BloodyHeart

真代 衣織

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「——言われるがままに私は犯罪に加担した。前に教え子が言っていた、イジメの加害者をドラキュラに攫わせた……』
 常に、男達とドラキュラの監視が付き纏う。逃れる事はとても出来なかった。
 でも、言い訳をするように思えて、口には出さない。
 全てを聞いたリリアは田内美穂の前に両膝を突く。
 手を取り、潤んだ瞳で見上げる。
「もっと早くに出会いたかった。美穂さんを支えてくれる人がいなかった事、悔やんでなりません」
 漆黒の暗い瞳から涙が溢れる。
「——失礼します」
 玄関から声がする。
 羽月が令状を手に入って来た。
「はい」
 返事をし、田内美穂は立ち上がる。手で涙を拭った。
「未成年者略取誘拐幇助により、通常逮捕します」
 令状を見せ、羽月は告げた。
「お願いします」
 田内美穂は両手を前に出す。
 残酷な現実を、リリアは目の当たりにする事になる。
「逃亡のおそれがない場合、手錠は掛けません」
 羽月は断った。
「事件の計画性を考えると、心神喪失状態は認められません」
 だが、残酷な現実を告げる。
「はい。解っています」
 田内美穂は理解していた。
「ですが、脅迫下であった事は認められます。裁判で有利になりますので、こちらに協力して下さい」
「出来る限り尽力致します」
 羽月の提案を田内美穂は受け入れた。
「オフィスの場所は何処ですか?」
「最寄駅は——」
 すらすらと田内美穂は詳しい住所を言う。
 その住所を、羽月はウェアラベル端末から浮かぶキーボードに入力している。
 リリアは二人のやり取りを、体育座りで床から見上げている。
 入力を終えると、直ぐにウェアラベル端末に電話が入った。
「羽月、春ちゃんが確認したけど今日の午前中に引き払ってる」
 三宅豊からだ。
 電話を手にしている奥村小春のパソコンには、詳細が表示されている。オフィスはレンタルオフィスだった。
「連れて行った場所は冷凍倉庫ですっ」
 会話を聞き、田内美穂は情報を言う。自ら協力しようとする。
「築地近くの東京湾沿いにある冷凍倉庫です。三ヶ月前に経営破綻した事業者から、お金を渡して借りたと言ってました」
 田内美穂の発言を、電話越しの三宅豊は聞き取った。
 奥村小春が情報を入力する。
 該当する場所は一つだけだ。
 羽月のウェアラベル端末に目的地が送信された。
 まだ証拠がある筈——。
 後は、那智が主犯を確保すればこっちのモンだ。
 羽月は芹沢を相手に勝利を見据えていた。
 
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