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第三章 最厄の饗宴
第53話 幸せの在り処
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「フリーディアの持つ魔術武装と儂らの作るマジックアイテムは似て非なるものだ」
似て非なるもの。そのことはユーリも気付いている。問題はゲオルグがどこまで知っているのか。何をしようとしているのかだ。
「どちらも魔力を通すだけで発動するという意味においては同じだが、魔術武装はマジックアイテムに比べ使用するのに制約が課されている。
つまり持ち主をマスターとして承認しないことには扱えねぇってことだ」
魔術武装を起動させるにはいくつか条件がある。
まず第一に使用権限の登録。これを起動と呼ぶのだが、登録者のいない新品の魔術武装を起動させるために必須の工程だ。
次の条件とはすなわち魔力。つまり魔力を通せばその時点で魔術武装はその人の魔力でしか動かすことができなくなる。
「加えて持ち主が生きてる内は、その魔術武装は他の魔力には一切反応しねぇ。これはぶん取られた際のフリーディアが施した防御魔法によるものだろう」
魔法ではない。技術だ。魔力というものは個人によって若干の性質が異なる。故に登録者以外の魔術武装に魔力を通そうが絶対に反応しない。持ち主を殺し、新たに権限を上書きしない限りにおいては。
「ま、儂らにかかれば、魔術武装を奪うなんざお手の物だ。フリーディアは儂らを侮っていたようだな」
ゲオルグは続ける。
「それと、魔術武装は壊れても使用者の魔力があれば簡単に修復できる。それに比べて儂らの造るマジックアイテムは一度壊れたら二度と元には戻せねぇ。つまり儂らは未だにフリーディアの技術の足元にも及ばないのさ」
どこかわざとらしく大袈裟にジェスチャーし語るゲオルグには悲壮感が感じられない。超えていないと言いながら、その瞳はギラギラと野心のようなものが映っていた。
「今語ったのは基本的な内容だ。これだけじゃまだ魔術武装は脅威だが恐ろしいとまではいかねぇ。
儂が真に恐ろしいと感じた点は他にある」
そう、彼が言おうとしていることをユーリも知っている。つい最近知った恐ろしい事実。自分たちが何の犠牲の上に成り立っているのか、その根幹を。
「マジックアイテムを製造するのに使われる材料は木材や鉱石といったありふれた者だ。中には特別な素材を扱う物もあるが、恐ろしいとまではいえない。
だがフリーディアの製造する魔術武装だけは別。必要な材料は儂らの中に存在する魔力生成器官――魔核が使われている。
本当フリーディアってのは恐ろしいことを思いつくもんだぜ。何せ儂らそのものを素材にしてるんだからな」
魔核のこと。やはりゲオルグも答えに行き着いていた。異種族にとってどれだけ異常な状況なのかは語るゲオルグの様子とミグレットとサラの反応を見れば一目瞭然。
「これがフリーディアの持つ魔術武装の真の恐ろしさよ」
魔法使い、正確には魔術武器使いと呼称した方が正しいか。科学技術――それこそがフリーディアの力の根源。真に最強の種族と呼ばれる由縁であった。
「――と、いうわけだ。ユーリ、オメェはこれ聞いてどう思ったよ? ビーストが勝てる未来を想像したか?」
ゲオルグの目に今のユーリはフリーディアとしてではなく、ビーストとして映っている。少しでも気を緩めれば、ユーリの正体など一瞬で看破してしまうだろう。
ゲオルグの問いにユーリは改めて気を引き締め答える。
「負けます。このままいけばドワーフも、他の種族たちもフリーディアに為す術なく蹂躙される」
異種族はフリーディアによって滅ぼされる。これは紛れもない事実だ。例えどれほど優れた魔法を扱う存在が現れようと所詮は個人の力。軍という広大な視野で見れば、総合力でフリーディアに勝る種族は存在しない。
それは歴史が証明している。
「ふん、よく分かってるじゃねぇか。ますますオメェのことが気に入ったぜ」
ゲオルグに気に入られても嬉しくも何ともないが、変に嫌われるよりはいいかとユーリは心の中で納得した。
「ゲオルグさんはもしかして既にフリーディアに対する対抗策を考えてるんですか?
