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うるせー
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「殺害された男性は、他の被害者と同じく全身の血を抜かれていました。他と同じく、MDを含む、違法薬物売買と特殊詐欺事件の実行役でした」
「これで何人目だ?」
対イーブル軍、警察部隊、総本部内の会議室に捜査本部が設けられた。
対イーブル軍、警察部隊の三田司令官は、先程から険しい表情で問い掛けている。
「……五人目です」
臆しながら、報告を終えた警察部隊の隊員が答え、恐る恐る席に着く。
「次、警視庁——」
三田司令官の顔付きが更に怖くなる。
警視庁からは、一連の捜査を担当していた本部長と、暴力団対策課の四人が会議に出席していた。
他の警察官に促され、一番若い男が立ち上がる。とても緊張している。
「ぜ、全身の臓器と血を抜けれた児童の遺体が、つ、築地で見付かっています」
「何人目だ?」
三田司令官の鋭い目付きが問う。
「な、七人目です……」
「ふざけてんのかっ⁉︎ お前等はっ⁉︎」
広い会議室に、三田司令官の怒鳴り声が響き渡る。
皆、萎縮する。羽月と那智は除いて……。
「魔人との関連が疑われたら、直ぐに報告する決まりだろうがっ⁉︎ 何やってたんだ⁉︎」
「す、すみませんっ……」
ビクビクしながら詫びを入れる。横に座る先輩はタブレットに書いた文章を読ませる気だ。
激昂する三田司令官に、一番若い警察官は釈明させられる。
「ですが、ドラキュラの犯行に見せる為に、血を抜く手口は多いです……」
タブレットを横目に棒読みだ。
三田司令官の片眉が吊り上がる。
「何言い訳してんだっ! 対応が遅れた所為で、七人も死んだんだぞっ! お前等が見殺しにしたんだっ‼︎」
怒りを煽ってしまう。
「で、ですが……臓器売買には外国マフィアが絡んでおり、捜査は慎重にと、め、命じられました」
棒読みの声が震え出す。
若い警察官は、タブレットに入力された文章を、又もや読み上げさせられた。
「慎重な行動を求められても、報告が遅れていい事にはならない! どうせ公務員特約の、責任逃れに依存しているんだろっ⁉︎」
三田司令官は警察庁から天下りしている。だが、警察内部から推進された訳ではない。体制に嫌気が差し、警察を辞めたのだ。
「はいっ……」
「ああっ⁉︎」
思わず、若い警察官は肯定してしまう。他の警察官は意表を突かれる。
対する三田司令官は、怒りを露骨に唸り声を漏らす。
「ふざけてんのか——っ⁉︎ 当たり前の行動も出来ないのかっ⁉︎ 馬鹿共がっ‼︎」
又もや、厳しい叱責が始まってしまう。
そろそろ止めさせた方がええな……。
ずっとこんなんやったら一向に進まへん。
胸中で不満を溢す。
那智は止めに入ろうと、隣に座る羽月を窺った。
直後、ギョッとする。
他の全員が萎縮する中、羽月は背もたれに背中を預け、タブレットで将棋をしていた。
退屈に耐えられなかった様だ。
「羽月君、さすがにそれは……」
「うるせー。俺は飽きたんだよ」
小声の那智に対し、羽月の声は通常の大きさだ。
それでも、三田司令官の怒鳴り声に掻き消される。
「羽月君、今は捜査会議中ですから……」
「どこがだよ。さっきから老害の無駄吠えに付き合ってるだけだろ」
確かに——。
その言葉には納得するが、さすがに止めさせなくてはと那智は思う。
「ですが、取り敢えず一時中断を……」
「何だ⁉︎ 結城——」
気付かれた。
三田司令官は睨んでいる。
「これで何人目だ?」
対イーブル軍、警察部隊、総本部内の会議室に捜査本部が設けられた。
対イーブル軍、警察部隊の三田司令官は、先程から険しい表情で問い掛けている。
「……五人目です」
臆しながら、報告を終えた警察部隊の隊員が答え、恐る恐る席に着く。
「次、警視庁——」
三田司令官の顔付きが更に怖くなる。
警視庁からは、一連の捜査を担当していた本部長と、暴力団対策課の四人が会議に出席していた。
他の警察官に促され、一番若い男が立ち上がる。とても緊張している。
「ぜ、全身の臓器と血を抜けれた児童の遺体が、つ、築地で見付かっています」
「何人目だ?」
三田司令官の鋭い目付きが問う。
「な、七人目です……」
「ふざけてんのかっ⁉︎ お前等はっ⁉︎」
広い会議室に、三田司令官の怒鳴り声が響き渡る。
皆、萎縮する。羽月と那智は除いて……。
「魔人との関連が疑われたら、直ぐに報告する決まりだろうがっ⁉︎ 何やってたんだ⁉︎」
「す、すみませんっ……」
ビクビクしながら詫びを入れる。横に座る先輩はタブレットに書いた文章を読ませる気だ。
激昂する三田司令官に、一番若い警察官は釈明させられる。
「ですが、ドラキュラの犯行に見せる為に、血を抜く手口は多いです……」
タブレットを横目に棒読みだ。
三田司令官の片眉が吊り上がる。
「何言い訳してんだっ! 対応が遅れた所為で、七人も死んだんだぞっ! お前等が見殺しにしたんだっ‼︎」
怒りを煽ってしまう。
「で、ですが……臓器売買には外国マフィアが絡んでおり、捜査は慎重にと、め、命じられました」
棒読みの声が震え出す。
若い警察官は、タブレットに入力された文章を、又もや読み上げさせられた。
「慎重な行動を求められても、報告が遅れていい事にはならない! どうせ公務員特約の、責任逃れに依存しているんだろっ⁉︎」
三田司令官は警察庁から天下りしている。だが、警察内部から推進された訳ではない。体制に嫌気が差し、警察を辞めたのだ。
「はいっ……」
「ああっ⁉︎」
思わず、若い警察官は肯定してしまう。他の警察官は意表を突かれる。
対する三田司令官は、怒りを露骨に唸り声を漏らす。
「ふざけてんのか——っ⁉︎ 当たり前の行動も出来ないのかっ⁉︎ 馬鹿共がっ‼︎」
又もや、厳しい叱責が始まってしまう。
そろそろ止めさせた方がええな……。
ずっとこんなんやったら一向に進まへん。
胸中で不満を溢す。
那智は止めに入ろうと、隣に座る羽月を窺った。
直後、ギョッとする。
他の全員が萎縮する中、羽月は背もたれに背中を預け、タブレットで将棋をしていた。
退屈に耐えられなかった様だ。
「羽月君、さすがにそれは……」
「うるせー。俺は飽きたんだよ」
小声の那智に対し、羽月の声は通常の大きさだ。
それでも、三田司令官の怒鳴り声に掻き消される。
「羽月君、今は捜査会議中ですから……」
「どこがだよ。さっきから老害の無駄吠えに付き合ってるだけだろ」
確かに——。
その言葉には納得するが、さすがに止めさせなくてはと那智は思う。
「ですが、取り敢えず一時中断を……」
「何だ⁉︎ 結城——」
気付かれた。
三田司令官は睨んでいる。
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