬨の声が上がる。
「……まぁ、実際は終わってないんだけどね」
時間経過で強化が解除され、黄金の光が空へと昇り弾けるエフェクト効果を見て満足しているナディはそう呟き、直後に襲い来る疲労にぶっ倒れそうになるのを堪える。
そんな疲労困憊になりながらも、今回一番頑張ったであろうエンペラー・ブラッドレイ号――正式名称はヴィルバルト号だが、とにかく、そのまだ熱く汗だくの馬体を撫でた。息が上がってはいるものの、非常にご満悦である。
関係ないが、例のエフェクト効果は元からそうだったわけではない。ナディがそうなるように調整したのだ。
理由は、格好良いから!
何処ぞのガチムチさんが聞いたら確実に「五月蝿ぇわ」と言われること請け合いだ。
そうして一通り撫でた後に、そういえば車中のフロランスはどうなっているのかが気になり、
「大丈夫フロウ。取り敢えず今は終わっ――」
言いながらドアを開け――突発アクシデント真っ最中でくんつほぐれつ状態な二人を目の当たりにして、ゆっくりとドアを閉め、そして締めた。
『え? あ! 待って下さい母上! 誤解です話を聞いて――んぐぉ!?』
『ぁあん、いけませんわアーチボルト様……そ、其処は……ぅうん――』
などとナニかの声が聞こえる気がしたが、それはきっと気の所為だ。自分にそう言い聞かせて頷き、更に「大人になったねぇ、母は嬉しいよ。早く孫が見たいもんだ」と、どんな目線だと突っ込まれそうなことを考えていたりする。
「お姉ちゃんお疲れ様。でも無理しちゃ駄目」
「ああレオもお疲れ。ふふん、ヒトにはムリをすべき時があるのよ」
「引き時と頑張りどころを理解して実行する。さすおね」
そんな会話をし、互いに良い仕事をしたとばかりにサムズアップする姉妹である。
「ところでフロランス姉はどうしたの。馬車で遠心分離されていたようだけど」
「ああ、それは大丈夫。遠心分離どころかしっかり混じり合ってネチネチえちちしてたから」
「煮え切らないアーチーを陥落させる。フロランスさすおね」
確かに突発アクシデントは他者からはそうとしか見えないだろう。
それは取り敢えず置いといて。
現在疲労感がハンパないナディは、同じく疲労困憊で立っているのもままならず膝を折って地面に伏せるヴィルバルト号と共に、その場に座り込んだ。
御者台でまだクラクラしているガエル氏は、取り敢えずハーネスを外してそのヴィルバルト号を馬車から解放する。そして、なんか車内で妙な声がするため訝しみ、ガッチリ締まっているドアの施錠を外して開けてみた。
「ん……んん、酷い目に遭いましたわ。それと、一体どうなりましたの?」
「ちょっと母う――じゃないナディ様! 無言で閉じ込めるとは酷いではありませんか!」
そう言いながら、フロランスとアーチボルトが飛び出して来る。狭い空間に閉じ込められた上に戦闘や何やらで揺らされ大変だったのだろう。車内がなんかムワッとしているし妙な臭いもするし。
「えー? だって二人して一騎打ちの真っ最中だったでしょ。それを邪魔するのは無粋かなーって思ったのよ」
「過去現在未来でも男女の一騎打ちに口を挟めば馬に蹴られる。そんな命知らずはこの世にいない」
「何処から出ましたの、その意味不明な一騎打ち」
ちょっとアレな暗喩をするナディだが、そういう系はフロランスにとって理解の外であった。アーチボルトはしっかり理解しており、何やら弁明していたが。
「そんな痴情で縺れてた二人はさて置き」
そしてさて置かれる二人である。要は、どちらにするにしてもハッキリしない事項に労力を割くのは時間の無駄だと判断したのだ。端的に言ってしまえば、匙を投げたのである。
「まず、ガエル」
「え? あ、はい」
なにやらお互いを意識しながら弁明し続けている二人を見ながら、そういえばこんな時期もあったなぁとしみじみしている妻子持ちのガエル氏に、ナディが指示を飛ばす。
「あんたは今から早馬で王都に行って貰うわ。そして援軍要請をすること」
「え、でも、騎士であるわたしが居た方が戦力として有用なのでは……」
