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月曜 治癒してください
ホテル・ホットスプリング
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水川と行くことになったラブホ「ホテル・ホットスプリング」
いかにも昔風のホームページで料金やシステムを確認すると、「ご新規様は月曜のみ受付可能」とある。変なシステムだ。けれど従うしかない。
温泉ライターさんの記事でも「注文の多いホテル」と感想があったがこういう細かいルールがあるということか。
「いつの月曜に行きますか?僕は泊まりの出張も近々無いからいつでも」
私としては思い立ったらできるだけ早く温泉に入りたいから、一番近い日の月曜に行くことにした。
◆◆◆◆
当日。ラブホの最寄駅で待ち合わせした。水川が1日中外回りで少し時間が読めないということもあって夕食は各々が済ませてくることにした。仕事帰りに、それも月曜からラブホに行くなんて私も成長したものだと苦笑する。
「お待たせしました」
普段よりオフィシャルな雰囲気のスーツ姿の水川が待ち合わせの改札に来た。1日外を回ってさぞ疲れているだろうにこんなことに付き合わせて申し訳なくなってきた。
「ごめんね、疲れてるとこ」
「いえ?むしろ頑張れましたよ。夜の予定が楽しみで」
夜、というところが強調されて私たちが今から行くところを意識させられる。
「じゃあ行こっか」
「はい」
駅から居酒屋が立ち並ぶ区画を通り越すと、ネオンが眩しい派手な建物が並ぶ地区がある。私個人はここに用事は無いが、検索しているとラブホ街として有名なようだ。
もしかして水川はこのあたりに来たことがあるかもしれない。私と付き合う前のことは詳しく聞いていないが、この男のことだ、さぞ何人もの女の人と付き合ってきただろう。ラブホのお世話にだって幾度もなったであろう。
そう思い始めると、足取り軽くラブホ街を進んでいく水川が慣れてるように感じてしまう。ちょっと気に食わない。
そんなことに考えを巡らせながら地図アプリの示す方に歩くと、奥まった場所にお目当ての看板が見える。かなり小さな看板で、見落としてしまいそうだ。
「ここだね」
「はい。入口は……あそこですね。行きましょうか?」
手を差し伸べられ、軽く添える。私より体温の高く大きな手。
中に入ると、こじんまりとした薄暗い部屋に着く。薄暗い部屋の中に一際明るい光を放つタッチパネルがぽつんとある。
「空いてる部屋は…一室だけですね」
「そうなんだ」
私にはよく仕組みが分かっていないが、どうやら空いている部屋だけが光っているみたいだ。
「じゃあこの部屋にしますね」
「うん」
水川が淡々とタッチパネルの前に行き操作をする。慣れてるな、こやつ。
タッチパネルの操作をすると「しばらくお待ち下さい」の表示が出てそのとおりにする。
ガコンっ!
待っていると急に物音がして驚く。タッチパネルの下はどうやら鍵の受取口だったようで鍵が出てきたみたいだ。かがんで鍵を手に取る。
カードキーではなく、昔ながらの旅館の鍵のようだ。ホテルというより温泉旅館という感じでいい。
2人で鍵に書かれた部屋番号を目指す。
◆◆◆◆
鍵を差し入れ回すとカチャと控えめな音がして鍵が開く。
水川がドアを開けるとそこは……
「……病院??」
診察室のような清潔な白さの壁と、大きな机に椅子が2つ。机の正面の壁にはレントゲン写真のようなものが貼り付けられ眩しい光を放つ。
部屋の中に進んでいくと診察室によくある白い固そうなベッド。睡眠のためではなくあくまで診察のためのベッドだ。けれど幅の広い2人でも寝ころべそうなベッド。
「あーー、何というか、コンセプトルームというやつですね」
「コンセプトルーム?」
「テーマがある部屋のことですよ」
「じゃあここは病院がテーマってことかぁ」
ラブホテルで病院というのは、お医者さんごっこでもする人向けかな。……ほんのちょっと興味あるかも。
そして部屋の中で一際存在感のある……
「これが温泉??」
ベッドの横にあるドン!と存在する風呂。
床や壁に固定はされていなく、脚付のバスタブだ。大人二人でもゆったり入れそう。バスタブの8分目までにお湯が張られている、けれど違和感があるのは色は無色透明で温泉特有の匂いが何もない。
しかも湯気もない。もしかしてと思い手を入れてみる。
「っ!冷た!」
「え、水ですか?」
水川も手を入れて、同じ反応をする。
「なんかただの水道水みたいじゃない?」
「そんなわけ、でも確かに…」
辺りを見渡してもお湯が出てきそうな蛇口がない。そもそもこの水はどうやって張られたのか。
「温泉は?温泉はどこなのよぉ。せっかく勇気だして来たのに。もしかして違う部屋なのかな。でも記事には部屋の指定なんて無かったのに」
「うーーん、記事がデマだったんですかね」
「そんなぁ~」
私だけなら無駄足だったで笑い飛ばすこともできるけど、水川にまで付き合ってもらっているのだからすぐには引き下がれない。
ホテルのスタッフさんに聞いてみよう。都市伝説どうこうは聞けないが、そもそもお湯が出ないというのはダメだろう。内線電話でフロントに掛けてみる。
トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル………。
コールが続くだけでいっこうに受話器が取られない。何度も掛けなおしても同様。
直接フロントにも行こうとするが、このホテルは部屋を出るときに料金を支払うとドアが開くというシステム。だいたい無人フロントだったではないか。
もう~~~~!!!!
「うううう、ごめんね。付き合ってもらったのに」
「それは別にいいですよ、気にしないで下さい」
「もう今日は帰ろっか」
「………温子さん。せっかく来たんだからちょっと楽しんでから帰りましょう」
「え?」
水川の手にはどこから出して来たのか白い衣装のようなものがある。
いかにも昔風のホームページで料金やシステムを確認すると、「ご新規様は月曜のみ受付可能」とある。変なシステムだ。けれど従うしかない。
温泉ライターさんの記事でも「注文の多いホテル」と感想があったがこういう細かいルールがあるということか。
「いつの月曜に行きますか?僕は泊まりの出張も近々無いからいつでも」
私としては思い立ったらできるだけ早く温泉に入りたいから、一番近い日の月曜に行くことにした。
◆◆◆◆
当日。ラブホの最寄駅で待ち合わせした。水川が1日中外回りで少し時間が読めないということもあって夕食は各々が済ませてくることにした。仕事帰りに、それも月曜からラブホに行くなんて私も成長したものだと苦笑する。
「お待たせしました」
普段よりオフィシャルな雰囲気のスーツ姿の水川が待ち合わせの改札に来た。1日外を回ってさぞ疲れているだろうにこんなことに付き合わせて申し訳なくなってきた。
「ごめんね、疲れてるとこ」
「いえ?むしろ頑張れましたよ。夜の予定が楽しみで」
夜、というところが強調されて私たちが今から行くところを意識させられる。
「じゃあ行こっか」
「はい」
駅から居酒屋が立ち並ぶ区画を通り越すと、ネオンが眩しい派手な建物が並ぶ地区がある。私個人はここに用事は無いが、検索しているとラブホ街として有名なようだ。
もしかして水川はこのあたりに来たことがあるかもしれない。私と付き合う前のことは詳しく聞いていないが、この男のことだ、さぞ何人もの女の人と付き合ってきただろう。ラブホのお世話にだって幾度もなったであろう。
そう思い始めると、足取り軽くラブホ街を進んでいく水川が慣れてるように感じてしまう。ちょっと気に食わない。
そんなことに考えを巡らせながら地図アプリの示す方に歩くと、奥まった場所にお目当ての看板が見える。かなり小さな看板で、見落としてしまいそうだ。
「ここだね」
「はい。入口は……あそこですね。行きましょうか?」
手を差し伸べられ、軽く添える。私より体温の高く大きな手。
中に入ると、こじんまりとした薄暗い部屋に着く。薄暗い部屋の中に一際明るい光を放つタッチパネルがぽつんとある。
「空いてる部屋は…一室だけですね」
「そうなんだ」
私にはよく仕組みが分かっていないが、どうやら空いている部屋だけが光っているみたいだ。
「じゃあこの部屋にしますね」
「うん」
水川が淡々とタッチパネルの前に行き操作をする。慣れてるな、こやつ。
タッチパネルの操作をすると「しばらくお待ち下さい」の表示が出てそのとおりにする。
ガコンっ!
待っていると急に物音がして驚く。タッチパネルの下はどうやら鍵の受取口だったようで鍵が出てきたみたいだ。かがんで鍵を手に取る。
カードキーではなく、昔ながらの旅館の鍵のようだ。ホテルというより温泉旅館という感じでいい。
2人で鍵に書かれた部屋番号を目指す。
◆◆◆◆
鍵を差し入れ回すとカチャと控えめな音がして鍵が開く。
水川がドアを開けるとそこは……
「……病院??」
診察室のような清潔な白さの壁と、大きな机に椅子が2つ。机の正面の壁にはレントゲン写真のようなものが貼り付けられ眩しい光を放つ。
部屋の中に進んでいくと診察室によくある白い固そうなベッド。睡眠のためではなくあくまで診察のためのベッドだ。けれど幅の広い2人でも寝ころべそうなベッド。
「あーー、何というか、コンセプトルームというやつですね」
「コンセプトルーム?」
「テーマがある部屋のことですよ」
「じゃあここは病院がテーマってことかぁ」
ラブホテルで病院というのは、お医者さんごっこでもする人向けかな。……ほんのちょっと興味あるかも。
そして部屋の中で一際存在感のある……
「これが温泉??」
ベッドの横にあるドン!と存在する風呂。
床や壁に固定はされていなく、脚付のバスタブだ。大人二人でもゆったり入れそう。バスタブの8分目までにお湯が張られている、けれど違和感があるのは色は無色透明で温泉特有の匂いが何もない。
しかも湯気もない。もしかしてと思い手を入れてみる。
「っ!冷た!」
「え、水ですか?」
水川も手を入れて、同じ反応をする。
「なんかただの水道水みたいじゃない?」
「そんなわけ、でも確かに…」
辺りを見渡してもお湯が出てきそうな蛇口がない。そもそもこの水はどうやって張られたのか。
「温泉は?温泉はどこなのよぉ。せっかく勇気だして来たのに。もしかして違う部屋なのかな。でも記事には部屋の指定なんて無かったのに」
「うーーん、記事がデマだったんですかね」
「そんなぁ~」
私だけなら無駄足だったで笑い飛ばすこともできるけど、水川にまで付き合ってもらっているのだからすぐには引き下がれない。
ホテルのスタッフさんに聞いてみよう。都市伝説どうこうは聞けないが、そもそもお湯が出ないというのはダメだろう。内線電話でフロントに掛けてみる。
トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル………。
コールが続くだけでいっこうに受話器が取られない。何度も掛けなおしても同様。
直接フロントにも行こうとするが、このホテルは部屋を出るときに料金を支払うとドアが開くというシステム。だいたい無人フロントだったではないか。
もう~~~~!!!!
「うううう、ごめんね。付き合ってもらったのに」
「それは別にいいですよ、気にしないで下さい」
「もう今日は帰ろっか」
「………温子さん。せっかく来たんだからちょっと楽しんでから帰りましょう」
「え?」
水川の手にはどこから出して来たのか白い衣装のようなものがある。
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