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6.冷えだす体
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5階の研究室に内線をかけると、いつもは何度もコールしないと出ない延田にしては珍しくすぐに出た。
今の状況、とりあえず3階資料室に2人で逃げ込んだこと、まだ3階にゾンビがいたり煙があって出られないことを伝えた。
「わかった。あの煙は少しばかり空気より重い。だから待っていれば煙は3階から下の階に少しずつ流れるはずだ。ゾンビも煙とともに下の階に行くと思う」
「良かった。じゃあしばらく待ってから5階に行きます」
「そうだな、だいたい2時間ぐらい待ちなさい」
「2時間!?」
思っていたよりも長い待機時間に大宮は驚く。別に待つことは難しくないが、あまり広くない部屋で下着姿の麗奈と二人きりで2時間もいるのは……。
麗奈は大宮の近くに立ち、電話口から漏れる教授との通話を聞いている。大宮が麗奈を見ると、「どうかしたのか」と首をかしげる。可愛らしい仕草に誘われて目線が顔から下に移りそうになり、慌てて通話に集中する。
「長いか?まぁゾンビ1体くらいなら上手く避けてこれるか。じゃあまた服で口元を覆って5階に来なさい。2時間も待たなくていい」
「いや、あの教授……、それもちょっと」
もう服は二人ともない。身に着けているのはなけなしの下着だけだ。もうこれ以上脱ぐことは二人ともできない。いやもしかしたら麗奈はブラを脱いで口元へ……と想像したところで大宮は自分の思考を止めた。
(いまそんな想像したらやばい!)
延田は「安全を考えれば待つ方がいい。2時間経ったらまた電話する」とがちゃりと内線を切ってしまった。
「教授、なんて?」
「2時間ぐらい経ったら煙が3階から薄まるから、その時に5階に上がって来いって。また電話するそうです」
「そっか……、じゃあ待つしかないね」
2人はしんっ……と静まる資料室に、お互い背を向けてただ待つ。麗奈は資料室に唯一あった古びたパイプ椅子に座らされ、大宮は立ったまま壁に寄りかかっている。
夜も深まり資料室内の温度がどんどん下がっている。
「くしゅっ」
麗奈は自分の手で体を擦って体温をあげようとするが、本格的に体が冷えてきた。
大宮が心配そうに、しかし麗奈には背を向けながら「大丈夫ですか」と声をかける。
「うん、、でもちょっと、、寒いね。大宮くんも寒いよね」
「そうですね……。あの!一応言っておきたいんですが!」
急に大宮が大きい声を出す。大宮にはどうしても麗奈に言っておきたいことがあった。
「え?」
何事かと麗奈は思わず振り返る。
すると大宮が上を向いて麗奈を見ないようにしながら、説明を始める。
「僕が上も下も脱いでいるのはですね、仕方なかったんです。最初に煙が出たときにゾンビに足を掴まれたから、教授に言われて念のためってその時のズボンを捨てたんです。上のシャツだって煙を吸わないようにするのに脱ぐしかなくて」
「はぁ……」
「だから、別に露出狂とか、麗奈さんに見せつけたいからとかじゃないんです!分かってください!」
「……ぷっ、あははは」
先ほどまで緊張感があった資料室に、麗奈の笑いが響く。
「大宮くんが露出狂なんて、そんなこと考えてないよ~。だって非常事態だし、私だって脱いでるんだから」
「良かった……、その、変態だとか思われてたらって不安だったので」
「え、そんなこと考えてたの?というか、それだったら私だって見せつけてることになっちゃうじゃん」
「いや麗奈さんの場合はむしろ……」
大宮はごほんっと咳払いをする。
ゾンビから逃げてきた緊張感が、しゃべったことで二人とも安心してきた。
「さっきは、私のせいで本当にごめん。薬品落とさなかったら今頃もう五階に行けたのに」
「いいえ、気にしないでください。麗奈さんが無事で良かっ……ハックシュ!……っ、すみません」
「寒いね……クシュッ!クシュッン……」
二人の体がどんどん冷えてくる。動き回ったあとにほぼ何も着ないでじっとしていれば当たり前だ。
特に麗奈は体がブルブルと震え始めている。
