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四十六話『嬉しい思い出、走る寒空』
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週明けの月曜日。志穂ちゃんに相談したおかげで、少しスッとした気持ちで学校に向かう。
鞄の中には、昨日作ったクッキーとマカロンが入っている。会えるかわからないけれど、雪菜先輩たちにも渡せたら渡すつもりだ。
本当は先生の分も作ろうと思ったけれど、うっかりお砂糖使い切っちゃったから作れなかったぁ。いくら先生が甘さ控えめが好きだとしても、ノンシュガークッキーはさすがに渡せない。帰りにスーパー寄って行こう。
「おはようございます!」
予定を考えていると、学校に到着した。今日は先生たちの他に、新生徒会の人たちも一緒に立っている。とても張り切っているようで、寒さに負けず大きな声で挨拶をしている。
寒いのに大変だなあ。そういえば、雪菜先輩が校門で挨拶してるの見たことないなぁ。月・木曜日は部活の朝練かそれ以上に早く学校に来ていたから、立っていてもおかしくないのに。……いや、人だかりできちゃうからダメか。
「おはようございます、先生」
「おはよう、古町。少しご機嫌そうだな」
「かもしれないです」
気にし過ぎてずっと引っ掛かっていた針が抜けて、今はとても気分がいい。八戸波先生にあっても、嬉しいと素直に思える。
「今日はご機嫌なやつばかりだな。寒いってのに」
「そうなんですか?」
「ああ。夢国と七津。三条に小都垣も機嫌良かったからな」
雪菜先輩たちは、服のことかもしれないけれど、夢国さんたちは何があったんだろう。教室に行ったら二人に聞いてみよう。
「ま、明るいのはいいことだ。風邪引く前に教室行け」
「はーい。先生も気をつけてくださいね」
注意し返すと、八戸波先生は苦い顔をしながら頷いた。この前の件をしっかり反省しているようだ。私としても、先生が休んでしまうと、会えなくなって寂しいのでとても困る。
「おはようございます!」
「おはようございます、真樹会長」
一際元気な声で挨拶している真樹会長に挨拶を返した。よくみると、張り切っているだけではなく緊張しているようだった。前の会長が雪菜先輩だったのだから仕方がない。会長と呼んだとき、少し嬉しそうだった気がする。
靴を履き替えて、人波に逆らうことなく階段を上がっていく。
雪菜先輩たちの教室に行けば、会えるけれど。何組なのか私知らないんだよね。それに、人気者の雪菜先輩に会いに行っていいものなのかな。ただでさえ学校で疲れてるだろうし。あとで命先輩に連絡して訊いてみよう。
教室に入ると、夢国さんの姿はなく。七津さんだけが笑顔で座っていた。
「おはよう、七津さん」
「おっはよ~う。今日も寒いね~」
八戸波先生から聞いた通り、とても機嫌が良さそうだ。普段の二割増しの笑顔に加えて、声色は高いのにどこか溶けてそうなくらいゆるゆるとしている。美味しいものを食べた時に漏れる声にも似ている気がした。
「ご機嫌だね」
「えっへへ~。一昨日あーちゃんとお泊まりして~、昨日もお出かけしてきたんだ~」
七津さんは嬉しそうに語ると、スマホを渡してきた。画面には、夢国さんとお揃いパジャマのツーショットが映っている。スライドすると、お出かけ先の写真もたくさん撮っていた。動物園に行ってきたらしい。ふれあいコーナーでうさぎに群がられて、対応に困っている夢国さんもバッチリブレることなく撮られている。
休日もみっちり夢国さんと過ごせたからご機嫌だったんだ。でも確かに、嬉しいし楽しいだろうなぁ。でも、それくらいなら今までにもあっただろうし、何か他の要因もありそうだけれど。
「良かったね。……他にもいいことあった?」
