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3.紫の煙
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ゾンビ?ゾンビってあの死体が蘇って動き回るっていう?
「何言ってるんですか、ゾンビなんて」
「細かく説明している暇はない。おそらく羽屋がいる1階にも下りているはずだ。ドアは絶対に開けるなよ」
「そんな、信じられません。というか、大宮くんがドアの外にいるみたいなので、ちょっと待っててください」
「ちょ……っ」
いくらこれまで教授の変な研究に振り回されてきたとはいえゾンビなんて……。あれ、でもついこの間の教授が一人でやっていた実験って……。麗奈は記憶を辿ろうとする。しかしまずは大宮だと思いドアに近づく。
「大宮くん?大宮くんだよね」
一応ドアを開ける前に確認する麗奈。
しかしドアの向こうからは返事はない。聞こえてくるのはくぐもった唸り声。
グオオオオオオオ
グアアアアアアア
明らかにおかしい。もしかして、本当に、、、ゾンビ?
麗奈はスーっと血の気が引いた。
「キャア~~~~~!」
麗奈は叫び声を上げながら内線電話のところに戻る。
「ドア開けてないだろうね」
「は、はい、え、え、何か気持ち悪い声がドアの向こうでするんです」
「何体もいそうか?」
「何体?え、いっぱいいるんですか?わかんないです」
麗奈はパニック状態だ。それでも延田は、麗奈にあることをさせないといけないため懸命に状況を伝えた。
◆◆◆◆
事の経緯はこうだ。
延田が最近、個人的な趣味として始めた実験。
それは様々な薬品を混ぜて作った煙の中に死んだ動物をいれるとどうなるかという実験だ。死体が腐乱する速度が遅くなるかどうかを見たいぐらいだった。
しかしある薬品を混ぜて作ってできた紫色の煙の中に小動物の死体をいれたところ。なんと生きているかのように動き始めたという。
延田は大発見だと思い、同じ研究棟の教授に頼み込んで解剖用の人間の死体を借りた。そして紫色の煙を焚いたところ……こうなったという。
「なんてことを……、絶対ダメなやつじゃないですか」
(倫理的にも色々まずいことをやってきたが、まさかここまでするなんて!)
「悪かった、悪かったってば。でもすごかった、すっごく動いてた」
「~~~っ!教授!!」
倫理感ややっていいこととダメなことを、院生である麗奈が懇々と説く。
しかし延田は生返事だけ。反省などしていないのが電話越しにもわかり、麗奈は大きくため息をついた。
「それで教授。何か元に戻す方法はないんですか?」
「いや、まさかこんなことになるとは思っていなかったから……」
「え!?何も無いんですか!?」
「今から作るから安心しなさい」
(今からってそんな悠長な……)
「何も安心できないんです……」
「大丈夫だ。もう作り方は考えた。私は今、研究室に戻ってきたから必要な器具は手元にある。あとは材料だけだ」
「そうなんですか!良かった。それで材料は用意できそうなんですか?」
「もうほとんど手元にある。あと1つだけあれば完成する」
麗奈は意外と延田がちゃんとこの事態に対処しようとしていることに安心する。あと1つだけ材料があれば良いのであれば、簡単に解決するかもしれない。
「〇△という薬剤だ。きっと羽屋がいるクリーンルームにはあると思うが」
「ありますっ」
一般的な薬剤で、先ほど麗奈たちが片づけたばかりの薬剤だ。
「それを持ってきてくれ」
「はいっ!すぐに!……って、無理です、ドアの向こうにいるんです!しかも5階までですか!?」
「そうだ。大丈夫、隙をついたら来れるから」
「隙って言われても……!」
「それと来るときは煙をできるだけ吸わないようにしなさい。生きている人間にどう影響するか分からない」
「だから、まずっ」
麗奈は自分が5階まで行くことに了解していないのに、延田は気にもかけずにどんどん話す。
「あの煙は空気より重いんだ。だからどんどん1階に流れ込んでいるはず。クリーンルームを出るときは吸わないようにしっかりとした布を口元にあてる方がいい。何か手頃な布はあるか?」
「ちょっ、え、」
「大事なことだからしっかり聞きなさい。煙を吸わないための布はあるのか?」
「えっと、実験用のガーゼなら……」
麗奈は荷物を持ってきていないし、このクリーンルームにはそもそも埃の元になるような布製品がほとんどない。
「ガーゼなんかじゃ……何もないのか?」
改めて部屋の中を麗奈が探してみるが、やはり適当な布がない。簡易防塵服だってガーゼと大して変わらない。
「無いです。やっぱり私が行くのは無理です」
「着ている服で口元を覆えばいい。ガーゼよりいい」
麗奈は自分の服を見る。
今日着ているワンピースは比較的大きく開いたラウンドネック。もしタートルネックだったら、首をすくめて口元を覆うこともできるかもしれない。しかしこのワンピースでは無理だ。更に言えば、ワンピースの中にキャミソールを着ているわけでもなく、ワンピースの下はブラとショーツしか着ていない。
そんな状況を延田に必死に説明する。すると、ようやく「じゃあ仕方ないか……」と延田がぼそりと呟く。
(やっと分かってくれた!ゾンビを避けて私が5階に行くなんて無理!)
