あの日のこと

陽紫葵

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あの日のこと

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昇矢くんが出張から帰ってきた。
「はい、お土産」
と、その土地のお菓子を買ってきてくれた。
「里桜、もしかして、俺ん家行った?」
「え?」
「変な子が来た、って言ってたんだけど、まさかな」
「えっと・・・」
膝の絆創膏を見て、
「ここ、痛い?」
「ううん、もう痛くない」
ふっとため息をついてから、
「もう、止めようか、会うの」
「え、ヤダ」
「もう、なんか、疲れたよ、俺」
「私に会いたくないってこと?」
「そうかもな」
「そっか、わかった」
私はベランダに行き、飛び降りようとした。
ここは2階だから、落ちても死ぬようなことはないかもしれない。それでも、咄嗟に思いついた行動だ。
昇矢くんは、
「何してるんだよ」
「ほっといて」
「ほっとけるかよ」
「もう、私の事なんか・・・」
そうやってもみ合っていたら、私じゃなく、昇矢くんが落ちた。
私は、玄関から外に飛び出して、駆け寄った。
「昇矢くん」
意識がない。どうしよう?
通りかかった人が救急車を呼んでくれて、私も乗って行った。
すぐに処置をしてくれて、集中治療室に入った。
病院の人が奥さんに連絡してくれた。
すぐに駆けつけてきて、私は、
「ごめんなさい」
と言うしかなかった。
慶子さんが付き添っているのを見ていたら、私はいたたまれなくなって、病院を出た。
家に帰ってから、私、どうしようもない事をしてしまった事を悔やんだ。
私は、多量の薬を飲んだ。
段々と、意識が遠のく。
これで、楽になれる。
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