「う~ん、それはね~」
ユラユラと体を左右に揺らして焦らす七津さん。先ほどまでの嬉しそうな表情に加えて、照れたように頬が赤くなっている。
「あら、古町さん。おはようございます」
「おはよう、夢国さん」
七津さんと話していると、夢国さんが教室に戻ってきた。七津さんと違い、普段とあまり違うように感じない。しかし、近づいてきて私が七津さんのスマホを持っていることに気がつくと、眉毛がぴくりと動いた。
「動物園行ってきたんだって? お目当ての動物には会えた?」
「え、ええ。パンダ、ゴリラ、うさぎ。他にも色々と堪能しましたわ」
夢国さんは私から目をそらしながら答えた。そして若干の気まずさを誤魔化すように、自分のスマホを取り出して写真を見せてくれた。七津さんのとは違い、動物がメインで写真が撮られている。
写真撮るの上手だなぁ、夢国さん。ホームページとかに載ってそう。
友達の写真の腕前に感心していると、通知オンが重なって聞こえた。夢国さんのスマホにも、七津さんのスマホにも、同時に画像が送られてきたようだ。差出人は命先輩。このタイミングで送られてきた写真。何より、私にだけ送られてきていないことを考えると、何が送られてきたのかは察しがついた。
「あら、三条先輩ですわ」
「おにゅーなのかな~。可愛いね~」
予想通り、送られてきたのはニットにスカート姿の雪菜先輩の写真だった。
雪菜先輩にバレて消されたものだと思っていたけれど、どうやって残しておいたんだろう。そういえば、浴衣の写真のときも別の場所にデータを保管してるって言っていたっけ。バレたらまた怒られるんだろうな、命先輩。
「あ、それで。七津さんがご機嫌な理由って」
「お出かけ! お出かけですわ! ね、楓さん!」
話を戻そうとすると、夢国さんがものすごい勢いで誤魔化してきた。熱量がありすぎて、何かあったことを自分で認めてしまっている状態だ。
「あーちゃん恥ずかしいみたいだから。内緒かな~」
「お前らー、席につけー」
七津さんが口を噤んだところで、八戸波先生が教室に入ってきた。これ以上ご機嫌な理由を掘り返すのは無理そうだ。
校門で挨拶した時も思ったが、今日の八戸波先生は唇はあまり乾燥していない。リップクリームを忘れていてはいないらしい。
良かった。先生が唇切ることなさそうで。でも、ちょっと残念かも。
そんなことを考えているうちにホームルームが終わった。八戸波先生はポケットを弄ると、リップクリームを取り出して唇に塗った。
あれ、私が渡したやつ。ちゃんと使ってくれてるんだ。嬉しい。
勝手に少し残念な気持ちになっていた私の心は、今度は嬉しさで溢れそうになった。しかし、そんな嬉しさでいっぱいだったが、体育の授業が始まるとそれも薄まってしまった。
「はぁ……はぁ……」
体育の授業定番の持久走。小学生の頃から延々と続くこのカリキュラムが球技の次に苦手だ。いつでも最後尾。私の後ろに誰かがいるのは、アップで走っている時くらいだろう。七津さんは悠々と先頭グループ。夢国さんはわからないが、少なくとも真ん中よりも先を走っていそうだ。
こ、この授業の時だけはどうしても一人になっちゃう。志穂ちゃん、も。足が速かった、から。持久走の時はいつも前の方を走っていたし。私よりも遅い人なんて基本いなかったし。
「ファイト、古町さん!」
自分なりの精一杯で走っていると、中継地点から戻ってくる七津さんと遭遇した。一回転しながら背中をポンと叩かれた。私よりも速度を出して長い距離を走った後のはずなのに、まだ体力が余っているようだ。
しばらくして、夢国さんが前から走ってきた。七津さんほどの元気はなさそうだが、サムズアップで私のことを励ましてくれた。私もサムズアップをし返すと、夢国さんの足音のテンポが少し速くなった。
よし。私も、負けてられない。せめて、自己ベスト更新!
