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6.湯けむりの中 ❤︎
しおりを挟むラッキーなことに他のお客さんはいない。良かった。
水川が一応ボディガードとして側にいるとはいえ、もし不躾な目線を送ってきそうな中年男性や、チャラそうな若い男たちがいたら嫌だった。
そっと、足の先をお湯に入れて温度を確かめる。
うん、熱すぎない。
ゆっくり体を沈めた。
「あぁぁ生きかえりますねーーー」
「若いのに何を年寄りくさいこと言ってんの。でも、うん本当、気持ち良いね」
「温度はあまり高くないのに、体全体がもうポカポカです」
「ここの泉質ならあんまり血行には効果ないと思ってたんだけど、全然そんなことない。湯冷めしにくいかどうかも確かめないと」
「なんだか研究者って感じですね」
「感じじゃなくて、研究者だから」
ふっっと笑い合った。
「泉質や成分だけ見てても分からないことがあるんだなぁぁ」
「温子さんほど詳しい人でも分からないことあるんですね」
「そりゃあ。確かに成分については詳しいけど、そのお湯に入ったら体にどの程度影響してどんな気持ちになるかまで理解するのは個人差もあって難しいよ」
「そうなんですね」
「水川くんは、営業で色んなところにうちの入浴剤売り込みに行くわけでしょ。温まります~とかリラックスできます~とか」
「はい」
「しかもその若さで営業部を引っ張る成績だとのことで」
「あーーー、、まぁ調子が良い時はですけど」
「ご謙遜ね。何かコツがあるの?」
水川は言い澱んだあと、真っ直ぐとこちらを見据えた目で
「…………それは……温子さん、あの時のことがあったから」
あの時?って
と尋ねようとしたとき
「うわーーっ温泉の匂いすげーっ」
「さむいさむい、早く入ろうぜ」
若い男性客が二人入ってきて話は途切れた。
◆◆◆◆
男性客たちは掛け湯もそこそこに湯船に入ってくる。気さくそうな雰囲気の一人が私たちに声を掛けてきた。
「こんにちは~お邪魔します~」
水川がそれに応えて「どうぞどうぞ」と場所を開けた。
温泉の真ん中に陣取っていた私たちは端の方へと移動して、彼らと3~4メートルほどの距離を取った。
水川は、私と男性客たちとの間に腰かけた。
男性客たちは楽しそうに話している。どうやら大学生のようだ。
水川は何を思ったのかじっとこちらを見てきた。するとぐっと私に近づいて、肌が触れ合った。
「な、なに…?」
離れようとすると更に距離を詰めてくる。
タオルの合わせが緩くなるのも構わず私は更に距離を取ったが、背中が岩壁に当たるところまで追い詰められ顔を寄せられた。
なんなの?
思わずぎゅっと目を瞑る。
すると耳元で
「温子さん」
ビクンっ
「胸の谷間が見えてます。ちゃんと隠して下さい」
と小声で言ってきた。
顔の近さと内容にびっくりして、とっさに腕を胸の前でクロスすると
「逆効果です。余計に谷間ができてますよ」
恥ずかしいこと言うな!
顔が熱い。耳はもっと熱い。
「じろじろ見ない約束でしょ!?」
「じろじろ見てるのは僕じゃなくてあの客の方です。ずっと貴女のことを見ようとしています。ボディガードとしての助言です。早くタオルで隠してください」
そうかな?
別に見られてるとは思わないんだけど。
けれどこれ以上耳元で話されたくなくて、水川の指示通りにすることにした。
水を含んだタオルは体に張り付いていて、タオルを動かすと胸も連動してくる。
ぐいっ
たゆーん
こんなもん?いやこれは上げすぎ。
もう少し下げよう。
すっすっ
ぽよん ぽよん
あれ、また谷間が見えちゃってる
ぐいっ
たゆーん
すっすっ
ぽよん ぽよん
何度かタオルを動かし(そして胸も連動し)、ちょうど良い位置を見つけた。結び目を調整した。
擦られた乳首が、タオル越しにうっすらと立ち上がってるいるように見えるけど、これぐらいなら誰も気づかないでしょう。
調整している様子を監視のためなのか凝視していた水川に
「ほら、ちゃんと隠したからこれで良いでしょ?」と胸を張って見せつけてやる。
すると水川は聞き取れない小声でぼそぼそ何か言っている。
(おっぱい揺らしすぎ!うっすら見える先端が立ってきてるのも分かるから!)
水川は先日のスーパー銭湯で、おっぱいを顔に押し当てられた時の柔らかい感触も思い出していた。若い水川の体の一部が芯を持ち始める。
水川は前屈みになりながら、絞り出すような声で
「あーはい、もうそんなんで良いですよ」
指示に従ったのになんだその投げやりな言い方は!
「何?まだ不満なの?もっとタオル上のほうが良い?」
「!? いいです!もう大丈夫です!もう動かさないで!」
こんなやり取りを続けているうちに、気づくと男性客たちは帰っていった。温泉にはまた私たちだけとなった。
「そろそろ私たちも上がろっか?」
「………僕はもうちょっと入っていますから、温子さん先に上がって下さい」
「そう?のぼせちゃうよ?一緒に上がろうよ」
「いいから!!僕は後から出ます!!」
「別にそんな大声で言わなくても聞こえるよ。じゃあ先に上がってるね」
まだまだ(水川の?)受難はつづく
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