「騎士が一人増えるだけでどうこう出来る状況だと思っているの? んなわきゃないっしょ」
「それは――そう、ですが……」
「アンタはフロウの護衛騎士だって言いたいんだろうけど、こんな状況下で護衛も何もないのは判ってるわよね」
そう突き付けられた正論にぐうの音も出ない。だが援軍要請をしたとしても、直ちに来る保障は何処にもない上に、来るとしても数日――悪くすれば数週間は掛かるだろう。よって何方に転んでも、ガエル氏は護衛という任務を完遂出来ないのは容易に予測出来る。
「それと――」
だが続いて頼まれた言付けが妙に腑に落ちるものであり、そしてそれがきっと最善策であると理解したガエル氏は、自重を軽くするため鎧を脱ぎ捨てて帯剣のみの姿となり、書状を携えて足が速く持久力のある馬で日が沈む前に王都へと出立した。
ちなみにその書状は、フロランスの筆跡でレオノールが書いた物だったりする。人の筆跡を真似るのが何故か絶妙に巧いレオノールだった。
それに本人の公認だし、しっかりファルギエール家の印で封蝋されているのだから、全くの偽書ではない。……筈。
あとガエル氏が乗った駿馬はヴィレミナ号という栗毛の牝馬であり、後にファルギエール家がとある理由で買い取ることとなるのだが、それはどうでも良いだろう。
「さて、布石は打ったし――」
疲労が限界に達したナディは、事後処理をフロランスに押し付け、ついでにそれのサポートをするようにアーチボルトに厳命し、勝利に湧き立ちお祭り騒ぎになっている人々を尻目に、レオノールと共に宿の二階の一室に引っ込んで一眠りすることにした。
このまま朝までに何も無いと思えるほど楽観的ではないし、そもそもオークの軍勢があの程度である筈がないから。なにしろ、それらの根城は迷宮だ。その気になればいくらでも数を補給出来る。
それに――
「撤退の判断ががオークとは思えなほど潔いのよね。統率はなっちゃいないけど。……これは、確実に居るなぁ」
その可能性は予想していた。それに今考えてみれば、あれほどの数がいるのならば街の全周を包囲して攻めることも出来た筈。なのに、それをしなかった。予想される戦略として、一方向へ複数回攻め、其処からしか攻めないと思い込ませた上で別方向への奇襲。そんなところだろう。
「そもそも、なんでド平原の街なのに中途半端な城壁を築いただけなのよ。内堀は無理でも用水路を兼ねた外堀と城壁を二重にするとか、方法は色々あるでしょうに。誰よデザインしたの」
使えねー。そう考えながら、隣で既に寝息を立てているレオノールの寝顔を見て微笑み、ナディは寝に就いた――
深夜。
丁度日付が変わった頃に、ナディは覚醒した。
手洗いに行きたくなったとかではない。初めからこの時刻に起きる予定だったのだ。
起き上がり、そして短く息を吐いてからレオノールを起こさないようにベッドから降り――
「おはようお姉ちゃん。予定時間にきっちり起きる冒険者の鏡。さすおね」
レオノールも起きた。
「あ、ごめんね。起こしちゃった。まだ寝てて良いよ――」
「行くのでしょう、お母様」
簡単に出掛ける準備を始めているナディへ、レオノールが――いや、レオノールがそう言う。その眼差しはいつもの眠そうな、半眼のジト目ではない。翠瞳が宿る瞳を見開き、真っ直ぐに見つめている。
「あー、レオじゃなくレオノールに成ってるかぁ」
「お母様も、ナディではなくお母様に成っていますよ」
口元に手を当て、ことこと嫋やかに笑うレオノール。ナディは苦笑した。
「いやぁ、ちょっと昔を思い出たんだよね」
ナディが言う「昔」とはどの昔なのか、レオノールには判らない。知る限り少なくとも二回あり、そして今回が三回目だ。もしかしたらもっと繰り返しているのかも知れない。そう思う。
だがそれを言及するのは、野暮というもの。
過去がどうあれ、現在はナディという姉で、そして育ての親だ。
