靴ひも

陽紫葵

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靴ひも

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1週間で、痛みも徐々に取れ、歩行器や杖を使って歩けるようになった。
2週間後、自力で歩けるようになり、退院許可が出た。
「日比の部屋、エレベーターないって言ってたじゃん?」
「うん」
3階までのアパートの3階だ。狭いし、生活しにくくはある。
「俺んとこ来ない?」
「え~?」
「そんな、びっくりするなよ」
「だって」
「俺んちは5階だけど、エレベーターあるし、部屋も一人では広いくらいで、物置になってて使ってない部屋が1つあるんだ」
「そんな、迷惑じゃ・・・」
「俺が誘ってるんだよ?」
「そうだけど」
「退院して、1か月くらいは通いでリハビリ通うことになると思うからさ、俺も一緒に行けるし。マッサージとかも家でしてあげられるしな」
「なんか、色々考えてくれて嬉しい」
「じゃあ、いい?」
「うん。よろしくお願いします」
「学校もそのうち行くんだろ?」
「うん」
今はオンラインなども利用しながら、勉強している。
1番仲のいい理名ちゃんにも色々お願いした。
家に行って、物を取りに行ってもらったり。
部屋の鍵を渡してもいいくらい、信用できるのは彼女だけだ。
「じゃあ、その時は、俺が送り迎えしてやるよ」
「そこまではいいです。一人で行けますよ」
「いや、心配だ」
「なんか、保護者みたい」
「いいじゃん」
退院の日、叶野さんは付き添ってくれてた。
「もう、担当は日比だけだからな」
「そっか」
病院を出て、先に私のアパートに寄ってもらって、着替えなど荷物を持ち出した。
「急にしては、部屋、片付いてるな」
「荷物少ないし」
そして、叶野さんの部屋へ。
10階ほどのマンションで、エレベーターで5階まで上がった。
荷物は叶野さんが持ってくれていて、
「疲れてないか?」
「少し。あ、荷物、重いですよね?」
「いや、これくらい」
エレベーターを降りるとき、荷物を持ちながらも、手を繋いでくれた。
部屋は、確かに広い。リビング続きのキッチンがあり、部屋の扉が3つ。
ソファーに座って、
「今更だけど、なんか、ごめんな、俺が色々決めちゃって」
「ううん、ありがたいですよ、私は」
「そっか、それならいい」
「あの、荷物・・・」
「あ、そうだな」
叶野さんは1番奥の扉を開け、
「この部屋使って」
と、荷物を運んでくれた。
「ありがとう」
「着替える?」
「うん、そうだね」
楽な、部屋着のようなものがいい。寝巻にもなるものを何着か持ってきた。
扉を閉め、鞄から着替えを出して着替えた。
部屋を見渡していたが、物置って言ってたけど、ベッドもあるし、本棚もあるし、叶野さんが使ってた気配がある。
部屋を出て、
「あの部屋・・・」
「あぁ、ベッド必要だと思ってさ」
「叶野さんは?」
「俺はこっち」
と、手前の扉を開けて、中を見たら、ダンボールがいくつかあって、ソファーベッドが置かれていた。
「ここに寝るんですか?」
「そうだな。あ、そっちのソファーに寝ることもあるしな」
「ごめんなさい、私が占領しちゃって」
「いいんだって、気にするな。ま、怪我治るまでだしな」
「頑張ります」
「おぉ」
と言って、頭を撫でた。
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