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誰かの記憶
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首と手足に、鈍い光を放つ枷がはめられた。ずしりとした重みのせいで、動くのが億劫になる。
「これからこの国は、目の色で身分を定めることにした。紫が王、赤と青が貴族、緑が王と貴族の従者、灰が商人、茶が技能職、黒が農民、金は奴隷。金目のお前は、今日から奴隷だ」
枷をはめた張本人は、紫色の目を細くしてせせら笑っていた。
抵抗する気はない。だけど、聞きたいことはあった。顔を上げると、男は一瞬たじろぐ。
「刀は?」
「あ、ああ、あれは城の奥の聖堂に、厳重に保管させてもらっている。なんせ大事なご神体だからな。金の目のお前が、取り返せると思うな」
最後には威勢のいい態度に戻っていたが、声が少し震えている。虚勢だ。怖がっている。
本当なら、一思いに殺してしまいたいところなのだろう。でもそれは無理だから、最下級の身分に落として、枷をはめて、自由を奪うことにした。そんなところだろう。
紫の目の男の後ろから、奴隷商人を名乗る灰色の目の男が現れた。商人とはとても思えないほど、屈強な体つきをしている。
彼に首根っこを掴まれて、引きずられるようにして連れてこられたのは、大きい檻の中だった。そこには同じように首と手足に枷をはめられた、金色の目の人たちがいる。
殴られたのだろう、顔や手足を腫らしている人や、ただ涙を流している人、呆然としている人、枷を外そうと躍起になっている人。そういった人たちが、老若男女問わず押し込まれていた。
「聞け、金の目の輩ども! お前たちがこんな目にあっているのは、こいつのせいだ!」
檻の扉を乱暴に閉めた後、商人はこちらに向けて人差し指を突き出す。
「こいつは白鬼様に仇を成した! 白鬼様は、金の目の人間は許さぬ、罰を与え続けよと仰って、刀だけを残してお隠れになってしまった! だから今日より、お前たち金の目を持つ者は奴隷となり、罰を受け続けるのだ!」
檻の中にざわめきが広がる。殺意のこもった視線が刺さる。
「お前のせいでっ!」
枷を外そうとしていた男がいきなり立ち上がると、外そうとしていたそれを振り下ろす。肩に重い痛みが落ちた。
「そうだ、白鬼様に害を成すだなんて、なんてことをしてくれたんだ!」
「あの方はすべての民に心を配られる、それはお優しい方だったのに!」
「人でなし!」
たくさんの人に殴られた。蹴られた。
抵抗する気はない。気の済むまで、殴るなり蹴るなりしてくれればいいと思った。彼らに罪は何もないのだから。
誰かの足が、額に当たった。全身に電流を流されたかのような熱い激痛が走ったかと思うと、そのまま意識を手放した。
「これからこの国は、目の色で身分を定めることにした。紫が王、赤と青が貴族、緑が王と貴族の従者、灰が商人、茶が技能職、黒が農民、金は奴隷。金目のお前は、今日から奴隷だ」
枷をはめた張本人は、紫色の目を細くしてせせら笑っていた。
抵抗する気はない。だけど、聞きたいことはあった。顔を上げると、男は一瞬たじろぐ。
「刀は?」
「あ、ああ、あれは城の奥の聖堂に、厳重に保管させてもらっている。なんせ大事なご神体だからな。金の目のお前が、取り返せると思うな」
最後には威勢のいい態度に戻っていたが、声が少し震えている。虚勢だ。怖がっている。
本当なら、一思いに殺してしまいたいところなのだろう。でもそれは無理だから、最下級の身分に落として、枷をはめて、自由を奪うことにした。そんなところだろう。
紫の目の男の後ろから、奴隷商人を名乗る灰色の目の男が現れた。商人とはとても思えないほど、屈強な体つきをしている。
彼に首根っこを掴まれて、引きずられるようにして連れてこられたのは、大きい檻の中だった。そこには同じように首と手足に枷をはめられた、金色の目の人たちがいる。
殴られたのだろう、顔や手足を腫らしている人や、ただ涙を流している人、呆然としている人、枷を外そうと躍起になっている人。そういった人たちが、老若男女問わず押し込まれていた。
「聞け、金の目の輩ども! お前たちがこんな目にあっているのは、こいつのせいだ!」
檻の扉を乱暴に閉めた後、商人はこちらに向けて人差し指を突き出す。
「こいつは白鬼様に仇を成した! 白鬼様は、金の目の人間は許さぬ、罰を与え続けよと仰って、刀だけを残してお隠れになってしまった! だから今日より、お前たち金の目を持つ者は奴隷となり、罰を受け続けるのだ!」
檻の中にざわめきが広がる。殺意のこもった視線が刺さる。
「お前のせいでっ!」
枷を外そうとしていた男がいきなり立ち上がると、外そうとしていたそれを振り下ろす。肩に重い痛みが落ちた。
「そうだ、白鬼様に害を成すだなんて、なんてことをしてくれたんだ!」
「あの方はすべての民に心を配られる、それはお優しい方だったのに!」
「人でなし!」
たくさんの人に殴られた。蹴られた。
抵抗する気はない。気の済むまで、殴るなり蹴るなりしてくれればいいと思った。彼らに罪は何もないのだから。
誰かの足が、額に当たった。全身に電流を流されたかのような熱い激痛が走ったかと思うと、そのまま意識を手放した。
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