ナギから聞いたんですけど何でもフリーディアを一人を捕えたそうじゃないですか」
ユーリはここしかないと思い、自身の最も知りたかった話題を切り出した。
「あぁもちろんだ。本国にもフリーディアに対する脅威は伝わっている。何でも同盟関係にある妖精人族共がやけに警戒しやがんだ」
「え、妖精人族……?」
聞いたこともない未知の異種族の名を耳にし動揺が広がるが、サラが脇から小突いてくれたおかげで平静を取り戻すことができた。
(そうだ、今の俺はビースト。知らないなんて言ったら疑われる)
気を引き締め直し、ゲオルグに向き直るユーリ。幸いにもゲオルグに気付かれることはなく、続いてのユーリの質問に答えるため言葉を続ける。
「あぁ、そうだ。何でも魔術武装は神に対する冒涜だとかほざいてやがる。
近い内に調査に来るらしいんだが、儂としては魔術武装を利用してることを知られたくねぇ。
そうだ! オメェ見所あるし、協力する気はあるか?」
「もちろんです!!」
ゲオルグの発した言葉に即答するユーリ。
「いい返事じゃねぇかこんちくしょう。礼といっちゃ何だが、オメェには今度特別に儂の工房を見せてやろうじゃねぇか」
「ありがとうございます!」
前途多難だったが、ユーリの思惑通りに事が運んだことを喜ばしく思う。ゲオルグの工房に行き、魔術武装を全て破壊してやる。
「んじゃ、儂も忙しいから話はここまでだ。オメェに貰った特化型を急ぎ解析しねぇといけねぇからな」
「――あ、あのゲオルグ様ッ」
そのとき、今まで嘘のように大人しかったミグレットが唐突に口を開いた。
「なんだぁ?」
眉尻を下げ露骨に嫌そうな視線をミグレットへ向けるゲオルグ。
彼としては与えられた玩具ですぐに遊びたいのだろう。そんな気分を害する要因たるミグレットに対する態度は露骨であった。
同じドワーフ、同じ釜の飯を食う仲間であるはずなのに。
フリーディアも全員が仲が良いわけではないが、仮にもアルギーラを任されている身分だろうにその態度はいかがなものかとユーリは内心不満を懐いていた。
案の定、ミグレットはビクリと肩を震わせ怯えてしまっている。
「ミグレット、儂は何だって聞いてんだ。用があんならさっさとしやがれ、こんちくしょうが」
「は、はい! あ、あの……こここれ、を」
そう言っておもむろに抱えていた荷物をゲオルグへ差し出すミグレット。
「何だこれはぁ?」
「じ、自分が造りました! どうぞ開けてみてくださいです!」
「ふんっ」
ゲオルグは手に持っていた回転式拳銃を丁寧に机の上に置き、ミグレットの差し出す荷物を受け取り乱雑に風呂敷を取り捨てる。
「――あん? 何じゃこれは」
ゲオルグの示した反応は当然といえば当然で風呂敷から出てきた物は何の変哲もないただの土鍋だった。
「ど、土鍋?」
ユーリも風呂敷の上から見て土鍋っぽい形だなと思っていたがまさか正解しているとは思わなかった。
ミグレットが何故このタイミングで土鍋を差し出したのか理解できない。
「こ、これに材料を入れて魔力を込めるだけで、簡単に料理が出来上がりますです。一々火を入れる必要もなくて、水さえあれば外でも簡単に――」
「オメェ、儂を嘗めてんのか?」
「ヒィッ」
瞬間、ゲオルグの鋭い眼光がミグレットへ突き刺さった。
「相変わらずオメェはこんなくだらねぇものばっか造ってんのか、こんちくしょうが! こんなもの造ってる暇があんなら魔術武装の一つでも造って持ってこんかい!!」
