BloodyHeart

唯一無二の思い

　リリアを送り届けた那智は、五分程で目白にある自宅マンションに着いた。
　自宅は六階建ての最上階、一人暮らしに充分な1LDKの住まい。だが、那智の収入を考えれば、もっと立派な物件にも住める。
　部屋は非の打ち所がない程、綺麗に整理整頓されている。
   一見は、出窓に見えるへこませた部分に、刀を置くスペースが作られている。掛かっているロールスクリーンを半分開け、那智は刀を置く。
　手を離し、ロールスクリーンを全開にした。
「羽月君。私と貴方だけが辿り着ける場所に、共に参りましょうね」
　誇らしい表情を向けた先は、羽月のポスターだ。ロールスクリーンで隠されていた。
　地下駐車場で自分の車に寄り掛かり、髪を掻き上げて喫煙している、ダークスーツ姿の羽月。確実に隠し撮り写真を引き伸ばした物だ。
　那智は同性愛者だが、今の言葉を考えると恋心を抱いている訳ではない。それを凌いだ何かだろう。
　他の誰も抱かない感情——。
　那智だけが持つ、羽月に向けた唯一無二の思いだ。