白鬼のミタマ

月並

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火種 6

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 ミタマは再び井戸へ向かいました。

「こいつの親はいないか?」

 ミタマが声を張り上げると、皆が顔を上げ、彼が抱いている子どもに目をやりました。

 ひとりの女性が、髪を振り乱してかけてきます。ひったくるようにして、ミタマから子どもを取りました。
 女性は子どもが目を覚まさないのを見て、その場に泣き崩れました。

 その後ろから、ゆっくりと男が現れました。顔を真っ赤にし、こめかみに青筋を立てている男は、いきなりミタマを殴りました。
 ミタマは少しよろけましたが、倒れず足を踏ん張りました。

「よくも、よくもうちの息子を!」

 男はもう一発、ミタマを殴りました。目から火花を散らしたミタマは、さすがに耐えきれずに地面に手をつきました。

「何するのよ!」

 激高したサラが、膝をついたミタマを抱きしめます。
 村人たちが、ざわめき始めました。

「お、鬼だ! あの野郎、とうとう鬼を飼い始めやがった!」

 サラがギリ、と歯を食いしばり、立ち上がります。

「全員喰ってやる!」

 ミタマが見上げると、彼女は紫の目を爛々とたぎらせ、村人たちを睨みつけています。そんな彼女の様子に、村人たちは顔を青くしました。
 そんな中、ミタマを殴った男が、青ざめながらも拳を握りしめたのを、ミタマは見逃しませんでした。
 急いで起き上がり、サラを優しく引き寄せます。

「帰ろう、サラ」
「でもっ!」

 泣きそうな顔をするサラの頭を、ミタマはゆっくり撫でました。サラは口をぱくぱくとさせた後、俯いてしまいました。
 サラの手を握って、ミタマはぐるりと周囲を見回します。口は一の字に結ばれていますが、その目は穏やかなままです。

「二度とここには来ない。だから、俺たちの所にも来ないでほしい」

 村人からの返事はありませんでした。
 回れ右をして、ミタマはサラを連れて、山道へ戻っていきました。
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