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ビジネスホテル

9.食事会

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夕方になり、お客様との会議も無事に終わった。質疑応答も盛り上がり、うちの会社のことを知ってもらったり、また入浴剤の改善ポイントの指摘ももらえたりと充実した。


「では水川さん、伊角さん、近くのお店で食事の予約をしていますので」

「有難うございます」

担当者の遠田さんが声を掛けて下さる。遠田さんは三十代ほどの細身の男性だ。




連れてきて頂いたのは小綺麗なイタリアンだった。

「遠いところお越し下さり有難うございました。ではお疲れ様です。乾杯っ」

「「「お疲れ様です」」」

カツンっ
3人が飲むのは炭酸水。アルコールの入っていない炭酸水にフルーツが添えられているもので、レストランのメニュー表には様々な炭酸水が載っており、この料理に合う炭酸水といった形でおススメされている。





ごくごく。あぁすごく美味しいっ
「遠田さん、ここは炭酸水が充実しているんですね」

「はい、料理も美味しんですが、炭酸水が選べるのも楽しくて。実は私がアルコールが少し苦手なもんで、ここは重宝してるんです。あ、お二人はお酒飲んで下さい」

あぁ、なるほど、お酒が苦手なのか。けれど、私も色々と炭酸水を試したい
「いえいえ、お気遣いなく。おススメの炭酸水教えて下さい」

「もちろんですよ」


食事会は和かに進んだ。私が炭酸水といえば炭酸泉の温泉について喋り出すと、水川に「遠田さんが困ってますから伊角さんそのへんで」と止められた。
まだ喋り足りないのになぁ



◆◆◆◆



レストランを後にし、遠田さんと分かれた。

「温子さん、ホテルに向かいましょうか」

「うん」

ビジネスホテルまでの道のりを2人で歩き出す。

どうしよう、どうやって伝えようか。この前の続きをしたいって。ストレートに言う?それとも「やっぱりお酒飲みたい」とか言ってどちらかの部屋で飲んで、その流れ?いや、できればこの前の反省点であるお酒は飲まずに及びたい。



「あの、さ…」

「どうしました?」

「後で部屋に遊びに行ってもいい?」

遊びにって子どもか!と自分で突っ込むがさすがに、この前の続きをしたいから部屋に行ってもいいかなんて聞けない。


「え……あぁもちろん良いですけど。お酒飲みたいとかですか?今日は飲まなかったし」

「うん、いや、えっと違うんだけど」

「あはは、温子さん、なんですか?」

ええい、言ってしまえ私!
「あのさ、こんなこと言うのもなんなんだけど、この前本当に申し訳なかったの」

「この前?」

「だから、先週のリゾートホテルの時の」

「あぁ、あれですね。そんなに気にしなくて良いですけど、また埋め合わせして下さい」

「きょっ!今日!埋め合わせさせてくれない?」

「それって……」



水川は歩くペースを落とし、耳元に顔を近づけてくる。

「今夜、この前の続きをしても良いってことですか?」



恥ずかしくて声が出ず、こくんと頷いた。

「凄く嬉しいです。じゃあホテル着いて、荷物置いたら僕の部屋に来てもらえます?」

「うん……自分の部屋で先にシャワー浴びてから行くから」
言っていて自分でも生々しいと思うが。

「いえいえ、僕の部屋でシャワー浴びて下さいよ。狭いかもしれないけど、シャワーなら2人で入れますよ」

「何言って!!」

「この前の埋め合わせしてくれるんでしょう?じゃあ僕の希望聞いてほしいなぁ」

うう、それを言われると断れない。

「……はい」






ビジネスホテルでチェックインを済ませ、それぞれの部屋に向かう。

水川からは、30分後に部屋に来てほしいと言われた。ちょっとコンビニに行ってくるという。
「さっき一緒に歩いているときにもコンビニはあったから、その時に買えば良かったのに。朝ごはん買うの?」というと、「朝ごはんはホテルの朝バイキングがあるから買わないですよ。まぁ、ちょっと買いに行ってきますから」と言われた。


なんだかよく分からないが30分後に行くことにして、私自身も荷物を置いたり、着替えを用意することにする。
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