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3日目:VRセックス

VR空間を体験してみよう

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VRスーツに着替え終わり、部屋の奥に案内される。そこにはベッドが2台あった。
ベッドとベッドの間には衝立があり離れている。

「これが我が研究所が開発したVR用動作感知及び制御設備です。ベッドのマットレスには、乗っている人の微細な振動やどこに体重をかけているかを測定できます。さらにVR空間内の他者から受ける身体の動作を再現できるようVRスーツにケーブルを取りつけ……」

阪部がどんどんと説明するが、尾嵜が「実際にやってみましょう」と遮った。



衝立を挟んだ右側のベッドに寝るように言われて、桃香が仰向けになる。マットレスは硬めでありつつも普通の寝心地で、これが特別な装置というから驚きだ。

尾嵜がベッドの下や、天井の機械から伸びているケーブルを何本か持って、仰向けに寝る桃香に見せる。ケーブルはとても細く、引っ張れば千切れてしまいそうだが、丈夫な特殊素材だという。

「これをVRスーツの10カ所に繋げます)

極細ケーブルの先端には小さな金属突起があり、その突起がVRスーツの受け口に合う。

「では付けます」

桃香の手首を尾嵜が持ち、ケーブルをパチンと繋げる。同様に残りの9本も足やわき腹などに繋げた。繋がったあと、尾嵜が調整してケーブルをピンと張らせる。

桃香が腕を動かすと、ケーブルも伸び、腕を戻すとケーブルも元に戻る。ゴムというわけでもないのにと不思議だ……と興味津々にケーブルを見る。

「最後にヘッドセットを付けてください」

尾嵜からVRヘッドセットが手渡される。桃香が見たことのある市販のVRゴーグルやヘッドセットよりもコンパクトで意外だ。

「コンパクトですがいま売られている市販品とは、没入感が桁違いです」

「へぇ、そうなんですね」

ベッドに寝ながらでもスムーズにヘッドセットを取り付けられた。ヘッドセットをした桃香の視界は真っ暗だ。耳をすっぽりと覆うヘッドセットの影響で音も聞こえない。



尾嵜と阪部はベッドから部屋中央の大型機械の方へ移動して準備をする。

「阪部、そっちはいいか?」

「はい」

「始めよう」



尾嵜がパソコンのキーを叩くと、桃香の視界はパっと明るくなった。





「あっ……」

一瞬目を瞑ったが、恐る恐る目を開けてみると……





「……すごいっ!」


視界に飛び込んできたのは部屋の天井ではなく、オーロラが輝く美しい夜空だった。


感嘆しながら、桃香は左右を見渡す。するとどこを見渡してもオーロラの景色が続き、桃香の顔の動きに合わせて視界も移り変わる。空に輝くオーロラを現実世界で見ているような感覚だ。

しばらく感動していると、急に声が聞こえる。


「ようこそVR空間へ」


尾嵜の声がどこからともなく聞こえるが、その姿はない。

「VR空間にいるのは今は寺方さんだけです。私や阪部はあなたの様子をディスプレイで観察しています。私たちの声がVR空間内で聞こえるように特別なマイクを付けていますよ」

「すごい……」

「まずはVR空間に慣れましょう。手を動かしてみてください」

寝ころんでオーロラを見ながら、腕を上げてみる。
「あっ、ちゃんと見える」

腕を上げると現実世界と同じように自分の腕が見える。顎を引いてみると、真っ黒な全身スーツを着た自分の体が見える。

「リアルです、すごく。本当の世界みたい」

「そうでしょう?」

普段は淡々と話す尾嵜も、桃香の言葉に嬉しいのか声が明るい。



◆◆◆◆



桃香がVR空間に入ってから10分ほど経ち、ある程度慣れたところでいくつかのチェックが始まった。

寝そべった状態から起き上がっても違和感がないか。更にその場で立ちあがるとどうなるかを確認した。

「次は今いる場所から1歩前に進んでください」

「えっと、大丈夫なんですか?現実の私は今ベッドの上に立っているんですよね。落ちたりしないですか?」

「大丈夫です。もし落ちそうになったら先ほど取り付けたケーブルが自動で制御します」

「わ、分かりました」

恐る恐る一歩前に踏み出す。オーロラの輝く世界で地面は土のような感触で、一歩前に進む。

トン……

「どうですか?違和感無いですか?」

「はい、すごく自然です。本当にいま私、地面を歩いた感触です」

「VRスーツの足裏の部分が、地面を歩いた時の刺激を擬似的に足裏に送っているからです」

「そんなことまで」

「では最後にケーブルの自動制御を確認します」

尾嵜は桃香にそう言うと、阪部にベッドの側にスタンバイするように指示をした。阪部が小走りに向かう。

「もし自動制御がうまくいかなくても、阪部が寺方さんの身体を支えるのでベッドから落ちることはありません。では右方向に歩いてみてください」

1歩、2歩と進み、3歩目にいこうとしたところ、腰がくっと何かに引き戻されその場に留まった。

「え……?」

「今のが自動制御です。問題ないです」

「本当に……すごい……」

「ここでいったん休憩にしましょう。その場で座ってください。阪部が今から寺方さんのヘッドセットを外します」



ヘッドセットを外され目を開けると、美しいオーロラの世界から現実の世界に戻ってきた。
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