桜と花火、それと僕

やっすー

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20日目.奇跡

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僕はしばらく経ってから車椅子での移動ができるようになった。

だから、勇気を出して花火のところへ行ってみることにした。

「193号室   糸田川 花火」
あった。花火の病室だ。
コンコンコンと三回ノックをして病室へ入る。
そこには僕の知らない花火がいた。

機械から伸びた管がたくさん、花火に繋がっている。
「ピッ…、ピッ…、ピッ…、ピッ…」
心拍を測る機械からだろうか。
ドラマでよく見る光景が、現実の世界で広がっていた。
心臓は動いている。だがもう目は覚まさない。
そう考えると涙が溢れてくるのだった。


そういえば、花火は毎日笑顔だったな。
暗い顔をしていると、
「どうしてそんなにおこっているんですか?
将来の夢は赤鬼さんですか?」 とか
保育園児を叱るみたいに怒られたっけ。


そうだ、花火の前では暗い顔をしていちゃダメだ。
そう思った僕は涙を拭いて笑顔を作ってみた。
「どう、花火?笑顔作ってみたんだけど?」
前の花火なら
「笑顔…www
ほらほら!もっと口角上げて!目はやさーしく!」
とかダメ出しがたくさん飛んでくるんだろうな。


「花火…、君の笑顔がない世界はなんだか物足りないよ…。」
そう言って、僕は花火の頭を優しく撫でてみた。
看護師さんが手入れしてくれたのだろうか。
髪の毛はふわふわで柔らかな触り心地だった。


「奇跡」という言葉に希望を託し、
僕は病室をあとにするのだった。
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