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第一章 始まりの物語

第20話 示される覚悟

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 司令室の前まで辿り着くと、クレナ・フォーウッドはコンコンと控えめなノックを行う。

「アーキマン司令、ミアリーゼ様をお連れしました」

 部屋にいるダリル・アーキマンは相手がミアリーゼだと分かっていたのか、クレナが言い終える前に扉のロックが解除され、姿を現し出迎える。

「ミアリーゼ様。わざわざご足労いただき申し訳ありません」

「気遣いは不要ですダリル・アーキマン大佐。本日はお忙しい中、わたくしの来訪を迎い入れてくださったことへの感謝とお暇を告げに参りました」

「そうでしたか。こんなところでは何ですのでどうぞ中へお入りください。クレナ、案内ご苦労だった。少しの間外で待機していてくれ。それから――」

 ダリルは予期しない来訪者であるユーリたちへ目を向ける。

「丁度いい、君たちも入りたまえ。君たちとは改めて話をしたいと思っていた」

 てっきり追い返されると思ったユーリたちはお互い顔を見合わせる。

 言わずもがな、話とは初任務の件だろう。ユーリたちも再び出向く手間が省けて好都合。最大の懸念はミアリーゼがいることだが、わざわざ席を外してくれとも言い辛い。ダリル・アーキマン司令がユーリの意図を汲み取ってくれることを願うばかりだ。

「失礼します」
 
 不安が募りながらもミアリーゼと共にユーリたちら司令室へと足を踏み入れた。

 室内に入ったとき最初に目に飛び込んできたものは、執務机の上に山積みされた書類の山だ。その量の多さから部屋の主であるダリル・アーキマンがどれだけ多忙なのか窺える。

 しかしダリルは臆面にも出さずミアリーゼを歓迎している。司令室に設えてある高級ソファに腰掛けるようダリルは促したがミアリーゼはやんわりと断りを入れた。

「改めまして。本日はお忙しい中、わたくしの我儘を受け入れてくださり感謝の言葉もありません」

 深々とお辞儀をするミアリーゼに対しダリルは首を横に振るう。どうやら今回の訪問に関して特に思うことはないようだ。

「ミアリーゼ様が頭を下げる必要はありません。私からもお礼を言わせていただきたい。
 貴女様にお越しいただけたことで基地内の兵たちの士気が高まりました。
 貴女様の想いを受け取った兵士たちは必ずや人類フリーディアを勝利に導くことでしょう」

「そう言っていただけて何よりです。ですが勝利も重要なことでしょうが、犠牲となっている兵たちのこともお忘れなきようお願いいたします」

 彼女はユーリを横目に毅然とダリル・アーキマンへ言い放った。その言葉に僅かに顔を曇らせたダリルの瞳の奥を表情を推し量るように見つめるミアリーゼ。

 ある種駆け引きめいたやり取りにユーリたちは口を挟むことはない。ただじっと成り行きを見守る。

 訪れた刹那の間の静寂。

「もちろんです」

 だがダリルはまるで何事もなかったかのように頷いた。

「ありがとうございます。これでわたくしからの挨拶は以上になります。そういえばユーリ様たちにお話があると仰っていましたわね。
 どうぞ、わたくしのことは構わずお話しくださいな」

 ダリルがユーリたちとどのような話をするのか興味があるのだろう。退出する素振りを見せず、ミアリーゼは笑顔で促した。

 そんなふうに言われてしまえば、帰れなどととても言えない。ダリルは内心溜め息を吐きながらユーリたちに向き直った。

「ユーリ・クロイス、アリカ・リーズシュタット、オリヴァー・カイエス、ダニエル・ゴーン。
 まず先日の任務についてはご苦労だった。多大な犠牲を伴ったが君たちが無事に帰還したおかげで、全滅という最悪の事態は免れた」

