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ビジネスホテル

14.痛いのがお好き?

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チェックアウトを済ませ、帰りの新幹線に乗る。普段はビジネスマンが多いこの路線も本日は土曜日で人が少ない。

二人席の窓際に私が座り、水川が横に座る。



うう気まづい。別に席はガラ空きなのだから、横にくっついて座る必要も無いが、恋人同士が離れて座るのも不自然かと、結局言い出せずに横に座る。



雑談もなくなってきてお互い無言だ。
水川は駅で買った雑誌を読んでいる。私は窓の外を眺めてはいるが、頭の中は昨夜のことだ。


大学のときに付き合っていた人とのセックスで、気を失ったり、途中で寝てしまったことなんて一度も無い。むしろ、挿入しているときの痛みがあったから体の強張りで意識はかなりしっかりしていたものだ。

昨日は前回と違ってお酒も飲んでいなかったし、シャワーは浴びたが湯船には浸かっていないから、酔って逆上せて気を失った…では無い。ただ単に私が寝てしまったのだ。
出張で疲れていたかもしれないが、なんで寝てしまったのか。


原因は2回絶頂を感じたことで体力の限界だった?
そもそも、体中から力が抜けるほどにする水川に問題があるのではないか。そうだそうだ水川が悪い、と自分のことを棚上げして、雑誌を読んでいる水川を見る。
視線に気づいた水川が顔を上げ、目が合う。



「どうかしましたか?」

「別に」

「あ、トイレ行きますか?」
私が通路に出やすいように、足を引っ込める水川。

「違うっ。……あのね、昨日の夜のことなんだけど」

「え?」
水川は雑誌を閉じて私を見る。

「本当に申し訳ないと思ってるの。その、寝ちゃって。だからね、またチャンスをくれないかな」



すると水川は笑い出す。え、おかしなこと言った?

「またチャンスをくれないかって面白いですね。むしろ僕のセリフですけど」

「とにかく次は寝ないように対策するから!」

「はははっ、対策って何ですか?」

「寝ないように前日はしっかり睡眠とって、その、直前、にはカフェインもとるから」

水川は更に笑うが、こっちだって真剣だ。
「私ちゃんと対策するから、水川くんも協力してくれないかな」

「もう、むちゃくちゃ面白いです。いやもちろん、僕ができることなら何なりと」




ガラ空きの車両だが一応水川の顔のそばに寄り、小声で要望を伝える。


「痛くしてほしい」


水川はピタリと笑うことを止め、目を見開いて私を見てくる。

「それって、その、そういうのが温子さん気持ちいいってことですか?」

そういう?そういうってどういうことだ。
「そういうのが、って何が?」


「だから、温子さんは痛いのが良いっていうか、痛い方が気持ちいいかっていうことですか」

気まづそうに水川も小声で言う。



な、な、な、
「違うわよ!」

「声大きいです。じゃあなんですか、痛くしてほしいって」

「~っ、だからね、痛くしてくれたら私だって気を失ったり寝ちゃったりすることないでしょ?前回も今回も、力抜けちゃって気が緩んだのが原因だと思う」

「何を言って……そんな、起きていて欲しいからって、痛くするなんてできるわけないでしょう!」

「わ、声おっきいってば!」

「あぁすいません。いや、温子さん、いくらなんでも考えが飛躍しすぎです」


溜め息を大きくつきながら、ぐったりする水川に更に申し訳なさが募る。

「ごめん……」

「あぁ、いえ、僕もちょっと朝は意地悪でしたね。そんなに気を揉まないで下さい。そりゃあ途中で寝てしまったことは残念ですけど、それだけ気持ちよかったってことですよね?」


「う、うん。それが原因だと思う」

「原因っていう言い方じゃなくて。良いじゃないですかお互い気持ち良かったんだから」


違う。お互いなんかじゃない。

「水川くんは何にも気持ちよく無かったでしょう?私ばっかり…」

「とっても良かったですよ。気持ち良くなってる温子さんを見れるのは。当たり前じゃないですか。……もしかして挿れてないからってことですか?」

「……うん」
もっと言えば射精してないから、だけど。

「勘弁してください、それだけが目的じゃないんですから」



ポーーーン♪


話し込んでいるうちに、新幹線のアナウンスがまもなく到着地ということを知らせる。


「この話はまた今度に。温子さんが次のチャンスとやらを設定してくれるみたいだから、お願いできますか」

「ま、任せて!」

「本当に面白い人ですね。連絡待ってます」
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