「でも、まぁ……ぶっちゃけちゃえば、危機管理がなっちゃいないデザインしか出来ない街なんて為政者諸共滅んじまえって思うけど、それで困るのは民草なんだよね。だから――」
「だから?」
ちょっと嫌そうに、それでいて言い訳がましく言い言葉を切るナディを、柔らかな微笑みを浮かべたレオノールが促す。
「ちょっと迷宮踏破して来るわ」
「わたしも行きます」
だと思った。やれやれと言わんばかりに溜息を吐き、ナディは肩を落とす。
正直にいうと、レオノールには此処に残って欲しい。迷宮踏破は危険だからではない。この街を守って欲しいのだ。
そもそも肉体の無い物理的に不死身な竜を単独撃破出来る、不死身で不死の魔王を滅ぼせるレオノールに、そういう心配をする方が無駄である。
「わたしがいなくとも、此処にはフロランス姉様がいます。あの方はまだ御自身の能力を理解出来ていませんが、オークの軍勢程度は歯牙にも掛けないでしょう」
「え? そうなの?」
フロランスの実力を正しく分析して評価するレオノールに対して、そんなことなど1ミリも考えちゃいないナディである。
そんな母であり姉でもあるナディを見て、秒でレオに戻るレオノールであった。
これはナディは知らない――というか興味がないから聞いても忘れることだが、ファルギエールの血族は揃いも揃ってヒト種とは思えないほどに一芸に富んでいる。
その最たる例が、自力で【魂の継承】を起こして魔王に覚醒したヴァレリーだ。その血族たるフロランスも、並のヒト種ではないだろう。
そういえば、ナディはふと思う。魔王妃の末娘が【魔力超回復】持ちだったなぁ。生きてるかなぁ。もしそうなら元気かなぁ……などとしみじみしちゃう、元おかーさんであった。
「よし。じゃあレオの案を採用しよう。じゃあ此処はフロウに任せて、早速行くわよ」
「ちっちゃいことは気にしないワカチコな切り替え。さすおね」
レオノールからレオに戻ってそう賛辞(?)するレオノール。色々流石である。
そんなシリアスから明らかに別へとシフトしながらお出掛けの準備をした二人は、オークの軍勢を撃退したことで完全にぶったるんで爆睡しちまっている兵士や冒険者どもに呆れながら、音もなく階下に降りる。
と――
「あら、こんな時間に何処へ行きますの?」
一階の食堂兼酒場のテーブルに着き、地図を見詰めて唸っているフロランスに見付かった。
「そう言うフロウも、なんで起きてるのよ」
見付かったことより何より、深夜にも関わらずまだ起きていて、更に指揮官でもないのに地図を見ながら唸っているフロランスに驚きを隠せないナディである。
「ちょっと気になることがありますの。この街の防備がザルで設計士や承認した領主に物申したくなるのはさて置き、オークがあっさり撤退したのに違和感がありますわ」
「へぇ」
やはりフロランスは只者ではない。もし性別が違っていたのなら、希望次第で宰相にも将軍にもなれそうだ。
本人にその気は全く無いだろうが。
「それで。二人は迷宮にお出掛けですのね」
地図を睨み、迷宮の位置を確認しながらフロランスが言う。確認ではなく確定だ。
「うんそう。ちょっと枯渇するくらい狩まくって踏破して来るわ」
だから、ナディもあっさりと自白する。そんな案の定な返答に、フロランスは天井を仰ぎ見て溜息を吐いた。
「そうすると思いましたわ。私もご一緒したいところですが、邪魔にしかなりませんわよね。つくづく、己の無力が嫌になりますわ」
「は? 無力? 冗談でしょ」
自虐するフロランスに素で驚き、何言ってんだコイツとばかりにそう言うナディ。その反応に、此方も拍子抜けしたように驚いた。
「フロウは充分過ぎるほど強いよ。ちょっとえっちだけど。少なくともこの街にいる兵士や冒険者どもよりも遥かに強い。ちょっとえっちだけど。それに冷静に分析出来ているから指揮官としても優秀だと思うよ。ちょっとえっちだけど」
「……そうですの……? そう、なのでしょうか」
ナディの賞賛に、若干の照れを隠しきれずにそうとだけ答え、
「でも、どうして末尾に『ちょっとえっちだ』と付けるんですの! 明らかに蛇足ですわ!」
