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10.地酒 ❤︎

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貸切予約の時間となり、更衣室へ向かう。
更衣室は男女別で、私一人きりで使えるのが贅沢。


浴衣、下着を脱ぐと少し肌寒いが、ほろ酔いの熱い体にはちょうど良い。


湯浴みに腕を通す。
湯浴みはガウンのような白地の羽織りもので、腰のところで輪っかに紐を通して結ぶもの。丈は膝より上だ。歩くと内ももまで露わになりそう。

厚みはそれほどない生地の湯浴みの下は、もちろん何も身につけていない。




寒さではない震えが体を襲う。


そっと、自分の胸に手をやり、布越しに先端を確認する。


良かった、固くなってるのは分からない。

恥ずかしい確認をした後、更衣室を出た。歩くたびに股の奥まで外の空気が入ってきて、ヒクっと蠢く。






「温子さん、ほら早く入って。お酒も用意してますから」

「…うん、ありがと」

私より先に温泉に入っている水川が手を振っている。ヘラヘラと、はやくはやくーと言っている。
明らかに酔っ払っているな、こいつ。


自意識過剰かもしれないが、水川の視線を感じる。

今まで水着やタオルだけの姿、そして裸も見られているが、この湯浴み着というのも恥ずかしい。

体と髪は先程入った男女別の温泉で洗っているから、軽く掛け湯だけする。



「わ、」

水川が声を出す

「ん?」


どうしたのかと思い、水川の目線の先——自分の体をふと見ると、お湯をかけたことで湯浴み着がピタッと体に張り付いている。

胸のふくらみ、腰のまろみ、尻から脚へのラインが温泉の柔らかなライトアップに照らされて浮き出す。水川の熱い目線に心拍数が上がる。

「あ、あんまり見ないでって」

「ごめんなさい、でも見たいです」

だってすごく綺麗だからとか何とか言っている。

「や、ほらあっち向いてって」

「えーケチだなぁ」


すると水川は、背中を向けて「あと3秒で振り返りますよー!」とカウントダウンをしてくる。


カウントダウン早いっ!

慌ててお湯の中へ体を沈める。


水川は最後の1秒を言い終わる前に振り返る。

私の湯浴み着は中にお湯が一気に入り込み、裾が大きく翻る。

水中で広がる裾を慌てて押さえ込む。


「マリリン・モンローの映画みたいですね」



バシャンっ

「うわっ」


水を思いっきり顔に掛けてやった。




◆◆◆◆




温泉は少しぬるめの無色透明。硫黄の香りは薄い。周りは岩で風情がある。酔い方が普段とは異なるという温泉だが、見た目は普通の温泉だ。




トクトクトク


「では本日2回目だけど」

「「乾杯」」




ごくごく

辛めの地酒は度数もそこそこあるだろうが、飲みやすくて困る。私も水川も飲むペースは落ちない。

しばらく温泉と地酒を楽しむ。






「気持ち良いです~」

水川が夜空を仰ぎながら、両腕を湯舟の縁に掛ける。顔がほのかに紅い。

「だいぶ酔ってきた?まだお酒あるよ。飲めるなら飲んで、ちゃんと実験しなきゃ~」

「いつもと体の感じが違うかですか?」

「うん」

「温子さんはぁ何かいつもと違うことあります?」

「そうだなぁ。普段ならこれだけ飲めば瞼が重いんだけど、今日はばっちり覚めてる」

そう、いつもだとこれだけ飲めば眠くて仕方がないのに大丈夫。酔っている感覚はあるが、もっと水川と話したいし、もっと飲みたい。



「へへへ。効果あるんですね」

「まぁ地酒のせいかも。良いお酒って酔い方も違うだろうし。水川くんはどう?」



「僕は~温子さんに酔ってますよ」

「……………はぁ?………だいぶ酔ってるね」

「そうなんです、温子さんにとーーっても酔ってますよ」

語尾に音符マークが付きそうな弾む声で、普段から明るい声の水川の声がより明るい。



「馬鹿」

「温子さんは?」

「へ?」

「僕に酔ってくれてます?」

「何言ってんのよ!」

気恥ずかしくなって、お酒を飲んで誤魔化す。



「あぁあ、温子さんは僕のことどうでもいいんですね?悲しいです」

顔に手を当て「めそめそ」と声に出している。

「どうでもよくなんてないよ」

「本当に?嬉しいです!!!」

もう、そんな子犬みたいな顔で見つめてこないでって。キュンってしちゃうから。





「ほら、けっこう酔ってるみたいだから、そろそろ上がる?」

「えーー嫌です。まだ時間もあるでしょ?」

確かに私もまだ上がりたくないし、水川の楽しそうな様子をまだ見ていたい。

「じゃあ、そこに腰掛けて、足湯にしよっか」

「そうですね」






ザバっ


水川が勢い良くお湯から上がる。

鍛えられた体に湯浴み着が張り付き、艶かしい。

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