ミックスド★バス~注文の多いラブホテル~

taki

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水曜 拘束してください

酸性泉

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大きな音にはっとし、床に落ちた手錠を見る。


「…取れちゃったね」

「そうですね」



水川は絡ませていた手を、私のそれまで手錠があった手首に添えた。

手錠はそう簡単に外れそうに無かったが、やはり安物だということだろうか。屈んで床から拾い上げてみると、金具のところが外れていた。

舐められたりキスをしたりで熱に支配されていた脳はだんだんと冷静さを取り戻す。それにつれて、辺りを温泉特有の香りが立ちこめていることに気づく。

「温泉…?」
くんくんと鼻を鳴らす。

あっ!バスタブの水が温泉に変わったかもしれない!

すぐにバスルームに確認をしに向かう。半開きになっていたバスルームのドアから湯気が漏れている。

バスルームに入るとむわむわのたっぷりの湯気。

水の色は無色のままだが香りの変化が明らかだ。手を恐る恐る湯船に入れて温度を確かめる。


「熱っ!でもちょうど良いぐらい!」

水川も後からバスルームに入ってきて同じように確かめる。


「温泉に変わるなんてやっぱり不思議…」

「本当にねー。よし、じゃあ冷めないうちに早く入ろう」

バスルームのドアをいったん閉めて、入浴準備へ。食事はほとんど食べ終わっていたから簡単に食器を片付け着替えを用意した。



◆◆◆◆



これはもう風物詩となっているが、例によって一緒に入浴するかで揉める。けれどこれもまた例によって水川になんだかんだと説得され、一緒に入ることになった。脱衣場もバスルームも、室内と同じく間接照明でほの暗い。まぁこのぐらいの暗さなら裸でもそれほど気にならないかと自分を納得させる。

水川は手早く脱ぎ終わり、私もハンドタオルで体を隠しながら入浴準備完了。では、とバスルームへのドアノブに手を掛ける。



ガチャ……

ん?

ガチャっ、ガチャガチャ



ドアノブを回すが鍵でも掛かっているかのように引っかかりがあって開けられない。つい先程バスルームに入ったときは開いたのに。私に代わって水川が開けようとするが開かない。

「さっきは開いたのに」

「うーん」

ドアロックらしきものも見当たらないのになぜ開かないのか。閉め方が悪かった?建て付けが悪い?
こんな準備万端な状態で寸止めなんて!

ドアノブを壊さないように気をつけながらガチャガチャと右回り、左回りと回し続ける。2人とも全裸で何ともマヌケな絵面である。

「あれ?これ…」

水川が何か見つけたようだ。

「何か見つけた!?」

水川がドア横を指差す。間接照明であまり明るくないため気づかなかったが、何かがフックにぶら下がっている。

「また………手錠?」

水色の手錠がゆらゆらとぶら下がっている。手に取ると先ほどベッドそばで見つけたピンクの手錠よりも大きめだ。チェーン部分が長い気がする。

「なんでこんなところに手錠があるんだろ。それよりドア開けないと」
そろそろ寒くなってきた。身体がぶるりと震える。

「温子さん、これ」
水川は水色の手錠を差し出し、何やらメモのようなものが手錠に貼り付けられていることに気づいた。



~~~この手錠を付けるとドアが開きます。お二人の片手にそれぞれ付けて下さい~~~


え~~~~~!!!





水色の手錠はチェーン部分とベルトになっている留め具だけが金属で、手首にあたるところは柔らかいシリコン素材。拘束としては緩いが、手錠というグッズそのものがいやらしい気分にさせる。

仕方がないから指示通りに水川と私の手を手錠で繋ぐ。私の右手、そして水川の左手に手錠を掛けた。うぅ、なんだかおかしな遊びに興じているようで恥ずかしい。

そして今まで開かなかったドアのノブを回すと、カチャン、とすんなり開いた。




◆◆◆◆




湯気たっぷりのバスルームは、まだお湯に浸かっていなくても体がリラックスするーーたとえ手錠で水川と繋がっているという状況でも。

脱衣場ではハンドタオルで体の前を隠していたが、手錠を付けたこともあり、ハンドタオルとはおさらば。

手錠を水川と付けている状況に体全体、特に手錠を付けている右手首が敏感になっている。

あまり勝手に動くと手錠がビン!とチェーンが張る。あまり明るくない間接照明のバスルーム内で、物にぶつからないように2人で気をつけながら動く。

ゆっくりしゃがみ込み、お湯の温度を確かめるため湯船に手を入れてみる。私の利き手は右手だからいつもなら右手をいれるが、今はフリーの左手を入れる。


「うん、ちょうどいい温度。………あれ?」
左手にピリピリした感覚。

「どうしました?」

「このお湯、刺激が強いね。酸性の温泉かも」

水川も手を入れてみる。
「本当だ、ピリピリする感じです」

「こういう刺激の強い温泉は体には良いんだけど、あんまり長湯しちゃいけないんだよね」

「そういえば長湯厳禁って注意書きのある温泉ありましたね。そこもこんなピリピリした感じでしたね」

「飲んじゃうのもあんまり良くないんだよ」

「そうなんですね」



さて、お湯の感触が分かったところで体や髪を洗うか…と思うが…

「また急に冷めちゃうかな?」
一日目の診察室風の部屋にあったお風呂。水川が入っていた時に急にお湯から水に変わってしまった。
そもそもどんな仕組みで水が温泉に変わっているのか分からないから、いつ急に水に戻ってしまうかも分からない。

「冷めないうちに入りましょう」

体や髪を洗うのは後にして、掛け湯で汗を流した。

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