「えー。だってフロウったら、毎夜『アーチーアーチー』言いながら一人で捗ってるでしょ。気付かれていないとでも思ってた?」
「一人で捗る一人上手。えちちなフロランスさすおね」
「~~~~~~~~!?」
瞬時に赤面し、だが言い訳も反論も思い付かずにただ両手をふよふよ動かすフロランス。そのちょっと可愛い反応を、ニヨニヨしながらゲスい表情で見るナディ。完全にセクハラ親父である。
「そんなに好きなら押し倒しちぇば良いでしょ。大丈夫よ、後始末はしてあげるから」
「ちょちょっちょちょちょっと待ってにゃに言ってるにょか判りませんわ」
既に遅いと思いながらも、そうしてすっ惚けるフロランスであった。確実にもう遅いのは自分でも判っているが、こればかりは認めるわけにはいかないのだ。
「でも、まぁ、好きにするが良いわ。じゃあ私たちはちょっと行ってくるから」
言うだけ言って、その話題は終わりとばかりに切り上げて出立するナディ。その後に、当然とばかりにレオノールが続く。
「お待ちなさいな、ナディ」
フロランスはそのナディを呼び止め、だが振り返るのを待たずに訊いた。
「どうして其処までするんですの? 此処の迷宮氾濫は経緯や間接的な原因はともかく、言ってしまえばこの街の不始末なのですよ。はっきり言って、貴女たちには関係のないことですわ。なのに、其処までする理由が判りません。本当の理由を教えて欲しいですわ」
振り返り、真剣な眼差しで真っ直ぐに見詰めるフロランスを一瞥し、口元に優しげで優美な微笑みを浮かべ、
「困っているヒトたちを助けるのに、理由なんて要るのかい?」
サムスアップをしながら、ちょっと格好良さげにそう言った。
それを聞いたフロランスは、まるで意識せずにクソデカ溜息を吐く。
そう。ナディの言っていることは正しい。正しくて、真っ直ぐで、言ってしまえば正義そのものだ。
だから――ナディには似合わない。
そんな似合わないことを、果たしてなんの見返りもなくこの姉妹がするだろうか。
そう考えたフロランスは、だがすぐにあることに思い当たり、優美な微笑みを浮かべて男前な台詞を言ってサムズアップをしながらキメ顔をしているナディと、同じく半眼の無表情でサムズアップしているレオノールをジト目で見る。
「…………そういえば、オークのドロップ品はお肉でしたわよね」
「ギク」
「ドキ」
フロランスの推理に、判り易く動揺する姉妹。そして何処かで見たことのある光景だ。
「深層に行くほどにその質は良くなって、そして量もなかなかになるそうですわ」
「ヒューピヒューピ(口笛)」
「スピーピヒュー(口笛)」
「更に深層主のお肉ともなると最高級で、美食家垂涎の逸品だそうですわ」
「ふ……今日は綺麗な星空ね。心が洗われるようだわ」
「美しい風景はヒトの心を豊かにして結果生活に潤いを与える。星空最高」
「もしかしなくても、お肉目当てですの!?」
「ちょっと何言ってるか判らないわ」
「僅かな情報で解答を得る。フロランスさすおね」
「やっぱり惚けるのが下手過ぎますわ! あと『さすおね』と言われても、どうしても全然嬉しくないですの!」
そんないつか何処かで見た光景がひととおり繰り返され、ちょっとした問答の後、ナディとレオノールは夜闇に消えて行った。
それでも、事実として多数の同朋が消されたのは紛れもない事実である。よって魔物の――オークの軍勢はそれを為した正体不明の馬と翼のヒトを警戒し、また日が暮れ始めたために一時撤退し始めた。
夜行性であり暗闇は味方であるオークにとってその撤退指示は屈辱以外の何物でもなく、だが続いて空から落ちて来た質量攻撃にまたしても蹂躙される同朋を目の当たりにして初めて、その判断は正しかったと痛感した。
そうしてゆるゆると撤退を開始するオークたちの鋭敏な聴覚に、
「抜けがけはズルいお姉ちゃん。レオも追撃する。【ミラー】『【マキシマイズ・ソーサリー・ブースト】【マキシマイズ・マギエクステント】【ソーサリー・リバーブ】【マルチプル】【アトミック・ガイザー】」
