9 / 23
ビジネスホテル
9.食事会
しおりを挟む夕方になり、お客様との会議も無事に終わった。質疑応答も盛り上がり、うちの会社のことを知ってもらったり、また入浴剤の改善ポイントの指摘ももらえたりと充実した。
「では水川さん、伊角さん、近くのお店で食事の予約をしていますので」
「有難うございます」
担当者の遠田さんが声を掛けて下さる。遠田さんは三十代ほどの細身の男性だ。
連れてきて頂いたのは小綺麗なイタリアンだった。
「遠いところお越し下さり有難うございました。ではお疲れ様です。乾杯っ」
「「「お疲れ様です」」」
カツンっ
3人が飲むのは炭酸水。アルコールの入っていない炭酸水にフルーツが添えられているもので、レストランのメニュー表には様々な炭酸水が載っており、この料理に合う炭酸水といった形でおススメされている。
ごくごく。あぁすごく美味しいっ
「遠田さん、ここは炭酸水が充実しているんですね」
「はい、料理も美味しんですが、炭酸水が選べるのも楽しくて。実は私がアルコールが少し苦手なもんで、ここは重宝してるんです。あ、お二人はお酒飲んで下さい」
あぁ、なるほど、お酒が苦手なのか。けれど、私も色々と炭酸水を試したい
「いえいえ、お気遣いなく。おススメの炭酸水教えて下さい」
「もちろんですよ」
食事会は和かに進んだ。私が炭酸水といえば炭酸泉の温泉について喋り出すと、水川に「遠田さんが困ってますから伊角さんそのへんで」と止められた。
まだ喋り足りないのになぁ
◆◆◆◆
レストランを後にし、遠田さんと分かれた。
「温子さん、ホテルに向かいましょうか」
「うん」
ビジネスホテルまでの道のりを2人で歩き出す。
どうしよう、どうやって伝えようか。この前の続きをしたいって。ストレートに言う?それとも「やっぱりお酒飲みたい」とか言ってどちらかの部屋で飲んで、その流れ?いや、できればこの前の反省点であるお酒は飲まずに及びたい。
「あの、さ…」
「どうしました?」
「後で部屋に遊びに行ってもいい?」
遊びにって子どもか!と自分で突っ込むがさすがに、この前の続きをしたいから部屋に行ってもいいかなんて聞けない。
「え……あぁもちろん良いですけど。お酒飲みたいとかですか?今日は飲まなかったし」
「うん、いや、えっと違うんだけど」
「あはは、温子さん、なんですか?」
ええい、言ってしまえ私!
「あのさ、こんなこと言うのもなんなんだけど、この前本当に申し訳なかったの」
「この前?」
「だから、先週のリゾートホテルの時の」
「あぁ、あれですね。そんなに気にしなくて良いですけど、また埋め合わせして下さい」
「きょっ!今日!埋め合わせさせてくれない?」
「それって……」
水川は歩くペースを落とし、耳元に顔を近づけてくる。
「今夜、この前の続きをしても良いってことですか?」
恥ずかしくて声が出ず、こくんと頷いた。
「凄く嬉しいです。じゃあホテル着いて、荷物置いたら僕の部屋に来てもらえます?」
「うん……自分の部屋で先にシャワー浴びてから行くから」
言っていて自分でも生々しいと思うが。
「いえいえ、僕の部屋でシャワー浴びて下さいよ。狭いかもしれないけど、シャワーなら2人で入れますよ」
「何言って!!」
「この前の埋め合わせしてくれるんでしょう?じゃあ僕の希望聞いてほしいなぁ」
うう、それを言われると断れない。
「……はい」
ビジネスホテルでチェックインを済ませ、それぞれの部屋に向かう。
水川からは、30分後に部屋に来てほしいと言われた。ちょっとコンビニに行ってくるという。
「さっき一緒に歩いているときにもコンビニはあったから、その時に買えば良かったのに。朝ごはん買うの?」というと、「朝ごはんはホテルの朝バイキングがあるから買わないですよ。まぁ、ちょっと買いに行ってきますから」と言われた。
なんだかよく分からないが30分後に行くことにして、私自身も荷物を置いたり、着替えを用意することにする。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
敏腕ドクターは孤独な事務員を溺愛で包み込む
華藤りえ
恋愛
塚森病院の事務員をする朱理は、心ない噂で心に傷を負って以来、メガネとマスクで顔を隠し、人目を避けるようにして一人、カルテ庫で書類整理をして過ごしていた。
ところがそんなある日、カルテ庫での昼寝を日課としていることから“眠り姫”と名付けた外科医・神野に眼鏡とマスクを奪われ、強引にキスをされてしまう。
それからも神野は頻繁にカルテ庫に来ては朱理とお茶をしたり、仕事のアドバイスをしてくれたりと関わりを深めだす……。
神野に惹かれることで、過去に受けた心の傷を徐々に忘れはじめていた朱理。
だが二人に思いもかけない事件が起きて――。
※大人ドクターと真面目事務員の恋愛です🌟
※R18シーン有
※全話投稿予約済
※2018.07.01 にLUNA文庫様より出版していた「眠りの森のドクターは堅物魔女を恋に堕とす」の改稿版です。
※現在の版権は華藤りえにあります。
💕💕💕神野視点と結婚式を追加してます💕💕💕
※イラスト:名残みちる(https://x.com/___NAGORI)様
デザイン:まお(https://x.com/MAO034626) 様 にお願いいたしました🌟
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
クールな御曹司の溺愛ペットになりました
あさの紅茶
恋愛
旧題:クールな御曹司の溺愛ペット
やばい、やばい、やばい。
非常にやばい。
片山千咲(22)
大学を卒業後、未だ就職決まらず。
「もー、夏菜の会社で雇ってよぉ」
親友の夏菜に泣きつくも、呆れられるばかり。
なのに……。
「就職先が決まらないらしいな。だったら俺の手伝いをしないか?」
塚本一成(27)
夏菜のお兄さんからのまさかの打診。
高校生の時、一成さんに告白して玉砕している私。
いや、それはちょっと……と遠慮していたんだけど、親からのプレッシャーに負けて働くことに。
とっくに気持ちの整理はできているはずだったのに、一成さんの大人の魅力にあてられてドキドキが止まらない……。
**********
このお話は他のサイトにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる