上 下
6 / 14

6.湯けむりの中 ❤︎

しおりを挟む

ラッキーなことに他のお客さんはいない。良かった。

水川が一応ボディガードとして側にいるとはいえ、もし不躾な目線を送ってきそうな中年男性や、チャラそうな若い男たちがいたら嫌だった。

そっと、足の先をお湯に入れて温度を確かめる。
うん、熱すぎない。

ゆっくり体を沈めた。





「あぁぁ生きかえりますねーーー」

「若いのに何を年寄りくさいこと言ってんの。でも、うん本当、気持ち良いね」

「温度はあまり高くないのに、体全体がもうポカポカです」

「ここの泉質ならあんまり血行には効果ないと思ってたんだけど、全然そんなことない。湯冷めしにくいかどうかも確かめないと」

「なんだか研究者って感じですね」

「感じじゃなくて、研究者だから」

ふっっと笑い合った。

「泉質や成分だけ見てても分からないことがあるんだなぁぁ」

「温子さんほど詳しい人でも分からないことあるんですね」

「そりゃあ。確かに成分については詳しいけど、そのお湯に入ったら体にどの程度影響してどんな気持ちになるかまで理解するのは個人差もあって難しいよ」

「そうなんですね」

「水川くんは、営業で色んなところにうちの入浴剤売り込みに行くわけでしょ。温まります~とかリラックスできます~とか」

「はい」

「しかもその若さで営業部を引っ張る成績だとのことで」

「あーーー、、まぁ調子が良い時はですけど」

「ご謙遜ね。何かコツがあるの?」

水川は言い澱んだあと、真っ直ぐとこちらを見据えた目で
「…………それは……温子さん、あの時のことがあったから」

あの時?って

と尋ねようとしたとき




「うわーーっ温泉の匂いすげーっ」
「さむいさむい、早く入ろうぜ」

若い男性客が二人入ってきて話は途切れた。



◆◆◆◆



男性客たちは掛け湯もそこそこに湯船に入ってくる。気さくそうな雰囲気の一人が私たちに声を掛けてきた。

「こんにちは~お邪魔します~」

水川がそれに応えて「どうぞどうぞ」と場所を開けた。

温泉の真ん中に陣取っていた私たちは端の方へと移動して、彼らと3~4メートルほどの距離を取った。

水川は、私と男性客たちとの間に腰かけた。
男性客たちは楽しそうに話している。どうやら大学生のようだ。





水川は何を思ったのかじっとこちらを見てきた。するとぐっと私に近づいて、肌が触れ合った。

「な、なに…?」

離れようとすると更に距離を詰めてくる。

タオルの合わせが緩くなるのも構わず私は更に距離を取ったが、背中が岩壁に当たるところまで追い詰められ顔を寄せられた。

なんなの?
思わずぎゅっと目を瞑る。

すると耳元で
「温子さん」

ビクンっ

「胸の谷間が見えてます。ちゃんと隠して下さい」
と小声で言ってきた。

顔の近さと内容にびっくりして、とっさに腕を胸の前でクロスすると

「逆効果です。余計に谷間ができてますよ」

恥ずかしいこと言うな!
顔が熱い。耳はもっと熱い。

「じろじろ見ない約束でしょ!?」

「じろじろ見てるのは僕じゃなくてあの客の方です。ずっと貴女のことを見ようとしています。ボディガードとしての助言です。早くタオルで隠してください」

そうかな?
別に見られてるとは思わないんだけど。

けれどこれ以上耳元で話されたくなくて、水川の指示通りにすることにした。





水を含んだタオルは体に張り付いていて、タオルを動かすと胸も連動してくる。

ぐいっ
たゆーん

こんなもん?いやこれは上げすぎ。
もう少し下げよう。

すっすっ
ぽよん ぽよん

あれ、また谷間が見えちゃってる

ぐいっ
たゆーん

すっすっ
ぽよん ぽよん

何度かタオルを動かし(そして胸も連動し)、ちょうど良い位置を見つけた。結び目を調整した。

擦られた乳首が、タオル越しにうっすらと立ち上がってるいるように見えるけど、これぐらいなら誰も気づかないでしょう。



調整している様子を監視のためなのか凝視していた水川に

「ほら、ちゃんと隠したからこれで良いでしょ?」と胸を張って見せつけてやる。

すると水川は聞き取れない小声でぼそぼそ何か言っている。



(おっぱい揺らしすぎ!うっすら見える先端が立ってきてるのも分かるから!)

水川は先日のスーパー銭湯で、おっぱいを顔に押し当てられた時の柔らかい感触も思い出していた。若い水川の体の一部が芯を持ち始める。


水川は前屈みになりながら、絞り出すような声で
「あーはい、もうそんなんで良いですよ」


指示に従ったのになんだその投げやりな言い方は!
「何?まだ不満なの?もっとタオル上のほうが良い?」

「!? いいです!もう大丈夫です!もう動かさないで!」






こんなやり取りを続けているうちに、気づくと男性客たちは帰っていった。温泉にはまた私たちだけとなった。


「そろそろ私たちも上がろっか?」

「………僕はもうちょっと入っていますから、温子さん先に上がって下さい」

「そう?のぼせちゃうよ?一緒に上がろうよ」

「いいから!!僕は後から出ます!!」

「別にそんな大声で言わなくても聞こえるよ。じゃあ先に上がってるね」







まだまだ(水川の?)受難はつづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。

イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。 きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。 そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……? ※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。 ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...