複数の幼子の声が届く。しかしそれを気にする者はいない。ただ、屈辱的な黄昏時の撤退指示に不満はあるがそれは絶対であるため、名残惜しく振り返りながら後退し始め――地面から噴き出し天に突き刺さる無数の光の柱に声も無く消し飛ばされた。
その現象に数瞬呆然とし、だが間髪置かずに次々と噴き出す光の柱に同朋を消し飛ばされて恐慌状態に陥ったオークたちは、我先にと逃げ出した。
「……終わっ、た……?」
波が引くように去るオークたちを見て、城壁にいる誰かがそう呟き、それにより勝利の鬨の声が上がる。
「……まぁ、実際は終わってないんだけどね」
時間経過で強化が解除され、黄金の光が空へと昇り弾けるエフェクト効果を見て満足しているナディはそう呟き、直後に襲い来る疲労にぶっ倒れそうになるのを堪える。
そんな疲労困憊になりながらも、今回一番頑張ったであろうエンペラー・ブラッドレイ号――正式名称はヴィルバルト号だが、とにかく、そのまだ熱く汗だくの馬体を撫でた。息が上がってはいるものの、非常にご満悦である。
関係ないが、例のエフェクト効果は元からそうだったわけではない。ナディがそうなるように調整したのだ。
理由は、格好良いから!
何処ぞのガチムチさんが聞いたら確実に「五月蝿ぇわ」と言われること請け合いだ。
そうして一通り撫でた後に、そういえば車中のフロランスはどうなっているのかが気になり、
「大丈夫フロウ。取り敢えず今は終わっ――」
言いながらドアを開け――突発アクシデント真っ最中でくんつほぐれつ状態な二人を目の当たりにして、ゆっくりとドアを閉め、そして締めた。
『え? あ! 待って下さい母上! 誤解です話を聞いて――んぐぉ!?』
『ぁあん、いけませんわアーチボルト様……そ、其処は……ぅうん――』
などとナニかの声が聞こえる気がしたが、それはきっと気の所為だ。自分にそう言い聞かせて頷き、更に「大人になったねぇ、母は嬉しいよ。早く孫が見たいもんだ」と、どんな目線だと突っ込まれそうなことを考えていたりする。
「お姉ちゃんお疲れ様。でも無理しちゃ駄目」
「ああレオもお疲れ。ふふん、ヒトにはムリをすべき時があるのよ」
「引き時と頑張りどころを理解して実行する。さすおね」
そんな会話をし、互いに良い仕事をしたとばかりにサムズアップする姉妹である。
「ところでフロランス姉はどうしたの。馬車で遠心分離されていたようだけど」
「ああ、それは大丈夫。遠心分離どころかしっかり混じり合ってネチネチえちちしてたから」
「煮え切らないアーチーを陥落させる。フロランスさすおね」
確かに突発アクシデントは他者からはそうとしか見えないだろう。
それは取り敢えず置いといて。
現在疲労感がハンパないナディは、同じく疲労困憊で立っているのもままならず膝を折って地面に伏せるヴィルバルト号と共に、その場に座り込んだ。
御者台でまだクラクラしているガエル氏は、取り敢えずハーネスを外してそのヴィルバルト号を馬車から解放する。そして、なんか車内で妙な声がするため訝しみ、ガッチリ締まっているドアの施錠を外して開けてみた。
「ん……んん、酷い目に遭いましたわ。それと、一体どうなりましたの?」
「ちょっと母う――じゃないナディ様! 無言で閉じ込めるとは酷いではありませんか!」
そう言いながら、フロランスとアーチボルトが飛び出して来る。狭い空間に閉じ込められた上に戦闘や何やらで揺らされ大変だったのだろう。車内がなんかムワッとしているし妙な臭いもするし。
「えー? だって二人して一騎打ちの真っ最中だったでしょ。それを邪魔するのは無粋かなーって思ったのよ」
「過去現在未来でも男女の一騎打ちに口を挟めば馬に蹴られる。そんな命知らずはこの世にいない」
「何処から出ましたの、その意味不明な一騎打ち」
ちょっとアレな暗喩をするナディだが、そういう系はフロランスにとって理解の外であった。アーチボルトはしっかり理解しており、何やら弁明していたが。
