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第一章 始まりの物語
第4話 模擬戦
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トリオン基地内にある訓練場。この訓練場は地下に設けてあり、統合軍兵士たちが訓練や戦術演習を行うために特別に設計された場所だ。
前線というだけあって、設備には最新鋭の技術が用いられており、戦闘時に発生する可能性のあるあらゆる環境をシュミレートすることができる。また、壁一面はどんな強大な魔法にも耐え得る構造となっており、有事の際にはシェルターとしての役割も果たしている。
平時は訓練兵がごった返しているが、現在時刻は深夜を回っているため残っている人間は皆無に等しい。そんな人気のない筈の場所に意外にも四人もの男女がいた。
言わずもがな、その男女とはユーリ・クロイス、オリヴァー・カイエス、アリカ・リーズシュタット、ダニエル・ゴーンのことである。
「やれやれ、明日は早いってのに勘弁してほしいねぇ」
だだっ広い地下訓練場でダニエル・ゴーンが頭を掻きながらぼやく。彼の隣に立つユーリは苦笑いで返すしかない。
「悪いな、この時間しか空いてなかったんだ。恨むならこんな状況を作ったあの二人を恨んでくれ」
「どちらかといえばお前さんに巻き込まれたようなもんなんだが……ま、今更文句を言っても仕方ねぇか」
明日は早朝から厳しい訓練が待ち受けている。当然休む間などなく、スケジュールを確認した時は「うげっ!?」と男三人仲良く声を上げてしまった程。
睡眠時間を削ってまで戦う理由のないダニエルは完全に巻き込まれた形である。全身に入れ墨を入れた厳つい見た目とは裏腹に付き合いがいい男だなとユーリは思った。
そして彼らの向かい合う視線の先にはオリヴァー・カイエスとアリカ・リーズシュタットの姿がある。
お互い険悪な空気――というよりもオリヴァーが一方的にアリカを敵視しているため二人の距離は物理的な意味においても遠い。
アリカ本人は集中しているのか、立ったまま瞳を閉じ瞑想していた。
「さて、それじゃルールを説明するぞ」
先行きが不安になりつつも、ユーリは二人に向けて告げる。
「この模擬戦は俺とダニエル、アリカとオリヴァーによるタッグマッチだ。魔術武装は訓練用の非殺傷モードで使用してくれ」
今回はお互いの実力を知るための――もとい、わだかまりを無くすための模擬戦闘だ。万が一があってもいけないのでこのルールは徹底させることにする。
アリカもオリヴァーも分かっていたのか同意し頷く。
「それで、肝心の勝敗はどうやって決めるの?」
アリカが挟んだ疑問の言葉を受けユーリは説明を続ける。
「勝敗の判定は簡単だ。今からオリヴァー、それからダニエルにこの首飾りを付けてもらう。先に首飾りを破壊した方の勝ちってことで」
ユーリはサバイバルゲーム等に用いる円盤の的を模した首飾りをダニエル、オリヴァーへ手渡す。これは実際に訓練に用いられるもので、訓練場の使用許可を貰う際に貰っていたのだ。
「訓練場の使用許可といい、模擬戦ルールやこの首飾りといい、お前さん随分と用意がいいな」
的を模した首飾りを装着しながらダニエルは感心したように言う。
「あの後、アーキマン司令に相談したら快く貸してくれたんだ」
「こんなことで、わざわざ司令の手を煩わせるとか、バカなのか豪胆なのか分かんねぇな」
ダニエルの言う通り、従来であれば仲間割れを防ぐために基地司令を利用しようとする者などいない。
「まぁ、あの人も直にアリカとのやり取り見てたし、このままだと作戦に影響が出ると思ったんじゃないか?」
