信じていれば

陽紫葵

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信じていれば

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そして、数日後、キッツハイが集まった。
「私もいてもいいの?」
「万帆ちゃんにも、俺たちの演奏で歌って欲しいしな」
先に私のシングル発売が決まり、歌番組にも出た。
キッツハイもバンド演奏をしてくれた。
タイアップは何もなく、初動はよくなかったが、徐々に口コミで広がり、5週目で、総合ランキング1位を取った。デビューした頃は2番手ばかりだった。1位なんて初めてだ。
その日、キッツハイの3人と、南部さんとで、お祝いした。
集まったのは、隼人くんの家。
慧くんと共生くんは、結婚してて、家には行けない。
南部さんも、予定があるからと、車で来ていて、飲まずに帰って行った。
一番、隼人くんが嬉しそうで、飲むペースも早く、いつの間にか酔いつぶれて、ソファーに横になっていた。
「こんな隼人見るの初めてだよ」
と、慧くんは言った。
食べたものの洗い物をしていたら、慧くんと、共生くんが、
「俺たち、もう帰るけど」
「あの酔っ払い気にしなくていいから」
「うん、私も、これ片付けたら帰る」
「じゃ、気をつけてな」
と、2人は帰って行った。
洗い物を済ませ、隼人くんの所に行くと、起きてて、ソファーにもたれかかって座っていた。
「ごめんな」
「ううん」
「あいつら帰ったんだな」
「うん。私も帰ろうかな」
「もう少しいいじゃん」
「でも・・・」
「いいから、ここ座って」
ソファーのシートを指した。
座ると、隼人くんも並んで座った。
「万帆ちゃん」
そう言うと、抱き寄せられ、
「酔ってる?」
「かもな」
「あの・・・」
「ごめん」
離れ、今度は腕を掴んだ。
「万帆ちゃん、ずっと、俺のそばにいて欲しい」
「え?」
「仕事だけじゃなくて、プライベートでも」
「それって・・・」
「うん、俺の彼女になって欲しい」
嬉しいのに、びっくりしすぎて、言葉にならなかった。
隼人くんは、私の両肩に手をやり、覗き込むように、
「万帆ちゃん、好きだよ」
私は、抱きつくように顔をうずめ、泣いてしまった。
「万帆ちゃん?」
顔を上げると、隼人くんの顔が近くにあって、私は目を閉じると、隼人くんはキスをした。
考えてみたら、私は、役でしか経験がない。キスも、それ以上も。
中2でこの世界に入り、恋愛もしてこなかった。
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