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1.肌の調子

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入浴剤の会社で研究開発をしている私、伊角 温子いすみ ぬくこ

元々は嫌いだった営業部の水川 誠二みずかわ せいじとひょんなことから混浴に入り、すったもんだありつつ、混浴フレンドとしてこれからも混浴巡りをすることになった。

私にとっては大好きな温泉、しかもこれまでは入りたくても1人で行けなかった混浴温泉にも行けること。その経験を入浴剤開発にも活かせること。

水川にとっても、私が売れる入浴剤を開発すれば営業部にとって嬉しいということらしい。


お互いにとって良いことずくめの関係だ。


嬉しい限りで、体調も仕事へのやる気もすこぶる絶好調だ。

そうそう先日、同期の貴音たかねと昼ご飯を食べていると……



「ねぇ温子」

「ん?」

「最近いいことあった?」

「んーー、どうだろう」
混浴巡りを楽しんでることが思い浮かんだが誤魔化した。

「肌がぷるんって、調子良さそう」

「ほんと?厳しい貴音にそう言われると自信つく」

「厳しいってあんたね~」

「だってほんとのことでしょ」

「正直なだけ。……で?彼氏ができたの?」

「っっゴホッ!」

「図星?」

「ち、ちがうってば!彼氏はできてないから」

「彼氏は?彼氏じゃなきゃ何ができたっての?」

「なにも出来てない!」

まさか、混浴フレンドができました、裸の付き合いで一度は全裸も見られたり、触ったり触られた間柄です。なんて言えないっ!

「ふーーーーーーーーん」

「ほら、もうお昼休み終わるから行こう」




ってなことがあった。
お世辞は言わない貴音が肌の調子が良いというのなら、本当にそうだろう。
混浴巡りしてから肌も絶好調。

ただ会社の人に水川と私が混浴に一緒に行っているとはバレたくないし、そりゃあ友だちの貴音には言っても良いがとにかく恥ずかしいから言わない。



◆◆◆



ブブブっ
とスマホがポケットの中で震える。

あ、水川からメッセージだ。

なになに、
「今日仕事終わったら、次の計画の相談しませんか?」
か。

次の計画とは言わずもがな混浴温泉巡りの計画である。お互い行きたいところをリストアップは済んだので、具体的に計画を立てようと思う。

オッケーの旨と、近場の居酒屋を指定した。

するとすぐに返事が来て
「では僕も客先から直行します」

なんだかアフターファイブのデートの約束(まぁ普通の庶民的な居酒屋だが)みたいで、鼻歌を歌いそう。



◆◆◆



定時ぴったりに職場を出たから、お店には私が先に着いた。先にビールと軽いおつまみを頂く。


あぁ早く来ないかな。

ビールを飲みながら、腕時計を意味もなく見る。

水川は営業だから基本外出していることが多く、さらに部署も違う私は会社で会う機会は少ない。

たまにある開発室と営業部の会議や、水川が資料を取りくるときくらいである。


「はやく会いたいなぁ」


…えっ、いま声に出しちゃってた。キョロキョロと誰にも聞かれていないことを確認する。

あんなに嫌いだったのに、こんなこと思うようになるなんて自分でも驚く。




「いらっしゃいませーーー!」

店員さんの明るい声が店内に響く。

半個室になった席の引き戸を開けて店の入り口に目をやると、水川と目があった。




「温子さん、お疲れ様です。遅くなりました。」


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