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プロローグ
15年目.重なる
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高校を卒業してから早15年。
僕はもう30を過ぎてしまった。
僕はあのあと、医者になった。
(もちろん二浪してから。)
花火のことがあったからなのか、自然と医者を志すようになっていた。
今日も仕事が始まる。
僕が務めているのは救命救急科。
ICUのほうではあるが、毎日命と向き合っている。
「○○さん、この患者さん褥瘡できてないか毎日ちゃんとチェックしといて。」
『指示は的確にだすことが大切。』
先輩ドクターからいたいほど言われた。
「そういえば、そろそろ花火の命日だな。」
そんなことを思っていたときだった。
「先生!!183号室の川瀬さんが急変しました!」
すぐに病室へと走る。
「状態は!?」
「CPAです!今、心マしてます!」
病室に着いたときには先輩ドクターも駆けつけていた。
「豊野!変わってくれ!」
「はい!」
「1.2.3.4.5.……」
「チェック入ります!」
ピーーー…
まだ心臓は動き出さない。
「くそっ!!電気ショック!」
ピーーー…
「豊野!心マ再開!」
僕たちは手を尽くした。
だが患者は助からなかった。
蘇生中に駆けつけた家族が、延命措置は望まないと言った。
僕の心の中で何かが動いた。
川瀬さんは17歳の女子高生。
下校中に事故に巻き込まれた。
かなりの重傷を負っていたため、
意識が戻るかどうかは本人の体力次第だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
死亡確認後の病室。
そこには僕たち医療関係者、
そして川瀬さんの家族がいた。
「真由…、よく頑張ったね……。」
僕の心の中で15年前の光景が蘇った。
「真由…、愛してるよ…。」
堪え切れなくなった。
あのとき知った愛してるの重み。
花火が生きているうちに言えなかった言葉。
15年前の光景と重なった。
きっとこの人たちの涙も、
やり場のない怒りと悲しみが入り混じっているのだろう。
人の重み・大切さは失ってから初めて気付く。
それを経験した僕にとって、この人たちの気持ちは痛いほどわかるのだった。
それからしばらくして、花火のお墓まいりに行った。
夏の花をいっぱいさした。
「花火…、この前ね15年前のことはっきりと思い出したんだ。
あー、僕もこんな感じだったな…、
花火がいたらどんなに幸せだろうって想像したか。それが全部重なっちゃったよ。」
頬をつたうものがあった。
僕はまだ立ち直れていないのだろうか。
それともあの出会いが強烈すぎたのだろうか。
花火に問うても答えは帰ってこない。
少し落ち込みながら帰っていた。
「花火…、僕はまだ立ち直れていないのかな…。」
帰り道でぽつりと呟いたときだった。
「おじちゃん!」
5歳ぐらいの女の子がなぜか足元で僕を呼んでいた。
「なんでそんなに怖い顔してるの?
わかった!おじちゃんの将来の夢は鬼さんだからただ!」
はっと、気がついた。
この言葉、花火がよく言っていた言葉だ。
「君っ…。」
そう思い足元を見てみたけどそこには誰もいなかった。
ただ、その子が少しだけ花火に似ていたような気がした。
ちょっと気持ちが楽になった。
さー!明日も頑張ろうかな。
晴れ晴れした気分で帰途につくのであった。
僕はもう30を過ぎてしまった。
僕はあのあと、医者になった。
(もちろん二浪してから。)
花火のことがあったからなのか、自然と医者を志すようになっていた。
今日も仕事が始まる。
僕が務めているのは救命救急科。
ICUのほうではあるが、毎日命と向き合っている。
「○○さん、この患者さん褥瘡できてないか毎日ちゃんとチェックしといて。」
『指示は的確にだすことが大切。』
先輩ドクターからいたいほど言われた。
「そういえば、そろそろ花火の命日だな。」
そんなことを思っていたときだった。
「先生!!183号室の川瀬さんが急変しました!」
すぐに病室へと走る。
「状態は!?」
「CPAです!今、心マしてます!」
病室に着いたときには先輩ドクターも駆けつけていた。
「豊野!変わってくれ!」
「はい!」
「1.2.3.4.5.……」
「チェック入ります!」
ピーーー…
まだ心臓は動き出さない。
「くそっ!!電気ショック!」
ピーーー…
「豊野!心マ再開!」
僕たちは手を尽くした。
だが患者は助からなかった。
蘇生中に駆けつけた家族が、延命措置は望まないと言った。
僕の心の中で何かが動いた。
川瀬さんは17歳の女子高生。
下校中に事故に巻き込まれた。
かなりの重傷を負っていたため、
意識が戻るかどうかは本人の体力次第だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
死亡確認後の病室。
そこには僕たち医療関係者、
そして川瀬さんの家族がいた。
「真由…、よく頑張ったね……。」
僕の心の中で15年前の光景が蘇った。
「真由…、愛してるよ…。」
堪え切れなくなった。
あのとき知った愛してるの重み。
花火が生きているうちに言えなかった言葉。
15年前の光景と重なった。
きっとこの人たちの涙も、
やり場のない怒りと悲しみが入り混じっているのだろう。
人の重み・大切さは失ってから初めて気付く。
それを経験した僕にとって、この人たちの気持ちは痛いほどわかるのだった。
それからしばらくして、花火のお墓まいりに行った。
夏の花をいっぱいさした。
「花火…、この前ね15年前のことはっきりと思い出したんだ。
あー、僕もこんな感じだったな…、
花火がいたらどんなに幸せだろうって想像したか。それが全部重なっちゃったよ。」
頬をつたうものがあった。
僕はまだ立ち直れていないのだろうか。
それともあの出会いが強烈すぎたのだろうか。
花火に問うても答えは帰ってこない。
少し落ち込みながら帰っていた。
「花火…、僕はまだ立ち直れていないのかな…。」
帰り道でぽつりと呟いたときだった。
「おじちゃん!」
5歳ぐらいの女の子がなぜか足元で僕を呼んでいた。
「なんでそんなに怖い顔してるの?
わかった!おじちゃんの将来の夢は鬼さんだからただ!」
はっと、気がついた。
この言葉、花火がよく言っていた言葉だ。
「君っ…。」
そう思い足元を見てみたけどそこには誰もいなかった。
ただ、その子が少しだけ花火に似ていたような気がした。
ちょっと気持ちが楽になった。
さー!明日も頑張ろうかな。
晴れ晴れした気分で帰途につくのであった。
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