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火曜 泳いでください
眼帯ビキニ ❤︎
しおりを挟む10分、20分、30分と雑談しながら待つがプールの水に変化は無い。温泉以前にプールとしても冷たすぎて泳げない。寒中水泳になってしまう。
そして泳ぐ時に必要な水着だって問題だ。
部屋に備え付けられていた水着があるにはあるが、水着というより"布切れ"と言ったほうが適切な面積なのだ。
「温子さん、そろそろ着替えません?多分これ以上待っても水は変わりませんよ」
「えーーーーー」
「昨日だって確かに入室から時間経ってから温泉に変わってましたけど、服着替えたからかもしれませんよ」
「着替えたら変化するなんて信じられないって」
だってそうだろう。そもそも水が温泉に変化する時点で奇妙だが、部屋のコンセプトに合う"衣装"に着替えたらなんて。
まだ待ってみると言い張って…………………
それでも変化の無いプールに溜め息をつく。
「……着替える」
水川は「だから言ったでしょう」と笑いながら私に布切れ、もとい女性用の水着を手渡した。
昨夜の診察室の部屋では衣装がたくさん用意されていた。種類やサイズ、色が選べた。しかし今日の部屋には水着は2つだけが置かれていた。男性用1着と女性用1着。どちらも布の使用量がとても少ないのだ。
まず男性用はブーメランタイプの黒色のもの。こんな面積で隠せるのだろうか…水川のものって、その、別に小さくはないんだし、むしろ……。前も後ろもかなり際どそうだ。
そして更に問題な女性用。
「これ、本当に水着なの?」
まずはトップス。胸のトップを辛うじて隠せるぐらいの四角の布が2つ付いている。そして紐が四角の布の上下に通っており、胸の前で結ぶようだ。
「水着ですね、一応。眼帯ビキニっていうと思うんですけど」
「眼帯ビキニ?そんな言い方するの」
確かに形は眼帯に似ているかもしれないが。
「グラビアアイドルとか着てるじゃないですか」
着てるじゃないですかと言われてもよく分からない。ふーんと声を漏らすと「いや別に僕も詳しいわけでは無いんです!」と慌てている。別にぃ、何を見ようが良いけどさぁー。
ボトムだってトップスほどでは無いとはいえ、布の面積が小さい。そしてサイドは紐で結ぶタイプだ。
「はぁぁぁぁぁ」
水着をずっと眺めていたところで布面積が広くなるわけでもなく、覚悟を決めなければ。全ては温泉のためだ。
◆◆◆◆
「温子さん?着れました?」
更衣室もなく、シャワーブースもガラス張りのため着替えのときはお互い背中を向けて行った。部屋の隅で初めて着る眼帯ビキニとやらに格闘した。
「着替えたんだけど……これ、サイズ合ってないと思う」
「見てもいいですか?」
「うう、うん。いいよ」
背を向けていたが、体を腕で隠しながら振り返る。
目に入ってきたのは際どい水着に着替えた水川の鍛えられた肉体。水着姿の水川を見るのは初めてではないが、ラブホで見るとまた見え方が異なる。気まずくて目線を外そうと思うけど、セクシーでもっと見てみたいとちらりとまた目線を戻しては外す。
ふ、と笑い水川が近づいてくる。視線を感じ心許ない。
「サイズとか、着方これで合ってるか分からないんだけど」
「腕、外してもらえますか?」
あぁぁ、恥ずかしいけどぎゅっと胸を押さえこんでいた腕を外す。胸のトップを隠すだけで胸の上部も横も下も谷間も丸見えだ。今にも眼帯ビキニとやらがめくれて胸がこぼれてしまいそう。
「おおぉ………」
水川はパァァァと目を輝かせる。
「っもう!これで着方合ってる?」
「大丈夫ですよ。サイズも合ってると思います」
こんなに小さいのが正しいのか!と驚いていると、水川が更にまじまじと胸を見てくるものだから腕で隠す。
「でも温子さん、紐が緩いんじゃないですか?」
「だって、その、きつく結んだら、胸が寄っちゃうから…」
胸の前で紐を結ぶようになっていて、あまり胸が寄らない程度に結んだ。そりゃあただでさえ危なっかしい水着なのだからぎゅっと結びたいが、そうすると谷間が深くできて、アピールしているようで恥ずかしくなってしまう。
「まぁ温子さんが良いならそのままでも」
着替えたところで肝心のプールがどうなっているかを調べる。プールに近づこうと歩くと、あぁ、もう、歩く度に支えのほとんどない胸が自由に上下する。胸の揺れで眼帯ビキニがずり落ちそうで、ぐいと持ち上げる。
手をプールに入れるまでもなく、明らかに匂いが変わっている。先ほどまで無臭だったのに今は温泉特有の匂い。
そして手を入れると……
「温かい!」
30度ほどだろうか。これなら十分入れる温度だ。熱すぎず軽く泳げるだろう。
それにしても着替えたら水が変化するなんて本当に不思議だ。実験器具の持ち込みができていればどんなに良かったか。
プールに入る前のマナーということで一応シャワーブースで汗を流し念のためほんの軽くストレッチをしてプールに取り付けられた足場を上る。海外で広大な面積の温泉湖に水着で入って泳いだことを思い出し、今の格好はともかく気分が高揚する。
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