「いえ、そんな……」

 ビーストの襲撃を受け、撤退を余儀なくされたのだ。敵の戦力すら削れず帰還したユーリたちは咎められてもおかしくない。

「おかげでビーストの中に特記すべき部隊がいることと、裏に我らの預かり知らぬ未知の敵の存在を裏付ける確証を得ることができた」

「未知の敵……ですか?」

 未知の敵――その衝撃的な言葉にユーリがおずおずと疑問を挟む。

「うむ。元々奴らビーストは本能のままに敵を喰らうことしか能のないただの獣だった。
 それがあろうことか我らに扮し奇襲をかけるなど、とても獣が考えた戦術とは思えん。
 間違いなく奴らに要らぬ知恵を授けた者がいる」

 話の流れから察するに恐らくビースト以外の異種族の存在を示唆しているのだろう。

 あのナギと呼ばれたビーストと同等かそれ以上の敵が裏に潜んでいる。その事実に背筋が寒くなる思いだった。

「横から失礼いたします。アーキマン司令、それならば尚の事グランドクロス出撃の要請を急ぐべきでは? 彼らならばいかなる敵が裏に潜んでいようと我々フリーディアを勝利へ導いてくれるかと」

 オリヴァーが進言すると、ダリルは目を伏せ首を振った。

「それは無理だ。グランドクロスを呼び寄せる権限は私にはないのだよ。そもそも既存の指揮系統の枠から外れた存在など味方に要らぬ混乱を招く。
 仮に現れたとしても私の指示など聞かないだろう」

「そう、ですか……」

 ダリルの諦めにも似た言葉にオリヴァーは納得したように呟く。そして――

「それで、無事君たちは初任務を終えたわけだが、どうかね? このまま軍に残って人類フリーディアのために戦うか、それとも退くか? 改めて君たちの覚悟を聞かせてくれ」

「「「「…………」」」」

 予定調和の問いかけ。けれど、その言葉はミアリーゼが立ち去った後に言って欲しかった。案の定、姫は驚きに目を見開いてユーリを見つめている。
 
「もしも軍を退くのであれば、今すぐに退出し荷物をまとめてミアリーゼ様と共に去りたまえ。故郷へ帰った後は、機密事項含めて生活に様々な制約が課されることになる。
 詳しい説明は――」

 と、ダリルは途中で言葉を止めた。

「いや、すまない。君たちには無用な説明だったな」

 ユーリたちの表情を見て、誰一人去るものはいないと感じ取ったのか、敬意を込めて謝罪するダリル。

「ユーリ様……」

 横からミアリーゼの心配気な声が届き、ユーリは安心させるように顔を向け微笑んだ。そして再びダリルへ向き直り、問いかける。

「アーキマン司令は、いつまでこの戦争が続くと思いますか?」

「なに?」

 ユーリから放たれた意外すぎる質問にダリルは眉根を寄せる。

「俺は多分、今のままだと一生終わらないんじゃないかって思ってます」

「…………」

「俺が軍に残って戦う理由は、勝つことじゃなくて終わらせること……方法はまだ見つけられていませんが、未来を生きる皆が血を見ずに済む世界にしたいと思ってます!」

 初任務を経て、ユーリは一つの決意を胸に懐いた。司令の前で、子供の夢物語を語ったのは口に出して表明しなければ始まらないと思ったから。

 あの惨劇をフリーディアに起こさない、起こさせない。例え無謀、無理、無駄だと嗤われたとしても、そこで立ち止まっていたら一生変わらないから。

「ッ」

 そう決意を口にした瞬間、ユーリは背筋に氷のナイフを突きつけられたような悪寒を感じた。

(クレナ・フォーウッド少佐……?)