気合いを入れ直して、一歩一歩確実に前に進んでいく。中継地点で待つ先生から番号札を受け取り、それを握りしめて学校へ戻っていく。すでに内臓が千切れそうに痛いし、朝ご飯を吐きそうにもなっている。込み上げてくる胃酸を耐えて、なんとか学校に戻ってこられた。夢国さんはまだ少し疲れていそうだが、七津さんに至っては完全に息が整っている。
「お疲れ、古町さん。はいお水」
「ありがとう、七津さん」
私が最後ということもあり、ほとんど休めることなく授業が終わった。歩きながら息を整えて、更衣室で着替えてから教室に戻る。次の授業に集中するのに十分くらいは使ってしまいそうだ。
鞄の中には、昨日作ったクッキーとマカロンが入っている。会えるかわからないけれど、雪菜先輩たちにも渡せたら渡すつもりだ。
本当は先生の分も作ろうと思ったけれど、うっかりお砂糖使い切っちゃったから作れなかったぁ。いくら先生が甘さ控えめが好きだとしても、ノンシュガークッキーはさすがに渡せない。帰りにスーパー寄って行こう。
「おはようございます!」
予定を考えていると、学校に到着した。今日は先生たちの他に、新生徒会の人たちも一緒に立っている。とても張り切っているようで、寒さに負けず大きな声で挨拶をしている。
寒いのに大変だなあ。そういえば、雪菜先輩が校門で挨拶してるの見たことないなぁ。月・木曜日は部活の朝練かそれ以上に早く学校に来ていたから、立っていてもおかしくないのに。……いや、人だかりできちゃうからダメか。
「おはようございます、先生」
「おはよう、古町。少しご機嫌そうだな」
「かもしれないです」
気にし過ぎてずっと引っ掛かっていた針が抜けて、今はとても気分がいい。八戸波先生にあっても、嬉しいと素直に思える。
「今日はご機嫌なやつばかりだな。寒いってのに」
「そうなんですか?」
「ああ。夢国と七津。三条に小都垣も機嫌良かったからな」
雪菜先輩たちは、服のことかもしれないけれど、夢国さんたちは何があったんだろう。教室に行ったら二人に聞いてみよう。
「ま、明るいのはいいことだ。風邪引く前に教室行け」
「はーい。先生も気をつけてくださいね」
注意し返すと、八戸波先生は苦い顔をしながら頷いた。この前の件をしっかり反省しているようだ。私としても、先生が休んでしまうと、会えなくなって寂しいのでとても困る。
「おはようございます!」
「おはようございます、真樹会長」
一際元気な声で挨拶している真樹会長に挨拶を返した。よくみると、張り切っているだけではなく緊張しているようだった。前の会長が雪菜先輩だったのだから仕方がない。会長と呼んだとき、少し嬉しそうだった気がする。
靴を履き替えて、人波に逆らうことなく階段を上がっていく。
雪菜先輩たちの教室に行けば、会えるけれど。何組なのか私知らないんだよね。それに、人気者の雪菜先輩に会いに行っていいものなのかな。ただでさえ学校で疲れてるだろうし。あとで命先輩に連絡して訊いてみよう。
教室に入ると、夢国さんの姿はなく。七津さんだけが笑顔で座っていた。
「おはよう、七津さん」
「おっはよ~う。今日も寒いね~」
八戸波先生から聞いた通り、とても機嫌が良さそうだ。普段の二割増しの笑顔に加えて、声色は高いのにどこか溶けてそうなくらいゆるゆるとしている。美味しいものを食べた時に漏れる声にも似ている気がした。
「ご機嫌だね」
「えっへへ~。一昨日あーちゃんとお泊まりして~、昨日もお出かけしてきたんだ~」
七津さんは嬉しそうに語ると、スマホを渡してきた。画面には、夢国さんとお揃いパジャマのツーショットが映っている。スライドすると、お出かけ先の写真もたくさん撮っていた。動物園に行ってきたらしい。ふれあいコーナーでうさぎに群がられて、対応に困っている夢国さんもバッチリブレることなく撮られている。
休日もみっちり夢国さんと過ごせたからご機嫌だったんだ。でも確かに、嬉しいし楽しいだろうなぁ。でも、それくらいなら今までにもあっただろうし、何か他の要因もありそうだけれど。
「良かったね。……他にもいいことあった?」
「う~ん、それはね~」
ユラユラと体を左右に揺らして焦らす七津さん。先ほどまでの嬉しそうな表情に加えて、照れたように頬が赤くなっている。
