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シティホテル

20.痛くない? ❤︎

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息を整えていると、腰に手がかかる。
「こっち向いてください」

ぐるりと仰向けにさせられる。すぐさまキスが降ってくる。軽いキスから舌を絡ませる深いものへ。
歯列をなぞられ、背中に電気が走る。

そうこうしているうちに、水川はボクサーパンツを脱いでいた。……そそり立つそれに目が引きつけられる。

「付けるので待って」と息の上がった声。水川はどこからともなく小さなパッケージ、避妊具を取り出す。
今まで温泉やお風呂でエッチなことをしてきたが、挿入されるような機会は無く、避妊具を付ける場面も無かった。挿れられたら痛いかなと、何年も前のことを思い出してしまい、緩みきった身体がすこし強張る。

手早く装着した水川が、にやりと笑う。
「そんなに見つめられると………挿れていいですか?」

怖いし痛いのは嫌だが、水川にも気持ちよくなってほしい。
「…うん」

「足をこっちに」

正常位の体勢で、秘部に水川の性器が触れる。どうしよう、怖い。どれぐらいの痛さだっけ。体は心の反応を映し、全身がきゅっと縮こまる。





ちゅっ、ちゅ。ちゅぷり。

あれ?すぐに挿れられると思っていたのに、肩や胸にキスが降ってくる。

「…水川くん?」

「ちゅ、なんで、すか?」
なおも続くキス。肩にされるキスが気持ちいい。でもすぐにでも挿れると思っていただけに、疑問が口から出る。

「い、挿れ、ないの?」

「え?」

「もう水川くん、も準備できてるでしょ?」

「僕は良くても、温子さんはまだでしょう」


私?私がまだってどういう意味……?


「さっきまで体リラックスしてましたけど、今挿れたら痛いですよ」

確かにちょっと今は力が入っちゃってるけど、何を気にしているのか。

「別に大丈夫だから」

「温子さんがいくら痛いのが好きでも、僕の趣味じゃないですよ」


閨の雰囲気とは相容れない、ケラケラと笑う水川。頬にキスをしながら窘められる。


「だから、痛いのが好きなんかじゃっ。そうじゃなくて、その、挿れて痛くなるのは当たり前なんだから気にしないで。ちゃんと泣かないようにするから」

泣いたら、興ざめしたと言われた過去のことを思い出す。水川にそう言われてしまったら立ち直れなさそうで、頑張って堪えようとぐっと体に力を入れる。


「……っ?なんですかそれ!」

少し鋭い目つきの水川が、両肩をぐっと掴む。



「いたっ」

「あっ、ごめんなさい」
すると肩を掴んでいた手は撫でる手つきに変わる。はぁぁとため息をつきながら、「さっきのどういう意味ですか?」と顔を覗き込まれる。

「っ、だから、痛くても泣かないようにするって」

「はい?」

「だって泣いたら、やる気削がれちゃうんでしょう?」

「何を言って」

あれ、私変なこと言っているかな。もしかして水川は泣かせて喜ぶタイプとか!?それはそれで、どうしよう。



「水川くんは、泣く方が好み…なの?」

「!?待って待って!話が見えませんっ。整理しましょう」



私たちは今にも挿入の体勢のまま話が進む。なんなんだこれは。
「だから、整理も何も、水川くんは何も気にせず好きにやってくれたらいいの」

「好きにやってますよ。でも好きにやろうとしたら、温子さんが早く挿れてっていうから」

「早く挿れてなんて言ってないっ!」
そうでしたっけ?とトボける水川。

「そもそも何で痛いのが好きってわけじゃないのに、痛くてもいいとか、それが当たり前なんて言うんですか?理解できません」

「理解できるもなにも、痛くせずに、その、挿れるのって無理でしょう?」

「………なっ、今までどんなセックスをっ!……しかも、泣いてたんですか!?」

「う、うん……」
どうしよう。水川があり得ないと言わんばかりの顔でこちらを見る。私そんなにおかしなことを言っているのだろうか。

すると、ぎゅっと抱きしめられる。逞しい腕が私を包む。一度達したときよりも体温が下がっていた体に、水川の熱い体温が心地よく感じる。あたたかい…

「温子さん、言いたいことはいっぱいありますけど………」




耳元に顔を寄せられる。


「セックスって、温子さんの大好きなお風呂みたいに温かくて気持ちいいものです。痛いとしたら、男が下手なだけです」

「…お風呂と一緒?」

「そうです。お風呂で痛くて泣くなんてないでしょう?」

「あるわけない!露天風呂とかで感動して泣いたことはあるけど」
温泉で湯の素晴らしさや満点の星空、海の見える絶景や澄み切った空気の良さに涙が自然とこぼれたことは何度かある。

「さすがだなぁ。セックスだってそうだって考えて下さい。痛くて泣くなんてそれは当たり前じゃないです。」
耳元で優しく諭され、体から余計な力が抜けていくのを感じる。強張りがすーっと抜けていく。

「ほんと?」

「今から温子さんお得意の実験で確かめましょう。後で研究レポートを室長に出して」

なにをおかしなことを。「バカっ」と小突いてやる。そして水川のことが今までよりも一層愛しくなって、気持ちを込めてキスをする。



ちゅっ、ちゅぷ



すると応えるように、水川が舌を絡める深いキスを返してくる。
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