桜と花火、それと僕

確か7日目.なんで

僕が目を覚ましたとき、そこは見慣れぬ天井だった。
いつものように体を動かそうとした。
だがその瞬間、感じたことも無いような痛みが
身体中をかけめぐった。
「う…、あ…、う……。」
かろうじて出した、僕のうめき声に気づいたのは母だった。
「聞こえる…？あー…、よかった…。」
母は心底安心した様子だった。
そして、ここは病院だということをしった。
そのあと、母はゆっくりと事の経緯を話し始めた。


どうやら、僕に車が突っ込んできたらしい。
僕を含めて5人の人を跳ね、電柱にぶつかって
ようやく車は止まった。
事故の原因は居眠り。
キューッという音は目を覚まし、慌てて急ブレーキを踏んだが間に合わず、電柱にぶつかったのだろう。
また、容疑者はもしかしたら薬物の中毒者かもしれないとゆう事だった。


この話を聞いたあと、僕は重要なことに気がついた。
花火、花火はどうなったんだろう。
「は…、はな…、花火は…？」
この言葉を発した瞬間だった。
母は急に涙を流し出した。
「花火ちゃん…、脳へのダメージが大きくて…、
もう……、意識は戻らないだろうって…。」

僕は頭が真っ白になったのを覚えている。
出てくるものはしょっぱい涙だけだった。
「なんで…、なんで僕が助かった……？
なんで……、なんでなんだよ…！！」
そう言ったつもりだったが、
きっと声にはなっていなかった。
この時、僕はこの世の全てを恨んだ。



母がつけていたテレビ。
僕たちのニュースが大きくとりあげられていた。
「5人を巻き込んだ居眠り事故から1週間。
軽症者3名、重傷者1名、1人がいまだに重体だということです。
○○○  △△容疑者からは覚醒剤の陽性反応がでており、
警察の事情聴取に対しては『覚えていない、覚醒剤なんかやっていない。』と供述しているそうです。
警察は容疑者が覚醒剤を使用し、そのまま車を運転したとみて、覚醒剤取締法違反と危険運転致傷の疑いで捜査を続けています。」

アナウンサーが事故の内容を伝えてくる。
また涙が頬を伝う。



いつもは奇跡なんか起きないと思っていた。
だが、今回だけは「奇跡」という望みに希望を託したいと思った。