「で、ですが魔術武装は危険すぎますですよ! ゲオルグ様にはもっと他にやるべきことが……昔みたいに皆が便利だなって喜んでもらえるマジックアイテムを造ってほしいと自分は――」
「いい加減にしやがれこの戯けが! いつまで寝惚けたことほざいてんだ!!」
ゲオルグは怒鳴りながらミグレットの作製した土鍋を腕を振り払って捨てさった。
その際、偶然にも机に置かれた四大魔弾と接触してしまい、ユーリはマズいと内心焦りを覚えた瞬間――
ドカンッ!! と耳を劈く轟音と共に、土鍋に接触したエレメンタルバレットが爆発し辺り一面を吹き飛ばしたのだった。
◇
「ゴホッゴホッ! 皆、無事か!?」
突然の爆風により激しく咳き込むユーリは、互いの安否を確認すべく声を上げる。
まさか自分で仕掛けた爆弾を自分が受けることになるとはつゆ程も考えておらず、威力を抑えめにしておいて良かったと心の底から思った。
おかげで爆風を受けても傷一つなく、ゲオルグの部屋中に煙が充満し視界が悪いことを除けば、被害はさほど大きくはない。
むしろユーリにとっては幸いというべきか。四大魔弾を維持するために張っていた気を逃すことができた。疲労が軽減し心の中で安堵する。
ミグレットには悪いが、彼女が土鍋を手渡さなければ起こり得なかった状況だ。それでも素直に喜べることでは決してないが。
「ゴホッゴホッ! ユーリ君、無事!?」
サラも爆風に巻き込まれ大きく咳き込みながら声を上げていた。
「あぁ、何とかな。とにかく外に出よう。ケガはしてないか?」
「うん。私は大丈夫だけど……」
「ミグレットもゲオルグさんも無事だ。よく聞けば咳き込んでるのが分かるだろ? それよりも扉開けて煙を追い出さないとな」
「う、うん」
ユーリはサラを伴い急いで扉を開け表へ出る。その際新鮮な空気を取り入れるため思いっ切り深呼吸をする。まさか錆びれた洞窟内で空気が美味いと感じることになるとは思わなかったユーリである。
次いで煙が外に逃げていくことで、ゲオルグもミグレットも慌てて外から出てくる。
さらに加えて騒ぎを聞きつけたドワーフたちが何事かとゲオルグの部屋の前に集まってきていた。
「ゴホッゴホッ、オメェら、こっちはいいから作業に戻れ!!」
すぐさま状況を察知したゲオルグがドワーフを解散させることで事なきを得る。
ユーリたちが反乱を起こしたと勘違いされてもおかしくない状況だ。ゲオルグの対応の早さにこのときばかりは感謝した。
「う、うぅぅぅ……」
ようやく完全に視界は開け、落ち着きを取り戻した中でミグレットが地面に崩れ落ちるように手を床に付け顔を真っ青にして唸っていた。
彼女としては自分が造ったマジックアイテムが爆発の原因だと思っているのだろう。
何と慰めたものか。恐らくユーリがどんな言葉を投げかけてもミグレットには届かないだろう。
「おい、ミグレット? さっきの爆発はお前が原因ってわけじゃ……」
それでももしも届くのならとユーリは気休め程度に声をかけるが彼女の耳に届いておらず。
「じ、自分はこんなつもりじゃ……、ただ、お父さんに喜んでほしかっただけで……」
「え、おと、お父さん!?」
衝撃的な言葉を告げたミグレットに声を上げて驚いたユーリは似ても似つかない父娘の顔を何度も見返す。どうやらサラもこの事実を知らなかった様子でユーリと一緒にゲオルグの顔とミグレットの顔を何度も見比べていた。