 その殺意の出所は、ユーリやミアリーゼたちの背後――ドアの横で待機しているクレナ・フォーウッド少佐からだった。
 
 だがそれもほんの一瞬……ユーリが目を向けた瞬間、何事もなかったかのように殺意は霧散し、クレナは機械のような無表情を保ち直立していた。一体何だったんだ、ひょっとして勘違いか? と思った瞬間、今度はダリル・アーキマンの方から「くくく……」と噛み殺したような笑みが溢れた。

 クレナの殺気に気付いたかは定かではないが、どうやらユーリの言葉が衝撃的すぎて、それどころではない様子だ。

 ユーリはバカにされたと思い、司令を睨みつける。

「あっははははは!! そう睨まんでくれよ。笑ったのは馬鹿にしているからではない。寧ろその逆さ」

「逆、ですか?」

「あぁ、そうさ。君はそこらの有象無象とは違う確固たる意志を持つ唯一無二の存在だ。
 初めての戦場に出て、友軍の死を目の当たりにし、更には異種族と相見え、重傷を負ったにも関わらず戦争を終わらせると決意を口にできるその胆力は大したものだ!
 正直私は君のことを見誤っていたようだ。君たちも、彼と同じ意見なのかね?」

 ダリルは称賛の言葉を口にしながら、他の仲間に問いかける。オリヴァー、アリカ、ダニエルたちも異論はなく、同様に頷いた。

「くくく、そうか。本当に君たちは面白いな。レーベンフォルン卿が君を前線基地へ送り込んだ意味がようやく分かったよ」

 そう言って、興味深げにユーリを見つめるダリル。司令の好意的な反応に安堵すると同時に、レーベンフォルン卿と彼が口にした瞬間、ミアリーゼが驚愕の声を上げる。

「お兄様が、ユーリ様を……? 本当なのですか!?」

 ミアリーゼはユーリが軍人となった経緯に兄が絡んでいることを知らない。その事実を今更ながらに思い出したユーリは、どう言い訳しようか? そもそも何を言えばいいのか分からず、姫に「黙っていて、すみませんでした」としか返せなかった。

「おや? どうやら余計なことを言ってしまったようだな。てっきり周囲の事実とばかり思っていたが、レーベンフォルン卿も人が悪い――」

 ユーリとミアリーゼの反応を見たダリルがどこか含みを持たせるような言い方で言葉を一旦切り。

「そうは思いませんか? フリーディア統合連盟軍治安維持部隊総司令――セリナ・クロイス准将殿」

「「「「「!?」」」」」

 ダリルの口から想像だにしなかった人物の名が紡がれ、一同驚愕を露わにする。特にユーリに至っては、身内の名を出されて、慌てて周りを見渡す。

 すると司令室の壁に立てかけられた一台のモニターがジジッと音を立てて起動し、画面に映し出された一人の女性の姿に目がいく。

『グレンファルト様も、あなたにだけは言われたくないでしょうね。フリーディア統合連盟軍西部戦線トリオン基地司令――ダリル・アーキマン大佐?』

 その声、その姿、見間違えよう筈もない。喧嘩別れして以来、顔を合わせることのかなったユーリの母――セリナ・クロイスその人だった。

「母、さん……」

 目を覚ましたこと、そしてミアリーゼとの再会といい、今日はユーリにとって思いがけないことが重なる日だ。

「相変わらず口が減りませぬな。私に嫌味を言う暇があるのなら、ご子息に言葉をかけてあげてはいかがです?」

 セリナより一回り以上年上のダリルが殊勝な態度を取っていることに違和感を感じるが、なんてことはない。大佐と准将では権威に大きな隔たりがある。

 ユーリは昔から腹の中を探り合うような大人たちの含んだ物言いが好きではなかった。

『ユーちゃん……』

 セリナから発せられた声音は軍人ではなく、一人の母親としての表層を浮かばせていた。彼女が何を言いたいのか、息子であるユーリにはもう分かっている。

「ごめん、母さん」

 自然と口に出た謝罪の言葉は短いながらも、様々な想いが込められていた。何の相談もせずに黙って進路を決めたこと。家を飛び出し、母の制止を振り払って軍に入隊したこと。カッとなって、思ってもないことを言ってしまったこと。

