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シティホテル

16.日頃の疲れを

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スタッフさんに付いていくと、脱衣室の奥にドアがあり鍵を開けてくれた。
中は間接照明で照らされた短い通路があり、そこを進むと更にドアを開けてもらう。
「こちらです」

「失礼します」

そこはマッサージルームで、とても良い香りが漂う。






「こちらのベッドにうつ伏せになって下さい」

「はい」

タオルをはだけないように手で押さえながら、うつ伏せに寝る。うつ伏せになったところでスタッフさんが、タオルを一度取らせて頂きますと手を掛ける。少し体を浮かして撮ってもらうと、腰からお尻の下の部分にタオルが掛けられる。
女同士とはいえ、ちょっぴり恥ずかしい格好だ。

「もうしばらくしたらお連れ様も来られるかと思いますので、少々お待ち下さいませ」

「わかりました」

左側に顔を向けると、衝立があって見えないが、同じようにベッドがあるのだろう。
スタッフの方とマッサージの効果などを聞いているいると、人の声が聞こえて、ガチャリとドアが開く音がした。



「失礼します」

衝立の向こうで知らない男の人の声がして、ビクッとなる。

「温子さんいますか?お待たせしてすみません」

すぐに水川の声がして安心する。
「ううん、大丈夫~」
衝立越しに会話するのは変な感じだ。

あちらは男性スタッフの案内の元で水川の方もベッドにうつ伏せになったようだ。それぞれマッサージが開始した。




◆◆◆◆




ふぁぁ、これ、本当に気持ちいいぃ。

塩だけでマッサージかと思っていたが、マッサージオイルと配合されていて、滑らかながら塩のスクラブ感がありちょうど良い。スタッフさんの力加減も絶妙だ。痛気持ちいい。

「気持ちいいですーはぁぁ」

「ふふ、ありがとうございます」
衝立の向こうからも同じようなやり取りが聞こえて微笑ましい。


「次は足の裏をしますね。ここは塩だけで角質ケアをしますが、痛かったら言って下さいね」

「はい」

ざりざり、ざりざり。あぁ、痛いけど気持ちいいぃ。しかし衝立の向こうからは
「いいっ、痛いっ」

「水川様、大丈夫ですか?痛かったでしょうか」

「いえ、すいません、大丈夫です」

「……この辺りが痛いんですか?」

「いっっ、た。はい、そこ、けっこう痛いです。そこって何かのツボですか?」

「ええとその、何と申しましょうか、また後ほどお知らせします」

私も気になる。なんだろうか。



足裏のマッサージから、またオイルと塩のマッサージに切り替わった。脚全体を、スタッフさんのその細腕からは想像がつかない力強さでぐいぐいと圧迫される。
きっくぅーー

ぐいっ、ぐいっと足首からふくらはぎを解し、太ももの方へ。

びくんっ

あ、内ももに手が来たときに思わず体が跳ねる。うう、恥ずかしい。スタッフさんはオイルと塩を追加し太もも全体に広げられ、マッサージは続く。

お尻と脚の境目や内ももにマッサージが来ると、びくびくと体が動いてしまう。

「んっ」
あ、声が出ちゃった。

「ごめんなさい、痛かったですか?」

「い、いえ!」

「続けますね」

スーーー、グイ、スーーー、グイ

「っあぁん」
やばい、変な声を出してしまった。衝立の向こうには水川やスタッフさんもいるのに。

「大丈夫ですか?」

「んん、そこのマッサージはもう大丈夫です。ありがとうございます」
気持ちいいからマッサージは続けて欲しいが、体がビクついたり声が出るのを我慢できそうになく、スタッフさんにお願いした。

「承知しました」

はぁ良かった。
気になる衝立の向こうは、やけに静かだが水川は寝てしまったりしているのだろうか。




◆◆◆◆




スタッフさんは体のオイルや塩を拭き取り、首と腰に少し熱めのタオルを置いてくれた。ふぁー力が抜けていく。溶けそうだ。

「では体をお休めください。10分ほどしたらまた参ります」
そう言い残しスタッフさん2人ともがマッサージルームを後にした。



心地よいBGMが流れる中、穏やかな時間が流れる。



「温子さん、起きてますか?」
衝立越しに水川が声をかけてくる。

「うん、起きてるよ~。はぁぁ気持ちいいね~」

「エステみたいなのは今回僕初めてですけど、たまにはこういう贅沢もいいですね」

「温泉入ってマッサージしてもらって、はぁぁ幸せ」

「……それはそうと温子さん?」

「ん~?」

「さっきの駄目ですよ」

「え?何が駄目?」

「だから、あんな喘ぎ声みたいな声を出して。僕以外の人もいるのに」

「あ、喘ぎ声!?そんなの出してないよ!」

「出してましたって。さっき、マッサージの時に、あぁ~ん♪って」

さっきちょっとだけ声が出たことを言っているのか。そんな、あぁ~ん♪とは言ってないけど!?

「もうっからかわないで。くすぐったくて、ちょっとだけ声が出ちゃっただけだよ」

「本当かなぁ、温子さんって感じやすいから。色っぽい声出すのは僕の前だけにして下さいよ」

はっずかしいことを言う奴だ。




コンコンっ


「入っても宜しいでしょうか?」

スタッフさんが戻ってきた。はいどうぞと、入ってもらう。こっぱずかしい会話は聞かれてない…よね。水川の方のスタッフさんも戻ってきた。

「ではこれでマッサージは完了ですので、また脱衣所の方へ一緒に戻りましょう」

「ありがとうございました」
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