「おい、儂をそんな名で呼ぶんじゃねぇよ。儂は高みに至るためにオメェとはすでに縁を切ってんだ」
ゲオルグとミグレット。ユーリの想像以上に複雑な家庭らしい。
「それよりオメェどう責任取ってくれんだあぁ!? 余計な失敗作押し付けられたおかげでせっかく手に入れたお宝が木っ端微塵じゃねぇか!!」
どうやらゲオルグも先の爆発の原因はミグレットの土鍋にあると思っているらしい。
結果として状況はユーリにとって理想の形となっている。なってはいるが、今にも泣き出しそうなミグレットの顔を見ると罪悪感に駆られ非常に居心地が悪かった。
だが真実を口にするわけにはいかない。一時の気の迷いでビーストを危険に陥れることだけはあってはならないのだ。
「ご、ごめんなさい……」
「全くオメェは昔っから本当使えねぇ。武器もまともに造れねぇ上に余計なもんばかりに情熱を注ぎやがる。
何が天才鍛冶職人だ、ゲオルグの再来だ、聞いて呆れるぜ。少しでも期待した儂がバカだったぜ、こんちくしょうが。
オメェ明日からもう来なくていいぞ。もう二度と儂に面を見せんじゃねぇ、そこのビースト共と一緒に暮らしてろ」
「そ、そんな……」
ミグレットにとってゲオルグの言葉は完全に見限られたに等しいもの。怒鳴られるよりも用済みだと切り捨てられるほうがミグレットにとっては何倍も辛い所業だった。
「失った特化型魔術武装はまた手に入れればいい。それこそもう一度ナギに出向かせてな。
アレの性能を高めるヒントが掴めればと思ったが、冷静に考えればそれは儂自身の力ではない。儂は必ずフリーディアを超えてみせるぞ。そのために儂は生涯かけてアレを…………ブツブツ」
もはやミグレットの言葉はゲオルグに届いておらず完全に一人の世界へと飛び立ってしまっていた。
ユーリは本当にこれで良かったのか? と自問自答を繰り返し、疲労した身体をサラに預けた。
「大丈夫?」
「うん、何とかな。俺よりミグレットに声をかけてやってくれ。今回の件で一番傷付いているのはあの子だ」
背を向け立ち去るゲオルグに顔を向ける資格もないとミグレットは絶望に打ち拉がれている。
誰かを救うために起こしたユーリの行動は別の誰かを不幸に陥れる結果となった。
(多分、世界はそういう風にできている。誰かの幸せの裏では必ず誰かが傷付き泣いている……)
できれば知りたくなんてなかった出会いたくなかった。出会ってしまったら、助けたくなってしまう。
ミグレットの悲しみに満ちた表情を見る度に胸が締め付けられる。なまじ今回ばかりは自身に原因があるため、その気持ちは余計に溢れ出てくる。
ゲオルグとミグレットの関係を元の父娘の関係に戻してあげたいと。
思えば魔術武装をミグレットに見せてゲオルグに会わせろと言った際、少しだけ様子がおかしかった。何か張り詰めたような表情をして、道中もずっと大事そうに土鍋を抱えていたのだ。
何故、あのとき察してあげられなかったのだろう。
多分、ゲオルグはミグレットを娘と思っていない。彼は自身の目的のために全てを置き去りにしてでも何かを成そうという覚悟が垣間見えた。
ミグレットはそれを止めたかったのだろう。自分の作品を見せて思い留まってもらおうとしたのだ。
結果としてユーリにとっては思惑通りに、ミグレットにとっては最悪の方向へ事態は働いた。善かれと思い悩んで選択肢を選び抜いて道を歩んでも、次から次へと際限なく壁が立ち塞がる。
迷わない迷わない迷わない後悔しない後悔しない後悔だけは決してしない!!