「仕方ないから、ワンピースを脱いでそれを口に当てて来なさい」
「何言ってるんですか、ゾンビなんて」
「細かく説明している暇はない。おそらく羽屋がいる1階にも下りているはずだ。ドアは絶対に開けるなよ」
「そんな、信じられません。というか、大宮くんがドアの外にいるみたいなので、ちょっと待っててください」
「ちょ……っ」
いくらこれまで教授の変な研究に振り回されてきたとはいえゾンビなんて……。あれ、でもついこの間の教授が一人でやっていた実験って……。麗奈は記憶を辿ろうとする。しかしまずは大宮だと思いドアに近づく。
「大宮くん?大宮くんだよね」
一応ドアを開ける前に確認する麗奈。
しかしドアの向こうからは返事はない。聞こえてくるのはくぐもった唸り声。
グオオオオオオオ
グアアアアアアア
明らかにおかしい。もしかして、本当に、、、ゾンビ?
麗奈はスーっと血の気が引いた。
「キャア~~~~~!」
麗奈は叫び声を上げながら内線電話のところに戻る。
「ドア開けてないだろうね」
「は、はい、え、え、何か気持ち悪い声がドアの向こうでするんです」
「何体もいそうか?」
「何体?え、いっぱいいるんですか?わかんないです」
麗奈はパニック状態だ。それでも延田は、麗奈にあることをさせないといけないため懸命に状況を伝えた。
◆◆◆◆
事の経緯はこうだ。
延田が最近、個人的な趣味として始めた実験。
それは様々な薬品を混ぜて作った煙の中に死んだ動物をいれるとどうなるかという実験だ。死体が腐乱する速度が遅くなるかどうかを見たいぐらいだった。
しかしある薬品を混ぜて作ってできた紫色の煙の中に小動物の死体をいれたところ。なんと生きているかのように動き始めたという。
延田は大発見だと思い、同じ研究棟の教授に頼み込んで解剖用の人間の死体を借りた。そして紫色の煙を焚いたところ……こうなったという。
「なんてことを……、絶対ダメなやつじゃないですか」
(倫理的にも色々まずいことをやってきたが、まさかここまでするなんて!)
「悪かった、悪かったってば。でもすごかった、すっごく動いてた」
「~~~っ!教授!!」
倫理感ややっていいこととダメなことを、院生である麗奈が懇々と説く。
しかし延田は生返事だけ。反省などしていないのが電話越しにもわかり、麗奈は大きくため息をついた。
「それで教授。何か元に戻す方法はないんですか?」
「いや、まさかこんなことになるとは思っていなかったから……」
「え!?何も無いんですか!?」
「今から作るから安心しなさい」
(今からってそんな悠長な……)
「何も安心できないんです……」
「大丈夫だ。もう作り方は考えた。私は今、研究室に戻ってきたから必要な器具は手元にある。あとは材料だけだ」
「そうなんですか!良かった。それで材料は用意できそうなんですか?」
「もうほとんど手元にある。あと1つだけあれば完成する」
麗奈は意外と延田がちゃんとこの事態に対処しようとしていることに安心する。あと1つだけ材料があれば良いのであれば、簡単に解決するかもしれない。
「〇△という薬剤だ。きっと羽屋がいるクリーンルームにはあると思うが」
「ありますっ」
一般的な薬剤で、先ほど麗奈たちが片づけたばかりの薬剤だ。
「それを持ってきてくれ」
「はいっ!すぐに!……って、無理です、ドアの向こうにいるんです!しかも5階までですか!?」
「そうだ。大丈夫、隙をついたら来れるから」
「隙って言われても……!」
「それと来るときは煙をできるだけ吸わないようにしなさい。生きている人間にどう影響するか分からない」
「だから、まずっ」
麗奈は自分が5階まで行くことに了解していないのに、延田は気にもかけずにどんどん話す。
「あの煙は空気より重いんだ。だからどんどん1階に流れ込んでいるはず。クリーンルームを出るときは吸わないようにしっかりとした布を口元にあてる方がいい。何か手頃な布はあるか?」
「ちょっ、え、」
「大事なことだからしっかり聞きなさい。煙を吸わないための布はあるのか?」
「えっと、実験用のガーゼなら……」
麗奈は荷物を持ってきていないし、このクリーンルームにはそもそも埃の元になるような布製品がほとんどない。
「ガーゼなんかじゃ……何もないのか?」
改めて部屋の中を麗奈が探してみるが、やはり適当な布がない。簡易防塵服だってガーゼと大して変わらない。
「無いです。やっぱり私が行くのは無理です」
「着ている服で口元を覆えばいい。ガーゼよりいい」
麗奈は自分の服を見る。
今日着ているワンピースは比較的大きく開いたラウンドネック。もしタートルネックだったら、首をすくめて口元を覆うこともできるかもしれない。しかしこのワンピースでは無理だ。更に言えば、ワンピースの中にキャミソールを着ているわけでもなく、ワンピースの下はブラとショーツしか着ていない。
そんな状況を延田に必死に説明する。すると、ようやく「じゃあ仕方ないか……」と延田がぼそりと呟く。
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