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確信の笑み
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開始時間十分前にも関わらず、会場の照明が消えた。
暗転する。
会場にいる観客に開始を告げた。
伏せられていた狂気が蠢く。
身を隠していたドラキュラが動き出す。
暗転に乗じ、漆黒の闇を蔓のように広げていく。
この場全てを乗っ取るつもりなのだ。
計画通りに進んでいる。ドラキュラから笑みが溢れる。
直後だった。
閃光手榴弾を投げ付けられた。
「貴様っ……」
伸ばした闇が断たれ、苦々しく言葉を漏らす。
ドラキュラがいたのは天井だ。
パンク調の服を着ている。男だがメイクをし、一般客に紛れていた。
「残念ー。既に見破っているよ。闇は技、いたのは防犯カメラが届かない地上——」
堂々と発する伊吹だが、気付いたのは羽月と那智だった。
会場中から悲鳴が上がっている。
複数の壁が爆発し、外の光が溢れ込む。
「皆さんっ、こっちです!」
「早く逃げて下さい!」
武装した警察官が崩れた壁から手招く。
観客は、複数の穴目掛けて一斉に走り出す。
「させるかっ——!」
怒鳴り叫び、再び闇を広げる。
観客に襲い掛かるも、黒い刃に切断された。
旭のブレイヴァンスピアーから放たれた刃だ。
暗転に乗じ、那智と旭も会場に入っていた。
那智はパワーシューズを踏み込む。空中に飛ぶ。
劣勢に負われるドラキュラに斬撃を向かわす。
ドラキュラは後ろに飛んで避けるが、那智はトラスを踏み台に追い詰める。
ドラキュラは剣を現す。苦し紛れに血刃を放つ。
那智は一振りで全て払う。
落ちた血刃は下にいる旭が払いどけた。
旭は、頭上でブレイヴァンスピアーを回転させている。まだ会場にいる観客を双方の攻撃から守っている。
だが、逃げる観客に逆流し、数十人が旭と伊吹に襲い掛かった。
ナイフを持つ者が走り向かう。セットを壊し、鉄パイプを武器にする者もいる。
「ちっ、ヤク中がいやがった!」
激しく旭は舌打ちをする。
マシンピストルで援護したい伊吹だが、撃てる場所は限られる。
会場にはまだ観客が残っている。将棋倒しが起こり、何人も逃げ遅れていた。流れ弾に当たってしまう。
伊吹は生身で対抗する。
そんな中、那智と対峙するドラキュラが、トラスを蹴り飛ばした。
巨大なトラスが倒れていく。
急ぎ、伊吹はゴッドスターを抜く。
トラスを壊そうと複数回撃つ。直後にクレームが上がった。
「何すんだよ⁉︎ アンタはっ!」
旭に破片が降っていた。
「あっ、ごめん!」
慌てて伊吹は謝罪する。
旭はブレイヴァンスピアーを振り回す。
破片は避けられるが、ヒューマロイドからの攻撃までは避けられない。
足場を失くした那智は、天井の傷にチェーンを掛けてぶら下がっていた。
「人間は飛べねぇだろっ! 俺の勝ちだ‼︎」
斬撃で自身を護った後で、那智は刀を大きく振るう。黒い刃を飛ばす。旭と伊吹を援護する。
混乱の中、身を潜めていたスタッフの二人が会場裏に駆けて行く。大きなボストンバッグを二人は担いでいる。
那智は見ていた。
「伊吹君、あなたは主犯を逮捕しに行って下さい!」
「分かった!」
那智の指示に応え、伊吹は銃を仕舞う。
一人、会場裏に駆け出した。
なっちーと旭で充分だ。
劣勢のように見えるが伊吹は確信している。
交戦の中、那智は刀を鞘に納めた。床に着地する。
「死ね——!」
叫び、ドラキュラは血刃を降らし、那智に斬り掛かる。
対する那智は抜刀の体勢を取った。好機を見極める。一撃で仕留めるつもりだ。
自身に迫る血刃を、眼で捉えぬ速さで全て払う。
ドラキュラの剣撃がくる。
「高みは望めぬ剣撃ですね」
刀を鞘に納め、那智は断言する。
交えた様に見えた剣は掠りもしていない。剣は転がっている。
那智は一撃で仕留めた。
那智のパワーシューズからは白煙が上がっている。
那智は、ドラキュラから大分前にいる。
「細胞すら傷付けない剣撃か……」
ドラキュラは漏らす様に呟く。
直後、首から血飛沫が舞う。
旭の周りにいたヒューマロイドからも血飛沫が舞っている。何人も斬られていた。那智が払った血刃に殺られた。
残り少ない敵は旭が斬り捨てる。
「これで勝ちじゃねぇよ。俺は主犯じゃない」
転がった剣を持って来た那智にドラキュラは告げる。
「えぇ、存じておりますよ。あなた、魔力を上げられていない」
言われるまでもない。那智は気付いていた。