惜しくもミアリーゼ・レーベンフォルンの放った言葉に影響を受け育ったユーリは、それがいつの間にか呪いとなり己の身を蝕んでいることに気付けない。
(俺の起こす行動によって必ず誰かが不幸になる。ミアリーゼ様……俺はあなたに顔を向ける資格なんてない。それでも、ミアリーゼ様や皆に幸せになってほしいから……俺はッ――)
幸せの在り処はユーリの手から離れていく。その離れていった幸せが少しでも誰かの手に届きますようにと、ユーリは願わずにはいられなかった。
似て非なるもの。そのことはユーリも気付いている。問題はゲオルグがどこまで知っているのか。何をしようとしているのかだ。
「どちらも魔力を通すだけで発動するという意味においては同じだが、魔術武装はマジックアイテムに比べ使用するのに制約が課されている。
つまり持ち主をマスターとして承認しないことには扱えねぇってことだ」
魔術武装を起動させるにはいくつか条件がある。
まず第一に使用権限の登録。これを起動と呼ぶのだが、登録者のいない新品の魔術武装を起動させるために必須の工程だ。
次の条件とはすなわち魔力。つまり魔力を通せばその時点で魔術武装はその人の魔力でしか動かすことができなくなる。
「加えて持ち主が生きてる内は、その魔術武装は他の魔力には一切反応しねぇ。これはぶん取られた際のフリーディアが施した防御魔法によるものだろう」
魔法ではない。技術だ。魔力というものは個人によって若干の性質が異なる。故に登録者以外の魔術武装に魔力を通そうが絶対に反応しない。持ち主を殺し、新たに権限を上書きしない限りにおいては。
「ま、儂らにかかれば、魔術武装を奪うなんざお手の物だ。フリーディアは儂らを侮っていたようだな」
ゲオルグは続ける。
「それと、魔術武装は壊れても使用者の魔力があれば簡単に修復できる。それに比べて儂らの造るマジックアイテムは一度壊れたら二度と元には戻せねぇ。つまり儂らは未だにフリーディアの技術の足元にも及ばないのさ」
どこかわざとらしく大袈裟にジェスチャーし語るゲオルグには悲壮感が感じられない。超えていないと言いながら、その瞳はギラギラと野心のようなものが映っていた。
「今語ったのは基本的な内容だ。これだけじゃまだ魔術武装は脅威だが恐ろしいとまではいかねぇ。
儂が真に恐ろしいと感じた点は他にある」
そう、彼が言おうとしていることをユーリも知っている。つい最近知った恐ろしい事実。自分たちが何の犠牲の上に成り立っているのか、その根幹を。
「マジックアイテムを製造するのに使われる材料は木材や鉱石といったありふれた者だ。中には特別な素材を扱う物もあるが、恐ろしいとまではいえない。
だがフリーディアの製造する魔術武装だけは別。必要な材料は儂らの中に存在する魔力生成器官――魔核が使われている。
本当フリーディアってのは恐ろしいことを思いつくもんだぜ。何せ儂らそのものを素材にしてるんだからな」
魔核のこと。やはりゲオルグも答えに行き着いていた。異種族にとってどれだけ異常な状況なのかは語るゲオルグの様子とミグレットとサラの反応を見れば一目瞭然。
「これがフリーディアの持つ魔術武装の真の恐ろしさよ」
魔法使い、正確には魔術武器使いと呼称した方が正しいか。科学技術――それこそがフリーディアの力の根源。真に最強の種族と呼ばれる由縁であった。
「――と、いうわけだ。ユーリ、オメェはこれ聞いてどう思ったよ? ビーストが勝てる未来を想像したか?」
ゲオルグの目に今のユーリはフリーディアとしてではなく、ビーストとして映っている。少しでも気を緩めれば、ユーリの正体など一瞬で看破してしまうだろう。
ゲオルグの問いにユーリは改めて気を引き締め答える。
「負けます。このままいけばドワーフも、他の種族たちもフリーディアに為す術なく蹂躙される」
異種族はフリーディアによって滅ぼされる。これは紛れもない事実だ。例えどれほど優れた魔法を扱う存在が現れようと所詮は個人の力。軍という広大な視野で見れば、総合力でフリーディアに勝る種族は存在しない。
それは歴史が証明している。
「ふん、よく分かってるじゃねぇか。ますますオメェのことが気に入ったぜ」
ゲオルグに気に入られても嬉しくも何ともないが、変に嫌われるよりはいいかとユーリは心の中で納得した。
「ゲオルグさんはもしかして既にフリーディアに対する対抗策を考えてるんですか?
