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シティホテル
15.ホテルのコーヒー
しおりを挟むそれからしばらく経ったのち、私は以前から目をつけていたシティホテルのことを水川に知らせた。
市街地にそびえ立つそのシティホテルは、スパ施設に力を入れており、いつか体験したいと思っていた。特に露天風呂と、塩を使ったマッサージを体験したい。
ここに一緒に泊まらないかと誘ってみたところ二つ返事で了承を得た。
「ちなみに露天風呂は混浴なんですか?」
「ううん、男女別だよ」
ホテルの温泉では混浴は中々無い。
「残念だな。部屋はもちろん一緒ですよね?」
「う、うん。嫌でなければ……」
「嫌な訳ないじゃないですか」
「じゃあ、◯日の土曜に予約してもいい?」
「はい、大丈夫です。温子さん、前日はたっぷり睡眠取っておいて下さい」
「…しっかりと対策します」
◆◆◆◆
あまり入浴剤の研究に集中できず、いかに気を失ったり寝ないように水川と夜を過ごすかを考える日々が続き、当日がやってきた。
昨日はたっぷり9時間睡眠をとった!
水川とは夕方にホテルのラウンジカフェで待ち合わせだ。
カフェに着くと、水川が先にいた。
「お待たせ」
「いえいえ。温子さん何か頼みます?」
「コーヒーにする」
今日はカフェインを積極的に飲む。
淹れたてのコーヒーが届き、香りを楽しむ。はぁ、良い香り。元々コーヒーが好きだが、ホテルのコーヒーって特別感がある。
「このパンフレット見てたんです」
「どれ?」
水川がスパのパンフレットを取り出した。そこには本日予約している塩を使ったマッサージのことも載っている。
「これですよね、予約してくれたマッサージ」
「うん、そうだよ。どうなんだろう、塩って痛いかな?ざりざりーって」
「どうでしょうね。まぁ……痛いのが好みなら施術者の方に希望言えば良いと思いますけど」
水川は含みのある言い方をして、??だったが気づく。
「もうっ!だから違うってば。別に痛いのが好きなんじゃないの!」
先日の新幹線での会話を思い出す。
「あはは、ごめんなさい。パンフレットに、カップル限定のオプションが載ってるんですよ」
指で示されたところを読むと、カップル限定で同じ部屋でマッサージを受けれるというもの。マッサージは服を脱いでするが、簡単な仕切りが間に置かれて行われるという。マッサージ中も会話ができるというのがウリのようだ。
「へぇ、いいね。予約はもうしてるけど、部屋同じに変更できるか聞いてみよっか」
「お願いします」
コーヒーを飲み終わり、チェックインをする。
マッサージは個別で受ける予約だったが、カップル用の部屋に変更できるかお願いすると、問題なく変更できた。なんだかカップルという言葉がこそばゆい。
部屋に荷物を置いて、近くのレストランで食事をし、美味しい料理に舌鼓をうつ。
◆◆◆◆
「じゃあそれぞれ温泉に入るということで」
レストランから部屋に戻り、お互いスパ施設に行く準備をする。
「ええ、了解です。温泉の脱衣所から、マッサージの部屋に行けるんですよね」
「そうみたい。係の人が案内してくれるって。予約時間ぐらいにタオル巻いて脱衣所で待っていてって」
「あぁ良いですね、温泉入って体温まってその後マッサージって」
「ねぇー、気持ちいいだろうね」
「楽しみです」
水川と脱衣所の前で分かれ、それぞれ予約の時間まで温泉を楽しむ。
体を念入りに洗い、少し熱めの温泉に入る。
はぁぁ、やっぱりお風呂って最高っ。
ジャグジーやサウナにも入り体から要らないものが外に出て行く感覚。
あ、そろそろ時間だ。最後にぬるめのシャワーを一浴びし脱衣所に戻る。
脱衣所には「マッサージご予約様用」と書かれたカゴに、バスタオルが積まれていて、どうやらこれを体に巻いて待っておけば良いようだ。
普通のタオルで体を拭いた後に、マッサージ用のバスタオルを体に巻いた。質の良いふわふわのタオルが優しく包む。
水を飲みながら軽く髪を乾かしていると……
「塩マッサージご予約の伊角さまでしょうか?」
スタッフらしき方に声を掛けられた。
「はい、伊角です」
「そろそろお時間なので、ご案内いたします。どうぞこちらへ」
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