「そんな痴情で縺れてた二人はさて置き」
そしてさて置かれる二人である。要は、どちらにするにしてもハッキリしない事項に労力を割くのは時間の無駄だと判断したのだ。端的に言ってしまえば、匙を投げたのである。
「まず、ガエル」
「え? あ、はい」
なにやらお互いを意識しながら弁明し続けている二人を見ながら、そういえばこんな時期もあったなぁとしみじみしている妻子持ちのガエル氏に、ナディが指示を飛ばす。
「あんたは今から早馬で王都に行って貰うわ。そして援軍要請をすること」
「え、でも、騎士であるわたしが居た方が戦力として有用なのでは……」
「騎士が一人増えるだけでどうこう出来る状況だと思っているの? んなわきゃないっしょ」
「それは――そう、ですが……」
「アンタはフロウの護衛騎士だって言いたいんだろうけど、こんな状況下で護衛も何もないのは判ってるわよね」
そう突き付けられた正論にぐうの音も出ない。だが援軍要請をしたとしても、直ちに来る保障は何処にもない上に、来るとしても数日――悪くすれば数週間は掛かるだろう。よって何方に転んでも、ガエル氏は護衛という任務を完遂出来ないのは容易に予測出来る。
「それと――」
だが続いて頼まれた言付けが妙に腑に落ちるものであり、そしてそれがきっと最善策であると理解したガエル氏は、自重を軽くするため鎧を脱ぎ捨てて帯剣のみの姿となり、書状を携えて足が速く持久力のある馬で日が沈む前に王都へと出立した。
ちなみにその書状は、フロランスの筆跡でレオノールが書いた物だったりする。人の筆跡を真似るのが何故か絶妙に巧いレオノールだった。
それに本人の公認だし、しっかりファルギエール家の印で封蝋されているのだから、全くの偽書ではない。……筈。
あとガエル氏が乗った駿馬はヴィレミナ号という栗毛の牝馬であり、後にファルギエール家がとある理由で買い取ることとなるのだが、それはどうでも良いだろう。
「さて、布石は打ったし――」
疲労が限界に達したナディは、事後処理をフロランスに押し付け、ついでにそれのサポートをするようにアーチボルトに厳命し、勝利に湧き立ちお祭り騒ぎになっている人々を尻目に、レオノールと共に宿の二階の一室に引っ込んで一眠りすることにした。
このまま朝までに何も無いと思えるほど楽観的ではないし、そもそもオークの軍勢があの程度である筈がないから。なにしろ、それらの根城は迷宮だ。その気になればいくらでも数を補給出来る。
それに――
「撤退の判断ががオークとは思えなほど潔いのよね。統率はなっちゃいないけど。……これは、確実に居るなぁ」
その可能性は予想していた。それに今考えてみれば、あれほどの数がいるのならば街の全周を包囲して攻めることも出来た筈。なのに、それをしなかった。予想される戦略として、一方向へ複数回攻め、其処からしか攻めないと思い込ませた上で別方向への奇襲。そんなところだろう。
「そもそも、なんでド平原の街なのに中途半端な城壁を築いただけなのよ。内堀は無理でも用水路を兼ねた外堀と城壁を二重にするとか、方法は色々あるでしょうに。誰よデザインしたの」
使えねー。そう考えながら、隣で既に寝息を立てているレオノールの寝顔を見て微笑み、ナディは寝に就いた――
深夜。
丁度日付が変わった頃に、ナディは覚醒した。
手洗いに行きたくなったとかではない。初めからこの時刻に起きる予定だったのだ。
起き上がり、そして短く息を吐いてからレオノールを起こさないようにベッドから降り――
「おはようお姉ちゃん。予定時間にきっちり起きる冒険者の鏡。さすおね」
レオノールも起きた。
「あ、ごめんね。起こしちゃった。まだ寝てて良いよ――」
「行くのでしょう、お母様」
簡単に出掛ける準備を始めているナディへ、レオノールが――いや、レオノールがそう言う。その眼差しはいつもの眠そうな、半眼のジト目ではない。翠瞳が宿る瞳を見開き、真っ直ぐに見つめている。
「あー、レオじゃなくレオノールに成ってるかぁ」