それを見かねた大宮が提案をする。
「麗奈さん、あ、あの、、、摩りましょうか?」
今の状況、とりあえず3階資料室に2人で逃げ込んだこと、まだ3階にゾンビがいたり煙があって出られないことを伝えた。
「わかった。あの煙は少しばかり空気より重い。だから待っていれば煙は3階から下の階に少しずつ流れるはずだ。ゾンビも煙とともに下の階に行くと思う」
「良かった。じゃあしばらく待ってから5階に行きます」
「そうだな、だいたい2時間ぐらい待ちなさい」
「2時間!?」
思っていたよりも長い待機時間に大宮は驚く。別に待つことは難しくないが、あまり広くない部屋で下着姿の麗奈と二人きりで2時間もいるのは……。
麗奈は大宮の近くに立ち、電話口から漏れる教授との通話を聞いている。大宮が麗奈を見ると、「どうかしたのか」と首をかしげる。可愛らしい仕草に誘われて目線が顔から下に移りそうになり、慌てて通話に集中する。
「長いか?まぁゾンビ1体くらいなら上手く避けてこれるか。じゃあまた服で口元を覆って5階に来なさい。2時間も待たなくていい」
「いや、あの教授……、それもちょっと」
もう服は二人ともない。身に着けているのはなけなしの下着だけだ。もうこれ以上脱ぐことは二人ともできない。いやもしかしたら麗奈はブラを脱いで口元へ……と想像したところで大宮は自分の思考を止めた。
(いまそんな想像したらやばい!)
延田は「安全を考えれば待つ方がいい。2時間経ったらまた電話する」とがちゃりと内線を切ってしまった。
「教授、なんて?」
「2時間ぐらい経ったら煙が3階から薄まるから、その時に5階に上がって来いって。また電話するそうです」
「そっか……、じゃあ待つしかないね」
2人はしんっ……と静まる資料室に、お互い背を向けてただ待つ。麗奈は資料室に唯一あった古びたパイプ椅子に座らされ、大宮は立ったまま壁に寄りかかっている。
夜も深まり資料室内の温度がどんどん下がっている。
「くしゅっ」
麗奈は自分の手で体を擦って体温をあげようとするが、本格的に体が冷えてきた。
大宮が心配そうに、しかし麗奈には背を向けながら「大丈夫ですか」と声をかける。
「うん、、でもちょっと、、寒いね。大宮くんも寒いよね」
「そうですね……。あの!一応言っておきたいんですが!」
急に大宮が大きい声を出す。大宮にはどうしても麗奈に言っておきたいことがあった。
「え?」
何事かと麗奈は思わず振り返る。
すると大宮が上を向いて麗奈を見ないようにしながら、説明を始める。
「僕が上も下も脱いでいるのはですね、仕方なかったんです。最初に煙が出たときにゾンビに足を掴まれたから、教授に言われて念のためってその時のズボンを捨てたんです。上のシャツだって煙を吸わないようにするのに脱ぐしかなくて」
「はぁ……」
「だから、別に露出狂とか、麗奈さんに見せつけたいからとかじゃないんです!分かってください!」
「……ぷっ、あははは」
先ほどまで緊張感があった資料室に、麗奈の笑いが響く。
「大宮くんが露出狂なんて、そんなこと考えてないよ~。だって非常事態だし、私だって脱いでるんだから」
「良かった……、その、変態だとか思われてたらって不安だったので」
「え、そんなこと考えてたの?というか、それだったら私だって見せつけてることになっちゃうじゃん」
「いや麗奈さんの場合はむしろ……」
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ゾンビから逃げてきた緊張感が、しゃべったことで二人とも安心してきた。
「さっきは、私のせいで本当にごめん。薬品落とさなかったら今頃もう五階に行けたのに」
「いいえ、気にしないでください。麗奈さんが無事で良かっ……ハックシュ!……っ、すみません」
「寒いね……クシュッ!クシュッン……」
二人の体がどんどん冷えてくる。動き回ったあとにほぼ何も着ないでじっとしていれば当たり前だ。
特に麗奈は体がブルブルと震え始めている。
それを見かねた大宮が提案をする。
「麗奈さん、あ、あの、、、摩りましょうか?」
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