白鬼のミタマ

月並

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アンハッピーバースディ 1

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 大きな欠伸をひとつかき、ミタマは目を覚ましました。日はすっかり赤く染まっています。

 ふと彼は、隣にサラがいないことに気が付きました。
 のそりと起き上がり、名前を呼びながら家の中を探します。押入の中、厠、そして、

「我が息子」

 声が掛かったのは、台所へ足を踏み入れたときでした。

「うわっ、親父」

 台所の隅には、いつのまにか国人が立っていました。一振りの刀を脇に抱えて、薄笑いを浮かべています。

「久しぶりだな。半年ぐらいか? 最長記録じゃない?」
「それより飯にするぞ」
「まだ支度してないぞ」
「俺が作っておいてやった」

 国人の笑顔は夕日に照らされ、赤く染まっていました。
 ミタマの胸に、微かに不安が湧いてきました。が、気のせいだろうと思い、ミタマはそれをすぐに追い払いました。

「そういや親父、サラを見てないか?」
「まあ座れ」

 国人は台所から出て行きました。
 ミタマが後を追うと、そこにはいつの間にか、ふたり分のご飯と味噌汁がありました。湯気を立てて、ミタマと国人を待っています。
 ぐうと腹の虫が鳴いたので、とりあえず味噌汁をひと口飲むことにしました。

「なあそれより親父、サラ知らな……」

 ミタマの身体に異変が起こったのは、その時でした。

 脈がばくばくと波打ち、全身の血液が急にその流れる速度を速めました。
 身体全体が火照り始めます。冬だというのに、汗が出るほどです。

 吐き気がして、ミタマは思わず口を押さえました。
 手にちくりと何かが刺さりました。それが何か考えるゆとりもなく、ミタマはその場に突っ伏しました。
 座っている事さえままならならないほどのめまいに襲われます。

 やがてそのめまいは治まり、体も冷えていきました。汗で湿った体に、冬の空気はひどく冷たく感じ、ミタマは身震いしました。
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