『ユーちゃん、あなたの覚悟は私の耳にも届いてる。凄く立派だって手放しで誉めてあげたいのは山々だけど、心配の方が強いの。それだけは分かって」

「うん」

 親からすれば、最愛の息子が軍人として戦う道を選んだことが気が気ではない筈。帰ってきて、と本音を押し殺しているのが分かる。
 
「それに、今回たまたま運良く生き残っただけ。次があるなんて保証はどこにもないのよ? それでも、戦うっていうの?』

 そんなことは百も承知だ。母がその気になれば、無理矢理ユーリを帰還させることも可能だろう。けれど敢えて尋ねたのは、息子の想いを尊重しようとしてくれているから。

「俺、ずっと考えてたんだ。自分が何をしたいのか? どう在りたいのか? 何を為すべきなのか? って。
 ずっと同じままじゃいられない。日々は移ろい変わっていく。俺だけ停滞したままなのは嫌だって思ったんだ。
 だから相談に乗ってくれたグレンファルト様には感謝してる。あの人がいなかったら、俺は後悔したまま学校へ通ってたと思う」

 そう言って、ミアリーゼへ笑顔を向ける。

「俺は戦場に出たことを後悔してないよ。正直今も震えるくらい怖いけど、知らなくちゃならないことが沢山あるから」

 戦場で出会ったビーストの少女――ナギ。この場では口にしないが、彼女ともう一度会わなくちゃいけない。そして、確かめる。異種族側から見た世界の在り方を。

「心配してくれてありがとう、母さん。ま、こっちには頼もしい仲間もいるから簡単には死なないよ。な、アリカ?」

「え? あ、そ、そうね」

 いきなり話を振られ、たじろぐアリカ。

「母さんこそ、あんまり無理しないようにしてくれよ。権力を行使するのはいいけど、俺のために反感を買うようなやり方はやめてくれ」

『そうね……』

 流石に今回は無茶をしたのか、どこか疲れたように返事をするセリナ。

『なら約束、休暇の日は絶対に帰ってくること。それとお手紙はできるだけよこしなさい。皆本当にあなたのことを心配してるのよ? 音信不通は胃にくるから、本当やめて。ユーちゃんがいなくなって、どれだけ心配したか……。
 あと戦争を終わらせたいなら、先ずは出世を第一に考えなさい。任務は失敗してもいいから、自分の安全を最優先に、くれぐれも無茶はしないで』

「うん」

 多分、無茶はする。帰る、なんて安易に約束は守れない。けれど、善処はする。母と喧嘩したことはずっと気がかりだった。そのことについての謝罪は直接会った時に伝えようと思った。

『ダリル・アーキマン大佐。私の個人的な我儘に付き合っていただけたこと、感謝いたします。この借りはいつか必ずお返しします』
 
「准将殿が借りを気にされる必要はありませんよ。これはあなたのご子息に対する投資と思っていただければ」

『……そうですか。あなたが何故そこまでユーちゃんに期待を寄せているのかは分かりませんが、部下の命を使い捨てるような真似だけはしないでください』

「もちろんです」

 言いたい事を言い終えたのか、セリナはバイバイとユーリへ向け手を振ったのを最後にブツンと通信が途切れた。

 モニターが再び暗転し、場に静寂が訪れる。所謂解散ムードが流れ始める。ユーリ、オリヴァー、アリカ、ダニエルは軍に残ることを決めた。後は現代復帰し、次の命令が下るまで訓練に勤しむのみだ。

 だから……母と別れたその次は、ミアリーゼとも暫しのお別れとなる。次に会えるのはいつになるのか分からない。後悔のないように、きちんと挨拶をすべきだろう。そう思い姫を見やるも、彼女は場の空気を調伏するかのごとき真剣な顔つきをしており。