ナギから聞いたんですけど何でもフリーディアを一人を捕えたそうじゃないですか」
ユーリはここしかないと思い、自身の最も知りたかった話題を切り出した。
「あぁもちろんだ。本国にもフリーディアに対する脅威は伝わっている。何でも同盟関係にある妖精人族共がやけに警戒しやがんだ」
「え、妖精人族……?」
聞いたこともない未知の異種族の名を耳にし動揺が広がるが、サラが脇から小突いてくれたおかげで平静を取り戻すことができた。
(そうだ、今の俺はビースト。知らないなんて言ったら疑われる)
気を引き締め直し、ゲオルグに向き直るユーリ。幸いにもゲオルグに気付かれることはなく、続いてのユーリの質問に答えるため言葉を続ける。
「あぁ、そうだ。何でも魔術武装は神に対する冒涜だとかほざいてやがる。
近い内に調査に来るらしいんだが、儂としては魔術武装を利用してることを知られたくねぇ。
そうだ! オメェ見所あるし、協力する気はあるか?」
「もちろんです!!」
ゲオルグの発した言葉に即答するユーリ。
「いい返事じゃねぇかこんちくしょう。礼といっちゃ何だが、オメェには今度特別に儂の工房を見せてやろうじゃねぇか」
「ありがとうございます!」
前途多難だったが、ユーリの思惑通りに事が運んだことを喜ばしく思う。ゲオルグの工房に行き、魔術武装を全て破壊してやる。
「んじゃ、儂も忙しいから話はここまでだ。オメェに貰った特化型を急ぎ解析しねぇといけねぇからな」
「――あ、あのゲオルグ様ッ」
そのとき、今まで嘘のように大人しかったミグレットが唐突に口を開いた。
「なんだぁ?」
眉尻を下げ露骨に嫌そうな視線をミグレットへ向けるゲオルグ。
彼としては与えられた玩具ですぐに遊びたいのだろう。そんな気分を害する要因たるミグレットに対する態度は露骨であった。
同じドワーフ、同じ釜の飯を食う仲間であるはずなのに。
フリーディアも全員が仲が良いわけではないが、仮にもアルギーラを任されている身分だろうにその態度はいかがなものかとユーリは内心不満を懐いていた。
案の定、ミグレットはビクリと肩を震わせ怯えてしまっている。
「ミグレット、儂は何だって聞いてんだ。用があんならさっさとしやがれ、こんちくしょうが」
「は、はい! あ、あの……こここれ、を」
そう言っておもむろに抱えていた荷物をゲオルグへ差し出すミグレット。
「何だこれはぁ?」
「じ、自分が造りました! どうぞ開けてみてくださいです!」
「ふんっ」
ゲオルグは手に持っていた回転式拳銃を丁寧に机の上に置き、ミグレットの差し出す荷物を受け取り乱雑に風呂敷を取り捨てる。
「――あん? 何じゃこれは」
ゲオルグの示した反応は当然といえば当然で風呂敷から出てきた物は何の変哲もないただの土鍋だった。
「ど、土鍋?」
ユーリも風呂敷の上から見て土鍋っぽい形だなと思っていたがまさか正解しているとは思わなかった。
ミグレットが何故このタイミングで土鍋を差し出したのか理解できない。
「こ、これに材料を入れて魔力を込めるだけで、簡単に料理が出来上がりますです。一々火を入れる必要もなくて、水さえあれば外でも簡単に――」
「オメェ、儂を嘗めてんのか?」
「ヒィッ」
瞬間、ゲオルグの鋭い眼光がミグレットへ突き刺さった。
「相変わらずオメェはこんなくだらねぇものばっか造ってんのか、こんちくしょうが! こんなもの造ってる暇があんなら魔術武装の一つでも造って持ってこんかい!!」
「で、ですが魔術武装は危険すぎますですよ! ゲオルグ様にはもっと他にやるべきことが……昔みたいに皆が便利だなって喜んでもらえるマジックアイテムを造ってほしいと自分は――」
「いい加減にしやがれこの戯けが! いつまで寝惚けたことほざいてんだ!!」
ゲオルグは怒鳴りながらミグレットの作製した土鍋を腕を振り払って捨てさった。
その際、偶然にも机に置かれた四大魔弾と接触してしまい、ユーリはマズいと内心焦りを覚えた瞬間――