「確かに夕飯のとき、むっちゃ絡まれてたしな。アリカは中身はともかく外面だけはいいもんだから、余計にな」
「だな」
むさい男ばかりの前線基地にる兵士たちにとって、アリカは荒野に咲く一輪の花のように見えたに違いない。あのやり取りを知らないトリオン基地在住の兵士たちは、その一輪の花にとんでもない毒があるとも知らずに群がり、見事に玉砕していった。
つい数時間前のことだが、思い出したくもない。何故か同じ部隊のユーリたちにまで飛び火し、たった一日で先輩兵士たち全員に恨みを買ってしまう始末……。
「ねぇ、いつまで待たせるの? 早くしてくれない?」
ユーリの気苦労など、どこ吹く風とばかりにアリカが急かしてくる。本当誰のせいでこうなったのかと説教してやりたい気持ちをぐっと堪え、お互い指定の位置につき改めて向き直る。
今回はシュミレーターは使用せず、簡素で無機質な空間が広がる中での戦いとなる。つまり、逃げる場所も隠れる場所もないということ。
今からユーリとダニエルは、アリカの猛攻を真っ向から受け止めねばならない。向き合うことで分かる、彼女から放たれる戦意が身体を蝕み、恐怖へと変換されていくのを感じる。
それを必死に抑え込んでいたが、アリカには伝わってしまった様子。酷くつまらなさそうな表情で心底不思議そうに問いかける。
「ねぇ、アンタって何でトリオンに来たの?」
戦前の最後の問答。内心がどうであれ、彼女から質問が飛ぶのは予想外だった。
「何でそんなこと聞くんだ?」
「別に、なんとなくよ。トリオン基地に配属された新兵たちの中で何故かアンタだけ覚悟を感じないのが気になってたの」
「…………」
アリカの問いにユーリは思わず息を呑み言葉を失う。
「私は目的のためなら命が惜しいとは思わない。癪だけど、そこにいるオリヴァー・カイエスやダニエル・ゴーンもきっと同じ。アンタはどう? 目的はある? 叶えたい野望はある? 人類のために命をかけられる?」
「……俺は――」
――かけられる! とユーリの喉元まで言葉が出かかったが音として発することができなかった。
そもそもユーリは自らの意志でトリオン基地に来たわけではない。人類のために戦う覚悟もなく、家柄に恵まれ何不自由なく生きてきたユーリに覚悟を問いかけること自体が野暮なものだ。
そんなユーリの様子を見たアリカは小さく溜め息を付く。
「ユーリ・クロイス――私と戦うの、怖くて怖くて仕方無いんじゃない?」
「…………え?」
「必死に隠してるつもりだろうけど、身体震えてるのがバレバレ。それとも無意識? とにかく、怯えてる相手と戦うなんてやり難いったらないわ」
呆然とするユーリに対し、アリカは冷たく言い放った。怖いなら背を向けて逃げろと彼女は遠回しに言っているのだ。
ここは御上りが来る場所じゃないと。
戦場へ赴けばユーリなど真っ先に死ぬことは明白だ。そう考えた瞬間、全身に震えが走る。まるで自分の心臓を鷲掴みされたような恐怖を感じた。アリカの忠告によって死と隣合わせの戦場に来たという実感がようやく追い付いたのだ。
今までふわふわと漂っていた現実感の無さは消し飛び、残ったのは恐怖という感情ただそれだけ。己の情けなさに歯噛みし拳を強く握りしめる。そして大きく息を吸い込み言った。
「恐怖を感じない生物なんていないだろ? 確かに俺には覚悟なんて無いし、前線に配属されたのも望んだことじゃない。その理由を見つけるために、俺は今ここにいるんだ!」
クロイス家の長男として生まれ、何不自由なく生きてきたユーリだが唯一誇りといってもよいものだけは存在する。
「だから、お前との戦いだけじゃない。戦争から逃げることだけは断じてしない!」
怯えてもいい、泣いてもいい、負けてもいい。だけど戦場から逃げることだけは否。そんなことをしたら、もう二度とあの人に顔向けできないから。