「お母様も、ナディではなくお母様に成っていますよ」
口元に手を当て、ことこと嫋やかに笑うレオノール。ナディは苦笑した。
「いやぁ、ちょっと昔を思い出たんだよね」
ナディが言う「昔」とはどの昔なのか、レオノールには判らない。知る限り少なくとも二回あり、そして今回が三回目だ。もしかしたらもっと繰り返しているのかも知れない。そう思う。
だがそれを言及するのは、野暮というもの。
過去がどうあれ、現在はナディという姉で、そして育ての親だ。
「でも、まぁ……ぶっちゃけちゃえば、危機管理がなっちゃいないデザインしか出来ない街なんて為政者諸共滅んじまえって思うけど、それで困るのは民草なんだよね。だから――」
「だから?」
ちょっと嫌そうに、それでいて言い訳がましく言い言葉を切るナディを、柔らかな微笑みを浮かべたレオノールが促す。
「ちょっと迷宮踏破して来るわ」
「わたしも行きます」
だと思った。やれやれと言わんばかりに溜息を吐き、ナディは肩を落とす。
正直にいうと、レオノールには此処に残って欲しい。迷宮踏破は危険だからではない。この街を守って欲しいのだ。
そもそも肉体の無い物理的に不死身な竜を単独撃破出来る、不死身で不死の魔王を滅ぼせるレオノールに、そういう心配をする方が無駄である。
「わたしがいなくとも、此処にはフロランス姉様がいます。あの方はまだ御自身の能力を理解出来ていませんが、オークの軍勢程度は歯牙にも掛けないでしょう」
「え? そうなの?」
フロランスの実力を正しく分析して評価するレオノールに対して、そんなことなど1ミリも考えちゃいないナディである。
そんな母であり姉でもあるナディを見て、秒でレオに戻るレオノールであった。
これはナディは知らない――というか興味がないから聞いても忘れることだが、ファルギエールの血族は揃いも揃ってヒト種とは思えないほどに一芸に富んでいる。
その最たる例が、自力で【魂の継承】を起こして魔王に覚醒したヴァレリーだ。その血族たるフロランスも、並のヒト種ではないだろう。
そういえば、ナディはふと思う。魔王妃の末娘が【魔力超回復】持ちだったなぁ。生きてるかなぁ。もしそうなら元気かなぁ……などとしみじみしちゃう、元おかーさんであった。
「よし。じゃあレオの案を採用しよう。じゃあ此処はフロウに任せて、早速行くわよ」
「ちっちゃいことは気にしないワカチコな切り替え。さすおね」
レオノールからレオに戻ってそう賛辞(?)するレオノール。色々流石である。
そんなシリアスから明らかに別へとシフトしながらお出掛けの準備をした二人は、オークの軍勢を撃退したことで完全にぶったるんで爆睡しちまっている兵士や冒険者どもに呆れながら、音もなく階下に降りる。
と――
「あら、こんな時間に何処へ行きますの?」
一階の食堂兼酒場のテーブルに着き、地図を見詰めて唸っているフロランスに見付かった。
「そう言うフロウも、なんで起きてるのよ」
見付かったことより何より、深夜にも関わらずまだ起きていて、更に指揮官でもないのに地図を見ながら唸っているフロランスに驚きを隠せないナディである。
「ちょっと気になることがありますの。この街の防備がザルで設計士や承認した領主に物申したくなるのはさて置き、オークがあっさり撤退したのに違和感がありますわ」
「へぇ」
やはりフロランスは只者ではない。もし性別が違っていたのなら、希望次第で宰相にも将軍にもなれそうだ。
本人にその気は全く無いだろうが。
「それで。二人は迷宮にお出掛けですのね」
地図を睨み、迷宮の位置を確認しながらフロランスが言う。確認ではなく確定だ。
「うんそう。ちょっと枯渇するくらい狩まくって踏破して来るわ」
だから、ナディもあっさりと自白する。そんな案の定な返答に、フロランスは天井を仰ぎ見て溜息を吐いた。
「そうすると思いましたわ。私もご一緒したいところですが、邪魔にしかなりませんわよね。つくづく、己の無力が嫌になりますわ」
「は? 無力? 冗談でしょ」