ドカンッ!! と耳を劈く轟音と共に、土鍋に接触したエレメンタルバレットが爆発し辺り一面を吹き飛ばしたのだった。
◇
「ゴホッゴホッ! 皆、無事か!?」
突然の爆風により激しく咳き込むユーリは、互いの安否を確認すべく声を上げる。
まさか自分で仕掛けた爆弾を自分が受けることになるとはつゆ程も考えておらず、威力を抑えめにしておいて良かったと心の底から思った。
おかげで爆風を受けても傷一つなく、ゲオルグの部屋中に煙が充満し視界が悪いことを除けば、被害はさほど大きくはない。
むしろユーリにとっては幸いというべきか。四大魔弾を維持するために張っていた気を逃すことができた。疲労が軽減し心の中で安堵する。
ミグレットには悪いが、彼女が土鍋を手渡さなければ起こり得なかった状況だ。それでも素直に喜べることでは決してないが。
「ゴホッゴホッ! ユーリ君、無事!?」
サラも爆風に巻き込まれ大きく咳き込みながら声を上げていた。
「あぁ、何とかな。とにかく外に出よう。ケガはしてないか?」
「うん。私は大丈夫だけど……」
「ミグレットもゲオルグさんも無事だ。よく聞けば咳き込んでるのが分かるだろ? それよりも扉開けて煙を追い出さないとな」
「う、うん」
ユーリはサラを伴い急いで扉を開け表へ出る。その際新鮮な空気を取り入れるため思いっ切り深呼吸をする。まさか錆びれた洞窟内で空気が美味いと感じることになるとは思わなかったユーリである。
次いで煙が外に逃げていくことで、ゲオルグもミグレットも慌てて外から出てくる。
さらに加えて騒ぎを聞きつけたドワーフたちが何事かとゲオルグの部屋の前に集まってきていた。
「ゴホッゴホッ、オメェら、こっちはいいから作業に戻れ!!」
すぐさま状況を察知したゲオルグがドワーフを解散させることで事なきを得る。
ユーリたちが反乱を起こしたと勘違いされてもおかしくない状況だ。ゲオルグの対応の早さにこのときばかりは感謝した。
「う、うぅぅぅ……」
ようやく完全に視界は開け、落ち着きを取り戻した中でミグレットが地面に崩れ落ちるように手を床に付け顔を真っ青にして唸っていた。
彼女としては自分が造ったマジックアイテムが爆発の原因だと思っているのだろう。
何と慰めたものか。恐らくユーリがどんな言葉を投げかけてもミグレットには届かないだろう。
「おい、ミグレット? さっきの爆発はお前が原因ってわけじゃ……」
それでももしも届くのならとユーリは気休め程度に声をかけるが彼女の耳に届いておらず。
「じ、自分はこんなつもりじゃ……、ただ、お父さんに喜んでほしかっただけで……」
「え、おと、お父さん!?」
衝撃的な言葉を告げたミグレットに声を上げて驚いたユーリは似ても似つかない父娘の顔を何度も見返す。どうやらサラもこの事実を知らなかった様子でユーリと一緒にゲオルグの顔とミグレットの顔を何度も見比べていた。
「おい、儂をそんな名で呼ぶんじゃねぇよ。儂は高みに至るためにオメェとはすでに縁を切ってんだ」
ゲオルグとミグレット。ユーリの想像以上に複雑な家庭らしい。
「それよりオメェどう責任取ってくれんだあぁ!? 余計な失敗作押し付けられたおかげでせっかく手に入れたお宝が木っ端微塵じゃねぇか!!」
どうやらゲオルグも先の爆発の原因はミグレットの土鍋にあると思っているらしい。
結果として状況はユーリにとって理想の形となっている。なってはいるが、今にも泣き出しそうなミグレットの顔を見ると罪悪感に駆られ非常に居心地が悪かった。
だが真実を口にするわけにはいかない。一時の気の迷いでビーストを危険に陥れることだけはあってはならないのだ。
「ご、ごめんなさい……」
「全くオメェは昔っから本当使えねぇ。武器もまともに造れねぇ上に余計なもんばかりに情熱を注ぎやがる。
何が天才鍛冶職人だ、ゲオルグの再来だ、聞いて呆れるぜ。少しでも期待した儂がバカだったぜ、こんちくしょうが。
オメェ明日からもう来なくていいぞ。もう二度と儂に面を見せんじゃねぇ、そこのビースト共と一緒に暮らしてろ」
「そ、そんな……」
