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第一章 シャラ
四、出会い
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まっすぐに伸びる道の両脇に、びっしりと店が並んでいます。
シャラはあちこちに目を配らせて歩きます。「危ねーぞ」というミタマの注意には、耳を貸そうともしません。
「これが京!?」
「全然まだなんだけど」
はしゃぐシャラに、ミタマはため息を吐きます。
ミタマの忠告通り、余所を向いている時にシャラは前から来た人にぶつかってしまいました。体勢を崩し、地面に手と膝をぶつけます。
「いったあ」
周囲を睨みまわしても、ぶつかったと思しき人の姿は見当たりません。シャラは眉間に皺を寄せました。
「ミタマ! 私にぶつかってきた奴をとっちめてきなさいよ!」
「どのくらい?」
「そいつが泣いて許しを請うまで!」
ミタマは身を翻して、人混みの中に溶け込んでいきました。
ひとり残ったシャラは、道の端に寄ると座り込み、大きく息を吐きます。
着物は土で汚れてしまいました。裾を少しめくると、膝をすりむいています。シャラはしかめ面を作りました。
「大丈夫?」
その声と差しのべられた手は、ミタマのものではありませんでした。
顔を上げると、シャラが今まで見たことのない上品な顔立ちに、身なりの整った男と目が合いました。それだけで、シャラの顔は真っ赤になってしまいます。
男の手を恐る恐る取ると、くいと軽く、しかし力強く引っ張り上げられました。
「血が出ているよ。ちょっと失礼」
そう言い置いて、男はシャラをひょいと抱きかかえました。
シャラはもう全身が真っ赤なのではないかと思うほど体が火照ってしまいました。心臓が壊れてしまうぐらい、どくどくと高鳴っています。
男は、大きくて立派な店へと入っていきました。
店の中には、様々な色や柄の布が所狭しと置かれています。どうやら呉服店のようです。
店の者は男を見るなり、「おかえりなさいませ、若旦那」などと声を掛けています。
シャラは口をあんぐりと開けて、自分を抱える男を見つめていました。
男は店の奥でシャラをおろすと、どこかへ行ってしまいました。なんだか居心地が悪く、シャラはそわそわと自分の着物の裾を弄ります。汚れた着物がこの場にふさわしくないもののように見えて、恥ずかしさのあまり逃げ出したい衝動に駆られました。
まもなく、男がシャラの元へ帰ってきました。手には箱を持っています。
しゃがみこんで箱を床に置き、蓋を開きました。薬や布が詰め込まれています。
男はシャラの膝にできた傷に、薬を塗りました。焼けるような痛みに、シャラは歯を食いしばります。そうしている間に、男は傷口の上から布を巻いてくれました。
その優しい手つきに、シャラは惚れ惚れとしていました。
「もう大丈夫」
その言葉でシャラは我に返りました。体中がひどく熱くなっており、じんわりと汗をかいているのが分かりました。
「あっあの!」
声が裏返り、シャラの顔はますます赤くなりました。それでも、勇気を振り絞って言葉を続けます。
「あの、ありがとうございました。私、シャラと言います」
男は真っ赤に染まっているシャラを見て、にこりと微笑みました。
「どういたしまして。僕はコマダ」
微笑まれたことと、名前を教えてもらったこととで、シャラは有頂天になりました。
「助けてもらったお礼がしたいのですが……何なりと仰ってください。できないことは、ほとんどありませんから!」
その発言に、コマダは不思議そうに首を傾げました。その視線はシャラの真っ赤な顔と、それから汚れてしまった着物に注がれます。
「じゃあ、僕が着物を選ぶから、シャラさん、それを買ってくれる?」
「そ、そんなことでいいんですか?」
「もちろん」
シャラは目を丸くしてコマダを見ました。
シャラはあちこちに目を配らせて歩きます。「危ねーぞ」というミタマの注意には、耳を貸そうともしません。
「これが京!?」
「全然まだなんだけど」
はしゃぐシャラに、ミタマはため息を吐きます。
ミタマの忠告通り、余所を向いている時にシャラは前から来た人にぶつかってしまいました。体勢を崩し、地面に手と膝をぶつけます。
「いったあ」
周囲を睨みまわしても、ぶつかったと思しき人の姿は見当たりません。シャラは眉間に皺を寄せました。
「ミタマ! 私にぶつかってきた奴をとっちめてきなさいよ!」
「どのくらい?」
「そいつが泣いて許しを請うまで!」
ミタマは身を翻して、人混みの中に溶け込んでいきました。
ひとり残ったシャラは、道の端に寄ると座り込み、大きく息を吐きます。
着物は土で汚れてしまいました。裾を少しめくると、膝をすりむいています。シャラはしかめ面を作りました。
「大丈夫?」
その声と差しのべられた手は、ミタマのものではありませんでした。
顔を上げると、シャラが今まで見たことのない上品な顔立ちに、身なりの整った男と目が合いました。それだけで、シャラの顔は真っ赤になってしまいます。
男の手を恐る恐る取ると、くいと軽く、しかし力強く引っ張り上げられました。
「血が出ているよ。ちょっと失礼」
そう言い置いて、男はシャラをひょいと抱きかかえました。
シャラはもう全身が真っ赤なのではないかと思うほど体が火照ってしまいました。心臓が壊れてしまうぐらい、どくどくと高鳴っています。
男は、大きくて立派な店へと入っていきました。
店の中には、様々な色や柄の布が所狭しと置かれています。どうやら呉服店のようです。
店の者は男を見るなり、「おかえりなさいませ、若旦那」などと声を掛けています。
シャラは口をあんぐりと開けて、自分を抱える男を見つめていました。
男は店の奥でシャラをおろすと、どこかへ行ってしまいました。なんだか居心地が悪く、シャラはそわそわと自分の着物の裾を弄ります。汚れた着物がこの場にふさわしくないもののように見えて、恥ずかしさのあまり逃げ出したい衝動に駆られました。
まもなく、男がシャラの元へ帰ってきました。手には箱を持っています。
しゃがみこんで箱を床に置き、蓋を開きました。薬や布が詰め込まれています。
男はシャラの膝にできた傷に、薬を塗りました。焼けるような痛みに、シャラは歯を食いしばります。そうしている間に、男は傷口の上から布を巻いてくれました。
その優しい手つきに、シャラは惚れ惚れとしていました。
「もう大丈夫」
その言葉でシャラは我に返りました。体中がひどく熱くなっており、じんわりと汗をかいているのが分かりました。
「あっあの!」
声が裏返り、シャラの顔はますます赤くなりました。それでも、勇気を振り絞って言葉を続けます。
「あの、ありがとうございました。私、シャラと言います」
男は真っ赤に染まっているシャラを見て、にこりと微笑みました。
「どういたしまして。僕はコマダ」
微笑まれたことと、名前を教えてもらったこととで、シャラは有頂天になりました。
「助けてもらったお礼がしたいのですが……何なりと仰ってください。できないことは、ほとんどありませんから!」
その発言に、コマダは不思議そうに首を傾げました。その視線はシャラの真っ赤な顔と、それから汚れてしまった着物に注がれます。
「じゃあ、僕が着物を選ぶから、シャラさん、それを買ってくれる?」
「そ、そんなことでいいんですか?」
「もちろん」
シャラは目を丸くしてコマダを見ました。
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