「あら、古町さん。おはようございます」
「おはよう、夢国さん」
七津さんと話していると、夢国さんが教室に戻ってきた。七津さんと違い、普段とあまり違うように感じない。しかし、近づいてきて私が七津さんのスマホを持っていることに気がつくと、眉毛がぴくりと動いた。
「動物園行ってきたんだって? お目当ての動物には会えた?」
「え、ええ。パンダ、ゴリラ、うさぎ。他にも色々と堪能しましたわ」
夢国さんは私から目をそらしながら答えた。そして若干の気まずさを誤魔化すように、自分のスマホを取り出して写真を見せてくれた。七津さんのとは違い、動物がメインで写真が撮られている。
写真撮るの上手だなぁ、夢国さん。ホームページとかに載ってそう。
友達の写真の腕前に感心していると、通知オンが重なって聞こえた。夢国さんのスマホにも、七津さんのスマホにも、同時に画像が送られてきたようだ。差出人は命先輩。このタイミングで送られてきた写真。何より、私にだけ送られてきていないことを考えると、何が送られてきたのかは察しがついた。
「あら、三条先輩ですわ」
「おにゅーなのかな~。可愛いね~」
予想通り、送られてきたのはニットにスカート姿の雪菜先輩の写真だった。
雪菜先輩にバレて消されたものだと思っていたけれど、どうやって残しておいたんだろう。そういえば、浴衣の写真のときも別の場所にデータを保管してるって言っていたっけ。バレたらまた怒られるんだろうな、命先輩。
「あ、それで。七津さんがご機嫌な理由って」
「お出かけ! お出かけですわ! ね、楓さん!」
話を戻そうとすると、夢国さんがものすごい勢いで誤魔化してきた。熱量がありすぎて、何かあったことを自分で認めてしまっている状態だ。
「あーちゃん恥ずかしいみたいだから。内緒かな~」
「お前らー、席につけー」
七津さんが口を噤んだところで、八戸波先生が教室に入ってきた。これ以上ご機嫌な理由を掘り返すのは無理そうだ。
校門で挨拶した時も思ったが、今日の八戸波先生は唇はあまり乾燥していない。リップクリームを忘れていてはいないらしい。
良かった。先生が唇切ることなさそうで。でも、ちょっと残念かも。
そんなことを考えているうちにホームルームが終わった。八戸波先生はポケットを弄ると、リップクリームを取り出して唇に塗った。
あれ、私が渡したやつ。ちゃんと使ってくれてるんだ。嬉しい。
勝手に少し残念な気持ちになっていた私の心は、今度は嬉しさで溢れそうになった。しかし、そんな嬉しさでいっぱいだったが、体育の授業が始まるとそれも薄まってしまった。
「はぁ……はぁ……」
体育の授業定番の持久走。小学生の頃から延々と続くこのカリキュラムが球技の次に苦手だ。いつでも最後尾。私の後ろに誰かがいるのは、アップで走っている時くらいだろう。七津さんは悠々と先頭グループ。夢国さんはわからないが、少なくとも真ん中よりも先を走っていそうだ。
こ、この授業の時だけはどうしても一人になっちゃう。志穂ちゃん、も。足が速かった、から。持久走の時はいつも前の方を走っていたし。私よりも遅い人なんて基本いなかったし。
「ファイト、古町さん!」
自分なりの精一杯で走っていると、中継地点から戻ってくる七津さんと遭遇した。一回転しながら背中をポンと叩かれた。私よりも速度を出して長い距離を走った後のはずなのに、まだ体力が余っているようだ。
しばらくして、夢国さんが前から走ってきた。七津さんほどの元気はなさそうだが、サムズアップで私のことを励ましてくれた。私もサムズアップをし返すと、夢国さんの足音のテンポが少し速くなった。
よし。私も、負けてられない。せめて、自己ベスト更新!
気合いを入れ直して、一歩一歩確実に前に進んでいく。中継地点で待つ先生から番号札を受け取り、それを握りしめて学校へ戻っていく。すでに内臓が千切れそうに痛いし、朝ご飯を吐きそうにもなっている。込み上げてくる胃酸を耐えて、なんとか学校に戻ってこられた。夢国さんはまだ少し疲れていそうだが、七津さんに至っては完全に息が整っている。
「お疲れ、古町さん。はいお水」
「ありがとう、七津さん」
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