ミグレットにとってゲオルグの言葉は完全に見限られたに等しいもの。怒鳴られるよりも用済みだと切り捨てられるほうがミグレットにとっては何倍も辛い所業だった。
「失った特化型魔術武装はまた手に入れればいい。それこそもう一度ナギに出向かせてな。
アレの性能を高めるヒントが掴めればと思ったが、冷静に考えればそれは儂自身の力ではない。儂は必ずフリーディアを超えてみせるぞ。そのために儂は生涯かけてアレを…………ブツブツ」
もはやミグレットの言葉はゲオルグに届いておらず完全に一人の世界へと飛び立ってしまっていた。
ユーリは本当にこれで良かったのか? と自問自答を繰り返し、疲労した身体をサラに預けた。
「大丈夫?」
「うん、何とかな。俺よりミグレットに声をかけてやってくれ。今回の件で一番傷付いているのはあの子だ」
背を向け立ち去るゲオルグに顔を向ける資格もないとミグレットは絶望に打ち拉がれている。
誰かを救うために起こしたユーリの行動は別の誰かを不幸に陥れる結果となった。
(多分、世界はそういう風にできている。誰かの幸せの裏では必ず誰かが傷付き泣いている……)
できれば知りたくなんてなかった出会いたくなかった。出会ってしまったら、助けたくなってしまう。
ミグレットの悲しみに満ちた表情を見る度に胸が締め付けられる。なまじ今回ばかりは自身に原因があるため、その気持ちは余計に溢れ出てくる。
ゲオルグとミグレットの関係を元の父娘の関係に戻してあげたいと。
思えば魔術武装をミグレットに見せてゲオルグに会わせろと言った際、少しだけ様子がおかしかった。何か張り詰めたような表情をして、道中もずっと大事そうに土鍋を抱えていたのだ。
何故、あのとき察してあげられなかったのだろう。
多分、ゲオルグはミグレットを娘と思っていない。彼は自身の目的のために全てを置き去りにしてでも何かを成そうという覚悟が垣間見えた。
ミグレットはそれを止めたかったのだろう。自分の作品を見せて思い留まってもらおうとしたのだ。
結果としてユーリにとっては思惑通りに、ミグレットにとっては最悪の方向へ事態は働いた。善かれと思い悩んで選択肢を選び抜いて道を歩んでも、次から次へと際限なく壁が立ち塞がる。
迷わない迷わない迷わない後悔しない後悔しない後悔だけは決してしない!!
惜しくもミアリーゼ・レーベンフォルンの放った言葉に影響を受け育ったユーリは、それがいつの間にか呪いとなり己の身を蝕んでいることに気付けない。
(俺の起こす行動によって必ず誰かが不幸になる。ミアリーゼ様……俺はあなたに顔を向ける資格なんてない。それでも、ミアリーゼ様や皆に幸せになってほしいから……俺はッ――)
幸せの在り処はユーリの手から離れていく。その離れていった幸せが少しでも誰かの手に届きますようにと、ユーリは願わずにはいられなかった。
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2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
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「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
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マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
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異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
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