「そう」
ユーリの答えを聞いたアリカは何を思ったのか。その感情を窺わせることなく小さく呟き。
「魔術武装・接続……起動!」
現在彼女が行っている行為は、例えるならコンピュータの電源にスイッチを入れ、ネットワークを構築する行為に等しい。魔法科学の発展した現代では、自身の魔力を媒体に様々な機器と接続し、起動することができる。
それはもちろん、戦争に用いられる兵器にも当てはまることで。
「展開――」
その言葉と同時に、アリカ・リーズシュタットは腰に装備された鞘に納刀された刀の柄を掴み取り、思いっきり引き抜いた。
「――紅鴉国光」
鴉の濡羽が血に染まるがごとき煌めきを放つその刀はとても禍々しく、また美しく、幻想的な光景だった。圧倒的な存在感、威圧感、それらが肌を通して伝わってくる。
「これが、私の魔術武装。五百年以上昔に存在した彼の刀匠――アマツ・クニミツが生前最期に打ったとされる傑作」
アリカの真紅の髪が紅鴉国光から放たれる魔力と呼応しなびいた。
その美しさに見惚れたのはユーリだけではない。オリヴァーも、ダニエルも含め目を逸らすことができずにいた。
「さぁ、アンタたちも自分の魔術武装を出しなさい。決着に五分もかからない。リーズシュタット流の剣術の一端を拝めることに感謝しながら敗北を受け入れろ!」
アリカ・リーズシュタットから解き放たれた闘志は最早誰にも止めることなどできない。いや、そもそも止める必要などない。ここへは彼女たちと戦うために来たのだから。
「いくぞ、お前がやられたら終わりだからな。頼むぞダニエル」
「お前さんもすぐにやられんなよ。腰引けてんのバレバレだかんな」
ダニエルの軽口にユーリは僅かに笑う。
「僕もいるぞ! ユーリ、ダニエル・ゴーン。カイエス家の誇りにかけて敗北は許されない。カイエス家のためなら死ぬ覚悟が僕にはあるからな!」
オリヴァー・カイエス。彼もまたアリカに触発され闘志を燃やしていた。
前線というだけあって、設備には最新鋭の技術が用いられており、戦闘時に発生する可能性のあるあらゆる環境をシュミレートすることができる。また、壁一面はどんな強大な魔法にも耐え得る構造となっており、有事の際にはシェルターとしての役割も果たしている。
平時は訓練兵がごった返しているが、現在時刻は深夜を回っているため残っている人間は皆無に等しい。そんな人気のない筈の場所に意外にも四人もの男女がいた。
言わずもがな、その男女とはユーリ・クロイス、オリヴァー・カイエス、アリカ・リーズシュタット、ダニエル・ゴーンのことである。
「やれやれ、明日は早いってのに勘弁してほしいねぇ」
だだっ広い地下訓練場でダニエル・ゴーンが頭を掻きながらぼやく。彼の隣に立つユーリは苦笑いで返すしかない。
「悪いな、この時間しか空いてなかったんだ。恨むならこんな状況を作ったあの二人を恨んでくれ」
「どちらかといえばお前さんに巻き込まれたようなもんなんだが……ま、今更文句を言っても仕方ねぇか」
明日は早朝から厳しい訓練が待ち受けている。当然休む間などなく、スケジュールを確認した時は「うげっ!?」と男三人仲良く声を上げてしまった程。
睡眠時間を削ってまで戦う理由のないダニエルは完全に巻き込まれた形である。全身に入れ墨を入れた厳つい見た目とは裏腹に付き合いがいい男だなとユーリは思った。
そして彼らの向かい合う視線の先にはオリヴァー・カイエスとアリカ・リーズシュタットの姿がある。
お互い険悪な空気――というよりもオリヴァーが一方的にアリカを敵視しているため二人の距離は物理的な意味においても遠い。
アリカ本人は集中しているのか、立ったまま瞳を閉じ瞑想していた。
