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権力には暴力
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「羽月さん。十六歳に辛く当たんなよ。大人気ないッス」
自身のデスクチェアを起こし、旭は注意する。
「そうですか? 何時もと比べれば、とても大人しい行動でしたよ」
唯一、被害のなかったデスクの上で両手を組み、余裕の笑みで那智は否定した。
「あぁ。そうだったわ」
何時もの行動を思い出し、旭は共感した。
「いってぇ。いてて……」
ポテトチップスの入れ物にぶつけた左目を押さえ、伊吹は痛烈な声を漏らしている。
旭が冷凍庫から保冷剤を取り出し、伊吹に手渡す。
「頭、冷やした方がいいんじゃないッスか?」
左目に当てる伊吹を見て、旭は疑問した。
「失礼だな。それは羽月に言えよ」
「内部じゃなくて外部だよっ」
呆れた様に旭は指摘する。
「俺なら充分冷めてるよ」
そう言って羽月は、上着から煙草を取り出した。
「それならば、御自分でなおして下さいね」
那智が笑顔を向けて言った言葉に、伊吹と旭は緊張する。
室内は、一気に緊迫感に包まれた。
「あぁっ」
不快を露骨に、羽月は片眉を吊り上げている。
「当たり前ですよね? あなたがやったんですから」
全く臆さずに那智は促す。
露骨に舌打ちし、羽月は渋々片付けだす。
伊吹と旭はホッと胸を撫で下ろした。
「羽月、十六歳には優しくて安心したよ」
愛想笑いで伊吹は言葉を掛けた。
「普通の感覚では違うけどな……」
旭が言うように、普通はそうは思わない。だが、何時もの羽月を思えば納得の言動になってしまう。
何時もの羽月ならば——。
『相良っ、貴様の態度は我慢ならん! 謝罪に行けっ』
上官の怒鳴り声と共にドアが開いた。
『あぁ、うぜぇな』
伊吹のデスクに腰掛け、羽月は面倒そうに言葉を漏らす。
『何だっ⁉︎ その態度はっ』
上官の怒りは更に煽られた。
『おい。流しっから持って来い』
自身のデスクチェアに座る伊吹に、羽月は気怠く命じる。
『マジで……』
少々驚く伊吹だが、羽月と付き合いが長い分、想像の範囲内だ。
『何だ⁉︎ 上官相手に塩でも撒く気か⁉︎』
流しに行く伊吹を見て、上官は怒り問う。
伊吹が手にした物を見て、怒りに真っ赤だった上官の顔が、一気に真っ青に変わる。
羽月の手に渡った物は手榴弾だった。
羽月は躊躇いなく口でピンを抜き、悲鳴を上げて逃げ出す上官に投げ付けた。
ドアの向こうで激しい爆発音がする。それでも、魔界製の建物に被害はなく、慌てて逃げ伏せた上官も無事だった。
しかし、殺されかけた当の上官はトラウマになり、二度と羽月の元を訪れなかった。
他にも三〇一隊室を訪れ、羽月に怒鳴り込んだ上官は何人もいた。皆、決まって酷い返り討ちに遭わされた。
『相良っ! 上官の策を馬鹿にするなっ—— 」
上官が怒鳴り声と共にドアを開けた。
『よう——。死ぬ覚悟は出来てるか?』
ガドリングガンを構える羽月が目の前にいる。
恐れをなして上官が逃げ出すと、羽月は逃げる上官の足下を目掛け、数センチ幅でガドリングガンを乱射した。
権力を振るおうとする上官に、羽月は決まって度を超えた暴力を振るう。
結果、命を脅かすと上官達に怖れられ、羽月は目立った処分を受けずに済んだ。
自身のデスクチェアを起こし、旭は注意する。
「そうですか? 何時もと比べれば、とても大人しい行動でしたよ」
唯一、被害のなかったデスクの上で両手を組み、余裕の笑みで那智は否定した。
「あぁ。そうだったわ」
何時もの行動を思い出し、旭は共感した。
「いってぇ。いてて……」
ポテトチップスの入れ物にぶつけた左目を押さえ、伊吹は痛烈な声を漏らしている。
旭が冷凍庫から保冷剤を取り出し、伊吹に手渡す。
「頭、冷やした方がいいんじゃないッスか?」
左目に当てる伊吹を見て、旭は疑問した。
「失礼だな。それは羽月に言えよ」
「内部じゃなくて外部だよっ」
呆れた様に旭は指摘する。
「俺なら充分冷めてるよ」
そう言って羽月は、上着から煙草を取り出した。
「それならば、御自分でなおして下さいね」
那智が笑顔を向けて言った言葉に、伊吹と旭は緊張する。
室内は、一気に緊迫感に包まれた。
「あぁっ」
不快を露骨に、羽月は片眉を吊り上げている。
「当たり前ですよね? あなたがやったんですから」
全く臆さずに那智は促す。
露骨に舌打ちし、羽月は渋々片付けだす。
伊吹と旭はホッと胸を撫で下ろした。
「羽月、十六歳には優しくて安心したよ」
愛想笑いで伊吹は言葉を掛けた。
「普通の感覚では違うけどな……」
旭が言うように、普通はそうは思わない。だが、何時もの羽月を思えば納得の言動になってしまう。
何時もの羽月ならば——。
『相良っ、貴様の態度は我慢ならん! 謝罪に行けっ』
上官の怒鳴り声と共にドアが開いた。
『あぁ、うぜぇな』
伊吹のデスクに腰掛け、羽月は面倒そうに言葉を漏らす。
『何だっ⁉︎ その態度はっ』
上官の怒りは更に煽られた。
『おい。流しっから持って来い』
自身のデスクチェアに座る伊吹に、羽月は気怠く命じる。
『マジで……』
少々驚く伊吹だが、羽月と付き合いが長い分、想像の範囲内だ。
『何だ⁉︎ 上官相手に塩でも撒く気か⁉︎』
流しに行く伊吹を見て、上官は怒り問う。
伊吹が手にした物を見て、怒りに真っ赤だった上官の顔が、一気に真っ青に変わる。
羽月の手に渡った物は手榴弾だった。
羽月は躊躇いなく口でピンを抜き、悲鳴を上げて逃げ出す上官に投げ付けた。
ドアの向こうで激しい爆発音がする。それでも、魔界製の建物に被害はなく、慌てて逃げ伏せた上官も無事だった。
しかし、殺されかけた当の上官はトラウマになり、二度と羽月の元を訪れなかった。
他にも三〇一隊室を訪れ、羽月に怒鳴り込んだ上官は何人もいた。皆、決まって酷い返り討ちに遭わされた。
『相良っ! 上官の策を馬鹿にするなっ—— 」
上官が怒鳴り声と共にドアを開けた。
『よう——。死ぬ覚悟は出来てるか?』
ガドリングガンを構える羽月が目の前にいる。
恐れをなして上官が逃げ出すと、羽月は逃げる上官の足下を目掛け、数センチ幅でガドリングガンを乱射した。
権力を振るおうとする上官に、羽月は決まって度を超えた暴力を振るう。
結果、命を脅かすと上官達に怖れられ、羽月は目立った処分を受けずに済んだ。
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