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水曜 拘束してください

ルームサービス

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水曜。

2日連続のラブホ通いで体が重い。とはいえ仕事はあるものでなんとか出社しデスクで大きく息を吐く。ギリギリまで寝ていたせいで、喫茶店でモーニングなんてことはできず、コンビニで軽食を買いイートインコーナーで食べた。そして早足で出社して、まだ仕事をしていないのに疲れてしまった。

眠い目を擦りつつパソコンを起動しメールチェックをしていると、ポケットに入れているスマートフォンが震える。見てみると水川からメッセージだ。



"体、大丈夫ですか?"

気遣いの言葉にほっこりする。

"だるいけど大丈夫。私こそごめん、温泉付き合ってもらって"

"楽しいから良いんですよ。じゃあまた夜に、駅の改札で"



今夜もそう、またラブホへ行く。3日連続だ。

今朝チェックアウトをするために部屋の中にある料金精算機にお金を入れると、昨日の朝と同じく「ガコン!」と鈍い音がつり銭の取口から響いた。確かめると、ホテルのロゴがあしらわれたキーホルダー。そしてキーホルダーに付いているメモには…

「水曜はこの番号(443213)を部屋選択時に入力して下さい。今回とは異なるお部屋が選択できるようになります。」

やはりか。このホテルは連泊することで全ての部屋の温泉に入れるかもねと水川と話していた。
体力だけが懸念材料だが、研究者としてここで引くわけにはいかない。
こうなったら全部屋制覇をしてやる!






仕事が終わりお互い一時帰宅し着替えや諸々の用事を済ませた。

昨日は冷蔵庫の生鮮食品を消費するためもあり各自食事を家で済ませてきたが、今日はラブホの食事サービスを試してみたくて空腹のままで待ち合わせをした。そして今夜もラブホ街を歩き、3日目ともなれば慣れたものでホテル・ホットスプリングのドアを開ける。

部屋を選択するタッチパネルで例の番号を入力するとピコン!と音が鳴る。ほどなくガコンっ!と鈍い音が響き、鍵の受け取り口から鍵を取る。月曜は病院風、火曜はまさかの室内プール、さて今日はどんな部屋か。



軽い足取りで部屋の前に着き鍵を開ける。





ドアを開けるとそこには…………





「なんというか、普通……?」

間接照明で、インテリアこそ赤と黒を基調とした内装でアダルティな雰囲気だが、部屋の造り自体は普通だ。前日のプールが印象強く拍子抜けしてしまう。

「普通のラブホの部屋って感じですね」

「そうだね」

ま、あまり普通のラブホがどういうものか分かるほど行ったことはないが、ラブホと聞いてイメージする部屋はこんな感じだ。

目当ての温泉は……?と探すと部屋の奥にバスルームがあり、大人2人が入れるぐらいの広さのバスタブがある。バスタブは空っぽで蛇口が付いている。


お湯を出そうと赤色と青色のハンドルのうち赤色の方を回すと

ジャーーーーッ

と勢いよく出てくる。

しかし湯気が出ておらず、水である。月曜も火曜も、最初は水だったからもう驚かない。部屋ごとの"注文"をこなさないと水はただの水のまま。

「昨日は水着に着替えたら変わったけど、今日は何だろうね」
部屋の中を探索する。

しばらく2人でがさこそしていると、

ぐぅぅぅぅぅ

と私のお腹が鳴る。


「ふはっ」

「もう笑わないでよ」

「ごめんなさい、じゃあまずルームサービス頼みましょう」

「うん!記事に食事も美味しいって書いてたから食べてみたいんだよね」

部屋にある内線電話の近くにメニューがある。ファミレスやカラオケのメニューと似たり寄ったりで変わったメニューはないが、オムライスとナポリタン、そしてサラダ等のサイドメニューをいくつか注文することにする。

内線を掛けると音声案内が流れて、その指示通りに番号を押し注文を終えた。




◆◆◆◆




さてと、料理がくるまでの間に一応バスタブに水を張っておき、あとは変化を待つ。

部屋のあちこちを探索し、何か”注文”になりそうなものを探す。
目に入るところには無く、次はベッドサイドの引き出しの中も確認しようと、開けてみる。


「えっ…!」

「何かありましたか?」


引き出しにあったのは、目に痛いショッキングピンク色の輪っか。

手にとって持ち上げてみると…




「手錠…?」
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