「さて、それじゃルールを説明するぞ」
先行きが不安になりつつも、ユーリは二人に向けて告げる。
「この模擬戦は俺とダニエル、アリカとオリヴァーによるタッグマッチだ。魔術武装は訓練用の非殺傷モードで使用してくれ」
今回はお互いの実力を知るための――もとい、わだかまりを無くすための模擬戦闘だ。万が一があってもいけないのでこのルールは徹底させることにする。
アリカもオリヴァーも分かっていたのか同意し頷く。
「それで、肝心の勝敗はどうやって決めるの?」
アリカが挟んだ疑問の言葉を受けユーリは説明を続ける。
「勝敗の判定は簡単だ。今からオリヴァー、それからダニエルにこの首飾りを付けてもらう。先に首飾りを破壊した方の勝ちってことで」
ユーリはサバイバルゲーム等に用いる円盤の的を模した首飾りをダニエル、オリヴァーへ手渡す。これは実際に訓練に用いられるもので、訓練場の使用許可を貰う際に貰っていたのだ。
「訓練場の使用許可といい、模擬戦ルールやこの首飾りといい、お前さん随分と用意がいいな」
的を模した首飾りを装着しながらダニエルは感心したように言う。
「あの後、アーキマン司令に相談したら快く貸してくれたんだ」
「こんなことで、わざわざ司令の手を煩わせるとか、バカなのか豪胆なのか分かんねぇな」
ダニエルの言う通り、従来であれば仲間割れを防ぐために基地司令を利用しようとする者などいない。
「まぁ、あの人も直にアリカとのやり取り見てたし、このままだと作戦に影響が出ると思ったんじゃないか?」
「確かに夕飯のとき、むっちゃ絡まれてたしな。アリカは中身はともかく外面だけはいいもんだから、余計にな」
「だな」
むさい男ばかりの前線基地にる兵士たちにとって、アリカは荒野に咲く一輪の花のように見えたに違いない。あのやり取りを知らないトリオン基地在住の兵士たちは、その一輪の花にとんでもない毒があるとも知らずに群がり、見事に玉砕していった。
つい数時間前のことだが、思い出したくもない。何故か同じ部隊のユーリたちにまで飛び火し、たった一日で先輩兵士たち全員に恨みを買ってしまう始末……。
「ねぇ、いつまで待たせるの? 早くしてくれない?」
ユーリの気苦労など、どこ吹く風とばかりにアリカが急かしてくる。本当誰のせいでこうなったのかと説教してやりたい気持ちをぐっと堪え、お互い指定の位置につき改めて向き直る。
今回はシュミレーターは使用せず、簡素で無機質な空間が広がる中での戦いとなる。つまり、逃げる場所も隠れる場所もないということ。
今からユーリとダニエルは、アリカの猛攻を真っ向から受け止めねばならない。向き合うことで分かる、彼女から放たれる戦意が身体を蝕み、恐怖へと変換されていくのを感じる。
それを必死に抑え込んでいたが、アリカには伝わってしまった様子。酷くつまらなさそうな表情で心底不思議そうに問いかける。
「ねぇ、アンタって何でトリオンに来たの?」
戦前の最後の問答。内心がどうであれ、彼女から質問が飛ぶのは予想外だった。
「何でそんなこと聞くんだ?」
「別に、なんとなくよ。トリオン基地に配属された新兵たちの中で何故かアンタだけ覚悟を感じないのが気になってたの」
「…………」
アリカの問いにユーリは思わず息を呑み言葉を失う。
「私は目的のためなら命が惜しいとは思わない。癪だけど、そこにいるオリヴァー・カイエスやダニエル・ゴーンもきっと同じ。アンタはどう? 目的はある? 叶えたい野望はある? 人類のために命をかけられる?」
「……俺は――」
――かけられる! とユーリの喉元まで言葉が出かかったが音として発することができなかった。
