あの日のこと

陽紫葵

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あの日のこと

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1時間程して、あの番号から着信があった。
「もしもし」
「もしもし、ごめんなさい、別の人と間違えて、失礼な対応をしてしまったよね。あの、僕に用なのかな?」
「いえ、私も、間違いです、ごめんなさい」
「そう、なの?」
え、何でこんなこと言ってしまったのだろう?
この声は、聞き覚えがある。きっと、昇矢くんだよ。
「じゃあ・・・」
「ううん」
「え?」
「やっぱ、間違いじゃないかもしれない」
「え、どっちなの?」
「あの、昇矢くん?」
「あ、そうだけど、君は?」
「私、里桜です。20年近く前、まだ、6歳の時、歌手やってた」
「歌手?あぁ、あの時の里桜ちゃん?」
「覚えてます?」
「覚えてるよ」
「あの時は、ありがとうございました」
「いや、俺は別に。あ、でも、歌手辞めちゃったんだね?」
「うん。小学校になったら、仕事なくなって」
「そっか。でも、何で、今、俺に?」
「部屋の整理してたら、昔の宝箱が出てきて、その中に昇矢くんの名刺が入ってて、なんか、声聴きたいなぁって思っちゃって」
「へぇ、嬉しいなぁ」
「番号、変えてなくてよかった」
「あぁ、面倒いしな」
「あのぉ、昇矢くんに会いたい」
「そんなこと言われてもなぁ」
「ダメですか?」
「俺、あの時と違って、おじさんだよ」
「そんなの関係ない」
「しょうがないなぁ。今何処?」
私は家にいた。
場所を教えると、すぐに車で迎えに来てくれた。
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