信じていれば

陽紫葵

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信じていれば

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次の日、10時頃にチェックアウトし、駅のコインロッカーに預け、バスに乗った。
「どこ行くの?」
「大仏見に行こうか?」
「え、懐かしい。多分、小学校の遠足で来たきりだと思う」
「俺も、そんな感じ」
奈良に住んでたのは中学まで。中学の間は、仕事はほとんど休みの日で、平日の時は休むこともあったけど、奈良から通っていた。中学卒業後、事務所の寮に入り、東京の高校に通ってた。舞台の仕事をしていた頃も、寮で生活しつつ、地方に出ていた。舞台の仕事を終える少し前の5月に、寮の部屋を開けて欲しいと言われ、アパートで一人暮らしをするようになった。その時も、事務所の人が決め、荷物も運んでくれていた。
イベントで来た時も、ゆっくり出来なかった。
奈良でデートするのも初めてだなぁ。
「隼人くんは、高校まで奈良だったの?」
「そうだな。デビュー決まってからも、卒業までは奈良から通ってたからな」
「高校の時、この辺でデートとかしてた?」
「デート?そうだなぁ・・・」
「あ、やっぱいいや」
「何、聞いといて」
「だってさ・・・」
「やきもち?」
「う~ん・・・かも」
きっと、高校の頃、彼女いてデートしてたんだよ。でも、やっぱ想像すると、胸が苦しくなる。
東大寺に行ったり、その辺をブラっとした。
お昼も近くの食堂で食べた。
2時頃、
「もっとゆっくりしてきたいけど、疲れただろ?」
「ううん、私は別に。あ、隼人くん疲れてるよね?」
「まぁな。帰ろうか」
「うん」
近鉄電車で京都まで行き、新幹線で東京に帰った。
「前はさ、奈良出身ってこともあまり言わなくて、ライブで行くことも少なかった。今回、最終日にしてさ、不安あったけど、盛り上がってよかったよ」
「うん、暖かい感じだった」
「だな」
「私も、ソロでライブしたいなぁ」
「うん、俺も見たい」
「協力してくれないの?」
「客席から見てたいけどなぁ」
「え~」
「わかったよ、後ろからちゃんと見てるから」
「見てる?」
「演奏してほしい?」
「うん」
「しょうがないなぁ」
「そんな言い方」
「むくれた顔も可愛い」
「もう、からかってる」
着く間際、
「このあとさ、外で食べてこうと思ったけど、部屋の方がゆっくりできると思って、出前頼んであるから、時間たっぷりお祝いするからな」
「お祝いって、もう十分だよ」
「いやいや、あれはただのデート。まだこれからだよ」
駅を降りて、私は荷物を持ったまま、隼人くんと一緒に、隼人くんの家にタクシーで向かった。
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