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本当の作戦
しおりを挟む「中隊長っ! こちらも早急に動くべきです」
自衛官の一人が促す。対イーブル軍、特殊遊撃部隊が入ってから、もう一時間が経とうとしている。
「不測の事態に対応するべく、自衛隊は待機している」
中隊長は冷たく一蹴した。
「何もするなと仰っているんですか?」
「原発死守が役割だ。もしもの時は冷却の為に放水、周囲に危険を知らせ、報道ごと近隣住民を避難させる」
問い掛けに不快を見せ、中隊長は淡々と述べた。
「中にいる対イーブル軍は見殺しですか?」
怒りを込めて自衛官は刺す様に問う。
「それは、向こうに言え!」
直ぐそばで、同じく待機している対イーブル軍を中隊長は指差す。
「援護が何もない状態で入れば、ドラキュラの養分になるだけです」
対イーブル軍の隊員一人が答える。何故か楽しそうだ。
「つまり、犠牲を払えって言いたいのか⁉︎」
「犠牲を払わない為に、尽力して下さいと頼んでるんです」
中隊長は問うと言うより文句だ。露骨に怒っている中隊長に、隊員は笑顔で反論している。
「これは、お前等(対イーブル軍)の仕事だろっ⁉︎ 自衛隊が巻き込まれるのは可笑しいだろ⁉︎」
中隊長は怒鳴り散らす。
「自衛隊と連携取った事ありますけど、他の隊長は協力的でしたよ。あと、消防も協力的でした」
他の隊員も反論し出した。
「黙れっ! お前等は自国の軍隊じゃないだろ⁉︎ 国際社会、魔人の犬だっ!」
中隊長は差別感情を露骨にした。
「差別かよっ」
「ふざけんなっ」
隊員達が口々に小言を言い出す。
連携を取る自衛隊と消防、警察の全員が協力的な訳じゃない。
特に自衛隊幹部は、この中隊長と同じく、自国の軍隊じゃないと差別をする者が多い。
根底にあるのは妬みだ。対イーブル軍の戦闘力が高い事から、立場を危うくしかねないと危機を持たれている。
それが、差別感情を繕った。
対イーブル軍を捨て駒の高給取りと吹聴し、命を捨てるのは当然と対イーブル軍人の人命軽視に繋がった。
国際社会でも、この傾向は強い。自国の軍隊と差別される。
魔人の所有物と認識され、オリンピックを含む、国際スポーツ競技大会への出場を禁止する事態まで起きている。総本部のある日本国内でも同様だ。
表向きは、死亡率の高さと緊急出動の多さから、出場辞退が相次ぐ可能性を理由にしている。
中隊長と口論している隊員を横目に、最初に反論した隊員は、装甲車にいる自衛官と目で合図を交わす。
装甲車内にいる自衛官の手には、コントローラーが握られていた。顔を向けた先はモニターだ。
自衛官は海中にある自爆ドローンを動かし出す。
水路に入ると自爆ドローンはモニターから消える。通信が遮断された。
ここにいる対イーブル軍二個小隊と自衛官の三人は、密かに羽月の指示に従っていた。
二個小隊は作戦会議の前からで、自衛官の三人は作戦会議の後からだ。
作戦会議後に、三人はスマートフォンから羽月の指示を受けている二個小隊に、自衛官の三人は協力を申し出ていた。
去り際に聞いた那智の言葉が重く響き、中隊長の意向に対する怒りが三人を動かしたからだ。
隠されていた作戦が始まる——。
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