そもそもユーリは自らの意志でトリオン基地に来たわけではない。人類のために戦う覚悟もなく、家柄に恵まれ何不自由なく生きてきたユーリに覚悟を問いかけること自体が野暮なものだ。
そんなユーリの様子を見たアリカは小さく溜め息を付く。
「ユーリ・クロイス――私と戦うの、怖くて怖くて仕方無いんじゃない?」
「…………え?」
「必死に隠してるつもりだろうけど、身体震えてるのがバレバレ。それとも無意識? とにかく、怯えてる相手と戦うなんてやり難いったらないわ」
呆然とするユーリに対し、アリカは冷たく言い放った。怖いなら背を向けて逃げろと彼女は遠回しに言っているのだ。
ここは御上りが来る場所じゃないと。
戦場へ赴けばユーリなど真っ先に死ぬことは明白だ。そう考えた瞬間、全身に震えが走る。まるで自分の心臓を鷲掴みされたような恐怖を感じた。アリカの忠告によって死と隣合わせの戦場に来たという実感がようやく追い付いたのだ。
今までふわふわと漂っていた現実感の無さは消し飛び、残ったのは恐怖という感情ただそれだけ。己の情けなさに歯噛みし拳を強く握りしめる。そして大きく息を吸い込み言った。
「恐怖を感じない生物なんていないだろ? 確かに俺には覚悟なんて無いし、前線に配属されたのも望んだことじゃない。その理由を見つけるために、俺は今ここにいるんだ!」
クロイス家の長男として生まれ、何不自由なく生きてきたユーリだが唯一誇りといってもよいものだけは存在する。
「だから、お前との戦いだけじゃない。戦争から逃げることだけは断じてしない!」
怯えてもいい、泣いてもいい、負けてもいい。だけど戦場から逃げることだけは否。そんなことをしたら、もう二度とあの人に顔向けできないから。
「そう」
ユーリの答えを聞いたアリカは何を思ったのか。その感情を窺わせることなく小さく呟き。
「魔術武装・接続……起動!」
現在彼女が行っている行為は、例えるならコンピュータの電源にスイッチを入れ、ネットワークを構築する行為に等しい。魔法科学の発展した現代では、自身の魔力を媒体に様々な機器と接続し、起動することができる。
それはもちろん、戦争に用いられる兵器にも当てはまることで。
「展開――」
その言葉と同時に、アリカ・リーズシュタットは腰に装備された鞘に納刀された刀の柄を掴み取り、思いっきり引き抜いた。
「――紅鴉国光」
鴉の濡羽が血に染まるがごとき煌めきを放つその刀はとても禍々しく、また美しく、幻想的な光景だった。圧倒的な存在感、威圧感、それらが肌を通して伝わってくる。
「これが、私の魔術武装。五百年以上昔に存在した彼の刀匠――アマツ・クニミツが生前最期に打ったとされる傑作」
アリカの真紅の髪が紅鴉国光から放たれる魔力と呼応しなびいた。
その美しさに見惚れたのはユーリだけではない。オリヴァーも、ダニエルも含め目を逸らすことができずにいた。
「さぁ、アンタたちも自分の魔術武装を出しなさい。決着に五分もかからない。リーズシュタット流の剣術の一端を拝めることに感謝しながら敗北を受け入れろ!」
アリカ・リーズシュタットから解き放たれた闘志は最早誰にも止めることなどできない。いや、そもそも止める必要などない。ここへは彼女たちと戦うために来たのだから。
「いくぞ、お前がやられたら終わりだからな。頼むぞダニエル」
「お前さんもすぐにやられんなよ。腰引けてんのバレバレだかんな」
ダニエルの軽口にユーリは僅かに笑う。
「僕もいるぞ! ユーリ、ダニエル・ゴーン。カイエス家の誇りにかけて敗北は許されない。カイエス家のためなら死ぬ覚悟が僕にはあるからな!」
オリヴァー・カイエス。彼もまたアリカに触発され闘志を燃やしていた。
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