穏やかな那智の笑顔を見届けると、ドラキュラは笑みを零す。
首が落ちた。
那智と旭の勝利だ。
暗転する。
会場にいる観客に開始を告げた。
伏せられていた狂気が蠢く。
身を隠していたドラキュラが動き出す。
暗転に乗じ、漆黒の闇を蔓のように広げていく。
この場全てを乗っ取るつもりなのだ。
計画通りに進んでいる。ドラキュラから笑みが溢れる。
直後だった。
閃光手榴弾を投げ付けられた。
「貴様っ……」
伸ばした闇が断たれ、苦々しく言葉を漏らす。
ドラキュラがいたのは天井だ。
パンク調の服を着ている。男だがメイクをし、一般客に紛れていた。
「残念ー。既に見破っているよ。闇は技、いたのは防犯カメラが届かない地上——」
堂々と発する伊吹だが、気付いたのは羽月と那智だった。
会場中から悲鳴が上がっている。
複数の壁が爆発し、外の光が溢れ込む。
「皆さんっ、こっちです!」
「早く逃げて下さい!」
武装した警察官が崩れた壁から手招く。
観客は、複数の穴目掛けて一斉に走り出す。
「させるかっ——!」
怒鳴り叫び、再び闇を広げる。
観客に襲い掛かるも、黒い刃に切断された。
旭のブレイヴァンスピアーから放たれた刃だ。
暗転に乗じ、那智と旭も会場に入っていた。
那智はパワーシューズを踏み込む。空中に飛ぶ。
劣勢に負われるドラキュラに斬撃を向かわす。
ドラキュラは後ろに飛んで避けるが、那智はトラスを踏み台に追い詰める。
ドラキュラは剣を現す。苦し紛れに血刃を放つ。
那智は一振りで全て払う。
落ちた血刃は下にいる旭が払いどけた。
旭は、頭上でブレイヴァンスピアーを回転させている。まだ会場にいる観客を双方の攻撃から守っている。
だが、逃げる観客に逆流し、数十人が旭と伊吹に襲い掛かった。
ナイフを持つ者が走り向かう。セットを壊し、鉄パイプを武器にする者もいる。
「ちっ、ヤク中がいやがった!」
激しく旭は舌打ちをする。
マシンピストルで援護したい伊吹だが、撃てる場所は限られる。
会場にはまだ観客が残っている。将棋倒しが起こり、何人も逃げ遅れていた。流れ弾に当たってしまう。
伊吹は生身で対抗する。
そんな中、那智と対峙するドラキュラが、トラスを蹴り飛ばした。
巨大なトラスが倒れていく。
急ぎ、伊吹はゴッドスターを抜く。
トラスを壊そうと複数回撃つ。直後にクレームが上がった。
「何すんだよ⁉︎ アンタはっ!」
旭に破片が降っていた。
「あっ、ごめん!」
慌てて伊吹は謝罪する。
旭はブレイヴァンスピアーを振り回す。
破片は避けられるが、ヒューマロイドからの攻撃までは避けられない。
足場を失くした那智は、天井の傷にチェーンを掛けてぶら下がっていた。
「人間は飛べねぇだろっ! 俺の勝ちだ‼︎」
斬撃で自身を護った後で、那智は刀を大きく振るう。黒い刃を飛ばす。旭と伊吹を援護する。
混乱の中、身を潜めていたスタッフの二人が会場裏に駆けて行く。大きなボストンバッグを二人は担いでいる。
那智は見ていた。
「伊吹君、あなたは主犯を逮捕しに行って下さい!」
「分かった!」
那智の指示に応え、伊吹は銃を仕舞う。
一人、会場裏に駆け出した。
なっちーと旭で充分だ。
劣勢のように見えるが伊吹は確信している。
交戦の中、那智は刀を鞘に納めた。床に着地する。
「死ね——!」
叫び、ドラキュラは血刃を降らし、那智に斬り掛かる。
対する那智は抜刀の体勢を取った。好機を見極める。一撃で仕留めるつもりだ。
自身に迫る血刃を、眼で捉えぬ速さで全て払う。
ドラキュラの剣撃がくる。
「高みは望めぬ剣撃ですね」
刀を鞘に納め、那智は断言する。
交えた様に見えた剣は掠りもしていない。剣は転がっている。
那智は一撃で仕留めた。
那智のパワーシューズからは白煙が上がっている。
那智は、ドラキュラから大分前にいる。
「細胞すら傷付けない剣撃か……」
ドラキュラは漏らす様に呟く。
直後、首から血飛沫が舞う。
旭の周りにいたヒューマロイドからも血飛沫が舞っている。何人も斬られていた。那智が払った血刃に殺られた。
残り少ない敵は旭が斬り捨てる。
「これで勝ちじゃねぇよ。俺は主犯じゃない」
転がった剣を持って来た那智にドラキュラは告げる。
「えぇ、存じておりますよ。あなた、魔力を上げられていない」
言われるまでもない。那智は気付いていた。
穏やかな那智の笑顔を見届けると、ドラキュラは笑みを零す。
首が落ちた。
那智と旭の勝利だ。
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