「ユーリ様、わたくしも覚悟を決めましたわ」

 何を? と問いかけようとするも言葉が出ない。姫の表情が、雰囲気が、場を支配し呑み込んでいたから。

わたくしの為すべきこと――ユーリ様だけに背負わせません。わたくしも戦争を終わらせるべく戦います。
 彼らを……グランドクロスを率いて戦場に立ちますわ」

 ミアリーゼ・レーベンフォルン。彼女から発せられた凛とした声音に場の空気は一変しこの場にいる全員が驚愕の表情を見せる。

 それも当然の反応だろう。将来の統合連盟政府を背負う姫君が自ら戦場に立つと言っているのだから。

「ミアリーゼ様!?」

 冗談であってほしいとそう願いを込めてユーリは叫ぶが、ミアリーゼ本人はいたって真面目で冷静な眼差しを向けている。

「大佐では無理でも、わたくしならば可能性はあります。皆様が命を賭して戦っておられるのにわたくしだけ黙って見ているわけにはまいりません」

 決意に満ちた表情を見せる彼女に誰もが唖然とする。確かにミアリーゼがフリーディア最高戦力を有するグランドクロスを呼び寄せることができれば勝機はあるだろう。

 だが実行に移すとなれば話は別だ。何よりミアリーゼは戦場に立つと言っている。そのような暴挙にも等しい行いだけは何が何でも止めねばならなかった。

「確かにミアリーゼ様なら可能性がありますが、何もご自身が戦場に立つ必要はないでしょう!?」

 ユーリの否定にミアリーゼは「いいえ」と否定し首を横に振る。

わたくしには戦いの行く末をこの目で直接見届ける義務と責任があります。例え足手まといだと分かっていても、この覚悟と想いは誰にも否定させません」

 毅然と言い放ったミアリーゼに誰もが口を噤む。彼女の意思が固いことは誰の目から見ても明らかだった。それでもやはり無謀だと言わざるを得ない。何故なら彼女は戦えないのだから。

 戦争を終わらせたいというユーリの願いに感化されたなどと本人はつゆ程も思っていない。あのときの言葉がどれだけミアリーゼの心に刺さったのか。

 ミアリーゼはユーリが戦争を終わらせると口にした時、こう思っていたのだ。

(ユーリ様が命を賭して戦われるというのに、わたくしはお礼を言うだけ……? 戦争が終わるなんて、考えたこともありませんでした。わたくしは……)

 このままではいけない。奇しくもユーリが姫に対し懐いた焦燥感は、そのまま本人へ伝播したのだ。

 何故こんなにも胸が苦しいのか? 懐いた想いをそっと胸にしまい込みミアリーゼはユーリを安心させるように笑顔を向ける。

わたくしのことなら大丈夫ですわ」

「ミアリーゼ、様……?」

 そんなミアリーゼの想いとは裏腹に、ユーリの不安は募るばかりで、どこか彼女が遠くに行ってしまいそうな錯覚に陥る。繋ぎ止めたいなどとおこがましいことを思いつつも、それを決して口には出さない。

 フリーディア最高戦力と噂されるグランドクロスを戦場に呼び寄せる。それはひとえに異種族を殲滅する意と同義だ。ナギと呼ばれたビーストの少女の慟哭が瞳に焼き付いて離れない。

(本当に……これでいいのだろうか?)

 分からない。分からないが今のユーリにはどうすることもできない。

「そうと決まれば直ぐに行動しなくてはなりませんね。善は急げともいいますし、急ぎ本国――首都エヴェスティシアへ帰還いたします」

 まさに女王のごとき貫禄にダリル・アーキマンは恭しく頭を垂れる。

「承知いたしました。すぐに護衛を手配いたします」

 結局、ミアリーゼを止めることはユーリにはできなかった。あわよくば失敗に終わってくれ、なんて邪なことを考えてしまって……。そんな自分勝手な想いを心の奥底にしまい込んで、ミアリーゼを見送るのだった。
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