自虐するフロランスに素で驚き、何言ってんだコイツとばかりにそう言うナディ。その反応に、此方も拍子抜けしたように驚いた。
「フロウは充分過ぎるほど強いよ。ちょっとえっちだけど。少なくともこの街にいる兵士や冒険者どもよりも遥かに強い。ちょっとえっちだけど。それに冷静に分析出来ているから指揮官としても優秀だと思うよ。ちょっとえっちだけど」
「……そうですの……? そう、なのでしょうか」
ナディの賞賛に、若干の照れを隠しきれずにそうとだけ答え、
「でも、どうして末尾に『ちょっとえっちだ』と付けるんですの! 明らかに蛇足ですわ!」
「えー。だってフロウったら、毎夜『アーチーアーチー』言いながら一人で捗ってるでしょ。気付かれていないとでも思ってた?」
「一人で捗る一人上手。えちちなフロランスさすおね」
「~~~~~~~~!?」
瞬時に赤面し、だが言い訳も反論も思い付かずにただ両手をふよふよ動かすフロランス。そのちょっと可愛い反応を、ニヨニヨしながらゲスい表情で見るナディ。完全にセクハラ親父である。
「そんなに好きなら押し倒しちぇば良いでしょ。大丈夫よ、後始末はしてあげるから」
「ちょちょっちょちょちょっと待ってにゃに言ってるにょか判りませんわ」
既に遅いと思いながらも、そうしてすっ惚けるフロランスであった。確実にもう遅いのは自分でも判っているが、こればかりは認めるわけにはいかないのだ。
「でも、まぁ、好きにするが良いわ。じゃあ私たちはちょっと行ってくるから」
言うだけ言って、その話題は終わりとばかりに切り上げて出立するナディ。その後に、当然とばかりにレオノールが続く。
「お待ちなさいな、ナディ」
フロランスはそのナディを呼び止め、だが振り返るのを待たずに訊いた。
「どうして其処までするんですの? 此処の迷宮氾濫は経緯や間接的な原因はともかく、言ってしまえばこの街の不始末なのですよ。はっきり言って、貴女たちには関係のないことですわ。なのに、其処までする理由が判りません。本当の理由を教えて欲しいですわ」
振り返り、真剣な眼差しで真っ直ぐに見詰めるフロランスを一瞥し、口元に優しげで優美な微笑みを浮かべ、
「困っているヒトたちを助けるのに、理由なんて要るのかい?」
サムスアップをしながら、ちょっと格好良さげにそう言った。
それを聞いたフロランスは、まるで意識せずにクソデカ溜息を吐く。
そう。ナディの言っていることは正しい。正しくて、真っ直ぐで、言ってしまえば正義そのものだ。
だから――ナディには似合わない。
そんな似合わないことを、果たしてなんの見返りもなくこの姉妹がするだろうか。
そう考えたフロランスは、だがすぐにあることに思い当たり、優美な微笑みを浮かべて男前な台詞を言ってサムズアップをしながらキメ顔をしているナディと、同じく半眼の無表情でサムズアップしているレオノールをジト目で見る。
「…………そういえば、オークのドロップ品はお肉でしたわよね」
「ギク」
「ドキ」
フロランスの推理に、判り易く動揺する姉妹。そして何処かで見たことのある光景だ。
「深層に行くほどにその質は良くなって、そして量もなかなかになるそうですわ」
「ヒューピヒューピ(口笛)」
「スピーピヒュー(口笛)」
「更に深層主のお肉ともなると最高級で、美食家垂涎の逸品だそうですわ」
「ふ……今日は綺麗な星空ね。心が洗われるようだわ」
「美しい風景はヒトの心を豊かにして結果生活に潤いを与える。星空最高」
「もしかしなくても、お肉目当てですの!?」
「ちょっと何言ってるか判らないわ」
「僅かな情報で解答を得る。フロランスさすおね」
「やっぱり惚けるのが下手過ぎますわ! あと『さすおね』と言われても、どうしても全然嬉しくないですの!」
そんないつか何処かで見た光景がひととおり繰り返され、ちょっとした問答の後、ナディとレオノールは夜闇に消えて行った。
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